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90煉獄魔道士アンネの正体
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レオン・ユングリングは自身が王国一の勇者だと、自分より優れたものは絶対に存在しないと信じて疑らなかった。
自身は神に選ばれた存在であり、特別な者であると。
しかし。
「……俺の勝ちです、レオン殿下」
俺はレオンを見下ろして、勝利を宣言していた。
見下されたレオンは、信じられないという目で俺を見返していた。
そして、周りを見渡して、みなの表情を見てとって、どう優劣がついたかを察した。
「僕は負けていない……!」
いや、尚も認めなかった。
「ち、ちがう、違うのだ! ありえないのだ! 僕が負けるはずがないッ!! ──そうだ、これも試練だ。僕はまだ真の覚醒を迎えていない、深淵覚醒のみ! そうだ! これから真の覚醒の余地が残っているんだ、そうでなければおかしい!」
「……そこまで、自分に都合良くしか考えることができないのですね?」
「黙れぇッ! お前ごときに何が分かる! この私を見下すような発言! 不敬だろう!」
これまで他者を見下し続けていたレオン。自身が初めて見下されたと感じた今この時、レオンへ全ての報いが襲い掛かって来ていたのだろう。
だが、弱者の気持ちが理解できたかと言うと。
「ぼ、僕にはまだ真の覚醒が――――」
レオンはなおも認めなかった。
もう、この男には救いはないのだろう。
せめて人としての理を理解した上で……人ではなくなるべきだったのに。
もうじき、人であることを忘れ、魔物と変わらない存在へと変わる。
せめて、最後に真人間としての心を取り戻してほしかったのだが。
それも、叶わなかったか。
その時!
ズシャ
「な?」
「どうなってるの? アル?」
「アル君?」
「ご主人様?」
皆、口々に驚きの声をあげる。
何故なら突然レオンの胸を蔦のようなモノ。
終末の化け物のような蔦の剣が突き刺さっていたからだ。
俺は慌ててパッシブセンサーの探知ではなく、アクティブセンサーの探査のスキルを発動する。
隠ぺいのスキルを使用していたにだろう。
ようやく俺は不審者を把握した。
そしてその正体もわかった。
「アンネさん?」
「久しぶりね、アル君。ずいぶんと立派になったわね。あの落ちこぼれが嘘みたい」
そこに現れたのはエルヴィンに魅了された被害者の筈のアンネだった。
しかし、アンネが普通の人間ではないことは明らかだ。
金色に輝く目。
蔦なった右手。
人であるとは思えない。
何よりこの瘴気。
「ふふふッ――ようやくこに時が来たわ。見苦しい二つ目の魂、そして聖剣は解き放たれた」
一体何のことだ?
アンネは一体何者だ?
あるいはアンネの姿を模した何者かか?
「君は本当にあのアンネなのか?」
俺はアンネを見据えてそう言った。
「ふふッ、そうよ。あなたやクリス達勇者パーティで共に戦ったアンネよ。でも、私って人かしら? そんな証拠何処にある? 勇者パーティを結成するまであなた達は何処にいた?」
「俺達はみな勇者パーティの選抜要員として王立魔法大学の特別コースにいたじゃないか?」
俺とクリス、エルヴィンもナディヤもアンネも、アンネ? アンネも?
「ほら、私のこと思い出せないでしょ? それに人なら故郷位あるでしょ? 私の故郷知ってる?そうね。それに人なら知人位いるでしょ? 誰か私のこと知ってる人いた?」
俺は愕然とした。勇者パーティを結成したばかりの頃、アンネも俺のことをアル君と呼び、共に魔族との戦いの為切磋琢磨した。だが言われてみると勇者パーティはみな各地で選抜されて王立魔法大学の特別コースを受けた後勇者パーティに編入される。
だが、俺にはアンネの魔法大学での記憶がない。
いや、アンネは魔法大学に在籍していないとしか思えない。
そしてそれはあり得ないことなのだ。
それにアンネの故郷は?
知人は?
勇者パーティ時代、知人に会うことも故郷の話をすることもあった。
だが、アンネの故郷や知人の記憶はない。
全く。
「ふふ、どうやらわかってきたようね。あなたもみな私の魅了の魔法で記憶を操作されてたのよ。勇者パーティにアンネなんてメンバーは加わっていない。書類上はね。誰もそれに気が付かなかった」
「き、君は何者なんだ?」
俺は半分わかっていた。
アンネの正体に。
ただ、それを確認したかった。
「あらとぼけて、もう察してるでしょ? 私は邪神の一部よ。そして堕ちた勇者エルヴィンの魂を喰らい、そして今、その堕ちた勇者レオンの魂を喰らったところよ。私は復活する。その馬鹿な王子はよりにもよって私の力を封印していた聖剣を抜いてしまったの」
邪神の復活と力を封じていた聖剣に言及している。それが解き放たれた?
「ふふっ、だから、1000年前にあなたたち人間の真の勇者がせっかく私の力を封じていた聖剣を、そこの馬鹿な勇者が抜いてしまったの。私の甘言に乗せられてね」
そう言うと、アンネの姿はみるみると変わって行った。
「―――――!!!!」
それは終末の化け物と同じくドロドロのスライムのような真っ黒な醜い姿。
禍々しい姿と凄まじい瘴気を撒き散らしながらアンネはついにその正体を現した。
自身は神に選ばれた存在であり、特別な者であると。
しかし。
「……俺の勝ちです、レオン殿下」
俺はレオンを見下ろして、勝利を宣言していた。
見下されたレオンは、信じられないという目で俺を見返していた。
そして、周りを見渡して、みなの表情を見てとって、どう優劣がついたかを察した。
「僕は負けていない……!」
いや、尚も認めなかった。
「ち、ちがう、違うのだ! ありえないのだ! 僕が負けるはずがないッ!! ──そうだ、これも試練だ。僕はまだ真の覚醒を迎えていない、深淵覚醒のみ! そうだ! これから真の覚醒の余地が残っているんだ、そうでなければおかしい!」
「……そこまで、自分に都合良くしか考えることができないのですね?」
「黙れぇッ! お前ごときに何が分かる! この私を見下すような発言! 不敬だろう!」
これまで他者を見下し続けていたレオン。自身が初めて見下されたと感じた今この時、レオンへ全ての報いが襲い掛かって来ていたのだろう。
だが、弱者の気持ちが理解できたかと言うと。
「ぼ、僕にはまだ真の覚醒が――――」
レオンはなおも認めなかった。
もう、この男には救いはないのだろう。
せめて人としての理を理解した上で……人ではなくなるべきだったのに。
もうじき、人であることを忘れ、魔物と変わらない存在へと変わる。
せめて、最後に真人間としての心を取り戻してほしかったのだが。
それも、叶わなかったか。
その時!
ズシャ
「な?」
「どうなってるの? アル?」
「アル君?」
「ご主人様?」
皆、口々に驚きの声をあげる。
何故なら突然レオンの胸を蔦のようなモノ。
終末の化け物のような蔦の剣が突き刺さっていたからだ。
俺は慌ててパッシブセンサーの探知ではなく、アクティブセンサーの探査のスキルを発動する。
隠ぺいのスキルを使用していたにだろう。
ようやく俺は不審者を把握した。
そしてその正体もわかった。
「アンネさん?」
「久しぶりね、アル君。ずいぶんと立派になったわね。あの落ちこぼれが嘘みたい」
そこに現れたのはエルヴィンに魅了された被害者の筈のアンネだった。
しかし、アンネが普通の人間ではないことは明らかだ。
金色に輝く目。
蔦なった右手。
人であるとは思えない。
何よりこの瘴気。
「ふふふッ――ようやくこに時が来たわ。見苦しい二つ目の魂、そして聖剣は解き放たれた」
一体何のことだ?
アンネは一体何者だ?
あるいはアンネの姿を模した何者かか?
「君は本当にあのアンネなのか?」
俺はアンネを見据えてそう言った。
「ふふッ、そうよ。あなたやクリス達勇者パーティで共に戦ったアンネよ。でも、私って人かしら? そんな証拠何処にある? 勇者パーティを結成するまであなた達は何処にいた?」
「俺達はみな勇者パーティの選抜要員として王立魔法大学の特別コースにいたじゃないか?」
俺とクリス、エルヴィンもナディヤもアンネも、アンネ? アンネも?
「ほら、私のこと思い出せないでしょ? それに人なら故郷位あるでしょ? 私の故郷知ってる?そうね。それに人なら知人位いるでしょ? 誰か私のこと知ってる人いた?」
俺は愕然とした。勇者パーティを結成したばかりの頃、アンネも俺のことをアル君と呼び、共に魔族との戦いの為切磋琢磨した。だが言われてみると勇者パーティはみな各地で選抜されて王立魔法大学の特別コースを受けた後勇者パーティに編入される。
だが、俺にはアンネの魔法大学での記憶がない。
いや、アンネは魔法大学に在籍していないとしか思えない。
そしてそれはあり得ないことなのだ。
それにアンネの故郷は?
知人は?
勇者パーティ時代、知人に会うことも故郷の話をすることもあった。
だが、アンネの故郷や知人の記憶はない。
全く。
「ふふ、どうやらわかってきたようね。あなたもみな私の魅了の魔法で記憶を操作されてたのよ。勇者パーティにアンネなんてメンバーは加わっていない。書類上はね。誰もそれに気が付かなかった」
「き、君は何者なんだ?」
俺は半分わかっていた。
アンネの正体に。
ただ、それを確認したかった。
「あらとぼけて、もう察してるでしょ? 私は邪神の一部よ。そして堕ちた勇者エルヴィンの魂を喰らい、そして今、その堕ちた勇者レオンの魂を喰らったところよ。私は復活する。その馬鹿な王子はよりにもよって私の力を封印していた聖剣を抜いてしまったの」
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「ふふっ、だから、1000年前にあなたたち人間の真の勇者がせっかく私の力を封じていた聖剣を、そこの馬鹿な勇者が抜いてしまったの。私の甘言に乗せられてね」
そう言うと、アンネの姿はみるみると変わって行った。
「―――――!!!!」
それは終末の化け物と同じくドロドロのスライムのような真っ黒な醜い姿。
禍々しい姿と凄まじい瘴気を撒き散らしながらアンネはついにその正体を現した。
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