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第1話 裏切り
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☆☆☆
百夢花が咲き乱れる中にあの娘がいた。
俺は魅入られた。
『綺麗な娘だな』
いつかも見た様な気がする、そんな筈も無いのに。
☆☆☆
俺は勇者パーティの一員レオン、勇者と共に魔王を倒す為に旅を続けている。
もっとも俺はパーティのメンバーというよりサポーターだ。いや、荷物持ちと言った方が正確か?
パーティは勇者のエリアス、侍のアリシア、ウォーロックのベアトリス、ルーンナイトのイェスタ、俺、そして奴隷のエリスの6名だ。
俺とエリスは魔族が住む城の外で待機していた。俺と奴隷のエリスは戦いには加わらない。
戦力とはならないからだ。それで、いつも安全な場所で待機している。
「さすが、勇者エリアス様、魔族を一撃ですね。アリシア憧れちゃいます!」
「本当、エリアス様凄い!」
二人の女の子の声が聞こえる。俺の婚約者と妹だ。
俺の婚約者で侍のアリシア。
そして妹ベアトリスはウォーロック、魔術師だ。
俺にも可能性はあった。だが、今では天と地程の差だ。もう、彼女らと話しをした記憶は2ヶ月はない。
アリシアとは子供の頃からの付き合いで、家もお隣さんだった。幼馴染というやつだった。
ほんの2ヶ月前まで二人は俺に天使の様な笑顔を向け、旅の苦労を分かち合っていた。
それが、今では二人に蔑まれる様になった。俺が戦力外になったからだ。
彼女達は命をかけた戦いをしている。
その戦いに俺は入っていない。彼女らが俺と戦いの共感を得る事はない。
「レオン。気にするな。人にはそれぞれ役割がある。君のおかげで荷物の運搬が助かっているんだ。俺は感謝している」
勇者エリアスが爽やかな笑顔で俺を慰める。
いい奴なんだろうな。だが、俺の幼馴染のアリシアといずれ恋仲になるんだろうな。
俺はそう思っていた。俺と彼らでは住む世界が違う。
☆☆☆
その日俺達は辺境の街の宿屋に泊まった。俺の部屋は珍しく2Fのいい部屋で、勇者エリアスの隣だった。
食事が終わり、自室に帰った。明日の準備などをしていると聴きなれた声が聞こえてきた、アリシアだ。
しかし、それは仲間と相談をするというようなものではなかった。
アリシアから愛の言葉が紡がれ、勇者エリアスもそれに答えた。
そして、衣擦れの音、二人は言葉で愛を確かめるだけでは無く、体で確かめあう。
アリシアの喘ぎ声、そして隣の部屋からはギシギシとリズミカルな音が聞こえてきた。
☆☆☆
俺は涙を流していた。アリシア、俺の婚約者、俺の幼馴染。わかってはいた。
だが、俺の脳裏には子供の頃からの記憶が走馬灯の様に蘇った。
子供のとき、「アリシアはレオンのお嫁さんになる」そう言ってくれた。
15の時、俺はアリシアに告白をした。アリシアは泣いて喜んでくれた。
付き合い初めて3ヶ月目の時、村祭りの帰り道、河原のあぜで蛍の大群を二人で見て、感動した。
そして初めてのキス。二人は将来を誓いあった。
「何があっても一緒になろうね」彼女はそう言ってくれた。
それが、今、わずか3ヶ月前にあった勇者に体を許す間柄になっている。
嫉妬、怒り、屈辱、俺の中にたくさんの負の感情が沸いた。
あくる日、隣の部屋の勇者エリアスを妹のベアトリクスが訪ねた。
そして、二人は愛を営んだ。
リズミカルなギシギシという音が限り無く不快だった。
その日も俺は一睡も出来なかった。
百夢花が咲き乱れる中にあの娘がいた。
俺は魅入られた。
『綺麗な娘だな』
いつかも見た様な気がする、そんな筈も無いのに。
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俺は勇者パーティの一員レオン、勇者と共に魔王を倒す為に旅を続けている。
もっとも俺はパーティのメンバーというよりサポーターだ。いや、荷物持ちと言った方が正確か?
パーティは勇者のエリアス、侍のアリシア、ウォーロックのベアトリス、ルーンナイトのイェスタ、俺、そして奴隷のエリスの6名だ。
俺とエリスは魔族が住む城の外で待機していた。俺と奴隷のエリスは戦いには加わらない。
戦力とはならないからだ。それで、いつも安全な場所で待機している。
「さすが、勇者エリアス様、魔族を一撃ですね。アリシア憧れちゃいます!」
「本当、エリアス様凄い!」
二人の女の子の声が聞こえる。俺の婚約者と妹だ。
俺の婚約者で侍のアリシア。
そして妹ベアトリスはウォーロック、魔術師だ。
俺にも可能性はあった。だが、今では天と地程の差だ。もう、彼女らと話しをした記憶は2ヶ月はない。
アリシアとは子供の頃からの付き合いで、家もお隣さんだった。幼馴染というやつだった。
ほんの2ヶ月前まで二人は俺に天使の様な笑顔を向け、旅の苦労を分かち合っていた。
それが、今では二人に蔑まれる様になった。俺が戦力外になったからだ。
彼女達は命をかけた戦いをしている。
その戦いに俺は入っていない。彼女らが俺と戦いの共感を得る事はない。
「レオン。気にするな。人にはそれぞれ役割がある。君のおかげで荷物の運搬が助かっているんだ。俺は感謝している」
勇者エリアスが爽やかな笑顔で俺を慰める。
いい奴なんだろうな。だが、俺の幼馴染のアリシアといずれ恋仲になるんだろうな。
俺はそう思っていた。俺と彼らでは住む世界が違う。
☆☆☆
その日俺達は辺境の街の宿屋に泊まった。俺の部屋は珍しく2Fのいい部屋で、勇者エリアスの隣だった。
食事が終わり、自室に帰った。明日の準備などをしていると聴きなれた声が聞こえてきた、アリシアだ。
しかし、それは仲間と相談をするというようなものではなかった。
アリシアから愛の言葉が紡がれ、勇者エリアスもそれに答えた。
そして、衣擦れの音、二人は言葉で愛を確かめるだけでは無く、体で確かめあう。
アリシアの喘ぎ声、そして隣の部屋からはギシギシとリズミカルな音が聞こえてきた。
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俺は涙を流していた。アリシア、俺の婚約者、俺の幼馴染。わかってはいた。
だが、俺の脳裏には子供の頃からの記憶が走馬灯の様に蘇った。
子供のとき、「アリシアはレオンのお嫁さんになる」そう言ってくれた。
15の時、俺はアリシアに告白をした。アリシアは泣いて喜んでくれた。
付き合い初めて3ヶ月目の時、村祭りの帰り道、河原のあぜで蛍の大群を二人で見て、感動した。
そして初めてのキス。二人は将来を誓いあった。
「何があっても一緒になろうね」彼女はそう言ってくれた。
それが、今、わずか3ヶ月前にあった勇者に体を許す間柄になっている。
嫉妬、怒り、屈辱、俺の中にたくさんの負の感情が沸いた。
あくる日、隣の部屋の勇者エリアスを妹のベアトリクスが訪ねた。
そして、二人は愛を営んだ。
リズミカルなギシギシという音が限り無く不快だった。
その日も俺は一睡も出来なかった。
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