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暁 星が宿り、縁が交わる
激痛伴う成長
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目覚めは激痛と共にあった。
「あ゛ぁ……」
痛みで声が掠れる。フェオドラはなにこれなにこれと疑問しか浮かばない。目には涙が溜まり、誰か、トゥーラ様、助けてとはくはくと息を吐き出す。あの家でボロボロになるまで魔法をぶつけられたり、蹴られたりして全身が痛いという事もあったけれど、今回のは体の中でミシミシいっている気がしていた。
「フェオドラ、入るぞ」
痛みで涙を零しているとインナからフェオドラ様が苦しそうなのですと報告があり、アルトゥールが部屋へ飛び込んできた。フェオドラの部屋にはインナが起こしに来てくれていたのだが痛みが勝り、その存在に気づいていなかった。
「とぅーら、しゃま」
「大丈夫か、フェオドラ」
アルトゥールの言葉にふるふると首を振るフェオドラは痛いと小さな声で訴える。
「何処が痛い?」
「ぜんぶ」
「全身が痛いのか」
「ん」
心配そうなレッドベリルの目に優しく触れる大きな手。あぁ、なんて幸せなんだろう、きっと幸せすぎたから罰が当たってしまったのかもしれないとフェオドラはそう思いながら、目を細める。激痛の中にチリリと小さな痛みがあった気がしたが、フェオドラが口を開こうとした時にはそれはなくなっていたうえ、全身の痛みも緩和されていた。
「トゥーラ様」
「疲れが出たんだろう。もう少し休んでおけ」
優しく頭を撫でられるとふわふわと気持ちよくなってフェオドラは眠りへと落ちていった。
すぅすぅと立て始めた寝息を聞いて、アルトゥールはフェオドラの手をとる。指の腹で撫でるその手は子供らしかったぷくっとしていた手はすらりと細い指に、大人の手になりつつあった。
「インナ」
「はい、なんでしょう」
「フェオドラのネグリジェをもう少し大きめの、母上やジーニャくらいのサイズに変えてやってくれ」
「……かしこまりました」
「医者も呼んでおく。今は痛みを麻痺させているから大丈夫だろうが、後々また痛くなると思われる」
対応は頼んだと言ってインナの返事を待たずして退出したアルトゥールにインナはドアに向かって了承を込めて礼をした。それからすぐにインナは大きめのサイズのネグリジェを取り寄せ、他のメイドに協力してもらいつつ、着替えをさせる。
「……成長されてる?」
ガリガリだった体を見て、皆があれやこれやと食事やおやつを与え、子供特有のぷくぷくした体になったつい最近。盛大に別邸の使用人一同で達成をお祝いしたからインナもよく覚えている。
それが今はどうだろうか。ぷくぷくだった体はほっそりとそれでいて出るところは出ているという女性らしい体つきになりつつあった。そして、更には身長が明らかに伸びている。
普通の女性よりも身長があるだろうか、急激にここまで成長したのなら激痛はあってしかるべきだ。そして、内部からの激痛は想像を絶するものだろう。
「旦那様に報告しなくてはいけないわね」
奥様には旦那様経由で報告してもらいましょうと心の中で決める。彼女に直接報告した際は恐らくヴェーラは夫の制止を振り切ってうきうきとドレスや服を作らせるに違いない。なので、彼女への報告は夫であるヴィークトルに任せるのがいい。頑張って防波堤を担ってもらおう。
「目下の問題はアルトゥール様ね」
いい主人であるのは認めるがフェオドラに関しては眉を顰めてしまう。昨日までのように気軽に部屋に入られないようにしなければならない。アルトゥールがフェオドラを襲うことはないだろうが人間何をするかわからないものだ。最大限、警戒していてもいいだろう。
「……マルク様に協力を要請しておきましょう」
アルトゥールにも強い執事長ならば、フェオドラの貞操も守ることができるはずだと頭のメモ帳にでかでかとメモをしておく。
「……んー」
痛みが麻痺しているおかげかフェオドラはむにゃむにゃと言って決意を新たにしているインナの側で寝返りをうっていた。
「健康体そのものですな」
到着した主治医はすよすよと眠るフェオドラを診断すると痛みは急激な成長によるものであると断じ、そう答えた。問題は傷み程度なので、それに対しては鎮痛剤が処方された。
「なぜ、このような急激な成長を?」
「ふーむ、申し訳ないがその点は私ではわかりませんな」
龍の血の濃さが関係しているのであれば、その専門家に尋ねるのがよろしいかとと知っている数人の専門家の名を挙げる。
「アルトゥール様にお伝えしておきます」
「それでお願い致します。あぁ、それから、治癒をきちんとされておられるようですが、それはどなたが?」
妹であるジナイーダが行ったといえば、主治医は渋い顔をする。できれば、専門のものに頼んで欲しかったと零し、今回の成長の件もあるため今後は週に一度は医師の診断を受けるようにと指示をする。
「お伝えしておきます」
「えぇ、よろしくお願いします」
あらかた、健康状態をカルテに書き終えた主治医は次はいついつ参りますので伝えると何度もお忘れなきようと言って帰っていった。
その夜、報告を受けたアルトゥールは嫌そうな顔をし、診察に関して渋ったもののマルクの説得に渋々ではあったものの頷くのだった。
「あ゛ぁ……」
痛みで声が掠れる。フェオドラはなにこれなにこれと疑問しか浮かばない。目には涙が溜まり、誰か、トゥーラ様、助けてとはくはくと息を吐き出す。あの家でボロボロになるまで魔法をぶつけられたり、蹴られたりして全身が痛いという事もあったけれど、今回のは体の中でミシミシいっている気がしていた。
「フェオドラ、入るぞ」
痛みで涙を零しているとインナからフェオドラ様が苦しそうなのですと報告があり、アルトゥールが部屋へ飛び込んできた。フェオドラの部屋にはインナが起こしに来てくれていたのだが痛みが勝り、その存在に気づいていなかった。
「とぅーら、しゃま」
「大丈夫か、フェオドラ」
アルトゥールの言葉にふるふると首を振るフェオドラは痛いと小さな声で訴える。
「何処が痛い?」
「ぜんぶ」
「全身が痛いのか」
「ん」
心配そうなレッドベリルの目に優しく触れる大きな手。あぁ、なんて幸せなんだろう、きっと幸せすぎたから罰が当たってしまったのかもしれないとフェオドラはそう思いながら、目を細める。激痛の中にチリリと小さな痛みがあった気がしたが、フェオドラが口を開こうとした時にはそれはなくなっていたうえ、全身の痛みも緩和されていた。
「トゥーラ様」
「疲れが出たんだろう。もう少し休んでおけ」
優しく頭を撫でられるとふわふわと気持ちよくなってフェオドラは眠りへと落ちていった。
すぅすぅと立て始めた寝息を聞いて、アルトゥールはフェオドラの手をとる。指の腹で撫でるその手は子供らしかったぷくっとしていた手はすらりと細い指に、大人の手になりつつあった。
「インナ」
「はい、なんでしょう」
「フェオドラのネグリジェをもう少し大きめの、母上やジーニャくらいのサイズに変えてやってくれ」
「……かしこまりました」
「医者も呼んでおく。今は痛みを麻痺させているから大丈夫だろうが、後々また痛くなると思われる」
対応は頼んだと言ってインナの返事を待たずして退出したアルトゥールにインナはドアに向かって了承を込めて礼をした。それからすぐにインナは大きめのサイズのネグリジェを取り寄せ、他のメイドに協力してもらいつつ、着替えをさせる。
「……成長されてる?」
ガリガリだった体を見て、皆があれやこれやと食事やおやつを与え、子供特有のぷくぷくした体になったつい最近。盛大に別邸の使用人一同で達成をお祝いしたからインナもよく覚えている。
それが今はどうだろうか。ぷくぷくだった体はほっそりとそれでいて出るところは出ているという女性らしい体つきになりつつあった。そして、更には身長が明らかに伸びている。
普通の女性よりも身長があるだろうか、急激にここまで成長したのなら激痛はあってしかるべきだ。そして、内部からの激痛は想像を絶するものだろう。
「旦那様に報告しなくてはいけないわね」
奥様には旦那様経由で報告してもらいましょうと心の中で決める。彼女に直接報告した際は恐らくヴェーラは夫の制止を振り切ってうきうきとドレスや服を作らせるに違いない。なので、彼女への報告は夫であるヴィークトルに任せるのがいい。頑張って防波堤を担ってもらおう。
「目下の問題はアルトゥール様ね」
いい主人であるのは認めるがフェオドラに関しては眉を顰めてしまう。昨日までのように気軽に部屋に入られないようにしなければならない。アルトゥールがフェオドラを襲うことはないだろうが人間何をするかわからないものだ。最大限、警戒していてもいいだろう。
「……マルク様に協力を要請しておきましょう」
アルトゥールにも強い執事長ならば、フェオドラの貞操も守ることができるはずだと頭のメモ帳にでかでかとメモをしておく。
「……んー」
痛みが麻痺しているおかげかフェオドラはむにゃむにゃと言って決意を新たにしているインナの側で寝返りをうっていた。
「健康体そのものですな」
到着した主治医はすよすよと眠るフェオドラを診断すると痛みは急激な成長によるものであると断じ、そう答えた。問題は傷み程度なので、それに対しては鎮痛剤が処方された。
「なぜ、このような急激な成長を?」
「ふーむ、申し訳ないがその点は私ではわかりませんな」
龍の血の濃さが関係しているのであれば、その専門家に尋ねるのがよろしいかとと知っている数人の専門家の名を挙げる。
「アルトゥール様にお伝えしておきます」
「それでお願い致します。あぁ、それから、治癒をきちんとされておられるようですが、それはどなたが?」
妹であるジナイーダが行ったといえば、主治医は渋い顔をする。できれば、専門のものに頼んで欲しかったと零し、今回の成長の件もあるため今後は週に一度は医師の診断を受けるようにと指示をする。
「お伝えしておきます」
「えぇ、よろしくお願いします」
あらかた、健康状態をカルテに書き終えた主治医は次はいついつ参りますので伝えると何度もお忘れなきようと言って帰っていった。
その夜、報告を受けたアルトゥールは嫌そうな顔をし、診察に関して渋ったもののマルクの説得に渋々ではあったものの頷くのだった。
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