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2020年

ステイファーム6「ファーム長の拍車」

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 「おお、ちょうど今起こしに行こうと思ってたんだよ!!!」
 騒いでいる2人の乙女を連れて宿泊棟を出ようとしていたヒロサダは、宿泊棟の玄関でファーム長である皐月父に出会った。
 「あんたら3人だけってことは、香菜子まだ寝てるのかい???」
 「そ、そうなんですじゃよ~。やっぱり長時間の運転で疲れていたんだと思いますじゃ~」
 ヒロサダの話を聞きながら、3人の様子を舐め回す様に見ている皐月父。
 「なるほどなるほど。ほんで、昨夜はあんたと2人で一緒に寝たと。それでまだ寝ているんじゃないか~???」
 「!!や、やっぱりそうだったのね~!!!」
 「ヒロサダ君~!!!」
 皐月父の洞察眼と推理力はお見事だったが、肝心の部分は外れ、結果として2人の乙女をさらに興奮させることになってしまった。

 2人の乙女の肩を軽く叩きながら落ち着かせているヒロサダ。そんな3人に対し、皐月父は食堂で昼食を食べるよう誘ってきた。
 「そ、そういえばお腹空いてましたじゃ~!!!」
 「そうだろそうだろ!?今の時間だと、ウチのもん達は昼食済ませてるだろうから、食堂はお前さん達の貸切だぞ?」
 現在時刻は昼の12時31分。ファームの1日は朝が早いため、その分昼休みも一般的なものよりも早いのであった。
 「じゃ、じゃあワシら、食堂に行ってきますじゃ~!!!」 
 「おう!看板があるから、分かるはずだ!」
 そう言ってヒロサダは2人を引き連れて食堂へと走った。走れば会話する体力はなくなるだろうと思っていたヒロサダだったが、リュージュ強化選手を前に、その考えは甘かったとすぐに気付かされることになった。
 2人の乙女を落ち着かせるには、貸切の食堂での態度が重要となってくると理解しているヒロサダは、食堂で2人に対し取る行動を、あれこれと考えていた。


 「ふ~ん。あの姉ちゃん2人がライバルだと、香菜子もこりゃ大変だな……………」
 そんな3人の様子を遠い目で眺めていた皐月父。皐月先生を起こしに行くのはもう少し後にしようと思い、仕事に戻ったのだった。
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