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2018年上半期

マジック

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 ヒロサダは今人気のマジックショーを見に来ている。
 「このブブゼラ広場じゃな。おお、もうあんなに人が!」
 今人気のマジシャン“広瀬りん”のマジックショーなだけあって、北は朝鮮民主主義人民共和国から、南はスーダン共和国から、ライブビューイングを含め、のべ1万4千人がこのマジックショーを見ている。
 幸運なことに、ヒロサダが通う学校の隣の広場でショーが行われているので、現場で見ることができているのだ。
 「眞名井まないちゅわ~んも見に来れたらよかったのに、残念じゃなぁ。せめて平昌ピョンチャンでもライブビューイングがあればよかったのにのぉ」
 リュージュの強化合宿に行っている眞名井ちゃんを気遣う優しさを見せながらも、待ちに待ったショーが始まった。
 「レディースエーンジェントルメーン!ようこそ広瀬りんマジックショーへ!」
 大歓声とともにマジックショーは開幕した。ヒロサダも楽しみで楽しみで仕方がなかった。
 「まずは、瞬間移動をお見せします!」
 瞬間移動のマジックに観客はきあがった。4組の磯辺君、52組の伊部ノ小路いべのこうじちゃんも発狂している。
 「これだけかの!?!?」
 期待が大きかったヒロサダは、出鼻をくじかれたようだった。
 「次は、人体解体ショーです!!!!」
 怪しげな刃物とアシスタントが現れた。
 「うおーーーー!」
 「きゃーーーーーっっ!」
 悲鳴と歓声が飛び交う大盛り上がりの会場だが、一人ヒロサダは不満そうな顔をしている。
 「期待していたのに、これだけじゃったか~。これくらいならテレビで何回も見たことあるし、残念じゃのぉ~。もっと斬新ですごいと思えるようなパフォーマンスが見たかったのぉ」
 そう思いヒロサダは視線をステージから外し、ふと右どなりを向いた。そこには、指にみかんを刺した6組の川野ちゃんがいた。
 「み、み、み、みかんが浮いてるだ~!!!」
 驚き膝から崩れ落ちたヒロサダ。そこに
 「おいおい大丈夫か?」
 と48組の松村村まつむらそん君が親切に声をかけてくれた。
 「あ、ありがとうじゃ~。ちょっと腰が抜けただけじゃ。少し休めばよくなるじゃろう。ところで松村村君、何持ってるんじゃ???」
 「ああ、これかい。さっきカレー食べてたんだけど、お魚くわえたドラ猫追っかけて裸足でかけてく陽気な奥さんにとられちゃって。空腹と、奥さんに惚れそうな自分に怒ってスプーン折り曲げちゃった。」
 「ぎゃー!!!、スプーンが曲がってる!!!超能力じゃーーーー!」
 バタン。ヒロサダは驚きのあまり気絶した。
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