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18その頃勇者エルヴィンは? 2
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「勇者エルヴィン、僕の言った通り、リストラは済んだようだね?」
この国の王子レオンはエルヴィンに語りかけた。彼は勇者エルヴィンの強化担当で、この国の騎士団の責任者でもあった。
「はい、レオン様。パーティの足手まといアルを上手く処分出来ました」
レオンは一瞬アルが誰の事か思いだせないようだったが、ふとあの足手まといの名前かと顔を思い出したようだ。
「ああ、あのハズレスキルのことだね……まさしく無能だったね」
「はい。パーティの活動で半年も一緒に行動しているのですが、レベルは俺達の半分しかあがりませんでした。その上、ポーションがもったいないので、庇ってやる必要があり、俺が怪我する事もありました。偵察係として雇っているのに、最近は一度も偵察などしていません。正しく無能です」
「それは大変だったね。国王陛下が勇者パーティメンバーには気を遣うよう言われていてな。無能にまで気を遣わされて大変だったのだ。国王にあの無能をクビにしたいと申し上げたら、激しく止められてね、それで君に処分してもらうより仕方なかったんだ」
「はぁ、本当にあの無能には苦労させられました。しかし、レオン様が殺してしまえばいいと、ご判断されて、俺も躊躇なく処分できました。流石王子殿下です」
「まあ、勇者パーティも実力主義で行くべだね。魔物との戦いで、勇者である君が死んでしまいでもしたら大変だ。その為にはアル君の死は必要なことだったんだよ」
「おっしゃる通りでございます、レオン様」
「勇者エルヴィン、それから、あの無能へは国王陛下より特別弔慰金を賜る事になる。もちろん無能の親に渡す必要なぞないよね。僕と君で密かに山分けだけど、異存はないかい?」
「異存などございません。あの無能が俺の役に立つのなら天国で泣いて喜ぶでしょう」
「ああ、これからも頼むぞ。君はここ100年で最高速度でレベルを上げている期待の勇者だ。魔王への備えも万全になる」
「もちろんです、殿下、魔王は必ず俺が止めを刺してご覧にいれます」
「頼むよ」
王子レオンと勇者エルヴィンは互いにニヤリと笑う。
勇者エルヴィンは王都からダンジョンのある街まで帰還すると、すぐにダンジョン攻略を再開した。
表向きはアルの失踪に悲しむクリスを思いやってと言うことだが、単に報告に行く時間を作っただけだった。
彼はダンジョン攻略の速度を速めて、攻略済の第5階層から一気に第6階層を攻略するつもりだった。
「今日は第6層を目指す。先ずは5層までサクサク行くぞ!」
「任せてエドヴィン、僕たちの力ならすぐだよ」
「ふふっ、エルヴィンさえいればどんな魔物だって平気よ、それに足手まといもいなくなったしね」
「ははっ、正しくそうだな!」
「……」
クリスはギリリと唇を噛む。
愛しいアルへの暴言は許せなかった。
早くこんなパーティは抜けたい。そんな思いでいっぱいだった。
それに剣聖の彼女は杞憂があった。
それは先日会ったアルの知り合いの話。
初めて会った怪しい人物だが、クリスは信用できた。
あの人は明らかにアルに好感を持っている。
だから、信用できる。
そんな彼女が残した驚愕の事実。
勇者パーティが歴史上最速でレベル上げが実現できた理由。
それはアルの隠れスキルのおかげだと言うのだ。
スキル、パーティステータス10倍。
アルは唯一無二のパーティの重要な存在だったんだ。
本当ならとんでもない追放劇だ。
例の女の人からは、早くパーティを抜けろということと、十分注意をするようにということだった。
勇者パーティは第3階層を何とか進んでいた。
すでに攻略済みの第3階層には大して強い魔物がいる筈がなかった。
だが。
「(力が半減……いや、1/10になっている?)」
あの怪しい女性の言う通りだった。
パーティの要を失った勇者パーティはとんでもなく弱体化していた。
だが、それより問題なのは。
「楽勝だね。エルヴィン、やっぱり君は凄いよ」
「本当、アルと違って、本当に強くて素敵」
聖女ナディアも煉獄魔導士のアンネも全く気付いていない。
もちろん、エルヴィンもだ。
「ロイヤルオークが現れたわ!!」
前衛の剣聖のクリスが魔物の出現に警告する。
ロイヤルオークは5体だ。サクっと倒して終わりだな。
「皆、気軽に倒すぞ。こんなのは雑魚だ!?」
エルヴィンは皆に発破をかけた。景気づけに軽く勝利するつもりだった。
アンネがロイヤルオークに催眠の魔法を唱える。そして、バフ役のナディヤがパーティへ強化魔法を唱える。
しかし。
「ご、ごめんなさい! 催眠の魔法が効かない!」
「構わん、力押しだ!!」
しかし、ロイヤル・オークに簡単に圧される。
「ナディヤさん、回復魔法をお願いします!!」
前衛職のクリスが回復魔法を要求する。何故だ? 彼女の腕なら、こんな処で回復魔法を必要とする怪我などしない筈だ?
「ねえ、エルヴィン? 僕たち弱くなってないかな?」
さすがに聖女ナディヤが劣勢になって弱体化していることに気が付いた。
「ナディヤ、たまたま運が悪いんだけだ。そういう時もあるさ、気にするな」
普段ならこの階層の魔物相手にこんな苦戦をした事はない。一体どうしたのだ?
苦戦はしたが、何とかロイヤルオークを倒した。だが、まるで第5階層の階層主と戦っていたかの様な錯覚を覚える。
「おい、みんなどうしたんだ? 俺達は栄えある勇者パーティなんだぞ。みんなもっとやる気を出してくれ!!」
糞、アルが死んで足手まといがいなくなった筈なのに!
しかし、第3階層で事態が好転する事はなかった。続いて現れたロイヤルゴブリンにも苦戦した。自身でも体感できた、普段よりダメージを与える事ができない。もらったダメージは大きい。
勇者パーティの苦戦は当然だった。パーティの強化魔法はレベル50の聖女ナディヤでさえ攻防1.2倍。レベル上限になっても1.5倍がやっとなのだ。アルの常時ステータス10倍のスキルはぶっ壊れの性能だったのだ。ステータス自体が10倍になるから、後衛職の魔法使いの魔力も10倍になる、デバフの魔法をしくじる事なんて事はなかった。前衛も後衛も速度、力、魔力、その全てが10倍だったのだ。彼らの戦力は1/10以下になっていた。たった一人が抜ける事によって……
それに、アルの抜けた穴はそれだけではなかった。
「おい、この魔物、何て名前だったっけ?」
勇者エルヴィンは思わず聞いた。滅多に出現しないレアな魔物。この手の魔物は攻略法を考えて対処しないと、例え勇者パーティでも危険だ。
「ア、アルがいないから……」
クリスの言葉に勇者エルヴィンは思い出した。だいたい、魔物の知識やダンジョンの様々な知識を持っていたのは、あの忌々しいアルだったのだ。アルが魔物の情報や攻略法を覚えていた。それ位しか、やる事がなかったが、今となっては、新たに知識面の人材がいる事は確かだ。
「明らかに戦力が落ちていると思います?」
前衛職のクリスが俺を睨んで泣き言を言う。
「泣き言を言うな! お前たちの気合いが足らんだけだ!?」
勇者エルヴィンの叱咤がダンジョンにこだまする。
だが、結局、彼らが3階層を突破する事はなかった。
この国の王子レオンはエルヴィンに語りかけた。彼は勇者エルヴィンの強化担当で、この国の騎士団の責任者でもあった。
「はい、レオン様。パーティの足手まといアルを上手く処分出来ました」
レオンは一瞬アルが誰の事か思いだせないようだったが、ふとあの足手まといの名前かと顔を思い出したようだ。
「ああ、あのハズレスキルのことだね……まさしく無能だったね」
「はい。パーティの活動で半年も一緒に行動しているのですが、レベルは俺達の半分しかあがりませんでした。その上、ポーションがもったいないので、庇ってやる必要があり、俺が怪我する事もありました。偵察係として雇っているのに、最近は一度も偵察などしていません。正しく無能です」
「それは大変だったね。国王陛下が勇者パーティメンバーには気を遣うよう言われていてな。無能にまで気を遣わされて大変だったのだ。国王にあの無能をクビにしたいと申し上げたら、激しく止められてね、それで君に処分してもらうより仕方なかったんだ」
「はぁ、本当にあの無能には苦労させられました。しかし、レオン様が殺してしまえばいいと、ご判断されて、俺も躊躇なく処分できました。流石王子殿下です」
「まあ、勇者パーティも実力主義で行くべだね。魔物との戦いで、勇者である君が死んでしまいでもしたら大変だ。その為にはアル君の死は必要なことだったんだよ」
「おっしゃる通りでございます、レオン様」
「勇者エルヴィン、それから、あの無能へは国王陛下より特別弔慰金を賜る事になる。もちろん無能の親に渡す必要なぞないよね。僕と君で密かに山分けだけど、異存はないかい?」
「異存などございません。あの無能が俺の役に立つのなら天国で泣いて喜ぶでしょう」
「ああ、これからも頼むぞ。君はここ100年で最高速度でレベルを上げている期待の勇者だ。魔王への備えも万全になる」
「もちろんです、殿下、魔王は必ず俺が止めを刺してご覧にいれます」
「頼むよ」
王子レオンと勇者エルヴィンは互いにニヤリと笑う。
勇者エルヴィンは王都からダンジョンのある街まで帰還すると、すぐにダンジョン攻略を再開した。
表向きはアルの失踪に悲しむクリスを思いやってと言うことだが、単に報告に行く時間を作っただけだった。
彼はダンジョン攻略の速度を速めて、攻略済の第5階層から一気に第6階層を攻略するつもりだった。
「今日は第6層を目指す。先ずは5層までサクサク行くぞ!」
「任せてエドヴィン、僕たちの力ならすぐだよ」
「ふふっ、エルヴィンさえいればどんな魔物だって平気よ、それに足手まといもいなくなったしね」
「ははっ、正しくそうだな!」
「……」
クリスはギリリと唇を噛む。
愛しいアルへの暴言は許せなかった。
早くこんなパーティは抜けたい。そんな思いでいっぱいだった。
それに剣聖の彼女は杞憂があった。
それは先日会ったアルの知り合いの話。
初めて会った怪しい人物だが、クリスは信用できた。
あの人は明らかにアルに好感を持っている。
だから、信用できる。
そんな彼女が残した驚愕の事実。
勇者パーティが歴史上最速でレベル上げが実現できた理由。
それはアルの隠れスキルのおかげだと言うのだ。
スキル、パーティステータス10倍。
アルは唯一無二のパーティの重要な存在だったんだ。
本当ならとんでもない追放劇だ。
例の女の人からは、早くパーティを抜けろということと、十分注意をするようにということだった。
勇者パーティは第3階層を何とか進んでいた。
すでに攻略済みの第3階層には大して強い魔物がいる筈がなかった。
だが。
「(力が半減……いや、1/10になっている?)」
あの怪しい女性の言う通りだった。
パーティの要を失った勇者パーティはとんでもなく弱体化していた。
だが、それより問題なのは。
「楽勝だね。エルヴィン、やっぱり君は凄いよ」
「本当、アルと違って、本当に強くて素敵」
聖女ナディアも煉獄魔導士のアンネも全く気付いていない。
もちろん、エルヴィンもだ。
「ロイヤルオークが現れたわ!!」
前衛の剣聖のクリスが魔物の出現に警告する。
ロイヤルオークは5体だ。サクっと倒して終わりだな。
「皆、気軽に倒すぞ。こんなのは雑魚だ!?」
エルヴィンは皆に発破をかけた。景気づけに軽く勝利するつもりだった。
アンネがロイヤルオークに催眠の魔法を唱える。そして、バフ役のナディヤがパーティへ強化魔法を唱える。
しかし。
「ご、ごめんなさい! 催眠の魔法が効かない!」
「構わん、力押しだ!!」
しかし、ロイヤル・オークに簡単に圧される。
「ナディヤさん、回復魔法をお願いします!!」
前衛職のクリスが回復魔法を要求する。何故だ? 彼女の腕なら、こんな処で回復魔法を必要とする怪我などしない筈だ?
「ねえ、エルヴィン? 僕たち弱くなってないかな?」
さすがに聖女ナディヤが劣勢になって弱体化していることに気が付いた。
「ナディヤ、たまたま運が悪いんだけだ。そういう時もあるさ、気にするな」
普段ならこの階層の魔物相手にこんな苦戦をした事はない。一体どうしたのだ?
苦戦はしたが、何とかロイヤルオークを倒した。だが、まるで第5階層の階層主と戦っていたかの様な錯覚を覚える。
「おい、みんなどうしたんだ? 俺達は栄えある勇者パーティなんだぞ。みんなもっとやる気を出してくれ!!」
糞、アルが死んで足手まといがいなくなった筈なのに!
しかし、第3階層で事態が好転する事はなかった。続いて現れたロイヤルゴブリンにも苦戦した。自身でも体感できた、普段よりダメージを与える事ができない。もらったダメージは大きい。
勇者パーティの苦戦は当然だった。パーティの強化魔法はレベル50の聖女ナディヤでさえ攻防1.2倍。レベル上限になっても1.5倍がやっとなのだ。アルの常時ステータス10倍のスキルはぶっ壊れの性能だったのだ。ステータス自体が10倍になるから、後衛職の魔法使いの魔力も10倍になる、デバフの魔法をしくじる事なんて事はなかった。前衛も後衛も速度、力、魔力、その全てが10倍だったのだ。彼らの戦力は1/10以下になっていた。たった一人が抜ける事によって……
それに、アルの抜けた穴はそれだけではなかった。
「おい、この魔物、何て名前だったっけ?」
勇者エルヴィンは思わず聞いた。滅多に出現しないレアな魔物。この手の魔物は攻略法を考えて対処しないと、例え勇者パーティでも危険だ。
「ア、アルがいないから……」
クリスの言葉に勇者エルヴィンは思い出した。だいたい、魔物の知識やダンジョンの様々な知識を持っていたのは、あの忌々しいアルだったのだ。アルが魔物の情報や攻略法を覚えていた。それ位しか、やる事がなかったが、今となっては、新たに知識面の人材がいる事は確かだ。
「明らかに戦力が落ちていると思います?」
前衛職のクリスが俺を睨んで泣き言を言う。
「泣き言を言うな! お前たちの気合いが足らんだけだ!?」
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だが、結局、彼らが3階層を突破する事はなかった。
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