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暁 星が宿り、縁が交わる
別邸探索
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マルクは仕事が残っていることもあり、見習い執事であるドナートが代わりにつくことになった。フェオドラ、インナ、ドナートの三人で屋敷の中を巡る。
「こちらはアルトゥール様のお部屋になられます。若君がいらっしゃらないので入室はご遠慮ください」
フェオドラの隣の部屋はアルトゥールの部屋。その近くには浴室やトイレ。
「お部屋少ない」
「まぁ、若君がお一人でという事だったので、本邸よりも規模は小さくしているのですよ」
本邸よりも二階にある部屋が少ないと言えば、ドナートは苦笑いを浮かべながらフェオドラに説明する。本当の所はアルトゥールが結婚した際、夫婦で住み、ヴェーラとヴィークトルに二人でゆっくり過ごしてもらうためにというものだったが、流石にそれはフェオドラに伝えることはできない。
「それでは一階にも参りましょうか」
「ん」
階段を降りる際にはインナの手を借りて、ゆっくりと降りる。そして、下りた目の前にある部屋が書斎でその隣がサロンになっていると説明される。食堂はこちらですよと案内されながら入る。
「あら、その子がアルトゥール様のおっしゃられた子ですね」
「目に星があっていいな」
「髪が夜空のようで綺麗だわ」
「はわ、あわわわわ」
丁度、休憩していたのか食堂には数人の使用人たち。食堂に入ってきたフェオドラを囲ってしまった。慌てるフェオドラにインナが大丈夫ですよと落ち着かせ、ドナートがいきなり話しかけないと注意する。
「フェオドラ様、申し訳ありませんでした。アルトゥール様のご厚意で時間外は食堂を使用人の休憩室として利用しているのです」
規模を小さくしたことと本邸が近いという事もあって、別邸では休憩室を設けなかったそうだ。その代わりとして、食堂を利用しない時間は使用人たちの休憩室にと。覚えられなくても大丈夫ですのでと言って、偶々休憩中だった使用人たちをフェオドラに紹介する。それから、この屋敷には地下もあるのですよと配膳室から繋がる階段から地下へと降りる。
「こちらは厨房になります。あとは食料の備蓄とセラー。それから、在中使用人の部屋ですね」
夜間の見回りや緊急時の対応をする者が仕事したり、寝泊まりする部屋ですとドナートは説明する。そして、厨房の隣にも通路があって、そちらは外に上がる通路であると説明する。厨房では昼の仕込みなのかすでにいい匂いが漂っていた。
「おいちそう」
「お嬢様にうまいもの食べさせてあげますからね」
期待しててくださいと厨房の主はニッと笑って伝えてくる。ただ、少し怖かったのかフェオドラは後ろに引いてしまったが。
「さ、ここは熱も籠りますし、上に上がりましょう」
「あい」
「小サロンの方で、今後のお嬢様の生活についてご説明いたしますね」
よろしいでしょうかと尋ねられ、フェオドラはんと一頷きする。
そして、フェオドラが一階に戻り、小サロンに入るとテーブルには色とりどりのお菓子が用意されていた。
「どうぞ」
「ありあと」
椅子を引き、フェオドラに座ってもらうと、インナがキッチンワゴンを押して、戻ってくる。紅茶を入れ、フェオドラの前のテーブルに差し出す。
「飲みながら、食べながらで、大丈夫ですよ」
「いんあとろなーとは、すわらないの?」
「はい、私どもは使用人でございますので。基本的にはお席をご一緒することはできません。ですが、お気遣いありがとうございます」
むぅと膨れたフェオドラにドナートはくすりと笑みを浮かべ、礼を告げる。あまり納得できてなさそうなフェオドラだったが、どうにも座ってくれなさそうだなとわかるとインナが取り分けてくれた一口サイズのお菓子を口に放り込んだ。
「~~ッ」
目を大きく見開いて足をパタパタさせるフェオドラ。喉に詰まらせたのではと慌てるインナとドナート。しかし、口の中がすっきりしたフェオドラは開口一番になにこえ、おいちいと目を輝かせた。
「お口にお会いしたようでようございました」
先程の慌てようをスッと仕舞い、何事もなかったかのように対応するドナート。インナもホッとしたようで、お菓子は逃げないのでゆっくり味わってくださいとフェオドラに声をかける。
それから、程なくしてドナートはフェオドラに今後の説明をする。
まずは言葉と文字の勉強。それから、体力作りを主とすること。進歩によって、マナーや基礎知識、魔法学の勉強へと移行していく旨を伝える。
「れきることふえる?」
「えぇ、勿論、増えますとも。私どもと精一杯お手伝いさせていただきますので、頑張りましょう」
「ん、がんある」
「こちらはアルトゥール様のお部屋になられます。若君がいらっしゃらないので入室はご遠慮ください」
フェオドラの隣の部屋はアルトゥールの部屋。その近くには浴室やトイレ。
「お部屋少ない」
「まぁ、若君がお一人でという事だったので、本邸よりも規模は小さくしているのですよ」
本邸よりも二階にある部屋が少ないと言えば、ドナートは苦笑いを浮かべながらフェオドラに説明する。本当の所はアルトゥールが結婚した際、夫婦で住み、ヴェーラとヴィークトルに二人でゆっくり過ごしてもらうためにというものだったが、流石にそれはフェオドラに伝えることはできない。
「それでは一階にも参りましょうか」
「ん」
階段を降りる際にはインナの手を借りて、ゆっくりと降りる。そして、下りた目の前にある部屋が書斎でその隣がサロンになっていると説明される。食堂はこちらですよと案内されながら入る。
「あら、その子がアルトゥール様のおっしゃられた子ですね」
「目に星があっていいな」
「髪が夜空のようで綺麗だわ」
「はわ、あわわわわ」
丁度、休憩していたのか食堂には数人の使用人たち。食堂に入ってきたフェオドラを囲ってしまった。慌てるフェオドラにインナが大丈夫ですよと落ち着かせ、ドナートがいきなり話しかけないと注意する。
「フェオドラ様、申し訳ありませんでした。アルトゥール様のご厚意で時間外は食堂を使用人の休憩室として利用しているのです」
規模を小さくしたことと本邸が近いという事もあって、別邸では休憩室を設けなかったそうだ。その代わりとして、食堂を利用しない時間は使用人たちの休憩室にと。覚えられなくても大丈夫ですのでと言って、偶々休憩中だった使用人たちをフェオドラに紹介する。それから、この屋敷には地下もあるのですよと配膳室から繋がる階段から地下へと降りる。
「こちらは厨房になります。あとは食料の備蓄とセラー。それから、在中使用人の部屋ですね」
夜間の見回りや緊急時の対応をする者が仕事したり、寝泊まりする部屋ですとドナートは説明する。そして、厨房の隣にも通路があって、そちらは外に上がる通路であると説明する。厨房では昼の仕込みなのかすでにいい匂いが漂っていた。
「おいちそう」
「お嬢様にうまいもの食べさせてあげますからね」
期待しててくださいと厨房の主はニッと笑って伝えてくる。ただ、少し怖かったのかフェオドラは後ろに引いてしまったが。
「さ、ここは熱も籠りますし、上に上がりましょう」
「あい」
「小サロンの方で、今後のお嬢様の生活についてご説明いたしますね」
よろしいでしょうかと尋ねられ、フェオドラはんと一頷きする。
そして、フェオドラが一階に戻り、小サロンに入るとテーブルには色とりどりのお菓子が用意されていた。
「どうぞ」
「ありあと」
椅子を引き、フェオドラに座ってもらうと、インナがキッチンワゴンを押して、戻ってくる。紅茶を入れ、フェオドラの前のテーブルに差し出す。
「飲みながら、食べながらで、大丈夫ですよ」
「いんあとろなーとは、すわらないの?」
「はい、私どもは使用人でございますので。基本的にはお席をご一緒することはできません。ですが、お気遣いありがとうございます」
むぅと膨れたフェオドラにドナートはくすりと笑みを浮かべ、礼を告げる。あまり納得できてなさそうなフェオドラだったが、どうにも座ってくれなさそうだなとわかるとインナが取り分けてくれた一口サイズのお菓子を口に放り込んだ。
「~~ッ」
目を大きく見開いて足をパタパタさせるフェオドラ。喉に詰まらせたのではと慌てるインナとドナート。しかし、口の中がすっきりしたフェオドラは開口一番になにこえ、おいちいと目を輝かせた。
「お口にお会いしたようでようございました」
先程の慌てようをスッと仕舞い、何事もなかったかのように対応するドナート。インナもホッとしたようで、お菓子は逃げないのでゆっくり味わってくださいとフェオドラに声をかける。
それから、程なくしてドナートはフェオドラに今後の説明をする。
まずは言葉と文字の勉強。それから、体力作りを主とすること。進歩によって、マナーや基礎知識、魔法学の勉強へと移行していく旨を伝える。
「れきることふえる?」
「えぇ、勿論、増えますとも。私どもと精一杯お手伝いさせていただきますので、頑張りましょう」
「ん、がんある」
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