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15.新しい家族
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「……」
文彰のおぼろげな視界に、見慣れた白っぽい傷が映る。頬にあたる枕と、温かい手に頭を撫でられて、また睡魔が襲ってきた。
「明日は葡萄畑に行こうねぇ」
ちらちらと視界に映る傷に同情した文彰は、右手を取る。あと一週間だ。そっと口づけをして、ちゅうちゅうと傷を吸っていると、愛おしそうに目を細める男がいた。
「今ね、収穫の時期なんだよぉ、明日は葡萄狩りに行こうねぇ、ふみちゃぁん」
「……うん」
最後の出張だと連れてこられたのは、香園家の屋敷だった。別荘代わりに使っているという家は、昔ながらの日本家屋といった風情のある造りだった。
一体、何百坪あるのか。広大な庭を歩いて、吹き抜けの玄関に着くと、使用人に出迎えられた。
そこから、文彰と章太郎の怠惰な時間は始まった。来て早々、身に着けているものを剥ぎ取られ、露天風呂に追いやられた。酒を飲み、章太郎に立ちバックで犯されると、文彰は我を忘れて喘いだ。
へべれけになりながら、浴衣を身に着ける。ふらふらとおぼつかない足取りで、布団を敷かれた客間に行くと、また章太郎に抱かれた。
かなり酔っていた文彰は、章太郎が電話をかけていることにも気が付かず、嬌声を上げていた。
「章太郎くん……」
「どぉちたのぉ?」
文彰は幸せだった。これから一週間、美味しい食事とセックスに明け暮れたら、自由が待っている。いいこと尽くしの未来を思い浮かべながら、ずるずると体を起こした。
「章太郎くん、大好きぃ、だいすきぃ」
「ふみちゃんのこと、だいすきだよぉ」
寝ぼけ半分、まだ酔いが冷めない文彰は、章太郎の膝に乗る。ふわふわと体に羽が生えたようだった。
「ふみちゃぁん、何か欲ちぃ物あるぅ?」
熱燗が運ばれ、とろりとした酒を口移しで飲まされる。これから酒を飲んで、セックスしていれば、解放されるのだ。自然と気が大きくなっていた文彰は、章太郎の質問に意気揚々と答えた。
「時計が欲しいなぁ」
これからの将来を考え、文彰はとにかく金が欲しかった。20年近く勤めた会社の退職金があるとはいえ、これから天外から振り込まれる生活費も無くなるのだ。
文彰が望んだ、悠々自適なおひとり様の老後を送るためにも、金が欲しい。だが、権力者を脅す度胸はない文彰は、時計をせがんだ。
脅迫はできない。だからせめてと、手切れ金の代わりだった。
「時計?時計が欲ちぃの?ブランドはどれぇ?」
文彰は「ロレックス」と遠慮がちにブランド名を出した。以前、章太郎からピアジェの時計を貰った後、天外にばれたらまずいと、レンタルルームに預けていた。恋人の監視をかいくぐり、駅近くの買取専門店へ持っていった。
『査定額は……70万ですね』
300万の時計が、買取で70万。生唾を飲み込んだ。もっとあるなら、買取ますよと親切そうな店員は『うちはロレックス、買取強化してます』と言った。ネットで調べたら、ロレックスは換金率が高いらしい。
ロレックスが欲しい。
一週間、別荘に滞在して、章太郎と縁が切れたら、時計を換金するのだ。下心が見えないよう、文彰は「章太郎君との思い出」と甘えた。ご機嫌を取るように、「忘れたくない」と年上の男にしなだれかかる。肩に頬を擦り付ける愛人に、章太郎は飛び上がった。
「ふみちゃん!ロレックス好き?!ロレックス好きなんだね!!ロレックス!ロレックスね!!」
はしゃいだ章太郎が使用人を呼びつけると、木製の収納ケースを運んできた。二段性になった収納ケースを開けると、何本も腕時計が顔を出す。文彰は、彫られたブランドのロゴに興奮していた。
酒とセックスで溶かされた頭で、いくらになるのかと皮算用する。全部欲しいとはさすがに言えない。何本貰えるのか……一番、高そうな時計を貰っていきたい。ロレックスの次に換金率が高いブランドは、何だったかな。
「こ、これ……っ」
「ふみちゃん!全部ふみちゃんのものだよ!ふみちゃんのものだからね、ぜーんぶっ、ふみちゃんのものだよぉぉ!」
全部。
章太郎の言葉に、文彰の頭は完全に溶かされていた。
「ほ、ほんとぉ?」
全部、換金したら、いくらになるんだろう。外は薄暗くなる中、照明ランプの下で、時計がきらきらと輝いていた。
時計が欲しい文彰は、章太郎に「大好き」と言い続けた。半分本当で、半分はリップサービス。天外と比べたら、好意は少ないが――天外と出会わなかったら、章太郎をもっと好きになっていた。
「ふみちゃぁん」「章太郎くん」と睦み合っていたら、章太郎のスマホが振動した。年上の男は、ちらっと画面を観ると「お仕事のでんわぁ、ちょっと待っててねぇ」と、上機嫌に部屋を出て行く。部屋で一人、うっとりしながら、収納ケースを見つめていた。
全部換金したら、いくらぐらいになるかな。
これだけあったら、しばらく転職活動をせずにゆっくりしていいかもしれない。出張前に、会社には退職の話もした。一週間、屋敷で飲み食いしながらセックスすれば、全てが終わる。時計を換金するところを想像し、文彰はやに下がっていた。
頭でそろばんをはじきながら、熱燗を口にした。水のように酒を飲んでいたが、尿意を催し、廊下に出る。章太郎はなかなか戻らないし、トイレに行こうと、廊下を歩いた。
ふわふわと酔った体で、長い廊下を歩いていたが、トイレが見つからなかった。何度も角を曲がっていると、玄関に来てしまった。
吹き抜けになった玄関に、千鳥足で近づく。何も考えずに土間を覗いて――文彰の体が硬直した。
靴がない。
朝、章太郎と手をつなぎながら踏み入れた玄関。長い間、香園家に勤める使用人だという高齢男性と挨拶をして、靴を脱いで……どこだ?
客人の靴も、収納棚に入っているのか?
きっと収納されたのだと納得しようとして、胸騒ぎが収まらない。そういえばと、文彰は手元を見た。
浴衣一枚。
訪れた時の持ち物……長年使っていた時計、スマホ、それにアパートに戻るつもりはなく、私物を詰めた旅行鞄を持ってきた。中には輪ゴムでまとめた、大事なクーポン券が入っている。
招かれた立場で、棚を漁るのは気が引ける。うろうろと所在なさげに玄関をうろついていると、名前を呼ばれた。
「文彰様?」
振り向くと、朝、出迎えてくれた高齢の使用人だった。
「あ!あの……わ、私の、スマホとか、えー、あの荷物をあの、どこにあります?ちょっとあの、必要な私物がありまして」
もごもご口を動かす文彰を、じっと使用人は見つめていた。どうして何も答えてくれないのか。意味深な沈黙が降りた時だった。
「ふみちゃっ!!!ふみちゃっ!!」
どたどたと足を踏み鳴らしながら、章太郎が走ってくる。鬼のような形相に、文彰は後ずさった。
「ふみちゃ!勝手にお外出ちゃだめっ!めっ!」
腰が引けた文彰の腕を掴み、章太郎は引きずるように部屋に戻ろうとする。今まで身に着けてきた私物がない。不安で胸が張り裂けそうになる文彰は、ためらいがちに名前を呼んだ。
「しょ、章太郎君……」
「めっ!めっ!ふみちゃっ!めっ!」
「ふみちゃん」を叱りつける章太郎は、血走った目で、文彰の尻を揉んでいた。襖を開けると、布団に愛人を転がす。覆いかぶさってきた男に、文彰は怯えた顔を隠さなくなっていた。
「あ、あの、ねっ、スマホとか、あの靴がね、どこにある、の……?」
「ふみちゃっ!お外でちゃだめ!めっ!」
「ねぇ、靴がないっ、靴は?ねぇっ……か、帰りたいっ」
ぎょろぎょろと眼球が蠢く男が恐ろしい。さっきまで酩酊感に支配された体は冷たく、冷え込んでいた。
帰りたいと言いながら、体を起こそうとしたが、骨ばった両手が迫っていた。
「め――――っ!!!!」
「ふぐっ……っっ」
枕を顔に押し付けられ、抑え込まれた。章太郎は「め――――!!!」と叫びながら、愛人にのしかかる。全体重をかけながら、下で四肢をばかつかせる文彰を抑え込んだ。まともに息継ぎができなくなった愛人が、苦し気な声を出していた。
「ふぅ、ごっ、ぉあっ」
「ふみちゃ――――んっ!めっ!」
「――会長」
電話に出ない。しびれを切らした秘書は、そっと襖を開けた。騒がしい声がする室内の光景が、目に飛び込んできて、吉野の体は硬直した。
公使共に、二十年近く仕えてきた主人が、愛人にのしかかりながら、「めっ!めっ!めっ!」と叫んでいたのだ。
目の前で繰り広げられる蛮行に、ぽかんと口を開けていると――「なんだ」と、章太郎がいつもの表情を向けた。
「入ってくるなと言っただろう……ふみちゃっ!悪い子!ふみちゃっ、めっ!悪い子でしゅよっ!」
「……っ、あの……お着きなられたようで、あの、玄関先で声が」
「おお、そうか……部屋に案内しろ」
振り乱していた髪を整え、章太郎は枕を持ち上げた。ごほごほと胸を押さえながら、必死に息を吸う愛人から――目を背け、襖を閉める。
秘書のバタバタと走り去る音を聞きながら、章太郎は文彰の乱れた前髪を整えた。
「ふみぃ、靴は処分したよ――もういらないからね」
「?……っの、それはっ」
涙でぼやけた視界には、唇の端が吊り上がった男が一人。笑みを深くした男は、これから起きるおぞましい未来に、下半身を勃起させていた。
荒々しい足音が近い。
早く、早くこい。文彰の枕元で胡坐をかくと、蹴破る勢いで部屋に入ってきた男を見上げた。
「ふみあきぃぃぃぃ!!!」
獣の咆哮に、文彰が叫び声を上げようとした――叶わなかった。天外は仕留めようと、文彰にとびかかると、ためらいものなく首を掴んだ。
本当は、じわじわと強弱をつけながら、殺したい。だが怒りに支配された天外は、そんな余裕もなく、一気に力を込める。「がぁっ」とくぐもった声がした。
枕を顔に押し付けられ、やっと息が吸えたところで、絞殺されようとしている。文彰は涙目で、上を見上げた。
顔を紅潮させ、眦が吊り上がった年下の男。そして――
「あっ、がぁっ、あぁっ」
殺されようとする最中、今しがた酒を飲んでセックスを楽しんだ、年上の男を見た。ロレックスの時計をやると言って、甘やかしてくれた男は――微笑んでいた。
「あっ、だ、だぅ、ぁすけ、でぇ」
章太郎は笑いが止まらなかった。息子の視界には、悠々と腰を下ろす父親など映ってもいないのだろう。
この日を準備した父親は、助けを求める愛人を見つめた。開いた瞳孔から涙が溢れ、息を吸おうと開いた口から唾液が垂れていた。
文彰が憎くて憎くて、愛おしい。
この出張で最後だと思い込んでいる男は、過剰に「好きだ」と繰り返した。そんな文彰の――下手糞な媚びは、章太郎の憎しみを深くした。
以前やった時計を、一度も嵌めてこない癖に。時計の価値も分からない男が、時計を欲しがるのも、察しはつく。
浅はかで、どこまでも詰めが甘い。章太郎を出し抜けると見くびる愛人を、殺してやりたい。
……それでも章太郎は、文彰が可愛かった。憎しみが深まるたびに、愛おしさが増す。こんな気持ちは、妻にも子どもにも、感じたことはない。生まれて初めての感情だった。
章太郎は頃合いを見計らい、口を開いた。
「――天外、やめるんだ」
父親の声が聞こえていないらしい、息子の両手をそっと掴んだ。ぎらぎらと荒んだ目と合い、「やめるんだ」と繰り返した。
「あ、あんたがっ、あんたがっ文彰をっ!!」
怒りの矛先は、認識した父親に向けられた。射殺すような目を向け、腕を振り上げようとする。軽くいなした章太郎は「天外」と諭すように名前を呼んだ。
「げほぉ、っがぁ、はぁぁっ」
「――この男はお前と私を、ずいぶん前から騙していたんだよ」
げほげほと、咳き込む声がする。布団の上で、文彰は涙を流しながら、体を震わせていた。天外に組み敷かれた状態では、まだ安全とは言えない。縋るような目で、章太郎を見上げた。
「た、だずっ、げぇっ、だずっ、けてぇっ」
「ふみちゃぁん、たちゅけてって、言ったね?今、たちゅけてって言ったよねぇ?」
「あぅっ、ぁあっ、はいぃっ」
文彰は必死に手を伸ばした。のしかかる男から怒りの気配を感じたが――無我夢中で、父親に縋り付いた。
章太郎は微笑みながら、文彰の頭を撫でた。
「じゃぁー、親子になろうかぁ、ふみちゃん」
章太郎の発した単語の意味を、文彰は理解できなかった。訳が分からないが、とりあえず頭を振る。章太郎が、助けてくれるかもしれない。酸素の行き届かない頭で、それだけは理解できた。
「おいっ!何言ってんだっ、文彰は――」
「天外」
父親の静かな静止に、天外は口を閉じた。反発したくても、体は染みついた習性で、父親に従ってしまう。唇を噛みながら、睨みつけていた。
「ふみちゃんが助けてと私を頼ったんだぁ。だからね、親子になろうと思うんだ……天外は受け入れてくれるな?」
「……」
「新しい家族になる人だ――お前の兄になる人だよ。兄だ、兄。私にとっては息子。天外にとっては……新しいお兄ちゃんだ。受け入れてくれるな?」
鼻や口から体液を垂れ流す文彰を、章太郎は覗き込んでいた。
「たちゅけてって言ったよねぇ?」
「は、はいっ、はぃぃっ」
「そうだよねぇ……ふみちゃんを守ってあげるよ、これからふみちゃんを怖いことからぜーんぶ、私が守ってあげるよぉ。父親っていうのは、息子を守るものだよぉ、そうだろう?」
「はいぃ、はっ、いっ!」
章太郎の言っている意味が分からない。分からないが、死にたくない。その一心で、文彰は返事をしていた。
今、この状況から、救って欲しい。泣きながら「章太郎くん」と、浴衣の裾を引っ張る。
「こぉらぁ」
手を軽く払いのけられる。場違いなほど、明るい声だった。
「章太郎くんじゃないよねぇ、パパだよ、パパ、パパだよぉぉ――ふみちゃん?」
「ぱ、ぱぱぁっ、助けてっ、助けてぇっ」
ずるずると這って、章太郎の膝に頭を乗せる。よしよしと頭を撫でられる最中、天外の顔は蒼白になっていた。
「な、なに、何を言ってっ! ふ、ふみあきさ――」
「天外」
冷たい声だった。一度注意されたら、二度目はないと、昔から学んでいた天外の体が、無意識に揺れる。
父親のことなど、どうでもいいと切り捨ててきた。それでも対峙すれば、体は思うように動かなくなるのだから、トラウマは根深い。
幼少期に、一度だけ声をかけられた。「軟弱者」と。あの時の冷淡な、突き放す声を思い出して――天外は奥歯が割れるほど、噛み締めていた。
奪(と)られてしまった。
父親の膝で、安心しきった文彰の表情。認めたくない事実が、目の前にあった。
「ふみちゃぁん、これからふみちゃんは息子。私の息子。息子っていうのはねぇ、父親の言うことには絶対なんだよ。分かってる?わかってるよねぇ、ふみちゃん。だから守ってあげるんだから――ね?」
「はいっ、はいっ」
「じゃあ今から、家族になるぞぉ」
章太郎は帯を解き、勃起したペニスを文彰に擦り付けた。
「ほぉーら、パパだぞぉ」
「ぱぱぁっ」
文彰は夢中でペニスを頬張った。死にたくない一心で、勃起した父親のペニスに奉仕する。先走りが零れる男根を咥えると、馴染んだ独特の匂いに、頭がくらくらした。
「ほぅっ、ふぅぅんっ、うぅ」
「おいちい、おいちいでちゅね~、ふみちゃん」
章太郎はフェラをする息子の頭を撫でながら、手招きをした。もう一人の息子は、明らかに――自分との行為より、興奮した様子の「兄」に、衝撃を受けていた。
「天外、ほらぁ……お兄ちゃんは寂しがり屋なんだ。お前が可愛がってやらないと、だめだぞ」
浴衣が捲れ、兄の白い太ももがむき出しになっていた。点々と残る鬱血の痕は、天外と父親のものだろう。
今ならまだ、父親から取り返せるかもしれない。
文彰を――兄を殺そうと、ポケットに入れていたネクタイを確かめる。だが目の前でちゅぱちゅぱと父親のペニスをしゃぶる兄に、手が止まってしまった。
父親に言われるがまま、天外は兄の股を割くように拡げた。
「んっぅ、んんふぅっ」
さっきまで父親を受け入れていた口に、弟の指が入り込んでくる。熱く潤んだそこを、くちくちと押し広げられて、文彰は見悶えた。
「おお、天外、上手いな、上手い。その調子だ」
「……」
「お兄ちゃんはじっくり解されるのが好きなんだよぉ……ふみちゃぁん」
頭を撫でられて、文彰は舌を熱心に動かした。天外にはえずくほど、イラマチオさせられたが、章太郎には実技で教えられてきた。
口の中でまた張り詰める男根。早く入れて欲しくて、腰を動かした。そうすると、弟の指が擦って欲しいところに当たる。
止まらなくなって、文彰はかくかく腰を揺らしていた。
「天外、お兄ちゃんが欲しがってるぞ。入れてやりなさい」
「……はい」
父親のペニスを咥える文彰に、天外の下半身も張り詰めていた。ベルトを外し、手早くチャックを下ろす。
弟に両足を掴まれて、文彰は期待で胸がはちきれそうになっていた。
「ふぅっ! ぅんっ、ふぅぅんっ」
「天外、お兄ちゃんはただ腰を突き上げるだけじゃダメなんだ。ゆっくりじらすように腰を使いなさい――おお、ふみ、ふみ」
ずちゅりとペニスが入ってくる瞬間、文彰は咥えた男根を無我夢中でしゃぶっていた。内壁を押し上げる弟の巨根と、口いっぱいに広がる父親のペニス。
体をくねらせて、文彰は家族を受け入れていた。
「天外、突けばいいんじゃない。お兄ちゃんの様子を見ながら、突き上げてやるんだ。ほら、肌がじんわり温かくなるだろう?」
「ぅんっ、ふううぅ!」
汗ばんだ肌に、父と弟の手が這いまわる。父親に乳首を弄られ、ずきりと重たい快楽が生まれる。きゅっと中で締め付けてしまい、腰を振る弟が呻き声を上げた。
「お、おにい、ちゃんっ……っ」
「奥をな、優しく突いてやるんだ。そうすればお兄ちゃんはずーっと、中イキしてるからなぁ……ふみぃ?」
「ふぅ、んぅっ」
父親の男根を根元まで咥えた頬を、撫でられる。先走りが口の中に広がると同時に、奥に律動を送り込まれる。
痺れが足の親指まで広がり、文彰は身悶えた。
「今日は記念日だ……新しい家族ができた日だぁ」
兄の上で、弟は髪を振り乱しながら腰を振っていた。ぱたぱたと汗が滴り落ちていく。文彰の肌が赤く染まるのを、章太郎は目を細めて鑑賞していた。
「天外、これから弟としてお兄ちゃんを守ってやるんだ……分かったな?」
腰を振る弟は、こくこくと頭を揺らす。章太郎は父親として、股間にある兄の頭を撫でてやった。
「ふみちゃぁん、パパと弟の言うことが絶対だ……家族だからな」
文彰は泣きながらくぐもった返事をした。もうすぐ父親は射精が近いから、次は弟かもしれない。何本も男を咥え込める、一時の幸せに漬かる。
とりあえずこの場は収まったと、喜びから――文彰は家族の肉棒に、夢中になった。
(完)
文彰のおぼろげな視界に、見慣れた白っぽい傷が映る。頬にあたる枕と、温かい手に頭を撫でられて、また睡魔が襲ってきた。
「明日は葡萄畑に行こうねぇ」
ちらちらと視界に映る傷に同情した文彰は、右手を取る。あと一週間だ。そっと口づけをして、ちゅうちゅうと傷を吸っていると、愛おしそうに目を細める男がいた。
「今ね、収穫の時期なんだよぉ、明日は葡萄狩りに行こうねぇ、ふみちゃぁん」
「……うん」
最後の出張だと連れてこられたのは、香園家の屋敷だった。別荘代わりに使っているという家は、昔ながらの日本家屋といった風情のある造りだった。
一体、何百坪あるのか。広大な庭を歩いて、吹き抜けの玄関に着くと、使用人に出迎えられた。
そこから、文彰と章太郎の怠惰な時間は始まった。来て早々、身に着けているものを剥ぎ取られ、露天風呂に追いやられた。酒を飲み、章太郎に立ちバックで犯されると、文彰は我を忘れて喘いだ。
へべれけになりながら、浴衣を身に着ける。ふらふらとおぼつかない足取りで、布団を敷かれた客間に行くと、また章太郎に抱かれた。
かなり酔っていた文彰は、章太郎が電話をかけていることにも気が付かず、嬌声を上げていた。
「章太郎くん……」
「どぉちたのぉ?」
文彰は幸せだった。これから一週間、美味しい食事とセックスに明け暮れたら、自由が待っている。いいこと尽くしの未来を思い浮かべながら、ずるずると体を起こした。
「章太郎くん、大好きぃ、だいすきぃ」
「ふみちゃんのこと、だいすきだよぉ」
寝ぼけ半分、まだ酔いが冷めない文彰は、章太郎の膝に乗る。ふわふわと体に羽が生えたようだった。
「ふみちゃぁん、何か欲ちぃ物あるぅ?」
熱燗が運ばれ、とろりとした酒を口移しで飲まされる。これから酒を飲んで、セックスしていれば、解放されるのだ。自然と気が大きくなっていた文彰は、章太郎の質問に意気揚々と答えた。
「時計が欲しいなぁ」
これからの将来を考え、文彰はとにかく金が欲しかった。20年近く勤めた会社の退職金があるとはいえ、これから天外から振り込まれる生活費も無くなるのだ。
文彰が望んだ、悠々自適なおひとり様の老後を送るためにも、金が欲しい。だが、権力者を脅す度胸はない文彰は、時計をせがんだ。
脅迫はできない。だからせめてと、手切れ金の代わりだった。
「時計?時計が欲ちぃの?ブランドはどれぇ?」
文彰は「ロレックス」と遠慮がちにブランド名を出した。以前、章太郎からピアジェの時計を貰った後、天外にばれたらまずいと、レンタルルームに預けていた。恋人の監視をかいくぐり、駅近くの買取専門店へ持っていった。
『査定額は……70万ですね』
300万の時計が、買取で70万。生唾を飲み込んだ。もっとあるなら、買取ますよと親切そうな店員は『うちはロレックス、買取強化してます』と言った。ネットで調べたら、ロレックスは換金率が高いらしい。
ロレックスが欲しい。
一週間、別荘に滞在して、章太郎と縁が切れたら、時計を換金するのだ。下心が見えないよう、文彰は「章太郎君との思い出」と甘えた。ご機嫌を取るように、「忘れたくない」と年上の男にしなだれかかる。肩に頬を擦り付ける愛人に、章太郎は飛び上がった。
「ふみちゃん!ロレックス好き?!ロレックス好きなんだね!!ロレックス!ロレックスね!!」
はしゃいだ章太郎が使用人を呼びつけると、木製の収納ケースを運んできた。二段性になった収納ケースを開けると、何本も腕時計が顔を出す。文彰は、彫られたブランドのロゴに興奮していた。
酒とセックスで溶かされた頭で、いくらになるのかと皮算用する。全部欲しいとはさすがに言えない。何本貰えるのか……一番、高そうな時計を貰っていきたい。ロレックスの次に換金率が高いブランドは、何だったかな。
「こ、これ……っ」
「ふみちゃん!全部ふみちゃんのものだよ!ふみちゃんのものだからね、ぜーんぶっ、ふみちゃんのものだよぉぉ!」
全部。
章太郎の言葉に、文彰の頭は完全に溶かされていた。
「ほ、ほんとぉ?」
全部、換金したら、いくらになるんだろう。外は薄暗くなる中、照明ランプの下で、時計がきらきらと輝いていた。
時計が欲しい文彰は、章太郎に「大好き」と言い続けた。半分本当で、半分はリップサービス。天外と比べたら、好意は少ないが――天外と出会わなかったら、章太郎をもっと好きになっていた。
「ふみちゃぁん」「章太郎くん」と睦み合っていたら、章太郎のスマホが振動した。年上の男は、ちらっと画面を観ると「お仕事のでんわぁ、ちょっと待っててねぇ」と、上機嫌に部屋を出て行く。部屋で一人、うっとりしながら、収納ケースを見つめていた。
全部換金したら、いくらぐらいになるかな。
これだけあったら、しばらく転職活動をせずにゆっくりしていいかもしれない。出張前に、会社には退職の話もした。一週間、屋敷で飲み食いしながらセックスすれば、全てが終わる。時計を換金するところを想像し、文彰はやに下がっていた。
頭でそろばんをはじきながら、熱燗を口にした。水のように酒を飲んでいたが、尿意を催し、廊下に出る。章太郎はなかなか戻らないし、トイレに行こうと、廊下を歩いた。
ふわふわと酔った体で、長い廊下を歩いていたが、トイレが見つからなかった。何度も角を曲がっていると、玄関に来てしまった。
吹き抜けになった玄関に、千鳥足で近づく。何も考えずに土間を覗いて――文彰の体が硬直した。
靴がない。
朝、章太郎と手をつなぎながら踏み入れた玄関。長い間、香園家に勤める使用人だという高齢男性と挨拶をして、靴を脱いで……どこだ?
客人の靴も、収納棚に入っているのか?
きっと収納されたのだと納得しようとして、胸騒ぎが収まらない。そういえばと、文彰は手元を見た。
浴衣一枚。
訪れた時の持ち物……長年使っていた時計、スマホ、それにアパートに戻るつもりはなく、私物を詰めた旅行鞄を持ってきた。中には輪ゴムでまとめた、大事なクーポン券が入っている。
招かれた立場で、棚を漁るのは気が引ける。うろうろと所在なさげに玄関をうろついていると、名前を呼ばれた。
「文彰様?」
振り向くと、朝、出迎えてくれた高齢の使用人だった。
「あ!あの……わ、私の、スマホとか、えー、あの荷物をあの、どこにあります?ちょっとあの、必要な私物がありまして」
もごもご口を動かす文彰を、じっと使用人は見つめていた。どうして何も答えてくれないのか。意味深な沈黙が降りた時だった。
「ふみちゃっ!!!ふみちゃっ!!」
どたどたと足を踏み鳴らしながら、章太郎が走ってくる。鬼のような形相に、文彰は後ずさった。
「ふみちゃ!勝手にお外出ちゃだめっ!めっ!」
腰が引けた文彰の腕を掴み、章太郎は引きずるように部屋に戻ろうとする。今まで身に着けてきた私物がない。不安で胸が張り裂けそうになる文彰は、ためらいがちに名前を呼んだ。
「しょ、章太郎君……」
「めっ!めっ!ふみちゃっ!めっ!」
「ふみちゃん」を叱りつける章太郎は、血走った目で、文彰の尻を揉んでいた。襖を開けると、布団に愛人を転がす。覆いかぶさってきた男に、文彰は怯えた顔を隠さなくなっていた。
「あ、あの、ねっ、スマホとか、あの靴がね、どこにある、の……?」
「ふみちゃっ!お外でちゃだめ!めっ!」
「ねぇ、靴がないっ、靴は?ねぇっ……か、帰りたいっ」
ぎょろぎょろと眼球が蠢く男が恐ろしい。さっきまで酩酊感に支配された体は冷たく、冷え込んでいた。
帰りたいと言いながら、体を起こそうとしたが、骨ばった両手が迫っていた。
「め――――っ!!!!」
「ふぐっ……っっ」
枕を顔に押し付けられ、抑え込まれた。章太郎は「め――――!!!」と叫びながら、愛人にのしかかる。全体重をかけながら、下で四肢をばかつかせる文彰を抑え込んだ。まともに息継ぎができなくなった愛人が、苦し気な声を出していた。
「ふぅ、ごっ、ぉあっ」
「ふみちゃ――――んっ!めっ!」
「――会長」
電話に出ない。しびれを切らした秘書は、そっと襖を開けた。騒がしい声がする室内の光景が、目に飛び込んできて、吉野の体は硬直した。
公使共に、二十年近く仕えてきた主人が、愛人にのしかかりながら、「めっ!めっ!めっ!」と叫んでいたのだ。
目の前で繰り広げられる蛮行に、ぽかんと口を開けていると――「なんだ」と、章太郎がいつもの表情を向けた。
「入ってくるなと言っただろう……ふみちゃっ!悪い子!ふみちゃっ、めっ!悪い子でしゅよっ!」
「……っ、あの……お着きなられたようで、あの、玄関先で声が」
「おお、そうか……部屋に案内しろ」
振り乱していた髪を整え、章太郎は枕を持ち上げた。ごほごほと胸を押さえながら、必死に息を吸う愛人から――目を背け、襖を閉める。
秘書のバタバタと走り去る音を聞きながら、章太郎は文彰の乱れた前髪を整えた。
「ふみぃ、靴は処分したよ――もういらないからね」
「?……っの、それはっ」
涙でぼやけた視界には、唇の端が吊り上がった男が一人。笑みを深くした男は、これから起きるおぞましい未来に、下半身を勃起させていた。
荒々しい足音が近い。
早く、早くこい。文彰の枕元で胡坐をかくと、蹴破る勢いで部屋に入ってきた男を見上げた。
「ふみあきぃぃぃぃ!!!」
獣の咆哮に、文彰が叫び声を上げようとした――叶わなかった。天外は仕留めようと、文彰にとびかかると、ためらいものなく首を掴んだ。
本当は、じわじわと強弱をつけながら、殺したい。だが怒りに支配された天外は、そんな余裕もなく、一気に力を込める。「がぁっ」とくぐもった声がした。
枕を顔に押し付けられ、やっと息が吸えたところで、絞殺されようとしている。文彰は涙目で、上を見上げた。
顔を紅潮させ、眦が吊り上がった年下の男。そして――
「あっ、がぁっ、あぁっ」
殺されようとする最中、今しがた酒を飲んでセックスを楽しんだ、年上の男を見た。ロレックスの時計をやると言って、甘やかしてくれた男は――微笑んでいた。
「あっ、だ、だぅ、ぁすけ、でぇ」
章太郎は笑いが止まらなかった。息子の視界には、悠々と腰を下ろす父親など映ってもいないのだろう。
この日を準備した父親は、助けを求める愛人を見つめた。開いた瞳孔から涙が溢れ、息を吸おうと開いた口から唾液が垂れていた。
文彰が憎くて憎くて、愛おしい。
この出張で最後だと思い込んでいる男は、過剰に「好きだ」と繰り返した。そんな文彰の――下手糞な媚びは、章太郎の憎しみを深くした。
以前やった時計を、一度も嵌めてこない癖に。時計の価値も分からない男が、時計を欲しがるのも、察しはつく。
浅はかで、どこまでも詰めが甘い。章太郎を出し抜けると見くびる愛人を、殺してやりたい。
……それでも章太郎は、文彰が可愛かった。憎しみが深まるたびに、愛おしさが増す。こんな気持ちは、妻にも子どもにも、感じたことはない。生まれて初めての感情だった。
章太郎は頃合いを見計らい、口を開いた。
「――天外、やめるんだ」
父親の声が聞こえていないらしい、息子の両手をそっと掴んだ。ぎらぎらと荒んだ目と合い、「やめるんだ」と繰り返した。
「あ、あんたがっ、あんたがっ文彰をっ!!」
怒りの矛先は、認識した父親に向けられた。射殺すような目を向け、腕を振り上げようとする。軽くいなした章太郎は「天外」と諭すように名前を呼んだ。
「げほぉ、っがぁ、はぁぁっ」
「――この男はお前と私を、ずいぶん前から騙していたんだよ」
げほげほと、咳き込む声がする。布団の上で、文彰は涙を流しながら、体を震わせていた。天外に組み敷かれた状態では、まだ安全とは言えない。縋るような目で、章太郎を見上げた。
「た、だずっ、げぇっ、だずっ、けてぇっ」
「ふみちゃぁん、たちゅけてって、言ったね?今、たちゅけてって言ったよねぇ?」
「あぅっ、ぁあっ、はいぃっ」
文彰は必死に手を伸ばした。のしかかる男から怒りの気配を感じたが――無我夢中で、父親に縋り付いた。
章太郎は微笑みながら、文彰の頭を撫でた。
「じゃぁー、親子になろうかぁ、ふみちゃん」
章太郎の発した単語の意味を、文彰は理解できなかった。訳が分からないが、とりあえず頭を振る。章太郎が、助けてくれるかもしれない。酸素の行き届かない頭で、それだけは理解できた。
「おいっ!何言ってんだっ、文彰は――」
「天外」
父親の静かな静止に、天外は口を閉じた。反発したくても、体は染みついた習性で、父親に従ってしまう。唇を噛みながら、睨みつけていた。
「ふみちゃんが助けてと私を頼ったんだぁ。だからね、親子になろうと思うんだ……天外は受け入れてくれるな?」
「……」
「新しい家族になる人だ――お前の兄になる人だよ。兄だ、兄。私にとっては息子。天外にとっては……新しいお兄ちゃんだ。受け入れてくれるな?」
鼻や口から体液を垂れ流す文彰を、章太郎は覗き込んでいた。
「たちゅけてって言ったよねぇ?」
「は、はいっ、はぃぃっ」
「そうだよねぇ……ふみちゃんを守ってあげるよ、これからふみちゃんを怖いことからぜーんぶ、私が守ってあげるよぉ。父親っていうのは、息子を守るものだよぉ、そうだろう?」
「はいぃ、はっ、いっ!」
章太郎の言っている意味が分からない。分からないが、死にたくない。その一心で、文彰は返事をしていた。
今、この状況から、救って欲しい。泣きながら「章太郎くん」と、浴衣の裾を引っ張る。
「こぉらぁ」
手を軽く払いのけられる。場違いなほど、明るい声だった。
「章太郎くんじゃないよねぇ、パパだよ、パパ、パパだよぉぉ――ふみちゃん?」
「ぱ、ぱぱぁっ、助けてっ、助けてぇっ」
ずるずると這って、章太郎の膝に頭を乗せる。よしよしと頭を撫でられる最中、天外の顔は蒼白になっていた。
「な、なに、何を言ってっ! ふ、ふみあきさ――」
「天外」
冷たい声だった。一度注意されたら、二度目はないと、昔から学んでいた天外の体が、無意識に揺れる。
父親のことなど、どうでもいいと切り捨ててきた。それでも対峙すれば、体は思うように動かなくなるのだから、トラウマは根深い。
幼少期に、一度だけ声をかけられた。「軟弱者」と。あの時の冷淡な、突き放す声を思い出して――天外は奥歯が割れるほど、噛み締めていた。
奪(と)られてしまった。
父親の膝で、安心しきった文彰の表情。認めたくない事実が、目の前にあった。
「ふみちゃぁん、これからふみちゃんは息子。私の息子。息子っていうのはねぇ、父親の言うことには絶対なんだよ。分かってる?わかってるよねぇ、ふみちゃん。だから守ってあげるんだから――ね?」
「はいっ、はいっ」
「じゃあ今から、家族になるぞぉ」
章太郎は帯を解き、勃起したペニスを文彰に擦り付けた。
「ほぉーら、パパだぞぉ」
「ぱぱぁっ」
文彰は夢中でペニスを頬張った。死にたくない一心で、勃起した父親のペニスに奉仕する。先走りが零れる男根を咥えると、馴染んだ独特の匂いに、頭がくらくらした。
「ほぅっ、ふぅぅんっ、うぅ」
「おいちい、おいちいでちゅね~、ふみちゃん」
章太郎はフェラをする息子の頭を撫でながら、手招きをした。もう一人の息子は、明らかに――自分との行為より、興奮した様子の「兄」に、衝撃を受けていた。
「天外、ほらぁ……お兄ちゃんは寂しがり屋なんだ。お前が可愛がってやらないと、だめだぞ」
浴衣が捲れ、兄の白い太ももがむき出しになっていた。点々と残る鬱血の痕は、天外と父親のものだろう。
今ならまだ、父親から取り返せるかもしれない。
文彰を――兄を殺そうと、ポケットに入れていたネクタイを確かめる。だが目の前でちゅぱちゅぱと父親のペニスをしゃぶる兄に、手が止まってしまった。
父親に言われるがまま、天外は兄の股を割くように拡げた。
「んっぅ、んんふぅっ」
さっきまで父親を受け入れていた口に、弟の指が入り込んでくる。熱く潤んだそこを、くちくちと押し広げられて、文彰は見悶えた。
「おお、天外、上手いな、上手い。その調子だ」
「……」
「お兄ちゃんはじっくり解されるのが好きなんだよぉ……ふみちゃぁん」
頭を撫でられて、文彰は舌を熱心に動かした。天外にはえずくほど、イラマチオさせられたが、章太郎には実技で教えられてきた。
口の中でまた張り詰める男根。早く入れて欲しくて、腰を動かした。そうすると、弟の指が擦って欲しいところに当たる。
止まらなくなって、文彰はかくかく腰を揺らしていた。
「天外、お兄ちゃんが欲しがってるぞ。入れてやりなさい」
「……はい」
父親のペニスを咥える文彰に、天外の下半身も張り詰めていた。ベルトを外し、手早くチャックを下ろす。
弟に両足を掴まれて、文彰は期待で胸がはちきれそうになっていた。
「ふぅっ! ぅんっ、ふぅぅんっ」
「天外、お兄ちゃんはただ腰を突き上げるだけじゃダメなんだ。ゆっくりじらすように腰を使いなさい――おお、ふみ、ふみ」
ずちゅりとペニスが入ってくる瞬間、文彰は咥えた男根を無我夢中でしゃぶっていた。内壁を押し上げる弟の巨根と、口いっぱいに広がる父親のペニス。
体をくねらせて、文彰は家族を受け入れていた。
「天外、突けばいいんじゃない。お兄ちゃんの様子を見ながら、突き上げてやるんだ。ほら、肌がじんわり温かくなるだろう?」
「ぅんっ、ふううぅ!」
汗ばんだ肌に、父と弟の手が這いまわる。父親に乳首を弄られ、ずきりと重たい快楽が生まれる。きゅっと中で締め付けてしまい、腰を振る弟が呻き声を上げた。
「お、おにい、ちゃんっ……っ」
「奥をな、優しく突いてやるんだ。そうすればお兄ちゃんはずーっと、中イキしてるからなぁ……ふみぃ?」
「ふぅ、んぅっ」
父親の男根を根元まで咥えた頬を、撫でられる。先走りが口の中に広がると同時に、奥に律動を送り込まれる。
痺れが足の親指まで広がり、文彰は身悶えた。
「今日は記念日だ……新しい家族ができた日だぁ」
兄の上で、弟は髪を振り乱しながら腰を振っていた。ぱたぱたと汗が滴り落ちていく。文彰の肌が赤く染まるのを、章太郎は目を細めて鑑賞していた。
「天外、これから弟としてお兄ちゃんを守ってやるんだ……分かったな?」
腰を振る弟は、こくこくと頭を揺らす。章太郎は父親として、股間にある兄の頭を撫でてやった。
「ふみちゃぁん、パパと弟の言うことが絶対だ……家族だからな」
文彰は泣きながらくぐもった返事をした。もうすぐ父親は射精が近いから、次は弟かもしれない。何本も男を咥え込める、一時の幸せに漬かる。
とりあえずこの場は収まったと、喜びから――文彰は家族の肉棒に、夢中になった。
(完)
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素敵な作品をありがとうございます!!