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87王都に邪神の使徒登場
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例の違和感を感じて俺は周りをきょろきょろ見回すと。
突然広場のど真ん中に巨大な魔法陣が現れた。
ゾクリ、と。広場の中心から感じる魔力を感じられない俺にも尋常ならざるものであることを感じる事ができた。
「......な、なんだこれ?」
「な、なんなんだこれは……なんなんだよ! この魔力は?」
観客たちの顔はおびえていた。彼らも目の前でおびただしい魔力が渦巻き、それが信じられない量であることを五感で感じているのだろう。
渦巻く未知の魔力は奔流し、魔力の圧が俺の処まで感じられてきた。
あれほど快晴だった空が突然暗くなり、広場の中心の魔法陣から黒い、どこまでもドス黒い巨大な魔物が出現する。
「…………」
魔物については散々学んだ。魔法の才能はなかったが、俺はかなり魔物には詳しい。だが、こんな魔物は記憶にない。
だが、直感的に、いや本能でわかる。
――この魔物は、桁外れだ。SSS災害級以上。
俺は、 超SSS災害級の化け物と対峙していた。
ボロボロになった親父はぽかんと口を開けて化け物を見ている。
「な、何故こんなところに災害級の魔物が? なんだ、これは?」
「いや、これ……親父、1000年前にこの王国を苦しめた邪神の使徒じゃないか?」
「なんだと? 邪神の使徒? いや、確かに文献と形が一致……」
考え込む親父、今は共闘すべきだろう。争っている場合じゃない。
「こ、こんな化け物と戦うなんて無理だぁ!」
「おい、こら! 親父、逃げるなぁ!」
親父は貴族の責務である災害級の魔物相手に逃げた。賢者の称号を持つにもかかわらず。
だが、邪神の使徒は、親父に向けて尻尾を振るう。
これは当たったな。多分、大ダメージだろう。
「ぽぽぽっぽぽぉ」
親父は訳のわからない悲鳴をあげながら空を飛んでいく。早々の退場だ。
そして、落ちた。観客席のど真ん中に落ちて、白目を剥いて倒れている。
死んではいないな、ならば放置だ。気がついたら、自分で治癒するだろう。
まあ、最初からあてにはしてなかったけど、やっぱりな。
しかし、一人で勝てる相手か?
「お、おい! なんだあの化け物!」
「賢者の奴、さっきから卑怯な手を、まさか賢者が……?」
「いや、まさかそれは……」
観客たちにどよめきが始まっていた。
突然現れた化け物、理解が追いつかないのだろう。彼らがとるべき道は一つ。
俺は観客席の方を見た。アリス、ルナ、シエナ、クロエちゃんと視線が合う。
「ガゴォォォォォォオオア!!」
その時、邪神の使徒は、その顎を開き、炎を煌めかせた。
まずい、直感的にわかる。
この化け物は、この広場の市民に向かって、あの炎を吐き出すつもりだ。
おそらく俺と同様魔法障壁はいとも簡単に破れるだろう。
そう思った俺は、慌てて符術言語を唱えた。
「ガァァァァァッァァアアア!!」
終末の化け物の顎から炎が激しく放たれた。誰かれかまわない無差別攻撃。炎を広い範囲に撒き散らすつもりだ。
「わ、わあああああああっ!!」
「助け――」
「ヤダ……!!」
観客たちが悲鳴をあげる。
幸い、炎のスピードは大したことは無い。だが、密集した人混みに炎など撒き散らされたら?
俺はギリギリ間に合った氷の符術を唱えた、少しアレンジを加えたものだ。
氷の壁が化け物の周りに出現する。通常の氷の符術に、生活魔法の防御魔法をアレンジしたものだ。冒険者が良く、炎属性の魔物相手に使っているヤツの応用だ。
「ノア・ユングリングが問う、彼はなんぞ?」
『我は氷、煌めく氷、未来への息吹となり、我が敵を凝固する者なり』
彼らはこのアレンジを魔法陣を読み解く訳でなく、ひたすら何度も試行錯誤で手に入れる。
「きゃあああああああ!」
「た、助けて!」
炎が観客たちを飲み込む寸前、氷の壁は完成した。
炎は丸く円筒形に作られた、氷の壁の中を走り回る。つまり、炎は化け物自身を襲う。
「どうにか時間は稼げそうだが……だが、いつまでもつのか……」
俺はこの化け物を鑑定のスキルで見た。
名前:邪神の使徒
才能:邪神の闇
スキル:爆炎のブレス、闇の波動
どうも、闇属性で、炎と闇の攻撃スキルを持つようだ。
とりあえず怖いのは、爆炎のブレスか?
俺は武術言語を唱えた。
『我が剣は無限なり。我が剣は輝く閃光、我が剣に勝るものなし! 』
そして宙より現れた剣を抜くと、符術の氷属性を剣に付与する。そして、防御魔法からあふれてくる炎を切り裂いていく。氷の付与魔法の効果によって、周囲の炎も消し止める。
「えっ……?」
「炎が、消えた……」
「まさか、あのハズレスキルが? 俺たちを守ってくれたのか……?」
そしてざっと炎を消し去った俺は、観客に向けて大きく叫んだ。
「早く逃げろ! こいつは――俺が倒す!!」
「う、嘘! あのハズレスキル、か、かっこいい……」
「真の賢者か……?」
観客たちがなんか俺のこと真の賢者だとかなんだとか。
本物の賢者はあっちでのびている親父の方だと思うのだが。
突然広場のど真ん中に巨大な魔法陣が現れた。
ゾクリ、と。広場の中心から感じる魔力を感じられない俺にも尋常ならざるものであることを感じる事ができた。
「......な、なんだこれ?」
「な、なんなんだこれは……なんなんだよ! この魔力は?」
観客たちの顔はおびえていた。彼らも目の前でおびただしい魔力が渦巻き、それが信じられない量であることを五感で感じているのだろう。
渦巻く未知の魔力は奔流し、魔力の圧が俺の処まで感じられてきた。
あれほど快晴だった空が突然暗くなり、広場の中心の魔法陣から黒い、どこまでもドス黒い巨大な魔物が出現する。
「…………」
魔物については散々学んだ。魔法の才能はなかったが、俺はかなり魔物には詳しい。だが、こんな魔物は記憶にない。
だが、直感的に、いや本能でわかる。
――この魔物は、桁外れだ。SSS災害級以上。
俺は、 超SSS災害級の化け物と対峙していた。
ボロボロになった親父はぽかんと口を開けて化け物を見ている。
「な、何故こんなところに災害級の魔物が? なんだ、これは?」
「いや、これ……親父、1000年前にこの王国を苦しめた邪神の使徒じゃないか?」
「なんだと? 邪神の使徒? いや、確かに文献と形が一致……」
考え込む親父、今は共闘すべきだろう。争っている場合じゃない。
「こ、こんな化け物と戦うなんて無理だぁ!」
「おい、こら! 親父、逃げるなぁ!」
親父は貴族の責務である災害級の魔物相手に逃げた。賢者の称号を持つにもかかわらず。
だが、邪神の使徒は、親父に向けて尻尾を振るう。
これは当たったな。多分、大ダメージだろう。
「ぽぽぽっぽぽぉ」
親父は訳のわからない悲鳴をあげながら空を飛んでいく。早々の退場だ。
そして、落ちた。観客席のど真ん中に落ちて、白目を剥いて倒れている。
死んではいないな、ならば放置だ。気がついたら、自分で治癒するだろう。
まあ、最初からあてにはしてなかったけど、やっぱりな。
しかし、一人で勝てる相手か?
「お、おい! なんだあの化け物!」
「賢者の奴、さっきから卑怯な手を、まさか賢者が……?」
「いや、まさかそれは……」
観客たちにどよめきが始まっていた。
突然現れた化け物、理解が追いつかないのだろう。彼らがとるべき道は一つ。
俺は観客席の方を見た。アリス、ルナ、シエナ、クロエちゃんと視線が合う。
「ガゴォォォォォォオオア!!」
その時、邪神の使徒は、その顎を開き、炎を煌めかせた。
まずい、直感的にわかる。
この化け物は、この広場の市民に向かって、あの炎を吐き出すつもりだ。
おそらく俺と同様魔法障壁はいとも簡単に破れるだろう。
そう思った俺は、慌てて符術言語を唱えた。
「ガァァァァァッァァアアア!!」
終末の化け物の顎から炎が激しく放たれた。誰かれかまわない無差別攻撃。炎を広い範囲に撒き散らすつもりだ。
「わ、わあああああああっ!!」
「助け――」
「ヤダ……!!」
観客たちが悲鳴をあげる。
幸い、炎のスピードは大したことは無い。だが、密集した人混みに炎など撒き散らされたら?
俺はギリギリ間に合った氷の符術を唱えた、少しアレンジを加えたものだ。
氷の壁が化け物の周りに出現する。通常の氷の符術に、生活魔法の防御魔法をアレンジしたものだ。冒険者が良く、炎属性の魔物相手に使っているヤツの応用だ。
「ノア・ユングリングが問う、彼はなんぞ?」
『我は氷、煌めく氷、未来への息吹となり、我が敵を凝固する者なり』
彼らはこのアレンジを魔法陣を読み解く訳でなく、ひたすら何度も試行錯誤で手に入れる。
「きゃあああああああ!」
「た、助けて!」
炎が観客たちを飲み込む寸前、氷の壁は完成した。
炎は丸く円筒形に作られた、氷の壁の中を走り回る。つまり、炎は化け物自身を襲う。
「どうにか時間は稼げそうだが……だが、いつまでもつのか……」
俺はこの化け物を鑑定のスキルで見た。
名前:邪神の使徒
才能:邪神の闇
スキル:爆炎のブレス、闇の波動
どうも、闇属性で、炎と闇の攻撃スキルを持つようだ。
とりあえず怖いのは、爆炎のブレスか?
俺は武術言語を唱えた。
『我が剣は無限なり。我が剣は輝く閃光、我が剣に勝るものなし! 』
そして宙より現れた剣を抜くと、符術の氷属性を剣に付与する。そして、防御魔法からあふれてくる炎を切り裂いていく。氷の付与魔法の効果によって、周囲の炎も消し止める。
「えっ……?」
「炎が、消えた……」
「まさか、あのハズレスキルが? 俺たちを守ってくれたのか……?」
そしてざっと炎を消し去った俺は、観客に向けて大きく叫んだ。
「早く逃げろ! こいつは――俺が倒す!!」
「う、嘘! あのハズレスキル、か、かっこいい……」
「真の賢者か……?」
観客たちがなんか俺のこと真の賢者だとかなんだとか。
本物の賢者はあっちでのびている親父の方だと思うのだが。
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