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4師匠を得る
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「あ、あの……ほ、本当に俺にも魔法の可能性が……」
「ああ、間違いない。アルは我が長い間探し求めていた奇跡のラプラス変換。君は無限の可能性を秘めている。この300年、途絶えていた真の勇者になることも可能だと思う」
ティーナはしばらく目を閉じて、何か思案しているようだったけど、頭の中がまとまったのか話し始めた。
「先ずはジョブの正しい理解をしようか?」
「じ、ジョブの……正しい理解?」
真剣なティーナの眼差しに、俺はごくりと唾をのみ込んだ。
「確かにジョブは凄まじい代物に見える。我はラプラス変換だったから、それはよく分かる。いや、分からされた。しかし、本当にジョブが魔法を授けてくれているのかな?」
ティーナが軽く手のひらを横に向ける。
突然、手のひらから赤い光球が飛んで行き、先の地面で凄まじい火炎が立ち上った。
初めて見るけど、【神級火魔法】の攻撃魔法としか思えない。
無詠唱、突然で、詠唱破棄ですらない。
「こんな凄まじい魔法を、ただジョブに恵まれただけで、無条件に、なんの努力も無しに使えるんだ。確かにとんでもないように思えるだろうな。じゃが、何故ジョブによって使える魔法や使えない魔法があるのかな?」
ティーナは更に続けた。
「……ジョブが無ければ誰でもどんな魔法でも使えるのじゃ」
「え……?」
「ほとんどの人は勘違いしている。ジョブは足枷じゃ。女神は人に魔法を与えた。じゃが、女神はその力を恐れ、ジョブで魔法を制約したのじゃ。逆じゃ、ジョブとは使える魔法を制限する、ただの足枷なのじゃよ」
俺の世界が、180度ひっくり返った。ティーナがジョブの秘密を教えてくれた。
ジョブは女神の福音なんかじゃない。人の力を恐れた女神がかした足枷。
本来、人は全ての魔法を誰でも使える。
ティーナの説明に驚く俺に、彼女はこう続けた。
「唯一制約のないジョブが覚醒したラプラス変換じゃ! 今のお前にはほとんど制約はない。少し鍛えればジョブの勇者なぞ軽く超えるぞ!」
「!?」
ティーナの言葉と共に心が躍った。制約のないジョブ、それが覚醒したラプラス変換?
俺は段々とティーナの言葉によって、絶望から、希望が見えて来た。
「分かってきただろう? ジョブの弱点が。彼らには永遠に進歩はない。何百年も前から彼らはジョブによって魔法を制約され続けて来た。優れたジョブを与えられたヤツラは女神に選ばれた人間なんて言えるのかな? あいつらはよく、自分たちを女神に選ばれた人間だと言うが、むしろあいつらは女神から見放された人間だ。そして、君は女神に選ばれた人間なのだ。何故なら、君には全ての魔法の発動と応用、そして開発すら可能だからだ」
希望、それは決して見える筈が無いものだ。だけど、俺にはそれが見えていた。
目の前の美しい少女が、希望の象徴として、俺の目に映っていた。
死を覚悟した絶望というどん底を潜り抜けて、最後に出会えたのは、信じられない程の大きな希望。
「アル、じゃあ、早速明日結婚式にしようか? ああ、大丈夫だぞ、年齢は秘密じゃが、これでも生娘じゃ。そしてついでにお前を私を超える魔法使いに鍛えてやる。……だから、さ」
そして、彼女は頬を染め、恥ずかしそうに、俺に同意を求めてきた。
「我のこと、好きです、結婚してくださいと、プロポーズしてくれないか?」
……もじもじと俺の返事を待つティーナに俺は即答だった。
「……やだ」
ティーナはとても美人で、可愛いと思うけど、絶対、地雷女だよな?
会ったばかりの俺に求愛する女の子、それも絶対見た目と違って、かなり歳とってるのは間違いなくて……でも、生娘って……それって、絶対凄い地雷持っているとしか思えない。
普通に考えると、命を救ってくれた上、こんなところで放りだされたら、俺の命はないわけで、拒否権はないのだけど、何故か、ティーナには素直に自分の気持ちが言えた。
「な、な、な、なんで? 我、自分で言うのもあれだけど、凄い美人よね? なのに、なんで? ていうか、なんで我が好きになる人って、いつも即答で、我のこと振るの?」
俺、なんとなくわかる。そんな唐突に求愛されて、はいと言う人いないだろう。
魔王にして、元史上最強の魔法使いはとんでもなく常識に欠けていた。
でも、そのくせ、なぜか、ティーナが俺を害することなんてないという根拠の無い気持ちはあった。
「わ、わかった。結婚はおいおい、考えてもらって、とりあえず、アルの師匠にさせてくれ、頼む! だから、お、お願いだから、我をみ、み、見捨てないでぇ!」
助けられた上、求婚までされたけど、お願いすべきは俺の方で、なんで、ティーナの方が俺にお願いすることになったのか、よくわかんないけど、断る理由なんてない。
でも、一つだけ俺でもわかることがあった。
この人、いい人だけど、多分、ドMでダメ人間だ。
だから、絶対断った方がいいよね?
「あ、あの、俺、やっぱり、その……」
「そ、そうか!? 快諾してくれるか!! そうだよな? ここで、我の弟子にならんと、ここで放り出されて、死んじゃうもんな、それにこんな美人のお願い、聞かない訳ないよな?」
脅しかよ。ティーナは俺が遠回しに断ろうとしたけど、軽く脅しを入れてきた。これ、絶対断れないやつだ。それに、自分のこと美人て、どんなけ自己評価高いんだろう? 実際美人なんだけど、絶世の美少女であるが故に、そこは自重しないと、いけないよね?
こうして、俺は勇者パーティを追放され、最愛の幼馴染の女の子を失ったが『紅蓮の魔王』アルベルティーナという師匠に出会った。
後は、強くなって、早くヤリ逃げするだけだよな?
「ああ、間違いない。アルは我が長い間探し求めていた奇跡のラプラス変換。君は無限の可能性を秘めている。この300年、途絶えていた真の勇者になることも可能だと思う」
ティーナはしばらく目を閉じて、何か思案しているようだったけど、頭の中がまとまったのか話し始めた。
「先ずはジョブの正しい理解をしようか?」
「じ、ジョブの……正しい理解?」
真剣なティーナの眼差しに、俺はごくりと唾をのみ込んだ。
「確かにジョブは凄まじい代物に見える。我はラプラス変換だったから、それはよく分かる。いや、分からされた。しかし、本当にジョブが魔法を授けてくれているのかな?」
ティーナが軽く手のひらを横に向ける。
突然、手のひらから赤い光球が飛んで行き、先の地面で凄まじい火炎が立ち上った。
初めて見るけど、【神級火魔法】の攻撃魔法としか思えない。
無詠唱、突然で、詠唱破棄ですらない。
「こんな凄まじい魔法を、ただジョブに恵まれただけで、無条件に、なんの努力も無しに使えるんだ。確かにとんでもないように思えるだろうな。じゃが、何故ジョブによって使える魔法や使えない魔法があるのかな?」
ティーナは更に続けた。
「……ジョブが無ければ誰でもどんな魔法でも使えるのじゃ」
「え……?」
「ほとんどの人は勘違いしている。ジョブは足枷じゃ。女神は人に魔法を与えた。じゃが、女神はその力を恐れ、ジョブで魔法を制約したのじゃ。逆じゃ、ジョブとは使える魔法を制限する、ただの足枷なのじゃよ」
俺の世界が、180度ひっくり返った。ティーナがジョブの秘密を教えてくれた。
ジョブは女神の福音なんかじゃない。人の力を恐れた女神がかした足枷。
本来、人は全ての魔法を誰でも使える。
ティーナの説明に驚く俺に、彼女はこう続けた。
「唯一制約のないジョブが覚醒したラプラス変換じゃ! 今のお前にはほとんど制約はない。少し鍛えればジョブの勇者なぞ軽く超えるぞ!」
「!?」
ティーナの言葉と共に心が躍った。制約のないジョブ、それが覚醒したラプラス変換?
俺は段々とティーナの言葉によって、絶望から、希望が見えて来た。
「分かってきただろう? ジョブの弱点が。彼らには永遠に進歩はない。何百年も前から彼らはジョブによって魔法を制約され続けて来た。優れたジョブを与えられたヤツラは女神に選ばれた人間なんて言えるのかな? あいつらはよく、自分たちを女神に選ばれた人間だと言うが、むしろあいつらは女神から見放された人間だ。そして、君は女神に選ばれた人間なのだ。何故なら、君には全ての魔法の発動と応用、そして開発すら可能だからだ」
希望、それは決して見える筈が無いものだ。だけど、俺にはそれが見えていた。
目の前の美しい少女が、希望の象徴として、俺の目に映っていた。
死を覚悟した絶望というどん底を潜り抜けて、最後に出会えたのは、信じられない程の大きな希望。
「アル、じゃあ、早速明日結婚式にしようか? ああ、大丈夫だぞ、年齢は秘密じゃが、これでも生娘じゃ。そしてついでにお前を私を超える魔法使いに鍛えてやる。……だから、さ」
そして、彼女は頬を染め、恥ずかしそうに、俺に同意を求めてきた。
「我のこと、好きです、結婚してくださいと、プロポーズしてくれないか?」
……もじもじと俺の返事を待つティーナに俺は即答だった。
「……やだ」
ティーナはとても美人で、可愛いと思うけど、絶対、地雷女だよな?
会ったばかりの俺に求愛する女の子、それも絶対見た目と違って、かなり歳とってるのは間違いなくて……でも、生娘って……それって、絶対凄い地雷持っているとしか思えない。
普通に考えると、命を救ってくれた上、こんなところで放りだされたら、俺の命はないわけで、拒否権はないのだけど、何故か、ティーナには素直に自分の気持ちが言えた。
「な、な、な、なんで? 我、自分で言うのもあれだけど、凄い美人よね? なのに、なんで? ていうか、なんで我が好きになる人って、いつも即答で、我のこと振るの?」
俺、なんとなくわかる。そんな唐突に求愛されて、はいと言う人いないだろう。
魔王にして、元史上最強の魔法使いはとんでもなく常識に欠けていた。
でも、そのくせ、なぜか、ティーナが俺を害することなんてないという根拠の無い気持ちはあった。
「わ、わかった。結婚はおいおい、考えてもらって、とりあえず、アルの師匠にさせてくれ、頼む! だから、お、お願いだから、我をみ、み、見捨てないでぇ!」
助けられた上、求婚までされたけど、お願いすべきは俺の方で、なんで、ティーナの方が俺にお願いすることになったのか、よくわかんないけど、断る理由なんてない。
でも、一つだけ俺でもわかることがあった。
この人、いい人だけど、多分、ドMでダメ人間だ。
だから、絶対断った方がいいよね?
「あ、あの、俺、やっぱり、その……」
「そ、そうか!? 快諾してくれるか!! そうだよな? ここで、我の弟子にならんと、ここで放り出されて、死んじゃうもんな、それにこんな美人のお願い、聞かない訳ないよな?」
脅しかよ。ティーナは俺が遠回しに断ろうとしたけど、軽く脅しを入れてきた。これ、絶対断れないやつだ。それに、自分のこと美人て、どんなけ自己評価高いんだろう? 実際美人なんだけど、絶世の美少女であるが故に、そこは自重しないと、いけないよね?
こうして、俺は勇者パーティを追放され、最愛の幼馴染の女の子を失ったが『紅蓮の魔王』アルベルティーナという師匠に出会った。
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