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28冒険者試験-剣技編1

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アリーが慣れた感じで冒険者ギルドに入っていく。 

「じゃあ、受付で冒険者申請しようね。任せて、私がリードしてあげるから」 

そう言うとアリーは俺を連れて一人の受付嬢の前に俺を連れて行った。 

「あら、アリー。今日はフィン達と一緒じゃないの?」 

「……今日からあの二人とは別行動なの。察して、エフィ」 

「そっか……わかったわ」 

受付嬢は一瞬うつむいて辛そうな顔をするが、気を取り直したのか笑顔に戻り、こう言った。 

「それで、今日はどういう依頼を受けるの?」 

「ううん。違うの。実は新しいパートナーのアル君の冒険者登録をお願いしようと」 

「もう、新しいパートナーが決まったのね。よかったわね。それじゃ、アル君、この契約書を読んでサインして、今日は確かギルド長暇だからすぐにでも試験受けられるわよ」 

そう言って、エフィという受付嬢から1枚の契約書と説明書を渡される。 

内容を読むが、勇者パーティとほぼ同じだった。 

ギルドは最大限の情報と協力を約束するが、命の保証はない。 

あくまで自己責任で……という感じだ。 

俺は黙ってスラスラとサインした。 

「アリーがスカウトしたんだから、大丈夫だと思うけど、冒険者を舐めていると命に係わるからね。試験は厳しいからね。心して受けてね」 

そう言うと、受付に『Close』のプレートを出すと。 

「すぐに準備するね」 

そうして、裏の小さな闘技場に連れられていかれた。 

そして、ほどなくして試験官がやって来た。 

多分、話からするとギルド長だろう。 

「俺が試験官でギルド長のバーニィだ。これがアリーの新しいパートナーか? 大丈夫かな? フツメンだぞ」 

「ええっ!?」 

失礼なヤツだな。冒険者の実力と顔に相関関係があると言うのか? 

などと、ちょっと怒りを覚えるが、俺は困ったことになった。 

「だが、君は剣を持っていないようだが、自前の剣は持ってこなかったのか? 何なら取りに行ってもいいぞ?」 

「えっ……いや、自前の剣は持っていなくて……借りることはできませんか?」 

しまった。俺は自分の失態に気が付いた。でも、さっきの説明書には何も書いてなかったぞ。 

「ギルドの剣を貸し出すことはできるから大丈夫だ。たが……慣れた剣が一番だ。冒険者を目指す者が自前の剣を持ってないなんて……命がけの冒険者への希望者はこの試験に自前の剣を持参するのが普通だがな」 

良かった。剣は貸して貰えるんだ。実は俺、師匠から餞別に聖剣をもらって、収納魔法にしまってあるんだけど、収納魔法って希少なスキルだから、あまり人前で披露しない方が良いって師匠が……それに聖剣なんて出したら、凄く不審に思われる。ここは剣を借りよう。 

しかし、言われてみれば慣れた剣の方がいいな。あれ? これ、もしかして既に試験は始まってるんじゃないか? そんな気構えを含めての試験なんだろう。エフィさんが強さだけじゃないって言ってた。ヤバい、今の凄い低評価だよな? 

多分、試験は勝てなくても、爪痕を残すか、気構えがしっかりしていればパスできるヤツだ。 

「では、すみませんが、剣を貸して下さい」 

「ああ、わかった。あちらの倉庫にいくつかあるから、少しでも自分の力や体格にあわせたモノを選ぶといい」 

「わかりました。ありがとうございます」 

俺は思わず心の中で『ひぃー!?』と叫んでいた。 

多分、剣も自前で持ってこないとか、ありえないんだ。 

確かにちょっと考えたら、当然のような気がする。 

だから、試験がより厳しくなっているんだ。 

今、試験官は少しでも自分の力や体格に合わせたモノを選べって…… 

きっと、これも試験だ。 

不相応な剣を選ぶと、きっと減点だ。 

俺は試験官に連れられて倉庫に向かい、剣を選んだ。 

しかし……困った。なんかどれもなまくらだし、無銘の剣ばかりで強度が心元ない。 

これはかなりピンチだ。 

そういうことか、自前の剣を持ってこないと、こんなハンデになるのか。 

俺は得心がいった。 

しかし、俺はいい考えを思いついた。 

「あ、あのバーニィさん? この剣を少し、強化してもいいですか?」 

「……え?」 

俺の質問に何故か、試験官はポカンと口を開けて固まってしまった。 

「悪い、何を言っているのか意味が分かんない……が、試験規則にそんな決まりはないからOKだ……多分」 

「ありがとうございます」 

やった、許可がもらえた。俺には錬金術の魔法があるし、アルケミストのスキルもある。 

よし、剣を強化しよう。ついでに組成も変えよう。 

俺は剣を量子段階から錬金術の魔法で無銘の剣の組成をなまくらな鉄から鍛えられた玉鋼へと変えた。中央を柔らかい鋼に、外周を硬い鋼に鍛錬と焼き入れの処理を魔法で行った。 

これ、古文書で読んだ太古の刀鍛冶の技法を取り入れたものだ。 

よし、できた。これなら強度も切れ味もちょうどいい筈だ。 

「この少年……大丈夫か? 何を言っているのかさっぱりわからん。まあいい、試合開始するぞ!」 

「はい! よろしくお願いします!」 

試合開始となった。 

試験官は大男らしく、大剣を使用していた。 

これは、かなりの斬撃がくるな。 

俺は身構えて、試験官の大剣が振り下ろされるのを待った。 

試験官はしばし沈黙すると、意外とあっさりその剣を振り下ろして来た。 

師匠に習った通り大剣を即席の剣で練習通り受けた。 

極限まで無駄なく、極限まで自身の剣に負担なく、極限まで相手の剣の一点に力が集中するように俺は剣を受け身の型で受けた。 

大男の力強い大剣の斬撃を細身の俺が受ける。 

さぞかしとんでもない衝撃がやって来る筈だ。 

筈だよね? 

「あれ?」 

何故か試験官の大剣を受けた時、何の衝撃もなかったような気がする。 

試験官の剣、どうした? 

良く見ると……試験官の剣が……あっさり折れた。 

……いや、斬れちゃった。 

「はっ?」 

「えっ?」 

「へぇ?」 

みな、間の抜けた声をあげる。  

さっきまで心配そうに見守っていたアリーとエフィさんも、すっかり度肝を抜かれてしまったようだ。  

ぽかんと口を開けて、俺と斬れてしまった試験官の剣を交互に見る。 

俺……なんかやらかしたような気がする。 
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