俺は空気が読める~魔力0の無能と馬鹿にされてダンジョンに追放された俺、実は災害級のスキルがぶっ壊れていて世界最強にして唯一の剣士になる~

島風

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76俺が英雄に祭り上げられる

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「__ご、ご主人様」 

「__ノア様」 

俺は怒りのあまり、リナちゃんの存在を忘れていた。 

「ノア様、やり過ぎだと思うのです」 

「そうです。さっきのご主人様は怖かったのです」 

「__お、お兄ちゃん」 

リナちゃんの声聞こえる。そうだった。怒りのあまり、リナちゃんの存在を忘れていた。 

「リナちゃん。怖い思いをさせてごめん。それのルナ、シエナ。お前らの言いたいこともわかる。だけど__俺は目の前で初恋の人を穢されて、殺されてしまった。兄だったテオに」 

「ようやくわかったのです。ノア様の暗い、激しい黒い炎の正体が」 

「シエナ__がっかりしたか? 俺はそういう矮小な存在だ。認めるよ。お前の方が正しい人間だ。だが、俺は生き方を変えることはできない。もう、昔のノアはいないんだ」 

「いえ、事情はわかりました。わたくしはこれからもノア様について行きます」 

「__ありがとう」 

俺はシエナから赦しの言葉をもらって安堵する。自分を肯定してくれる存在は大きい。 

「ルナ、もし怖かったら、猫耳族に戻っていいんだぞ。俺のそばにいると危険だ。見ただろ? 俺の本性を?」 

「いえ、ルナは精進が足りませんでした! ルナは__ルナはノア様のペットです! ノア様を癒すのが私の務めです。これからもご主人様に愛されるペットを目指して頑張ります!」 

「ありがとう、ルナ」 

ルナは俺の心を癒してくれる。ペット願望はちょっと困るが、実際ルナは俺を癒してくれる。 

俺やシエナと違い、悪しき心を知らない純粋な女の子。 

だが、リナちゃんは俺のことが怖くなったかもな。 

「リナちゃん。俺はこんな男だ。だから二度とここには来ないよ。怖いだろ?」 

「ううん。お兄ちゃんはお父さんの命の恩人だゆ。ありがとう」 

リナちゃんは俺に向かって、頭をぺこりと下げる。 

「ねえ、ノア君? なんでみんなこんなに深刻な顔してるのかな? ノア君って優しいね。私だったら、全身を大根おろしで少しずつ確実におろすとか、たっぷり痛みを与えるのに」 

一人やべえヤツがいた。 

アリスはやべえ。いや、俺に人のこと言える筈もないけど、こいつおかし過ぎるよな? 

どうりで勇者いつきに封印された訳だ。 

だけど、アリスと離れたくないという気持ちは湧いて来る。 

ダンジョンでアリスがいなかったら、俺は死んでいただろう。あるいは人としてもっと闇の深い__それこそ冷酷な殺人鬼となっていたかもしれない。 

アリスは俺が見てないとな__何やらかすかわからん。 

「わ、私からもお礼を言わせてください」 

そう言って俺に礼を言ってくれたのはリナちゃんのお父さん、セオさんだ。 

「気にしないでくれ。むしろ俺からはあなたに謝りたい。あのテオは血は繋がりはないけど、仮にも俺の兄だった男だ。すまなかった」 

俺はセオさんに頭を下げた。 

「頭を上てください。あなたは私たちにとっては英雄です。あなたがいなければ私もリナも__そして何よりこの教団は悪しき組織としていずれ断罪されていたことでしょう。私はこの教団を必ず再生します。そして本当に人の心を救える教団にしたい。それが私の贖罪です」 

「教団の再生はお願いします。おそらくこの教団はユングリング家によってその存在を大きくねじられてしまったのでしょう。ユングリング家とのことは任せてください。俺は今はユングリング家、と言っても伯爵家の方ではなく、辺境伯の方の養子です。力になれると思います」 

「あ、ありがとうございます!」 

セオもまた、俺に深く頭を下げる。 

☆☆☆ 

セオさんや聖女リナちゃんたちが事態の収拾を図るが、やはり教会異端審問官やテンプル騎士団の者は多くを破門とするよりなかった。 

それでいいだろう。神を信心するものが殺人を厭わないなどあり得ない話だ。 

比較的新人たちだけが残り、最低限の備え__ユングリング家からの刺客などに備える。 

そして、セオさんと聖女リナちゃんが教会の広い礼拝堂に信者を集め、演説を行った。 

「みんな、聞いてくれ。私たちは騙されていた。私もその片棒を担がされていた。この教団は私たちを救ってなんてくれなかった。ただ金をむしり取り、金がなくなると奴隷として売られたり、貴族の慰みものになって、ただ殺されているだけだった」 

皆静かになった。彼らもおそらく半分気がついていたのだろう。 

セオは更に続ける。 

「だが、私は誓う。奴隷として売られてしまった者達は必ず取り戻す。そしてこの教団を再生し、我ら自身で心を救済しよう。救いは神にすがるだけでなく、自ら切り開くものだ。神は信じる者を救われる。だが、ただ信じるだけではだめなのだ!」 

「「「「お、おおおおおおおおおお!! セオ様!!」」」」 

どうやら、信仰の対象はセオさんに移ったのかもしれんな。 

「待て、私は神の代理人に過ぎない。そして、ここにいる聖女リナもそうだ。だが、我らには真の救世主様がおられる。紹介しよう」 

は? 何のことだ? 俺は嫌な予感がした。 

「みなさん。聖女のリナです。救世主を紹介するでゆ。救世主ノア様です」 

そう言うと、俺、全然聞いてないんだけど、魔法スポットライトが薄暗い礼拝堂の中の俺に当たる。 

「今、救世主が現れたゆ。だから、聖剣伝説を確かめる時が来たのでゆ。さあ、ノア様、聖剣を抜いてください」 

そう言って、リナちゃんが俺の方を見てから祭壇の方を見る。 

そこには光り輝く白を基調とした荘厳剣が岩に刺さっていた。 

勇者いつきが施した魔法により、適正がある者だけが抜ける聖剣。 

「さあ、英雄ノアさま。聖剣を抜いてください」 

リナちゃんが期待を込めた目で見てくれる。 

__抜けなかったらどうしてくれる? 

俺、意外と体裁気にする方だから、ここで聖剣抜けんとか恥ずかしいんだけど? 

俺は言われるがままに祭壇に向かって歩き、聖剣に手をかけた。 

__すると。 

抜けちゃった__________。 
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