幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風

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第60話 魔王討伐1

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「レオン殿! この魔族は我ら騎士団にお任せください!」

「頼む!」

元騎士団長の魔族は騎士団が受け持つことになった。

当然、魔王は俺達、虚数魔法使いパーティの担当だ。

イェスタがエクスカリバーを抜き放ち、エリスとアルべルティーナが剣を抜く。

「全く忌々しい虚数魔法使いめ! 勇者パーティは誤算だらけであったわ!」

俺の『ディスペル』の魔法で、隠ぺいとなりすましの魔法が解けて正体を現した魔王。

だが、誤算? 何のことだ?

「誤算? 誤算とは何のことだ?」

「そこの奴隷エリスじゃ! 適当に見繕わせた奴隷がよりにもよって、エリアスめの意中の人、そのもの! その奴隷にそっくりなアリシアを傍に配し、『魅了』の魔法を授けて堕ちて勇者の力を弱める作戦だったものを!」

「なるほど、それでエリスに変装の魔道具を渡したわけか?」

「その通りじゃ、途中までうまく行っておったものを! 勇者を堕とし、貴様は勇者パーティを追放されて死ぬ手筈じゃったものを、よりにもよって生き残るとはな!」

なるほど、勇者を堕とし、虚数魔法の俺はあのリリーという貴族の娘に殺されるのが、こいつの描いていたストーリーか?

「何故、アリシアとベアトリスを極刑にした? 二人はお前に脅威を与える存在ではなかったろう?」

「ははは、勇者エリアスと同様、お前を堕とすためじゃ。邪悪などす黒い霧に包まれた者なぞ、英雄にはなれん」

「それをやはりエリスに阻まれた訳か?」

「その通りじゃ! ええい、忌々しい奴隷が! たった一人の奴隷の女のために全てがぶち壊しじゃ!」

そう、俺がもし、どす黒い、あの霧に包まれて、勇者エリアスを殺してしまっていたら、今頃、俺は人殺し、しかも勇者殺しの大罪人となっていただろう。

それに真っ黒に染まった闇の心で、魔王討伐など、仲間がついて来てくれる筈もない。

「!?」

魔王は突然姿を変え、触手の先が刃となっているものを伸ばして俺のすぐそばをかすめた。

俺は思い知らされた。 

魔王城の魔族など、無意味と思わせるものの存在を。   

1000年前の悪夢の再来。そう、人類の敵。世界の破壊者――――。   

真の人類の敵――――それが魔王だと言うことに。 

「グアアアアアアア……!!」 

魔王は突然大声で叫んだ。それは人外の声だった。 

何を言っているのかわからない。ただ、異形の声だという事はわかった。 

魔族、それは人間や動物、いや、魔物とも違う異形の存在、魔族には生というものは感じられない。人も動物も、魔物でさえ、生きているという形をしている。だが、魔族だけは違う。魔族はその本性を曝出そうとしているのだ。  

「なんだ、これ……は?」   

俺は疑問の声をあげてしまった。魔族はその姿を変化させ、理解できない物体となっていった。それはスライム?…ぐにゃぐにゃの体に無数の触手が俺達の前に現れた。  

「レオン、それが、魔王の本当の姿ぞ!」  

アルべルティーナが教えてくれた。  

「レオン、気をつけて、嫌な予感がする。何なのあれ? っていうか、どうやって戦えばいいの?」  

「アルべルティーナ、俺もわからない。だけど――あれは、人類の敵だ。この世界から細胞の一片だって消し去ってやる」  

「レ、レオン様……怖いよ。お、お願い、無理はしないで……」 
 
魔王が話している途中で、突然魔法が発動する気配を感じた。俺に向かい、触手が襲う。しかし、俺は咄嗟にバックステップで逃げた。しかし、 

「なんだ、これは……?」  

目の前がクラクラする。

「さあ、虚数魔法使いよ。殺させてもらうぞ。魔眼の力……ワシの力を見るがいい」  

「魔眼だと?」  

魔眼……人を狂わす魔の眼差し、それをこの魔族は持っているのか? 

だが。 

「お前を必ず倒す! この世界は俺が守る……人を害する事でしか生きる事ができない存在など、存在を許さん。俺が絶対にな!」

魔族の本性であるスライムのような物体はうねうねと怪しく動き、そして、ときより触手で攻撃してくる。そして、スライムの中心に赤い目が赤く禍々しく光る。魔眼、俺を魅了する気だ。もし、魅了された者は例え愛するものでも殺してしまう。俺はエリスやアルべルティーナの首を自分で撥ねるシーンを思い描いて身震いする。そんなことは絶対に許さん!  

「さあ、人間よ。お前の親しい者、愛する者を殺せ。安心するがいい、お前が一番好きな女は未だ使い道があるから、今は殺さなくてもいい。もちろん使い終わったら、お前にも楽しませてやる。それに、もちろん最後はお前に殺させてやるから安心しろ」  

なんなのだ、この魔王は? 魔王の城で滅ぼした魔王の影武者は人間のような倫理感持っていたが、魔王はどこまでも邪悪だった。こんなヤツに負ける訳にはいかない。 

俺は『加速』のスキルで一瞬姿を消すと、魔王の触手を10個は剣で一閃した。  

「残念だな。俺に魔眼は効かない。魔眼の術式が展開される度にキャンセルさせてもらった。俺にゆっくり術式が展開する魔法の類は何も効かん!」  

「ならば!」  

魔王はたくさんの触手を俺に向けて襲い掛からせた。ギリギリギリ! 異音を奏でて襲い掛かってくる触手の刃はかなりの数だったが、俺の剣の腕前によってたちまち数十がブツブツっと切り裂かれる。しかし、それは戦術を間違えていたようだ。  

「くっ!?」  

「レオン様?」  

切り裂いた触手から毒々しい色の液体が飛び散り、その一部が俺の身体にかかった。すると、ジュワっという音と共に煙が上がり、俺の服が焼けただれてしまう。  

「毒液か? 魔物にそういう類のものもいるけど、おまえもまさにそうだったとはな!」  

「レオン様! 気を付けて!」  

「ああ、わかっているよ。エリス!」  

俺が斬りつけた触手は百にも及ぶのに、触手たちは分裂、再生を繰り返し、再び先ほどとほぼ変わらない数になる。少し位の斬撃では、大したダメージを与えられないようだ。敵の数が圧倒的であり、しかも下手に反撃すればこちらの方が甚大なダメージを負うことになる。俺はダメージを与える術がなく、回避に徹するしかない。だが、いつまでもこんなことを続けていれば、俺の体力が底をついた時が、俺の敗北の時となる。  

「それなら!!!!」   

俺の叫びと共にゴウッと唸りを上げて、右手に禍々しい魔力が渦巻く。それは、魔王をもってしても目を見開き、恐怖するしかないものだった。俺がありたけの虚無を集めると、俺の最恐の広範囲攻撃魔法『エグゾーダズ』を濃密に注ぎ込んだ、俺の最終兵器。  

「ソドムを滅ぼし  冥界の賢者よ!! 七つの鍵を持て 開け地獄の門!!! 全てを灰塵と化せ!! エグゾーダズ!!!!」  

魔王は、その攻撃が自身にとって危険であることは理解していただろう。だが、理解していてもそれを避ける術はなかった。俺の攻撃魔法はヤツに逃げる場所等与えない。周囲数十メートルがその影響範囲。だがヤツは少しでも防御する為だろう。触手が集まり、スライム状の本体の周りを棘で編んだ籠のような姿へと変わる。そして、魔力を駆使して、魔法壁を作り、防御態勢を必死に整える。そんなヤツを俺の魔法、『エグゾーダズ』の魔力の奔流が飲み込む。  

「人にしておくのは惜しいな……じゃが、この程度でワシを倒すことができると考えていたのであれば、あまりに甘いな」  

魔王の声の直後、ほの暗い虚無の光が消えてった後には、一切ダメージを受けていない魔王の姿があった。いや、少し位はダメージ受けていると信じたい、しかし、魔王はなお、そこに無傷であり続けていた。  

「なんだと……」  

そして、再び魔王が籠の姿と解き、無数の触手を伸ばすと、一つの触手の剣が無防備だった俺の身体を貫いていた。 
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