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第59話 王の正体
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俺とエリス、イェスタ、アルべルティーナの4人は王城の謁見の間の前室にいた。
国王からお褒めの言葉を頂戴するためだ。
魔王を仕留めた訳だから当然なのだろう。
だが、本当の目的は違うことを俺は既に知っている。
アリアの父、ドレスデン伯爵の力を借りて、宮中での裏工作を行った。
『国王の正体を暴いてやる』
そんなことを思っていると騎士の一人が案内をしてくれた。
「英雄レオン様、準備が整いました。さあ、謁見の間にお入り下さい」
「ありがとうございます。では、入ります」
「英雄レオン様をご案内できて光栄です!」
大げさな騎士は俺に敬礼すると、ドアを開けてくれた。
俺の後にはエリス、イェスタ、アルべルティーナが続く。
「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
俺が謁見の間に入ると大歓声が聞こえた。
騎士や官吏、そして王族、上級貴族達の歓迎の意だと気づいて躊躇うことを止めて国王の前まで敷き詰められた赤い絨毯の上を歩いて行く。
国王の前に来ると王に敬意と忠誠の証として膝を折り、頭を下げた。
「顔をあげよ、英雄レオンとその仲間よ」
「は! ありがたきお言葉に感謝します」
俺とみんなは国王へ顔を上げる。
王は険しい顔をしていた。
当然だろう。こいつの、いや魔王の目論見は俺を貶めることだ。
おそらく、こいつは...
国王は険しい顔のまま、俺に向かって言った。
「先ずは英雄レオンよ。人類の敵、魔王を倒した功績、見事である。王として国民を代表して感謝の意を表すぞ」
「ありがたき幸せにございます。そのお言葉だけで俺の心は満たされます」
先ずは社交辞令からだ。さあ、ここからどう動く?
「謙虚な言葉ことは結構なことだ。だが、そなたはその謙虚な仮面の裏で不敬なことを考えていたようじゃのう」
「いえ、俺は不敬なことなど...一切身に覚えがございません」
「お主がドレステン侯爵と繋がり、王位簒奪を画策していた事実、しかと掴んでおる!」
やはりか?
勇者エリアスを葬った後、次のターゲットは虚数魔法使いの俺だ。
俺からアリシアとベアトリスを奪い、エリアスを堕とし、極刑へと導き、次は俺の順番と言う訳だ。
だが、こちらも既に準備は出来ている。
「そうやって4年前にも勇者エリアスのアルデンヌ家を陥れたのですか? 国王陛下?」
「なんと!?」
「貴様! 無礼であろう! 王の御前ぞ! 不敬であろう!」
官吏たちがざわつく。だが、計算のうちだ。俺には切り札がある。
虚数魔法使いである俺が持つ幻の魔法が。
「王よ。あなたはこの4年間に2回の大きな過ちを犯した。1度目は勇者エリアスのアルデンヌ家の謀反の疑いへの処罰、そして二度目は虚数魔法使いの俺の幼馴染と妹への極刑。賢王と言われたあなたが、こと魔王を倒すべく重要な存在である勇者や虚数魔法使いの俺に関わることにだけは愚かな決断をしている。これは偶然かな?」
「レオンよ。言葉を慎め。確かにワシは過ちを犯した。貴様の幼馴染と妹を極刑としたことはワシも心を痛めておる。だが、じゃからと言って、ワシを恨み、王位簒奪を狙うのであれば、ワシは貴様を処罰せねばならん」
もっともな意見だ。王が以前の人間のままだったらな。
「王よ。では、何故、俺達が魔王城で倒した魔族が魔王ではないことを公表しない? 民はおろか主要な貴族様たちにすら公表しない。そして、俺を断罪? また極刑にするのか? ならば、誰が魔王を倒すのだ?」
「黙れたわごとを! 魔王はお前が滅ぼした! 故に魔王は既に存在しない! 貴様にもう価値はないのじゃ!」
「魔王が滅ぼされていない?」
「いや、確かにこの国は未だに瘴気に包まれて雲も晴れない」
「そう言えば、伝承では魔王が討伐されれば瘴気は消え、雲は晴れ、陽光がさすと言い伝えられている」
官吏たちも気が付いたようだ。
その通り、魔王城にいた魔王の黒い核には魔王の象徴である。金の魔王の文様が見当たらなかった。
正義厨のアルべルティーナが気が付いた。
魔王は滅びていない
魔王はこの国に潜んでいる
誰がもっとも怪しいのか?
「王よ。俺達はあなたに魔王城で倒した魔族は魔王ではなかったと報告した。だが、国民の不安を払拭するため、あえて伏せて魔王は討伐されたことにした。にもかかわらず、あなたは俺を断罪しようとしている」
「その通りです。魔王が存命で、虚数魔法使いのレオンを排除することで得をするのは一人しかいない」
「き、貴様。アルべルティーナ嬢か? たかが地方領主の娘ごときが、何を? 貴様らには寛大な措置を考えていたものを!」
「ええい、不敬だ! その者達を捉えろ! 騎士団長の命だ!」
王の御前で警護にあたっていた騎士団長が叫ぶが、騎士達は動かない。
「き、貴様ら一体?」
「騎士団長、我らは王とあなたの正体を見定めさせて頂く」
副騎士団長だ。彼はドレスデン伯爵の親戚筋にあたる、伯爵が裏工作をしてくれた。
いや、事実を伝えたのだ。
「こ、この事態。やはり貴様王位簒奪を画策しておるな?」
「いいえ、違います。俺は虚数魔法使いの責務をまっとうするだけです」
「責務だと?」
「はい、俺の責務、それは魔王討伐だからな!」
「ええい! 俺が身を挺してこの不敬な不埒ものを成敗してくれる!」
騎士団長が剣を抜き放ち、俺達の方にやってくる。
「待たれよ。そなたの相手は私が引き受けよう」
「何?」
「元騎士団長、イェスタ。魔族を放置する訳にはいかない」
イェスタが前に突き進み、騎士団長と俺の間に割入ってくる。
「ええい! やはり謀反じゃ! 王の命令じゃ! こやつらを捕らえろ! 殺しても構わん!」
官吏はどよめくが騎士団の一行は動かない。
「国王陛下、失礼を承知で申し上げます。私もあなたのことを疑っております。ここはレオン殿の魔法で本当にあなたが賢王であったあの王なのかどうか見極めさせて頂く、もし、あなたが真の王なら、あなたに再び忠誠を誓おう、お怒りになり、処罰されるならすればいい。ですが、レオン殿の言う通り、魔王はまだ存在している」
「ふっ。見極めるじゃと? 一体どうやって? 一体どうやってと言うのじゃ!」
「こうやってだよ! 『ディスペル!!』」
俺は最初に覚えた『ディスペル』。魔法解除の魔法を唱えた。
「......な、何が起こったんだ?」
「なんだ、この禍々しい違和感は?」
官吏たちの顔はおびえていた。魔力のない彼らも、目の前でおびただしい魔力が渦巻き、それが信じられない量であることを五感で感じているのだろう。
渦巻く魔力は奔流し、瘴気が俺達の処まで感じられてきた。
「な、なんなんだこれは……なんなんだ! この魔力は!!」
王と騎士団長の周りに黒い霧が渦巻き、それが収まってくると。
そこには禍々しい姿の魔王と魔族が一人がいた。
国王からお褒めの言葉を頂戴するためだ。
魔王を仕留めた訳だから当然なのだろう。
だが、本当の目的は違うことを俺は既に知っている。
アリアの父、ドレスデン伯爵の力を借りて、宮中での裏工作を行った。
『国王の正体を暴いてやる』
そんなことを思っていると騎士の一人が案内をしてくれた。
「英雄レオン様、準備が整いました。さあ、謁見の間にお入り下さい」
「ありがとうございます。では、入ります」
「英雄レオン様をご案内できて光栄です!」
大げさな騎士は俺に敬礼すると、ドアを開けてくれた。
俺の後にはエリス、イェスタ、アルべルティーナが続く。
「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
俺が謁見の間に入ると大歓声が聞こえた。
騎士や官吏、そして王族、上級貴族達の歓迎の意だと気づいて躊躇うことを止めて国王の前まで敷き詰められた赤い絨毯の上を歩いて行く。
国王の前に来ると王に敬意と忠誠の証として膝を折り、頭を下げた。
「顔をあげよ、英雄レオンとその仲間よ」
「は! ありがたきお言葉に感謝します」
俺とみんなは国王へ顔を上げる。
王は険しい顔をしていた。
当然だろう。こいつの、いや魔王の目論見は俺を貶めることだ。
おそらく、こいつは...
国王は険しい顔のまま、俺に向かって言った。
「先ずは英雄レオンよ。人類の敵、魔王を倒した功績、見事である。王として国民を代表して感謝の意を表すぞ」
「ありがたき幸せにございます。そのお言葉だけで俺の心は満たされます」
先ずは社交辞令からだ。さあ、ここからどう動く?
「謙虚な言葉ことは結構なことだ。だが、そなたはその謙虚な仮面の裏で不敬なことを考えていたようじゃのう」
「いえ、俺は不敬なことなど...一切身に覚えがございません」
「お主がドレステン侯爵と繋がり、王位簒奪を画策していた事実、しかと掴んでおる!」
やはりか?
勇者エリアスを葬った後、次のターゲットは虚数魔法使いの俺だ。
俺からアリシアとベアトリスを奪い、エリアスを堕とし、極刑へと導き、次は俺の順番と言う訳だ。
だが、こちらも既に準備は出来ている。
「そうやって4年前にも勇者エリアスのアルデンヌ家を陥れたのですか? 国王陛下?」
「なんと!?」
「貴様! 無礼であろう! 王の御前ぞ! 不敬であろう!」
官吏たちがざわつく。だが、計算のうちだ。俺には切り札がある。
虚数魔法使いである俺が持つ幻の魔法が。
「王よ。あなたはこの4年間に2回の大きな過ちを犯した。1度目は勇者エリアスのアルデンヌ家の謀反の疑いへの処罰、そして二度目は虚数魔法使いの俺の幼馴染と妹への極刑。賢王と言われたあなたが、こと魔王を倒すべく重要な存在である勇者や虚数魔法使いの俺に関わることにだけは愚かな決断をしている。これは偶然かな?」
「レオンよ。言葉を慎め。確かにワシは過ちを犯した。貴様の幼馴染と妹を極刑としたことはワシも心を痛めておる。だが、じゃからと言って、ワシを恨み、王位簒奪を狙うのであれば、ワシは貴様を処罰せねばならん」
もっともな意見だ。王が以前の人間のままだったらな。
「王よ。では、何故、俺達が魔王城で倒した魔族が魔王ではないことを公表しない? 民はおろか主要な貴族様たちにすら公表しない。そして、俺を断罪? また極刑にするのか? ならば、誰が魔王を倒すのだ?」
「黙れたわごとを! 魔王はお前が滅ぼした! 故に魔王は既に存在しない! 貴様にもう価値はないのじゃ!」
「魔王が滅ぼされていない?」
「いや、確かにこの国は未だに瘴気に包まれて雲も晴れない」
「そう言えば、伝承では魔王が討伐されれば瘴気は消え、雲は晴れ、陽光がさすと言い伝えられている」
官吏たちも気が付いたようだ。
その通り、魔王城にいた魔王の黒い核には魔王の象徴である。金の魔王の文様が見当たらなかった。
正義厨のアルべルティーナが気が付いた。
魔王は滅びていない
魔王はこの国に潜んでいる
誰がもっとも怪しいのか?
「王よ。俺達はあなたに魔王城で倒した魔族は魔王ではなかったと報告した。だが、国民の不安を払拭するため、あえて伏せて魔王は討伐されたことにした。にもかかわらず、あなたは俺を断罪しようとしている」
「その通りです。魔王が存命で、虚数魔法使いのレオンを排除することで得をするのは一人しかいない」
「き、貴様。アルべルティーナ嬢か? たかが地方領主の娘ごときが、何を? 貴様らには寛大な措置を考えていたものを!」
「ええい、不敬だ! その者達を捉えろ! 騎士団長の命だ!」
王の御前で警護にあたっていた騎士団長が叫ぶが、騎士達は動かない。
「き、貴様ら一体?」
「騎士団長、我らは王とあなたの正体を見定めさせて頂く」
副騎士団長だ。彼はドレスデン伯爵の親戚筋にあたる、伯爵が裏工作をしてくれた。
いや、事実を伝えたのだ。
「こ、この事態。やはり貴様王位簒奪を画策しておるな?」
「いいえ、違います。俺は虚数魔法使いの責務をまっとうするだけです」
「責務だと?」
「はい、俺の責務、それは魔王討伐だからな!」
「ええい! 俺が身を挺してこの不敬な不埒ものを成敗してくれる!」
騎士団長が剣を抜き放ち、俺達の方にやってくる。
「待たれよ。そなたの相手は私が引き受けよう」
「何?」
「元騎士団長、イェスタ。魔族を放置する訳にはいかない」
イェスタが前に突き進み、騎士団長と俺の間に割入ってくる。
「ええい! やはり謀反じゃ! 王の命令じゃ! こやつらを捕らえろ! 殺しても構わん!」
官吏はどよめくが騎士団の一行は動かない。
「国王陛下、失礼を承知で申し上げます。私もあなたのことを疑っております。ここはレオン殿の魔法で本当にあなたが賢王であったあの王なのかどうか見極めさせて頂く、もし、あなたが真の王なら、あなたに再び忠誠を誓おう、お怒りになり、処罰されるならすればいい。ですが、レオン殿の言う通り、魔王はまだ存在している」
「ふっ。見極めるじゃと? 一体どうやって? 一体どうやってと言うのじゃ!」
「こうやってだよ! 『ディスペル!!』」
俺は最初に覚えた『ディスペル』。魔法解除の魔法を唱えた。
「......な、何が起こったんだ?」
「なんだ、この禍々しい違和感は?」
官吏たちの顔はおびえていた。魔力のない彼らも、目の前でおびただしい魔力が渦巻き、それが信じられない量であることを五感で感じているのだろう。
渦巻く魔力は奔流し、瘴気が俺達の処まで感じられてきた。
「な、なんなんだこれは……なんなんだ! この魔力は!!」
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