幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風

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第15話 アリシアの心

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私はなんてことをしてしまったのか?

私には幼馴染で婚約者の彼がいる。

レオンだ。

私と彼は同じ街のご近所さんで子供の頃から一緒に育った。

『大きくなったらレオンのお嫁さんになる』

今から考えたら恥ずかしい事をあの頃は当たり前の様に言えた。

今でも気持ちは同じだ。私はレオンが好き。

だけど、私はレオンを裏切った。

私は勇者エリアスと一夜を共にしてしまった。

エリアスは優しく、心強い仲間。

かっこいいなとは思った。

荷物持ちのレオンとは違って、勇者として剣をふるう彼の姿は格好良かった。

それだけではない。エリアスは私とベアトリスを王都の晩餐会にも連れて行ってくれた。

煌びやかなドレスを纏い、美しい宝石のアクセサリーを着け、貴族の方々と談笑する。

そのどれもが、私にとっては、夢の様な話しだった。

だけど、私にはレオンがいる。

レオンとは10年以上にもわたる歴史がある。その中に彼が割って入る余地は無かった、筈だった。

あの日、誰もいない廊下でエリアスから話しかけられた。

「アリシア、ちょっと時間あるかな?」

「何、エリアス?」

「アリシア、俺は君の事が好きなんだ」

「......」

「レオンの事は知ってる。でも止められないんだ、君への熱い想いが......」

「駄目よエリアス。私はレオンと婚約してるの」

エリアスを見る。そこには燃えるような深紅の瞳。

私はエリアスの瞳から目が離せなかった。吸い込まれる様な瞳に。

私はエリアスへの気持ちが急激に高まった。

エリアス、切れ長の目、爽やかな笑顔。

彼からこぼれる微笑み。

ひょっとしてこれが本当の恋?

私にはそう思えた。レオンには感じた事がない激しい感情が湧き出してきた。

「アリシア、もし、よかったら、今晩、俺の部屋に来てくれないか?」

「う、うん。わかった......」

私は簡単に返事をしてしまった。

こんな時間に男性の部屋を訪ねる。それがどんな意味を持つか私には十分分かっていた。

でもこの感情を止められなかった。そして、私はレオンの事を忘れてしまった。

エリアスの部屋を訪れる。

私の口からはエリアスへの愛を告げる言葉が溢れ出てきた。

エリアスも私の気持ちに答え、愛を囁いてくれた。

そして、キス......

私はエリアスが求めるがまま、身体を許した。

最高の幸福感だった。その時は......

自室へ戻るとあの激しい感情はだんだんと消えていった。

そして、私はレオンの事を思い出した。

涙が出てきた。

『わ、私はいったい何て事をしてしまったのか?』

レオン、レオン、ごめんなさい。私、あなたを裏切ってしまった。

さっきまでの自分が信じられなかった。あの感情は今は無い。

今あるのはレオンへの罪悪感。そして、レ、レオンは私を許してくれるだろうか?

許される事では無い。だけど、レオンが私のそばからいなくなる。そう考えたら!!

私の心は奈落の底へ落ちていった。嫌!! レオンと別れるなんて!

レオンとの将来を想像すると簡単に出来た。

優しい顔の旦那様のレオン、そして私、私の腕にはレオンの赤ちゃんが笑っている。

昔からずっと一緒。レオンに熱いあの感情を感じた事は無かった。

でも、二人でいる時間はいつも優しく、穏やかな時間が流れていた。

レ、レオン、ごめんなさい。

私はその夜、泣き続け、眠れなかった。

☆☆☆

あくる朝、レオンに会った。

私は逃げ出したい衝動にかられた。

私を見ないで、私はあなたを裏切った。汚い女。

お願いだから、そんなに愛おしそうな目で私を見ないで!

私はレオンへの罪悪感で心臓が握り潰れそうだった。

「アリシア、久しぶりに話をしないか?」

「レオン、私、忙しいの。ごめんね」

「ごめん、わかった。悪かった」

「ううん、こちらこそごめんね」

「気にしなくていいよ。アリシアは侍で魔王を倒さなきゃいけないのだから」

レオンは笑った。無理した笑いにしか見えなかった。

「どうしたの? 何か思い詰めているみたい」

「いや、アリシア、君の事が好きだよ。いつまでも」

「.........................................」

私は、いつものように、自分も好きと返事ができなかった。

私にそんな事を言う資格はないし、激しい罪悪感が私を襲った。

私はレオンをまっすぐ見れなかった。

「ごめん、もう話しかけたりしないよ」

「えっ?」

レオンは行ってしまった。いや、私がレオンから逃げた。

『ごめんなさい。レオン』

でも、私はレオンが好き。私は一体どうすれば?

考えた。今、出来るのはエリアスとの関係を終わらせる事! 

間違いを訂正する事!

そして、レオンに謝ろう。

私は初めてをエリアスに捧げてしまった。

例え誤魔化してもレオンには分かってしまうだろう。

本当の事を話して、レオンに謝ろう。

レオンなら許してくれる、きっと......

でも、もし、許してくれない時は......

死のう。それでレオンへの贖罪としよう。

だけど、その日、再びエリアスから誘われた私はふらふらと彼の部屋に行って、また関係をもってしまった。

エリアスの目を見ると抗えない情熱が私を襲う。

エリアスと肌を重ねると至福が、魔族討伐や旅の疲れ、全ての嫌な事を忘れられた。

エリアスは麻薬の様に私を蝕んだ。

エリアスは私に快楽と幸福、そして、耐えがたい罪悪感を私に与えた。

私はその罪悪感を忘れたくて、エリアスにまた抱かれた。

彼に抱かれると全ての負の感情が消えて、幸福になれた。

死んだ方がいい人間なんていない、子供の頃はそう思っていた。

だけど、世の中には死んだ方がいい人間はいた。

それが......私だ。
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