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2020年
過去編!~学年主任、萩ノ宮奴紗幸先生1~
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これは過去の話。今回は学年主任の【おはぎ】こと、萩ノ宮奴紗幸先生の過去に迫っていく。
時は遡り数十年前。萩ノ宮奴紗幸先生がまだ高校教師になって数年のピカピカのルーキーだった頃。この物語はそんな5月の職員室での出来事。
「はぁ………。この職員室はなんてハエが多いんだ………」
そう。この鬱陶しがっている男が、まだ20代の萩ノ宮奴紗幸先生(以下:おはぎ)だ。
「ほぃっ!。ああ!、また逃げられた!!!」
無邪気にハエたたきを振り回す男、おはぎ。この時はまだ【週番前を~】が口癖ではないようだ。
ハエすら仕留めることができない己の無力さに歯がゆく思ったおはぎは、机の上のメモ用紙に【五月 蝿】と書いた。
余談だが、学校や職場でよく、「メモを取れ」といわれると思うが、これはおはぎこと萩ノ宮奴紗幸先生の影響なのだ。最初、メモを取る意味はこの時のおはぎのように、「歯がゆくてどうにもならないことを心に留め、この思いを一生忘れること無いようにするため」であったが、数十年の年月が過ぎ、萩ノ宮奴紗幸先生発祥ということが周知され、その偉大さから「重要なことを忘れないように」メモを取る。といった風に意味が変わってきたのだ。
時を数十年前に戻そう。【五月 蝿】とメモした時、教頭先生がおはぎのデスクにやって来た。
「萩ノ宮奴紗幸先生、稲田さんがすぐ来るそうです」
そう伝え、教頭先生は有休を取り早退した。
稲田さんとは、おはぎの昨年の教え子で、現在は大学生。おはぎの影響で現代文(日本語)を極めたいと思い、学んでいる。そんな彼女がおはぎに大学での現代文の勉強について相談しに来たのだ。
「稲田かぁ~。懐かしいなぁ」
2か月前に卒業したばかりなのに懐かしく思ったおはぎ。昨年の思い出に浸っていながら稲田さんを待っていたその時、
「萩ノ宮奴紗幸先生!!!緊急事態です!!!すぐに来て下さい!!!」
と、同じ学年部の先生がおはぎに助けを求める叫び声が聞こえた。
「緊急事態だって!?稲田がすぐ来るというのに………………。仕方ない、稲田には悪いが、先に緊急事態を解決しに行こう」
そう言っておはぎは、その旨を稲田さんに伝えるため、机の上のメモ用紙に急いで【いなだ まってろ】と書き残し、ダッシュで学年部の先生のもとへ向かった。
~数分後~
「おお稲田!待たせてすまなかった!!!」
緊急事態を解決したおはぎのデスクの元には、すでに到着した稲田さんが待っていた。
「お久しぶりです、萩ノ宮奴紗幸先生!!!」
稲田さんはおはぎの昨年の教え子の中でもずば抜けて優秀であり、アメリカ・イギリス・インドの有名大学に合格していながらも、高校時代に学んだおはぎの現代文に感動し、自分もおはぎのように現代文を極めたいと思い、日本の大学に留まったのだ。
高校時代の話や大学での勉強、おはぎの自分史等、話が弾んでいた時、
「ところで、机の上のそのメモ、一体何ですか????」
【五月 蝿 いなだ まってろ】
走り書きしたメモが稲田さんの目に留まった。
「五月蝿ってなんですか????五月雨とか、五月晴れとか、そういう類の言葉ですか!?」おはぎを尊敬してやまない稲田さんは、目を輝かせて尋ねた。
「こ、これはだな………………」
稲田さんの前で、『これはだな~、職員室の中でハエが鬱陶しかったんだ~。ハッハッハ~』と、答えるのは、さすがに威厳を失うかと思ったおはぎは、とっさに、
「【五月蝿】で区切るのではなく、【五月蝿い】で区切るんだ。そしてこのメモは、【五月蝿いな だまってろ】。そうすれば、おまえならこの【五月蝿い】の読み、分かるよな?」
「…………あ……もしかして、【うるさい】……ですか?」
「そう!その通り!!!【五月蝿い】と読むんだ!!!」
職員室中におはぎの声が響き渡った。
「さ、さすが萩ノ宮奴紗幸先生!!!………私の、現代文力の未熟さを、思い知りました………………」
おはぎとの現代文力の差を見せつけられた稲田さんの目には、光るものが見えていた。
「私を目指すのなら、道は険しいぞ!?」
「………………っ……、はいっ!。精進します!!!」
2人のやりとりの一部始終を見ていた職員室内の先生たちは、スタンディングオベーションで稲田さんの背中を後押しした。
見事にこの場を乗り切ったおはぎ。この出来事から3年後、稲田さんは日本屈指の現代文スペシャリストとなり、現代文学者として、新版の広辞苑作成のスタッフに史上最年少で招集されたのだが、その時に彼女によってこの【五月蝿い】の漢字表記が広辞苑に載り、今に至るのだ。
【五月蝿い】という漢字表記は、若かりしおはぎによって生み出されたものなのである。(諸説あり)
時は遡り数十年前。萩ノ宮奴紗幸先生がまだ高校教師になって数年のピカピカのルーキーだった頃。この物語はそんな5月の職員室での出来事。
「はぁ………。この職員室はなんてハエが多いんだ………」
そう。この鬱陶しがっている男が、まだ20代の萩ノ宮奴紗幸先生(以下:おはぎ)だ。
「ほぃっ!。ああ!、また逃げられた!!!」
無邪気にハエたたきを振り回す男、おはぎ。この時はまだ【週番前を~】が口癖ではないようだ。
ハエすら仕留めることができない己の無力さに歯がゆく思ったおはぎは、机の上のメモ用紙に【五月 蝿】と書いた。
余談だが、学校や職場でよく、「メモを取れ」といわれると思うが、これはおはぎこと萩ノ宮奴紗幸先生の影響なのだ。最初、メモを取る意味はこの時のおはぎのように、「歯がゆくてどうにもならないことを心に留め、この思いを一生忘れること無いようにするため」であったが、数十年の年月が過ぎ、萩ノ宮奴紗幸先生発祥ということが周知され、その偉大さから「重要なことを忘れないように」メモを取る。といった風に意味が変わってきたのだ。
時を数十年前に戻そう。【五月 蝿】とメモした時、教頭先生がおはぎのデスクにやって来た。
「萩ノ宮奴紗幸先生、稲田さんがすぐ来るそうです」
そう伝え、教頭先生は有休を取り早退した。
稲田さんとは、おはぎの昨年の教え子で、現在は大学生。おはぎの影響で現代文(日本語)を極めたいと思い、学んでいる。そんな彼女がおはぎに大学での現代文の勉強について相談しに来たのだ。
「稲田かぁ~。懐かしいなぁ」
2か月前に卒業したばかりなのに懐かしく思ったおはぎ。昨年の思い出に浸っていながら稲田さんを待っていたその時、
「萩ノ宮奴紗幸先生!!!緊急事態です!!!すぐに来て下さい!!!」
と、同じ学年部の先生がおはぎに助けを求める叫び声が聞こえた。
「緊急事態だって!?稲田がすぐ来るというのに………………。仕方ない、稲田には悪いが、先に緊急事態を解決しに行こう」
そう言っておはぎは、その旨を稲田さんに伝えるため、机の上のメモ用紙に急いで【いなだ まってろ】と書き残し、ダッシュで学年部の先生のもとへ向かった。
~数分後~
「おお稲田!待たせてすまなかった!!!」
緊急事態を解決したおはぎのデスクの元には、すでに到着した稲田さんが待っていた。
「お久しぶりです、萩ノ宮奴紗幸先生!!!」
稲田さんはおはぎの昨年の教え子の中でもずば抜けて優秀であり、アメリカ・イギリス・インドの有名大学に合格していながらも、高校時代に学んだおはぎの現代文に感動し、自分もおはぎのように現代文を極めたいと思い、日本の大学に留まったのだ。
高校時代の話や大学での勉強、おはぎの自分史等、話が弾んでいた時、
「ところで、机の上のそのメモ、一体何ですか????」
【五月 蝿 いなだ まってろ】
走り書きしたメモが稲田さんの目に留まった。
「五月蝿ってなんですか????五月雨とか、五月晴れとか、そういう類の言葉ですか!?」おはぎを尊敬してやまない稲田さんは、目を輝かせて尋ねた。
「こ、これはだな………………」
稲田さんの前で、『これはだな~、職員室の中でハエが鬱陶しかったんだ~。ハッハッハ~』と、答えるのは、さすがに威厳を失うかと思ったおはぎは、とっさに、
「【五月蝿】で区切るのではなく、【五月蝿い】で区切るんだ。そしてこのメモは、【五月蝿いな だまってろ】。そうすれば、おまえならこの【五月蝿い】の読み、分かるよな?」
「…………あ……もしかして、【うるさい】……ですか?」
「そう!その通り!!!【五月蝿い】と読むんだ!!!」
職員室中におはぎの声が響き渡った。
「さ、さすが萩ノ宮奴紗幸先生!!!………私の、現代文力の未熟さを、思い知りました………………」
おはぎとの現代文力の差を見せつけられた稲田さんの目には、光るものが見えていた。
「私を目指すのなら、道は険しいぞ!?」
「………………っ……、はいっ!。精進します!!!」
2人のやりとりの一部始終を見ていた職員室内の先生たちは、スタンディングオベーションで稲田さんの背中を後押しした。
見事にこの場を乗り切ったおはぎ。この出来事から3年後、稲田さんは日本屈指の現代文スペシャリストとなり、現代文学者として、新版の広辞苑作成のスタッフに史上最年少で招集されたのだが、その時に彼女によってこの【五月蝿い】の漢字表記が広辞苑に載り、今に至るのだ。
【五月蝿い】という漢字表記は、若かりしおはぎによって生み出されたものなのである。(諸説あり)
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