40歳を過ぎても女性の手を繋いだことのない男性を私が守るのですか!?

鈴木トモヒロ

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私、2次元を求める人と出会っちゃった!

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「美味しいものが食べたいな。そう...ケバブが食べたい」

突然、何を思ったのか、ケバブが食べたいと言い出した60代男性。

私は驚いた。

「ケバブなんて、簡単に作れないよう」
おじちゃんに伝えると、

「ケバブは買って食べるに限る!誰かが作った、あったかいケバブを食べる時の至福の時。人の作った料理を食べるのは最高だ!」と嬉しそうに言っていた。

(ちょっと、何を言っているか分からないよ、おじちゃん)

ちなみに..。
(ケバブはどこで...買うの?)
と普通に思った。

おじちゃん曰く、発祥の地は秋葉原で、今も美味しいケバブ屋が店を出しているらしい。

何故だか分からないうちに
おじちゃんの代わりにケバブを買いに私が出かけることに。

そんなことがあり、私は今...秋葉原にいる。

正直、初めて来た。

普通に生きてきて、秋葉原に来る理由がなかったからだ。

駅前には可愛い女の子がメイドさんの服を着て男性に声をかけていた。

「ご主人様、宜しかったらお話ししませんか?」

凄いなぁ。
同じ女として尊敬してしまう。

(それにしても、メイド服が似合う女の人だったなぁ。)

(私が男だったら、あんな風に声をかけられたら、きっとメイドカフェに行っちゃうんだろうなぁ...。)

さらに、駅前で印象的だったのが、早歩きで周りには目もくれず、真っ直ぐ前を見つめ、颯爽と進んでいる人がたくさんいた。

ちょっとカッコ良くも見えたけど...
一体どこに行くんだろう?

(さて、ケバブ屋はどこにあるんだろう?)

スマホを片手に街を歩く。
私はキョロキョロしながら歩いていた。

それにしても。平日の午前中なのに、本当に人が多い。

驚いたのが、外国の方々も沢山いて...
秋葉原は観光地なんだ...。

そう思いながら歩いていると...
遠くに見える男性に、ザワザワした影が近づいて行くのが見えた。

(あっ、あれは...もしかして...)

予感は的中した。
次の瞬間、男性は手にしていた荷物を落としてしまった。

「あぁっ!今買ったばかりなのに!限定のフィギュア!!〇〇ちゃん!無事かい??」と落としたものを拾い上げた。

「ダメだ~!凹んでる。〇〇ちゃんが怪我をした!!畜生!」と大きな声で叫び出した。

ザワザワした影は知らず知らず無くなっていた。

私はとっさに男性に声をかけた。
「大丈夫ですか?」

男性は
「うん?なんだ君は...も、もしかして、僕に気があるのかい?ざ、残念だが僕の心は〇〇ちゃん一筋だから、諦めたまえ!」と返答した。

(な、何を言っているんだ...この人は...)
(き、気持ち悪い)

「い、いぇ、大きな声を出して...何か困ってそうだったので...」

私にしか見えない、ザワザワ影の被害にあった人だったから、ちょっと気の毒になって声をかけただけだった。

へんな気を使って声をかけたこと。
後悔することになるとは、今の私には分からなかった。

男性は
「そ、そうなんだよ。〇〇ちゃんが怪我をした。見てくれたまえ。ここがへっこんで可愛い顔が台無しだよ」と続けた。

箱には中身の人形のポーズ姿が載っていた。

ちょうど顔の所が凹んだようだ。

「あぁ、〇〇ちゃん。早く帰って怪我を治そう」

(えっと...気持ち悪い。早く立ち去ろう)
「そうでしたか、どうぞお大事に」

私はその場を立ち去った。

「待ちたまえ!」
と、男性は私を呼び止める。

「君は〇〇ちゃんに似た匂いがする。これも一つの縁かもしれないぞ!」
と言い出した。

(嫌だ!本当に気持ち悪い)

「いえ、本当に急いでいるので...」

「安心したまえ、僕は〇〇ちゃん一筋40年。間違いは起こさない。だから、君をモデルとして写真を撮らせて欲しい」

(何なの?全てが間違っている。話しかけなければ良かった)

その瞬間、ザワザワ影が横切った。

(えっ?)
私は影の向かった方を向いた。

男性も私につられて、同じ方向を向いた。

その先には、ここにいる男性が持っている(〇〇ちゃんが入っている)紙袋を持つ、別の男性が歩いていた。

別の男性に影が近づいていく。

(あっ、危ない)
私はとっさに叫んだ。

やっぱり...
別の男性が手にしている紙袋が切れたのだ。

荷物がゆっくりと地面に落ち...

その時、私に言い寄っていた男性が「怪我をしたという〇〇ちゃん」を地面に滑らすように投げた。

運良く〇〇ちゃんの上に落ちた、別の男性の荷物。
事なきを得たようだ。

別の男性は
「貴方は命の恩人です。この〇〇ちゃんに何かあったら...」

(ああっ...やっぱり...)
男性の荷物も〇〇ちゃんだった。

私に言い寄っていた男性は
「限定〇〇ちゃんが見えたんだ。僕の悲劇は起こして欲しくなかったんだ。無事でよかった」
といい、自分の〇〇ちゃんを拾い上げた。

何か、この男性2人にスポットライトが当たっているように見えた。

「さて、待たせたね。さっきの続きだ。これから君の写真を撮影させて欲しい」

(ちょっとカッコ良く見えたのに台無し)
私は「そんなに積極的に私に話が出来るなら、〇〇ちゃんのような女の子を見つけてアプローチしたらいいんじゃないですか?」と怒りを表した。

「な、なんだと...」
私に言い寄って来た男性は戸惑いを見せた。

そこに、
「ちょっといいですか?」と救われた男性が会話に入ってきた。

「実は〇〇ちゃんにクリソツな子がそこにいるんです」と、カフェを指さした。

「僕はこれから行くのですが、命の恩人であるアナタでしたら、喜んで案内しますよ!」と私に言い寄って来た男性を誘った。

「なんですと!〇〇ちゃんがいるのかい!君は素晴らしい!是非行こう!」と、凄い勢いでカフェに向かった。

私にとって嵐が去った瞬間だった。

何かが間違っている。

でも、それでも一筋の愛を貫く人は時にちょっとカッコ良く見える瞬間があるのかも?
と思った。

カフェに向かう男性たちに、ザワザワ影が現れ近づいていく。

(あっ)と、私は思った。

しかし、次の瞬間、影が2人の男性から離れていった。

分からかったけど、もしかしたら、誰かと繋がりを持てたり、強く前向きに進んでいるときは影は近づかないのかもしれないな。

私は急いでケバブを買いに店を目指すことにした。

(次にこの街に来るときは...色々と気をつけよう...)

私は心に誓った。
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