男子高校生ヒロサダの毎日極楽

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2018年上半期

学年主任

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 「週番前を~」
 2限が終了した頃、3限の現代文担当の先生がやって来た。前の授業の板書が残っていたため、週番に消すように呼びかけたのだ。
 現代文担当の先生は、ヒロサダ達の学年部の主任である“萩ノ宮奴紗幸はぎのみやどしゃこう”先生だ。
 萩ノ宮奴紗幸先生は、授業が始まる前は毎回「週番前を~」と呼びかけているため、9割9分9厘9毛9糸の生徒の間では“臭板真栄男シュウバンマエオ”と呼ばれている。
 また、教員の間では“醜蛮魔ヱ汚シュウバンマエオ”と呼ばれている。
 そんな中、ヒロサダは萩ノ宮奴紗幸先生のことを、親しみを込めて“おはぎ”と呼んでいる。
 この日の授業もいつも通り、おはぎ節が炸裂した現代文となった。分かりやすい授業をしてくれる数少ない先生であるため、ヒロサダは愛称で呼んでいるのだ。

 「しゅしゅしゅ週番前を~♪」
 チャイムが鳴り、授業が終わった。
 「週番前を~。じゃあ、今日の授業は週番前を~、ここまでに週番前を~、するからな週番前を~。それと週番前を~、ヒロサダ週番前を~。昼休みに週番前を~、職員室に週番前を~、来なさい週番前を~週番前を~週番前を~(フェードアウト)」
 萩ノ宮奴紗幸先生に呼出されたヒロサダは、昼食を食べる前に職員室へ行った。
 「失礼しますじゃ~。萩ノ宮奴紗幸先生はどちらにいらっしゃいますじゃか~?」
 「醜蛮魔ヱ汚先生ね。醜蛮先生は、この第1職員室じゃなくて、第8職員室に居るわ」
 古典担当のジェシー・ヘンダーソン先生が丁寧に教えてくれた。
 第1職員室から徒歩15分。ヒロサダは第8職員室に到着した。
 「失礼しますじゃ~。萩ノ宮奴紗幸先生はどちらにいらっしゃいますじゃか~?」
 「おおヒロサダ君。魔ヱ汚先生は、第27机軍の前から2列目、左から7列目の席にいるよ」
 給食担当の和田先生が雑に教えてくれた。
 第8職員室の入り口からセグウェイで5分。第27机軍の萩ノ宮奴紗幸先生の席に着いた。
 「週番前を~ヒロサダ、来たか週番前を~」
 深刻な顔をした萩ノ宮奴紗幸先生を前にして、ヒロサダは何かやらかしてしまったことがないか、必死に考えた。考えすぎて、鼻からマロニーが出てきた。
 「週番ヒロサダ前を~、お前週番前を~、私のことを週番前を~、なんと呼んでいる週番前を~?」
 ヒロサダは焦った。先生にニックネームをつけたのがばれてしまったのだ。しかしヒロサダは徹底して誤魔化すことにした。
 「なんのことですかな???ワシは先生のことをキムタ、、、萩ノ宮奴紗幸先生と呼んでいますじゃ~」
 「週番前を~………。ヒロサダ週番前を~、誤魔化さなくていいぞ週番前を~。お前が週番前を~、週番前を~私を、なんと呼んでいるかは週番前を~、眞名井から週番前を~、聞いたぞ週番マロニー」
 「ま、眞名井ちゅわ~んから!?」
 ヒロサダの隣の席の眞名井ちゃんは、あの短刀ドスアイスピックチェーンソー刀削麺トウショウメン包丁事件以来、ヒロサダに好意を抱いているのだ。そのため、萩ノ宮奴紗幸先生のことをヒロサダ同様に“おはぎ”と呼んでいたのだ。
 「せ、先生、すいませんじゃ~!実は、眞名井ちゅわ~んの言う通り、萩ノ宮奴紗幸先生のことを“おはぎ”と呼んでいましたじゃ………。この罰はなんでも受けますじゃ…………。」
 ヒロサダは罰を覚悟した。1時間漫画を読み続ける罰、職員室のドリンクバーを自由に使っていい罰、好きな先生からマッサージしてもらう罰。どんな罰でも受けると、肝に銘じたのだ。
 「はて週番前を~、罰週番前を~?何を週番前を~言っているんだ週番前を~。ワシは週番前を~、その週番前を~、“おはぎ”週番前を~、という愛称が週番前を~、気に入ったから週番前を~、これからは週番前を~、自分から週番前を~、“おはぎ”と週番前を~、名乗っていこうかと週番前を~、思っただけだ週番前を~。お前には週番前を~、こんないい愛称をつけてくれて週番前を~、感謝しようと思って呼んだのだ週番前を~週番前を~週番前を~」
 ヒロサダはホッとした。
 後にヒロサダの高校の歴史書「我が高校の伝説」に“21世紀の伝説”として掲載されるこの一件は、ヒロサダと萩ノ宮奴紗幸先生と眞名井ちゃん3人の絆が深くなるきっかけとなった。
 その日以降、萩ノ宮奴紗幸先生は[おはぎ]と書かれたネームプレートを首から吊り下げている。
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