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29冒険者試験-剣技編2
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俺なんかやらかしたような気がする。
と、思った瞬間。
「ま、参った、俺の負けだ」
「えっ?」
俺は驚いた。
えっ? これで終わっちゃうの?
まずいぞ、これは。
多分これは試験官の剣の整備不良か何かの問題だと思う。
俺は何も爪痕を残せていない。
多分、この試験は負けても、試験官を納得させることができれば良いモノだ。
なのに、この試験官は勝負を終わらせてしまった。
は!?
そうか、俺が自前の剣さえ持参しない上、不運にも剣が折れるというアクシデントが起きて、機嫌を損ねてしまったんだ。
ここは何とか、勝負をもう一度やらせて欲しい。
いや、しないと、剣技の点数がかなり悪いものになってしまう。
この試合に勝敗は関係ないんだ。
俺は慌てて、試験官に頭を下げて頼み込んだ。
「すいません。お願いです。もう一度勝負を! 俺にチャンスを下さい!」
俺は姿勢を正して、頭を低く下げた。
だが。
「いや、そうは言っても、剣が折れてしまってな」
そうか、そういう問題もあったのか!?
だが、それなら話が早い。
「剣は俺が責任を持って修復させてもらいます!」
「は? そんなこと、鍛冶屋でもないとできんだろ?」
「いえ、俺、錬金術のスキルがありますから、剣の修復はできます」
「錬金術? 意味わからんが……わかった。直してくれたら、もう一戦頼む」
「わかりました」
俺は試験官の剣を受け取ると、鑑定の魔法で剣をチェックした。
ミスリルの剣か。
市場に出回る剣では最上級の剣だ。
危ない、危ない。
こんな貴重な剣、俺のせいで折っただなんて。
絶対、試験、落とされる。
は!
これはチャンスだ。
このままただ修復するだけでは、俺が自前の剣を持って来なかったというマイナスポイントは消せない。ここは。
俺は錬金の技術でミスリルの剣の中心をこの世界でもっとも頑丈で、少し柔らかいオリハルコンに変え、外周をより硬いアダマンタイトに変えた。もちろん、鍛造と焼き入れの措置も忘れない。
いや、これだけでは心許ない。試験官に好印象を受けてもらうためには、もっと工夫を。
そうだ。剣に付与魔法を付与しよう。
俺は剣を修復というか、全く別物に変えて、付与魔法を付与した。
付与魔法は身体強化に、剣の強化、雷の魔法を強くかけておいた。
出来ました。確認ください。
「お。おお、本当に修復できたんだな。助かる。んん? なんか軽いし、魔力を強く感じるが?」
流石、鋭い。この試験官、直ぐに見破った。
「はい、ついでなので、材質をアダマンタイトとオリハルコンに変えておきました。付与魔法も施しましたから、安心して下さい。当分、不幸な事故で折れたりしません!」
「は?」
「いや、アル君、何言ってるの?」
「えっと、剣が修復できるだけでも凄いのに、アダマンタイトとか、オリハルコンとか、何?」
なんか、試験官がポカンとしてるし、アリーや受付嬢のエフィさんが変なこと言ってる。
「まあ、何言ってるのかさっぱりわからんが、再戦しよう。始めよう」
「はい! お願いします!」
俺と試験官は剣の切先を合わせると、試合を再開した。
しかし、試験官はさっき違い、打ち込んで来ない。
そうか、さっきと逆で、今度は俺に打ち込んで来いと言うのだ。
ならば。
「キェエエエエ!! チェスト!!」
俺は叫ぶと同時に踏み込んだ。
単純な上段からの逆胴への一撃だ。
試験官は素早く、俺の剣を受けた。
だが。
パキン。
試験官の剣がまた……
折れてしまった。
「……ま、参りました。もう許して下さい」
「はあ」
「へぇ」
「やっぱり」
あれ? なんかまたやってしまった。
多分、慌てたから剣の修復の時、不運にも弱いところが出来てしまったんだ。
不覚。
俺は慌てて謝って、試験官の剣を修復した。
だが、ここで試験は中止になってしまった。
やばい、俺、何にも爪痕残せなかった。
俺は落胆して、次の試験、魔法試験の会場に向かうことになった。
試験官side
全く、いるんだよな。遊び気分で冒険者を目指す若者が。
俺は自前の剣さえ持って来なかった若者への評価を下げざるを得なかった。
しかも、貸し出し用の剣を強化するとか意味がわからん。
まあ、せめて剣技で見るべきものが無いといい点はやれんな。
と、最初はそう思っていた。
だが、少年の構えを見て冷や汗が出た。
「(一部の隙もねぇ!)」
俺には分かる。元S級冒険者だった俺から見て、控え目に言って、達人のそれだ。
俺は凄まじい緊張感に堪え切れず、少年に斬りかかっていた。
だが。
パキン。
俺の剣は折れた。
でも、俺は剣が折れたことより、少年の太刀筋の美しさに目を奪われた。
何一つ無駄の無い動き、美しい弧を描く剣の動き。
俺の剣が折れるのは当然か? 否!
確かに少年の剣技は完璧だ。
だが、俺の剣はミスリルの技物だ。
ただの無銘の剣に折られる筈が無い。いやだが、剣を折られ、いや斬られた。
惨敗だった。
しかも、何故俺の剣が斬られたのかさっぱりわからん。
にも関わらず、少年は突然頭を下げて、真摯に再戦を申し込んできた。
いや、剣が折れて、無理!
でも。
「剣は修復できます」
その言葉に再戦を受けるよりなかった。
やだ、俺、もう泣きそう。
そして、再戦。
だが、やはり1mmの隙も無い少年に打ち込める筈がなかった。
その時、少年は俺に上段から逆胴に、やはり完璧な美しい弧を描き、打ち込んで来た。
「(こ、殺される!!!)」
いや、マジでこいつ、魔族かなんかじゃないか?
咄嗟に剣で受けるが。
パキン。
剣があっさり折れた。
やだ、コイツ、怖すぎるでち。
と、思った瞬間。
「ま、参った、俺の負けだ」
「えっ?」
俺は驚いた。
えっ? これで終わっちゃうの?
まずいぞ、これは。
多分これは試験官の剣の整備不良か何かの問題だと思う。
俺は何も爪痕を残せていない。
多分、この試験は負けても、試験官を納得させることができれば良いモノだ。
なのに、この試験官は勝負を終わらせてしまった。
は!?
そうか、俺が自前の剣さえ持参しない上、不運にも剣が折れるというアクシデントが起きて、機嫌を損ねてしまったんだ。
ここは何とか、勝負をもう一度やらせて欲しい。
いや、しないと、剣技の点数がかなり悪いものになってしまう。
この試合に勝敗は関係ないんだ。
俺は慌てて、試験官に頭を下げて頼み込んだ。
「すいません。お願いです。もう一度勝負を! 俺にチャンスを下さい!」
俺は姿勢を正して、頭を低く下げた。
だが。
「いや、そうは言っても、剣が折れてしまってな」
そうか、そういう問題もあったのか!?
だが、それなら話が早い。
「剣は俺が責任を持って修復させてもらいます!」
「は? そんなこと、鍛冶屋でもないとできんだろ?」
「いえ、俺、錬金術のスキルがありますから、剣の修復はできます」
「錬金術? 意味わからんが……わかった。直してくれたら、もう一戦頼む」
「わかりました」
俺は試験官の剣を受け取ると、鑑定の魔法で剣をチェックした。
ミスリルの剣か。
市場に出回る剣では最上級の剣だ。
危ない、危ない。
こんな貴重な剣、俺のせいで折っただなんて。
絶対、試験、落とされる。
は!
これはチャンスだ。
このままただ修復するだけでは、俺が自前の剣を持って来なかったというマイナスポイントは消せない。ここは。
俺は錬金の技術でミスリルの剣の中心をこの世界でもっとも頑丈で、少し柔らかいオリハルコンに変え、外周をより硬いアダマンタイトに変えた。もちろん、鍛造と焼き入れの措置も忘れない。
いや、これだけでは心許ない。試験官に好印象を受けてもらうためには、もっと工夫を。
そうだ。剣に付与魔法を付与しよう。
俺は剣を修復というか、全く別物に変えて、付与魔法を付与した。
付与魔法は身体強化に、剣の強化、雷の魔法を強くかけておいた。
出来ました。確認ください。
「お。おお、本当に修復できたんだな。助かる。んん? なんか軽いし、魔力を強く感じるが?」
流石、鋭い。この試験官、直ぐに見破った。
「はい、ついでなので、材質をアダマンタイトとオリハルコンに変えておきました。付与魔法も施しましたから、安心して下さい。当分、不幸な事故で折れたりしません!」
「は?」
「いや、アル君、何言ってるの?」
「えっと、剣が修復できるだけでも凄いのに、アダマンタイトとか、オリハルコンとか、何?」
なんか、試験官がポカンとしてるし、アリーや受付嬢のエフィさんが変なこと言ってる。
「まあ、何言ってるのかさっぱりわからんが、再戦しよう。始めよう」
「はい! お願いします!」
俺と試験官は剣の切先を合わせると、試合を再開した。
しかし、試験官はさっき違い、打ち込んで来ない。
そうか、さっきと逆で、今度は俺に打ち込んで来いと言うのだ。
ならば。
「キェエエエエ!! チェスト!!」
俺は叫ぶと同時に踏み込んだ。
単純な上段からの逆胴への一撃だ。
試験官は素早く、俺の剣を受けた。
だが。
パキン。
試験官の剣がまた……
折れてしまった。
「……ま、参りました。もう許して下さい」
「はあ」
「へぇ」
「やっぱり」
あれ? なんかまたやってしまった。
多分、慌てたから剣の修復の時、不運にも弱いところが出来てしまったんだ。
不覚。
俺は慌てて謝って、試験官の剣を修復した。
だが、ここで試験は中止になってしまった。
やばい、俺、何にも爪痕残せなかった。
俺は落胆して、次の試験、魔法試験の会場に向かうことになった。
試験官side
全く、いるんだよな。遊び気分で冒険者を目指す若者が。
俺は自前の剣さえ持って来なかった若者への評価を下げざるを得なかった。
しかも、貸し出し用の剣を強化するとか意味がわからん。
まあ、せめて剣技で見るべきものが無いといい点はやれんな。
と、最初はそう思っていた。
だが、少年の構えを見て冷や汗が出た。
「(一部の隙もねぇ!)」
俺には分かる。元S級冒険者だった俺から見て、控え目に言って、達人のそれだ。
俺は凄まじい緊張感に堪え切れず、少年に斬りかかっていた。
だが。
パキン。
俺の剣は折れた。
でも、俺は剣が折れたことより、少年の太刀筋の美しさに目を奪われた。
何一つ無駄の無い動き、美しい弧を描く剣の動き。
俺の剣が折れるのは当然か? 否!
確かに少年の剣技は完璧だ。
だが、俺の剣はミスリルの技物だ。
ただの無銘の剣に折られる筈が無い。いやだが、剣を折られ、いや斬られた。
惨敗だった。
しかも、何故俺の剣が斬られたのかさっぱりわからん。
にも関わらず、少年は突然頭を下げて、真摯に再戦を申し込んできた。
いや、剣が折れて、無理!
でも。
「剣は修復できます」
その言葉に再戦を受けるよりなかった。
やだ、俺、もう泣きそう。
そして、再戦。
だが、やはり1mmの隙も無い少年に打ち込める筈がなかった。
その時、少年は俺に上段から逆胴に、やはり完璧な美しい弧を描き、打ち込んで来た。
「(こ、殺される!!!)」
いや、マジでこいつ、魔族かなんかじゃないか?
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