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31冒険者試験-魔法編2
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俺はなんかやらかしたような気がしたが、気持ちを切り替えて、ラッキーラビットをアピールすることにした。
人間、美味しいものを食べると幸せになる。
師匠なんて、どんなに怒っても今日の夕食の献立の話するとたちまち涎を垂らして全部忘れてくれる。
美味しいご飯は万人を幸せにする魔法なのだ。
「あった、ありました。アル君の言う通り、ラッキーラビットです!」
アリーが俺が仕留めたラビットを持ち上げて、試験官の先生の方に見せる。
「剣術試験の時もどうしようもなく、非常識な子だとは思ったけど……」
エフィさんが何故かため息を吐きながら、俺のこと非常識だと言う。
駄目か? 駄目なのか?
何が悪いのかはわからんけど、剣術と同じなら、低評価ということか?
俺はガックリとするが、ここはせめて、ラビットの肉で少しでも気を引こうとした。
「ラビットの肉はギルドに差し上げます。皆さんで召し上がってください!」
「えっ!? いいの? ラッキーラビットなのよ?」
「構いません。また仕留めればいいだけですから、簡単ですし」
「ま、また仕留めるんだ……簡単なんだ、はあ」
何故か、エフィさんが呆れたような声で言う。
「ねえ。アル君、今度、私にも捕ってよ、料理してあげるわよ」
「本当? なら、試験の後で捕ってくるよ」
アリーは極上の笑顔で俺の顔を見た。
アリーのご機嫌大事。その積み重ねが、一発に繋がる。
そんな感じで、俺が3km先のラッキーラビットを狙って魔法を放ったことは証明されたものの、試験官のクルゥさんはブツブツと何かを呟くばかりで何も言わない。
エフィさんは生暖かい目で俺を見ている。
終わった。
どうも、俺は試験に落ちたようだ。
何かを間違えたらしい。
エフィさんの呆れた表情や、不機嫌な試験官のクルゥさんの呟きから、俺は冒険者への扉を閉ざされたと感じた。
その後、筆記試験があったが、俺はどうせ落ちるんだしと気もそぞろで、筆記試験を受けて、この日を終えた。
その後ラッキーラビットを1匹捕らえて、アリーにプレゼントしたのは言うまでも無い。
剣技試験官side
「あの少年は一体、何者なんだ?」
俺は規格外の冒険者の新人、アル君の試験を終わり、驚きを隠せないものの、未だやることがあった。
少年が錬成したという例の剣の鑑定結果を知る必要があった。
もちろん、自身の剣の鑑定もだ。ギルドの最高位の鑑定家に鑑定を依頼した。
「ミスリルの剣を無銘のただの鉄の剣で斬るとかあり得ん」
あの剣には何かある。
あの少年はちょっと剣を強化するとか言っていた。
一体、何をしたんだ?
その時!
「ギ、ギルド長! こ、この二振りの剣を一体何処で手に入れたんですか?」
声がした方に目を向けると、剣の鑑定を依頼したジョブ『万能鑑定家』の鑑定のスキル持ちの職員が慌てたような顔で詰め寄って来た。
「やっぱり、唯の剣ではなかったか?」
「唯の剣どころか、幻の古代の日の国の刀に、アダマンタイトとオリハルコンで作られた聖剣並みの国宝級の剣です! こんなの売ることも出来ない。国王にでも献上するか、博物館に寄贈するしかないです!!」
「な、なんだとぉ!!」
俺はあまりのことに目眩がした。
確かに……あの少年は俺の剣をアダマンタイトとオリハルコンに剣に錬成するとか言っていた。
普通に考えると、明らかに頭おかしい少年だ。
だが、彼の言っていることは本当だった。
そして、俺はもっと信じられない事実に気がついた。
少年が使っていたのはアダマンタイトの剣の方じゃない。
彼が使ったのは倉庫の無銘の鉄の剣を変えた古代の幻の技法で作られた古刀。
だが、古刀はアダマンタイトやオリハルコンの剣のような強度はない。
無銘の剣より丈夫ではあるが、唯の鋼の剣に過ぎない。
そう、あの頭のおかしいとしか思えない少年は信じられない匠の技で、俺が持っていた世界最強強度のアダマンタイトとオリハルコンの合金の剣を剣の技量だけで、斬ったのだ。
俺はハガーレ流剣術を学んだが、師匠に聞いたことがある。
剣技を極めれば、例え聖剣であっても、唯の無銘の鉄の剣で斬ることが出来ると。
そう、あの少年は唯の鋼の刀でアダマンタイトオリハルコン合金の剣を斬ったのだ。
あの少年は剣技が頭おかしいレベルなのは間違いない。
俺は思い至ると、思わずフラフラして自分の椅子にへたり込んでしまった。
自分でも無理も無いと思う。
だが。鑑定家は更に続けてこう言った。
「材質や製法も脅威なんですが、聖剣の方は強化の付与魔法に、身体能力向上の付与魔法に、極めつけは、雷の強力な付与魔法がかけられていました」
「そ、それはまさか……」
「そのまさかです。あの剣は……伝説の雷神剣です」
俺は最後まで鑑定家の言うことを聞き取ることが出来なかった。
あまりのことに腰が抜けて椅子からずり落ちてしまった。
もう、ヤダあの子。怖すぎるでち。
人間、美味しいものを食べると幸せになる。
師匠なんて、どんなに怒っても今日の夕食の献立の話するとたちまち涎を垂らして全部忘れてくれる。
美味しいご飯は万人を幸せにする魔法なのだ。
「あった、ありました。アル君の言う通り、ラッキーラビットです!」
アリーが俺が仕留めたラビットを持ち上げて、試験官の先生の方に見せる。
「剣術試験の時もどうしようもなく、非常識な子だとは思ったけど……」
エフィさんが何故かため息を吐きながら、俺のこと非常識だと言う。
駄目か? 駄目なのか?
何が悪いのかはわからんけど、剣術と同じなら、低評価ということか?
俺はガックリとするが、ここはせめて、ラビットの肉で少しでも気を引こうとした。
「ラビットの肉はギルドに差し上げます。皆さんで召し上がってください!」
「えっ!? いいの? ラッキーラビットなのよ?」
「構いません。また仕留めればいいだけですから、簡単ですし」
「ま、また仕留めるんだ……簡単なんだ、はあ」
何故か、エフィさんが呆れたような声で言う。
「ねえ。アル君、今度、私にも捕ってよ、料理してあげるわよ」
「本当? なら、試験の後で捕ってくるよ」
アリーは極上の笑顔で俺の顔を見た。
アリーのご機嫌大事。その積み重ねが、一発に繋がる。
そんな感じで、俺が3km先のラッキーラビットを狙って魔法を放ったことは証明されたものの、試験官のクルゥさんはブツブツと何かを呟くばかりで何も言わない。
エフィさんは生暖かい目で俺を見ている。
終わった。
どうも、俺は試験に落ちたようだ。
何かを間違えたらしい。
エフィさんの呆れた表情や、不機嫌な試験官のクルゥさんの呟きから、俺は冒険者への扉を閉ざされたと感じた。
その後、筆記試験があったが、俺はどうせ落ちるんだしと気もそぞろで、筆記試験を受けて、この日を終えた。
その後ラッキーラビットを1匹捕らえて、アリーにプレゼントしたのは言うまでも無い。
剣技試験官side
「あの少年は一体、何者なんだ?」
俺は規格外の冒険者の新人、アル君の試験を終わり、驚きを隠せないものの、未だやることがあった。
少年が錬成したという例の剣の鑑定結果を知る必要があった。
もちろん、自身の剣の鑑定もだ。ギルドの最高位の鑑定家に鑑定を依頼した。
「ミスリルの剣を無銘のただの鉄の剣で斬るとかあり得ん」
あの剣には何かある。
あの少年はちょっと剣を強化するとか言っていた。
一体、何をしたんだ?
その時!
「ギ、ギルド長! こ、この二振りの剣を一体何処で手に入れたんですか?」
声がした方に目を向けると、剣の鑑定を依頼したジョブ『万能鑑定家』の鑑定のスキル持ちの職員が慌てたような顔で詰め寄って来た。
「やっぱり、唯の剣ではなかったか?」
「唯の剣どころか、幻の古代の日の国の刀に、アダマンタイトとオリハルコンで作られた聖剣並みの国宝級の剣です! こんなの売ることも出来ない。国王にでも献上するか、博物館に寄贈するしかないです!!」
「な、なんだとぉ!!」
俺はあまりのことに目眩がした。
確かに……あの少年は俺の剣をアダマンタイトとオリハルコンに剣に錬成するとか言っていた。
普通に考えると、明らかに頭おかしい少年だ。
だが、彼の言っていることは本当だった。
そして、俺はもっと信じられない事実に気がついた。
少年が使っていたのはアダマンタイトの剣の方じゃない。
彼が使ったのは倉庫の無銘の鉄の剣を変えた古代の幻の技法で作られた古刀。
だが、古刀はアダマンタイトやオリハルコンの剣のような強度はない。
無銘の剣より丈夫ではあるが、唯の鋼の剣に過ぎない。
そう、あの頭のおかしいとしか思えない少年は信じられない匠の技で、俺が持っていた世界最強強度のアダマンタイトとオリハルコンの合金の剣を剣の技量だけで、斬ったのだ。
俺はハガーレ流剣術を学んだが、師匠に聞いたことがある。
剣技を極めれば、例え聖剣であっても、唯の無銘の鉄の剣で斬ることが出来ると。
そう、あの少年は唯の鋼の刀でアダマンタイトオリハルコン合金の剣を斬ったのだ。
あの少年は剣技が頭おかしいレベルなのは間違いない。
俺は思い至ると、思わずフラフラして自分の椅子にへたり込んでしまった。
自分でも無理も無いと思う。
だが。鑑定家は更に続けてこう言った。
「材質や製法も脅威なんですが、聖剣の方は強化の付与魔法に、身体能力向上の付与魔法に、極めつけは、雷の強力な付与魔法がかけられていました」
「そ、それはまさか……」
「そのまさかです。あの剣は……伝説の雷神剣です」
俺は最後まで鑑定家の言うことを聞き取ることが出来なかった。
あまりのことに腰が抜けて椅子からずり落ちてしまった。
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