優しいおしごと。

鈴木トモヒロ

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第3話

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祖母の料理は絶品だった。

そして様々な料理が作れる人だった。

「今日は何が食べたい?」と聞かれ「ハンバーグが食べたい」と答えた。

次の日は「焼きそば」
そのまた次の日は「オムレツ」

まるで食堂がそこにあるみたいだった。

ある日、おやつに「ポップコーン」を作ってくれることになった。

ポップコーンなんて、初めて聞く言葉だったからワクワクした。

どんなふうに作るかみたくて、わがままを言って台所に入れてもらった。

「火を使うから、危ないので気をつけて」と注意を受けて、踏み台に乗って見学した。

踏み台に乗らないと見えなかったから。

ガスコンロの上に大きな金色の鍋が置かれ、青色の火がついていた。

ろうそくの火は赤いのに、ガスコンロの火は青かった。

ちょっと不思議に思った。

鍋に何かを入れて、何かを広げるように鍋を動かす祖母。

その後、黄色いものを入れて蓋をした。

しばらくすると
「ポンポン」と鍋の中で大きな音がした。

しだいに音が増えていく。

祖母が鍋をゆすると、さらに音が増した。

「こうやると、たくさん出来るよ」
幼い私に祖母は呟いた。

私も鍋をゆするのをお手伝いしようと思った。
たくさんゆすれば、ポップコーンがその分いっぱい出来ると思ったからだ。

鍋に向かって手を伸ばす私。

「危ない!」
と、祖母は叫んだ。

その瞬間、ゆすっていた鍋がガスコンロからズレ落ちた。

「熱すぎる!腕が鍋にくっついた!」
と私は大混乱、大泣きをしてしまった。

皮膚がめくれ、大火傷に。

もちろんポップコーンを食べる所ではない。

すぐに救急車が呼ばれ病院で手当てを受けた。

その時の火傷の跡は

欲を出したお手伝いは、ろくな結果にならない苦い思い出と

祖母との懐かしい出来事を思い出せる、ちょっと大切な跡として今も残っている。
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