上 下
44 / 93

44ご主人様大好き……とは言わないのです。

しおりを挟む
「俺のリーゼに何してんだ?」 

「……ご、ご主人様!!」 

全く、醜悪なものは何処までも腐ってやがる。 

暴漢に組み伏せられ、あられもなく衣服は乱れ、その白い肌が露わとなり、艶めかしい両脚が露わになっていた。リーゼの目には涙が…… 

目に涙を浮かべた女の子に乱暴とかありえねぇだろ? 

「な、なんだお前!?」 

「ああっ!? お前なぁ!!」 

事情は探査のスキルで全部聞いていた。 

宿に帰っていないリーゼを探したら、乱暴されそうになっていた。 

理由なんて関係ない。 

どんな理由があろうと不条理に女の子に乱暴するようなヤツの言い分に耳を貸す気はない。 

「お前ら、自分達が何をしているのかわかっているのか?」 

「おいおい、そいつはな。学園の貴族様の子弟様達のひんしゅくを買っているんだぞ」 

「そうだ。俺たちに逆らうとどうなるかわかってるんだろうな?」 

全く、今度は他人の虎の威を借りるのか? 

「もう一度言う、リーゼは俺のものだ、傷つけるヤツはただでは済まさん」 
「馬鹿か? この国の貴族様の大半を敵に回す気か? この女にそんな価値があるとでも思っているのか?」 

「こいつの言う通りだ! こいつは男の敵だぞ! 散々男を弄んで、貢がせて、振って悦に浸る最低な女なんだよ! お前も男だろ? わかんないのかよ!」 

「わかる訳ないだろう!!」 

わかる訳あるか! クズの考えなんてな。 

「お前知っているのか? この女は第8王女殿下を毒殺しようとしたんだぞ!」 

「ち、違う! あれは脅かそうとしただけなのです……ほんとの毒じゃないのです。それなのに本物みたいに言われて……いくら私がクズでも、人の命までなんて取らない! 信じて!」 
リーゼの言っていることは本当だろう。実はアリーから聞いたのだが、他のことは事実だが、毒殺の件に関しては証拠はどこにもない。 

肝心の毒がなかったのだ。 

ただ、それ以外は本当のことだったから、一番重要なことも本当のこととされた。 

「信じられる訳ないだろう? 散々男達を弄んでどん底に突き落としてきた悪女の言うことなんてな!」 

「そうだぜ。クズの言うことなんて聞く耳持てるか!」 

「______俺は信じる」 

「は?」 

「お前、馬鹿か?」 

「こいつ、弄ばれてやがる。だから大勢そうやって誑かされてきたんだよ、馬鹿がぁ!」 

馬鹿? 馬鹿でいいさ。 

ただわかるのはな。 

「リーゼのして来たことは知ってる。リーゼが男を馬鹿にしていることも、男を弄んで愉悦する性格なこともな、だがな______ 今クズなのはお前たちの方だろ?」 

「ああ?」 

「こいつ頭死んでるのか?」 

「頭死んでるのはお前らの方だろ? どんな理由があろうと女の子に乱暴するようなことが男のすることか? 俺は無抵抗で目に涙を浮かべているような子を乱暴しようとするようなヤツらは決して許せないんだよ! だから死ぬ直前位まではぶっちめるから覚悟しろや!」 

「けっ! 正義の味方気取ってんじゃねぇ! 馬鹿も極まるとすげぇな! ……そんなに言うならな、俺らをぶっちめて見せろや!!」 

次の瞬間男達が視界から消える。 

『瞬歩』のスキルか? 

「ご、ご主人様……もういいのです。私のことなんて見捨てていいから……」 

リーゼが俺を心配して検討違いの言葉を俺に投げかける。 

頑張ってご主人様と言って欲しいものだぜ。 

信用ないのね、俺。 

「いいから、黙って助けられとけ______ すぐに終わるしな」 

ヤツらは瞬間移動しているから俺の目に見えていないと思っているのだろう。 

さっきから結構近くまで接近して来ている。 

おちょくっているのが見え見えで腹が立つ。 

ならな。 
「おらよっと」 

軽く足を突き出す。 

ズガァ―――――― 

一人が派手にすっ転んだ。 

まあ、瞬歩のスキルで移動中に転んだらああなるか。 

まあ、三人も瞬歩のスキル持ちとか______ でも、負ける気はしないな。 

幸いここは狭い路地裏。誰かが通りかかることなんてまずない。 

女の子を乱暴するにはいい場所かもしれんがな。 

______誰も俺を止められないということでもあるな。 

______従って。 

「さあ、始めようか……このクズども」 

俺はニッと笑うと瞬歩のスキルを発動した。 

☆☆☆ 

「アル! 必ずあなたを見つけるからね!」 

アルの幼馴染の女の子のクリスは路地裏を走っていた。 

彼女はアルベルティーナにアルの情報を聞いていて、アルの常宿へ向かって走っていた。 

向かって走っているつもりだった。 

「な、なんでだろう? なんで同じ街なのにいつまでもアルの宿に到着しないの?」 

それは道を間違えているからです。 

そう、アルの幼馴染の女の子は極度の方向音痴だった。 

「……もう、こんな時間。今日は諦めて偶然目の前にあるこの宿に泊まろう」 

彼女は気が付かなかった。 

それは昨日も泊まった同じ宿…… 

そしてアルがいつも泊まっている常宿だった。 

彼女は街を一周回って帰って来てただけだった。 

「……アルがいれば」 

もっともではあるが、そのアルを探しているのだからどうしようもない。 

こうして、クリスはアルがリーゼを助けるために戦おうとする今! まさにその時。 

……近所を通り過ぎた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...