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第37話 シモンとベネディクトの死
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アーネの葬儀が終わってから、結局商隊護衛の仕事は3日間伸びた。
領主アンダースも配下の兵士が複数亡くなった事に心を痛め、今度はクラス3のタレントを持つ兵士を護衛に選抜した。この領の主力部隊だ。
だが、出発は更に遅れた。
その日、アルベルティーナが慌てて俺達の部屋へきた。
「お願いだ。助けてくれ、シモンが!」
アルベルティーナは慌てていた。
「何があったんですか?」
俺は聞いた。
「シモンが勇者エリアスのところに殴りこんだ」
「エリアス?」
「昨日、勇者パーティがこの街に来て。ベネディクトが拐われた。シモンが書き残した手紙にそう書いてあった」
アルベルティーナは泣きそうな声で言った。
シモンは死を覚悟して向かったに違いない。
勇者パーティに喧嘩を売ってただで済む訳がない。
「このままじゃシモンが殺されてしまう」
「でも、なんでベネディクトさんをさらったのがエリアス達ってわかったんですか?」
「シモンの手紙には、ベネディクトをさらったのはベアトリスだと書いてあったの」
「ベアトリスが」
俺は言葉を失った。俺はついこの間ベアトリスを取り逃してしまった。
そのベアトリスがベネディクトに害を加えたとしたら、それは俺の責任だ。
「直ぐに行きましょう。エリスとイェスタにも手伝ってもらおうと思います」
俺は部屋で休んでいたエリスとイェスタに助けを頼んだ。
二人はもちろん協力してくれたが、イェスタから助言をもらった。
『レオン様、例えあなたでも、まだエリアスと直接対決するのは避けた方がいい。エリアスは強い。剣技の最高峰のタレント剣聖の知り合いがいるが、エリアスは剣聖より強い。魔法は賢者並だから、ひょっとしたら虚数魔法使いのあなたなら勝てるかもしれない。しかし、確実に勝てるのはもう少しレベルが上がらないと難しいと思ます』
イェスタの助言はもっともだった。俺だって、最初の頃のエリアスを知っている。
戦いに於いては想像を絶する化け物だ。
俺達は装備を整えるとエリアス達が宿泊する街の宿舎に向かった。
宿舎の正門には兵士が見張りをしていた。
「あの見張りは多分、シュッツトガルト公の私兵だ。この街の兵士じゃない。見知った顔が一人もおらん」
アルベルティーナが教えてくれた。
「じゃ、シュッツトガルト公の兵士が商隊を襲ってたってこと?」
「多分な。そして、勇者パーティも」
「こんなに堂々とケルンの街に乗り込んでくるなんて、一体どういうつもりなんだ?」
「多分、狙いはお主だ」
「俺?」
「ベアトリスを逃がしたであろうが?」
「じゃ、俺が原因でシモンとベネディクトが......」
「あまり自分を責めるでない。妹を殺せないお主の方が普通の感覚だ」
アルベルティーナが俺を慰めてくれる。
だけど、俺と妹の責任だ。
エリアスはおそらく、手駒とベアトリスを負かした俺に報復するつもりだろう。
宿舎に入るにあたってイェスタが交渉にあたった。
彼はほんの数ヶ月前迄勇者パーティの主力だったのだ。
挨拶をしたい。そう守衛に伝えたら、あっさり通された。
宿舎はこの街で1番大きく、豪華な宿舎だった。エリアス達は丸ごとこの宿舎を借り切っていた。
彼らの金遣いの荒さは更に悪化した様だ。
受付に入ると目を疑う光景が広がっていた。
それはシモンとベネディクトの二人だった。
最初に目に飛び込んできたのは胸を剣で貫かれたシモンだった。
剣はシモンの心臓を貫いていた。あれではメガヒールの魔法でも助からない。
そして、シモンに剣を突き立てているのはベネディクトだった。
「な?」
俺達は混乱した。
「そんな馬鹿な!」
何故ベネディクトがシモンを?
ベネディクトは剣を捨てると笑みを浮かべてエリアスの元へ走った。
「エリアス様、私、言われた通り、馬鹿兄貴を殺しましたよ。褒めて下さい」
俺達は愕然とした。
ベネディクト、何を言ってるんだ?
言われて兄を殺した?
エリアスに言われて?
アーネはエリアスに殺された様なものなんだぞ?
ベネディクトはエリアスに抱きつくと、キスをせがんだ。
エリアスはベネディクトにキスすると、ベネディクトの胸を揉みしだき始めた。
ベネディクトは恍惚の笑みを浮かべる。
「エリアス様、すぐに抱いてください。昨日の夜みたいに熱く激しく!お願いです!」
「ふん、まあ気が向いたらな」
「そんな~」
ベネディクトは完全にメスの顔になっていた。
いったい何故?
こんな短期間で一体何があったんだ?
しかし、先ずはシモンだ。
俺達は急いでシモンの元へ駆けよった。
残念ながら既に絶命していた。
「シ、シモン、そんな」
アルベルティーナは泣いていた。当然だろう。俺達より付き合いが長い彼女の悲しみは俺達より深い。
「ベネディクト、一体どういう事だ? 何があったと言うのだ? あんなにシモンと仲が良かったではないか! 脅されてでもおるのか?」
アルベルティーナは涙ぐみながら、ベネディクトを責めた。
エリアス達に脅されてる。そう思いたいアルベルティーナの気持ちは痛い程わかる。
俺だって、ベネディクトをさらったのがベアトリスだという事が辛い。
そして、一番辛いのはベアトリスがエリアスに心を持っていかれているという事だ。
人は変わってしまう。それは俺が一番知っている。アリシアもベアトリスも変わってしまった。
だが、俺は違和感を感じた。アリシアもベアトリスも少しづつ変わっていった。
だが、ベネディクトはたった1日で変わった。
そんな事がありえるのか?
アリシアもベアトリスもほんの数カ月前までは、俺を裏切る事なんてありえないと思っていた。
だが、一月、二月と経ち、二人の心は俺から離れていき、エリアスに傾いていった。
だけど、ベネディクトはつい昨日迄はアーネの死を悲しみ。ベアトリスの兄である俺のことを憎んでいた。
ところが今、彼女はアーネの仇であるエリアスに胸を揉みしだかれて、恍惚とした表情を浮かべている。
ベアトリスもいる前で......
『アーネを殺したベアトリスが憎いのではなかったのか?』
『それが、今は仲間なのか?』
「ベネディクト、答えよ!」
アルベルティーナの叱責の声に怒気が強くなる。
アルベルティーナも納得出来ないのだろう。
エリアスに脅されてと信じたいのだろう。
だが、ベネディクトから出た言葉は俺達の期待を裏切るものだった。
「脅されてる? 何の事? 私はエリアス様の為に馬鹿な兄貴を殺しただけよ。兄貴、馬鹿なんだもん。エリアス様に私を返せって。私がエリアス様から離れる訳ないでしょ。それどころかエリアス様に暴言を吐くなんて。私はエリアス様の言付けを守れて嬉しいのよ」
「そ、そんな。ベネディクト、見損なったぞ」
「エリアス様の前では馬鹿兄貴なんてどうでもいいのよ。なんで分らないのかしら?」
ベネディクトは冷たい笑みを浮かべた。
だが、俺はハッとした。
ベネディクトは冷たい笑みを浮かべているのに、何故か涙を流しているのだ。
「ベネディクト、何故泣いてる?」
アルベルティーナも気がついた。
エリアスの表情が変わった
俺は嫌な予感がした。エリアスは不機嫌な表情を浮かべると、それが残忍な笑みに変わった。
それは俺に奴隷の刻印を押した時と同じ顔だった。
俺は咄嗟に叫んだ。
「エリアス止めろ!」
だが、俺の叫び声より早くエリアスは動いた。
「いつまでもベタベタしてるんじゃねえ」
エリアスは乱暴に言うとベネディクトを引き離し、ベネディクトを蹴った。
『バシン、ベチョリ』
嫌な音が響いた。
ベネディクトはエリアスに蹴り飛ばされ、宿舎の壁に激突していた。
勇者エリアスの人間業とは思えない力で容赦なく蹴られたベネディクトは胴がありえない方向に曲がり、口からは多量の血と共に内臓が飛び出ていた。
「い、いやーーーーーーーーーー!!!!」
アルベルティーナが悲鳴が響いた。
領主アンダースも配下の兵士が複数亡くなった事に心を痛め、今度はクラス3のタレントを持つ兵士を護衛に選抜した。この領の主力部隊だ。
だが、出発は更に遅れた。
その日、アルベルティーナが慌てて俺達の部屋へきた。
「お願いだ。助けてくれ、シモンが!」
アルベルティーナは慌てていた。
「何があったんですか?」
俺は聞いた。
「シモンが勇者エリアスのところに殴りこんだ」
「エリアス?」
「昨日、勇者パーティがこの街に来て。ベネディクトが拐われた。シモンが書き残した手紙にそう書いてあった」
アルベルティーナは泣きそうな声で言った。
シモンは死を覚悟して向かったに違いない。
勇者パーティに喧嘩を売ってただで済む訳がない。
「このままじゃシモンが殺されてしまう」
「でも、なんでベネディクトさんをさらったのがエリアス達ってわかったんですか?」
「シモンの手紙には、ベネディクトをさらったのはベアトリスだと書いてあったの」
「ベアトリスが」
俺は言葉を失った。俺はついこの間ベアトリスを取り逃してしまった。
そのベアトリスがベネディクトに害を加えたとしたら、それは俺の責任だ。
「直ぐに行きましょう。エリスとイェスタにも手伝ってもらおうと思います」
俺は部屋で休んでいたエリスとイェスタに助けを頼んだ。
二人はもちろん協力してくれたが、イェスタから助言をもらった。
『レオン様、例えあなたでも、まだエリアスと直接対決するのは避けた方がいい。エリアスは強い。剣技の最高峰のタレント剣聖の知り合いがいるが、エリアスは剣聖より強い。魔法は賢者並だから、ひょっとしたら虚数魔法使いのあなたなら勝てるかもしれない。しかし、確実に勝てるのはもう少しレベルが上がらないと難しいと思ます』
イェスタの助言はもっともだった。俺だって、最初の頃のエリアスを知っている。
戦いに於いては想像を絶する化け物だ。
俺達は装備を整えるとエリアス達が宿泊する街の宿舎に向かった。
宿舎の正門には兵士が見張りをしていた。
「あの見張りは多分、シュッツトガルト公の私兵だ。この街の兵士じゃない。見知った顔が一人もおらん」
アルベルティーナが教えてくれた。
「じゃ、シュッツトガルト公の兵士が商隊を襲ってたってこと?」
「多分な。そして、勇者パーティも」
「こんなに堂々とケルンの街に乗り込んでくるなんて、一体どういうつもりなんだ?」
「多分、狙いはお主だ」
「俺?」
「ベアトリスを逃がしたであろうが?」
「じゃ、俺が原因でシモンとベネディクトが......」
「あまり自分を責めるでない。妹を殺せないお主の方が普通の感覚だ」
アルベルティーナが俺を慰めてくれる。
だけど、俺と妹の責任だ。
エリアスはおそらく、手駒とベアトリスを負かした俺に報復するつもりだろう。
宿舎に入るにあたってイェスタが交渉にあたった。
彼はほんの数ヶ月前迄勇者パーティの主力だったのだ。
挨拶をしたい。そう守衛に伝えたら、あっさり通された。
宿舎はこの街で1番大きく、豪華な宿舎だった。エリアス達は丸ごとこの宿舎を借り切っていた。
彼らの金遣いの荒さは更に悪化した様だ。
受付に入ると目を疑う光景が広がっていた。
それはシモンとベネディクトの二人だった。
最初に目に飛び込んできたのは胸を剣で貫かれたシモンだった。
剣はシモンの心臓を貫いていた。あれではメガヒールの魔法でも助からない。
そして、シモンに剣を突き立てているのはベネディクトだった。
「な?」
俺達は混乱した。
「そんな馬鹿な!」
何故ベネディクトがシモンを?
ベネディクトは剣を捨てると笑みを浮かべてエリアスの元へ走った。
「エリアス様、私、言われた通り、馬鹿兄貴を殺しましたよ。褒めて下さい」
俺達は愕然とした。
ベネディクト、何を言ってるんだ?
言われて兄を殺した?
エリアスに言われて?
アーネはエリアスに殺された様なものなんだぞ?
ベネディクトはエリアスに抱きつくと、キスをせがんだ。
エリアスはベネディクトにキスすると、ベネディクトの胸を揉みしだき始めた。
ベネディクトは恍惚の笑みを浮かべる。
「エリアス様、すぐに抱いてください。昨日の夜みたいに熱く激しく!お願いです!」
「ふん、まあ気が向いたらな」
「そんな~」
ベネディクトは完全にメスの顔になっていた。
いったい何故?
こんな短期間で一体何があったんだ?
しかし、先ずはシモンだ。
俺達は急いでシモンの元へ駆けよった。
残念ながら既に絶命していた。
「シ、シモン、そんな」
アルベルティーナは泣いていた。当然だろう。俺達より付き合いが長い彼女の悲しみは俺達より深い。
「ベネディクト、一体どういう事だ? 何があったと言うのだ? あんなにシモンと仲が良かったではないか! 脅されてでもおるのか?」
アルベルティーナは涙ぐみながら、ベネディクトを責めた。
エリアス達に脅されてる。そう思いたいアルベルティーナの気持ちは痛い程わかる。
俺だって、ベネディクトをさらったのがベアトリスだという事が辛い。
そして、一番辛いのはベアトリスがエリアスに心を持っていかれているという事だ。
人は変わってしまう。それは俺が一番知っている。アリシアもベアトリスも変わってしまった。
だが、俺は違和感を感じた。アリシアもベアトリスも少しづつ変わっていった。
だが、ベネディクトはたった1日で変わった。
そんな事がありえるのか?
アリシアもベアトリスもほんの数カ月前までは、俺を裏切る事なんてありえないと思っていた。
だが、一月、二月と経ち、二人の心は俺から離れていき、エリアスに傾いていった。
だけど、ベネディクトはつい昨日迄はアーネの死を悲しみ。ベアトリスの兄である俺のことを憎んでいた。
ところが今、彼女はアーネの仇であるエリアスに胸を揉みしだかれて、恍惚とした表情を浮かべている。
ベアトリスもいる前で......
『アーネを殺したベアトリスが憎いのではなかったのか?』
『それが、今は仲間なのか?』
「ベネディクト、答えよ!」
アルベルティーナの叱責の声に怒気が強くなる。
アルベルティーナも納得出来ないのだろう。
エリアスに脅されてと信じたいのだろう。
だが、ベネディクトから出た言葉は俺達の期待を裏切るものだった。
「脅されてる? 何の事? 私はエリアス様の為に馬鹿な兄貴を殺しただけよ。兄貴、馬鹿なんだもん。エリアス様に私を返せって。私がエリアス様から離れる訳ないでしょ。それどころかエリアス様に暴言を吐くなんて。私はエリアス様の言付けを守れて嬉しいのよ」
「そ、そんな。ベネディクト、見損なったぞ」
「エリアス様の前では馬鹿兄貴なんてどうでもいいのよ。なんで分らないのかしら?」
ベネディクトは冷たい笑みを浮かべた。
だが、俺はハッとした。
ベネディクトは冷たい笑みを浮かべているのに、何故か涙を流しているのだ。
「ベネディクト、何故泣いてる?」
アルベルティーナも気がついた。
エリアスの表情が変わった
俺は嫌な予感がした。エリアスは不機嫌な表情を浮かべると、それが残忍な笑みに変わった。
それは俺に奴隷の刻印を押した時と同じ顔だった。
俺は咄嗟に叫んだ。
「エリアス止めろ!」
だが、俺の叫び声より早くエリアスは動いた。
「いつまでもベタベタしてるんじゃねえ」
エリアスは乱暴に言うとベネディクトを引き離し、ベネディクトを蹴った。
『バシン、ベチョリ』
嫌な音が響いた。
ベネディクトはエリアスに蹴り飛ばされ、宿舎の壁に激突していた。
勇者エリアスの人間業とは思えない力で容赦なく蹴られたベネディクトは胴がありえない方向に曲がり、口からは多量の血と共に内臓が飛び出ていた。
「い、いやーーーーーーーーーー!!!!」
アルベルティーナが悲鳴が響いた。
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