俺は空気が読める~魔力0の無能と馬鹿にされてダンジョンに追放された俺、実は災害級のスキルがぶっ壊れていて世界最強にして唯一の剣士になる~

島風

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81親父との決闘〜こいつどんだけ卑怯?~

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――王都の中央広場。   

その日の王都は初夏の空が青く澄んで絹のように光る快晴だった。  

中央広場。広場の中央には多くの民が見物の為に集まっていた。  

「こりゃ……すごい人だな」  

賢者レオの相手がかつての我が子。理由が不肖の息子に対する憤りのためとなると市民の好奇心は当然だろう。多分、工作済みで俺がリリーを強姦し、殺害したことは大きく喧伝されていた。いや、俺は無実だが裁判ではそれが真実だとされている。おそらく徹底的に悪者に落とされているだろう。  

まあ、本当の決闘の目的は最近地に落ちている賢者レオの汚名返上。領地経営で暴露してしまった無能ぶりを魔法の力を見せつけて、市民に力をアピールして取返したいのだろう。  

そして残念ながら市民の大半は父の思惑通り、賢者である父の味方のようだった。  

「賢者様! 頑張ってくださいー!」  

「強姦魔になんかに負けないでくださいー!」  

「こんなクズなんかぶっ飛ばしてー!」  

……まあ、王都は親父のホームグラウンド。これまでの親父の功績がある程度伺いしれる。もっとも天から授かっただけの才能で何の努力もなく魔物を倒してきただけなんだが。  

それにユングリング家の領やアシュフォード領なら声援は逆転していると思う。  

まるで悪役のような扱いに閉口するが、それは割り切ってと、思っていると。  

「ノア君、負けたらだめだよ!」  

「ご主人様頑張ってーっ!」 

「ノア様、勝つのです!」  

「お兄ちゃん、勝ったらクロエがいい事したげるね♪」 

「!?」  

アリス、ルナ、シエナそれにクロエちゃんの声が聞こえる。そうだった、今の俺は一人じゃない。仲間がいる。  

更に。  

「ノア様! 御武運を!」  

「我ら猫耳族はあなたの味方です!」  

「ノア様! 我ら聖剣教全員ノア様のために参じました」  

「聖剣教のみんな! 真の勇者様であるルナ様のために応援するゆ」  

 リナちゃん、俺の頑張りより聖剣教の勇者になったルナの方が重要なのかな? 

俺、あの7才児に騙された? 

あと、クロエちゃんは黙っていて欲しい。俺が社会的に死ぬだろう。 

気圧されていた俺はとても心強い声援に送り出されて、闘技会場に足を進めた。  

 意外だがとんでもなく人数は多い。 

日差しが暑い。そして眩しい光の下に佇む俺の親父。それは今ではまったく眩しい存在ではなかった。  

「よく来たな。逃げなかったことは褒めてやろう。お前にしては上出来だ」  

相変わらずの上から目線。ただ何もしないで授かった才能がそんなに偉いのか? 俺にとって尊敬の対象は才能がなくとも、努力や知恵でなすべきことを成していたエーリヒやベルンハルト。そして、強力な才能を持つも、それに驕らず領民のことを大切に扱う養父アーサーさん。  

育ての父じゃない。この父は軽蔑の対象でしかない。  

俺もそこそこ強くなった。賢者相手でもそれなりの闘いはできると思う。  

正直、こんな茶番、俺には勝っても、負けてもメリットがない。  

ただ、王族であるカール殿下の手前やるしかないのだ。全部親父の裏工作だろう。  

「お手を柔らかに頼む。親父の魔法が強力なことは知っている」  

「初めて褒めてやろう。惨めに負けることがわかっていて対戦することにな」  

生まれて初めての褒めてもらった言葉。それがこれか、耳障りでしかなかった。  

観客席の貴賓席に目を向けると、第一王子カール殿下、そしてほんとに王女だったらしいシエナがいた。  

いや、王女は中二病の名残だったらどうしようと思ってたけど、マジでビックリした。 

しかし、俺は広場の片隅に白いローブを着た男達を捉え、愕然とする。  

あれはおそらく支援魔法職の一団。以前実家に出入りしているのを見たことがある。  

親父が国王からの勅命で災害級の魔物を倒す際に同行する支援専門要員だ。 

体力回復、魔力回復、そして魔力のブースト。 

どんなけ卑怯?  

「最後に言い残すことはあるか? クズとはいえ、最後の言葉くらい拾ってやろう」  

「…………」  

そこまでするか? 俺は怒りに打ち震えていた。
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