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34初めての冒険へ

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「はあ」 

俺は思わずため息が出た。 

今日は昨日の冒険者試験の結果が出る日だ。 

あの感じだと、おそらく不合格だろう。 

せめて筆記試験を頑張るべきだったが、気もそぞろで適当に書いてしまった。 

特に、こうするといいですよ(笑)とか、絶対添削する人が不愉快になったに違いない。 

なんてことをしてしまったんだ? 

俺は後悔しながら、アリーと冒険者ギルドへ向かった。 

「ねえ、アル君? なに朝からため息なんてついてるの?」 

「え? だって、昨日の感触だと、冒険者試験は不合格だよね?」 

「は? 何でそう思えるの? 意味がわかんないよ?」 

へ? 

どういうこと? 

普通、不合格だろ? 

俺、アリーと一緒に冒険者して……親睦を深めて……一発やらせてもらおうと必死だったのに。 

アリーが不思議そうな顔をしているが、きっと俺を慰めるために優しく接してくれているんだと思う。優しい子だな。ちょっと、一発だけでヤリ逃げするのに気が引けて来た。 

いかん、いかん、俺は女嫌いなんだ。 

何アリーに慰められてるんだ? 

女はみんな敵だ。 

そんなこんなで、アリーはその後、取り止めの無い、女の子らしい話をして俺を慰めてくれた。 

そして……いよいよギルドの掲示板の前に来た。 

ギルドの受付のお姉さん、エフィさんから合否発表はギルドの掲示板に掲載されると聞いていた。 

掲示板は目玉の魔物討伐依頼がほとんどだが、片隅に俺の合否結果があった。 

俺は恐る恐る見た。 

まぐれでもいい。 

合格していてて欲しい。 

そうしないとアリーと一発できない。 

合否結果を凝視する。 

『新人冒険者試験結果発表 氏名:アル ジョブ:放置プレイヤー レベル10 結果:合格』 

「ご、合格だぁ!」 

「よかったわね。アル君」 

アリーが天使のような顔で俺を見てくれる。 

き、奇跡だ! 

は!? 

そうか、きっとラッキーラビットのおかげだ! 

俺も昨日、アリーに料理してもらって食べたけど、これまで食べたどんな料理より美味しかった。きっと、ギルドの職員がそれを気にいってくれたのに違いない。 

ありがとうラッキーラビット。 

これから時々ギルドに差し入れすることにしよう。 

そして、ギルドの受付に行くとエフィさんが待っていた。 

「いらっしゃい。アル君。ずっと待っていたわよ。期待の超大型新人だからね」 

「へえ?」 

何を言ってるんだ? 

どう考えても不合格をラッキーラビットのお肉という賄賂でうまくやっただけなのに? 

「まあ、それより早く冒険に出ようよ。私、久しぶりでワクワクしてたの!」 

「俺も初めての冒険で、楽しみなんだ!」 

エフィさんが穏やかな笑みをたたえて、話し始めた。 

「まず、これがアル君の冒険者証よ」 

? 

「なんか、ブラックですけど。みんなこんな派手なカードなんですか?」 

「いやねえ、これはSSSクラスの冒険者にだけ発行される身分証と同じものよ。アル君の実力なら当然でしょ?」 

なんか、全然意味わかんないですけど? 

俺が理解が追いつかず、頭がぐるぐるしている間にアリーが次々と話を進めてしまった。 

「いい案件があったから紹介するわね。東の王都への街道に最近ジャイアントアントが出没するという情報が寄せられているの、討伐賞金は1匹につき金貨1枚よ」 

「ありがとうございます。金貨1枚は割りがいい仕事です。アル君がいれば心配ないし♪」 

「それじゃ、依頼の契約書にサインを♩」 

アリーが勝手に話を進めてしまったが、頭がグルグルな状態の俺にはついていけない。 

そして、冒険者ギルドを出ようとした時、突然声をかけられた。 

「おい! お前! ひょっとして勇者パーティのハズレスキルのアルじゃねぇか!!」  

ふいに明らかに粗暴そうな男が俺達の間に割り込んできた。  

どう見ても紳士的な態度じゃない。  

とはいえ、新参者として、とりあえずは気を使わざるをえない。  

「は、はい。俺は勇者パーティの一員、いえ、一員でした」  

 

「ぎゃははは! やっぱりな! その情けない顔! 確か王都で見かけたぜ! 俺はな、弱いヤツは死ぬほど嫌いなんだ」  

「…………」  

はぁ。  

世の中広いようで狭い。まさかこんなところで元勇者パーティの一員だったハズレスキルのアルだと知れるとは。 

勇者パーティの落ちこぼれはこんなにも馬鹿にされて生きていかなければならないのか?勇者パーティがみなから憧れる存在でなければね。 

突然、頭ごなしに見下されることもなかっただろうに。 

「あなた、突然失礼でしょ? アル君はとても強くてカッコいいのよ!」  

アリーの方が俺より先に怒ってくれた。  

だが男も引かない。  

「はあ? なんだオメーは? ぶっ飛ばされたいのかよ!」  

女の子になんて暴言を。俺はちょっと許せなくなった。 

だが、ふいに粗暴な男が俺に下卑た笑みを浮かべた。  

「おい、お前、良く見たら上玉の女連れてるじゃねえか。俺と勝負しろ。俺が勝ったら、その女、俺の女な。うひょー! 俺、ついているぜ!」  

俺はアリーの方を向くと。  

「どうやら話し合いが通じる相手じゃないみたい」  

「そうね、この人、かなりの戦士(笑)みたいだからね、身の程を教えてあげてね♪」  

俺が先程購入したばかりの無銘の剣に手をかけると、その時一人の男が割って入って来た。  

「おい、お前、誰に喧嘩を売っているのか分かっているのか? その人は昨日の冒険者ギルド入団試験で500点万点中、1000点をとった伝説の冒険者だぞ……失礼だろう?」  

「し、失礼?……昨日の入団試験を1000点? いや、嘘だろ? あの有名人とこいつが同じ人物なんて、そんな訳が……」  

戸惑う粗暴な男、だが外野からは。  

「あの人がうちのギルドの入団試験で創設以来、最高点! ていうか、最初からSSS級待遇の天才冒険者なの?」  

「えっ!? あの人がなの? 良く見るとカッコいい! 素敵! 恋人になってくれないかな!!」  

「マジで? あの噂の天才があの人か? そう言えば、一部の隙もねぇ!」  

何故か謎のブームがやって来ていた。 
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