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74悪魔ベリアル
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「かかって来るがいい」
悪魔ベリアルが漆黒の剣を構え挑発する。
僕も魔剣を構え、応戦の体制を整える。
みなもそれに続く、聖剣を構えるヒルデ、魔剣を手に取るリーゼ、拳に悪魔の力を蓄えるロッテ、悪魔の銃を向けるナディヤ、魔針を口に含むナーガ。
みな悪魔と本気で対峙するつもりだ、だが、その顔色に悲壮感はない。感じているのだ。魔王に比べて、この悪魔に恐怖を感じない事に、
「貴様ら馬鹿か? 私が……悪魔であるこのベリアルが、貴様らごときと直接剣を合わせるのだなどと思っていたのか?」
「何?」
嫌が上にも慎重になる。悪魔は自身の弱さを理解していると言うのだろうか? 言葉から察するに、仲間がいるのか?
しかし、どこに仲間がいるというのだろうか? 周りにこの悪魔以外の瘴気は感じない。
すると悪魔ベリアルはあの勇者、いや屑のエルヴィンの亡骸を見据えた。そして、
「何をする気だ……?」
僕は訝しんだ。エルヴィンの亡骸に一体何があると言うんだ。
「こいつを殺したのは唯の戯れではない。これ程腐った魂、利用しない手はない」
そういうと悪魔はエルヴィンに向けて掌から何か黒い球体を送った。黒い球体はエルヴィンに吸い込まれて、そして、エルヴィンの手のひらがピクリと動いた。
そしてエルヴィンが立ち上がった。だがその瞳は真っ黒に染まり、顔色は死者のそれだ。彼が生者である筈がなかった。ましてや、今の彼を取り巻いているのは聖なるオーラではなく瘴気。
「い、いぃっいいい行くぞ…」
ろれつが回らないエルヴィンの正体はわからない。だが、悪魔ベリアルに操られる死者であることは疑いようがない。
ガキん! と、甲高い音がして、エルヴィンの聖剣と僕の魔剣が擦れ合う。いや、エルヴィンのそれはもはや聖剣などでは無いだろう。おそらく僕と同じ魔剣…その刀身から迸るものは聖なるエネルギーではなく、暗黒の瘴気、悪魔の力だ。
「エルヴィン、僕はお前と決着をつけたかった。むしろこの状態に感謝するよ」
「あ、あああああああ、お、お、俺はゆ、ゆゆゆゆゆ勇者…」
エルヴィンにはまともな思考は残されていないようだ。だけど、これで僕の復讐を果たす事ができる。勝手に死んでしまったが、僕は怒りのやり場が舞い戻った。
ギリギリと鍔迫り合いになるが、今の僕にはそれ程の敵とは思えない。
一瞬剣戟の火花を散らすが、再度切り結ぶ。以前のエルヴィンとは比べようにならない速度、力…だが、僕に脅威を与えるほどのものではない。
「闇黒灰燼‐宵闇!」
魔剣から衝撃波を放ち、エルヴィンの視界を妨げると、その隙に一気に距離を詰め、懐に飛び込み、空中で回転しながら、鋭い蹴りをその腹に叩き込む。
「ぐふぁ…!」
僕は戦いの中で剣だけでなく圧倒的なステータスを利用して接近戦の体術も獲得していた。全てはあの奈落の底の試練のおかげだ。卑怯だなど言う者はいまい。
そもそも僕は回復術士なんだ、剣だけで戦う事自体がおかしい。剣だけでなく、近接格闘術を織り交ぜて戦う事の有利さは身に染みて理解している。奈落ではそう言う魔物がいたのだ。
エルヴィンは僕の蹴りを喰らって嘔吐していた。しかし、尚も聖剣、いや魔剣を構える。
「流石に魔王を倒した者だ。これ位では勝てぬか? ではこの腐った魂の全てを今すぐ消化して、この者を強化しよう」
悪魔ベリアルがそう告げると、
「うぉ! うぉぉぉおおおおおおおおおおお!」
叫ぶエルヴィン、この悪魔にその魂を砕かれたか?
たちまちエルヴィンから先程の数十倍の瘴気が立ち上る。
「どうやら、力を温存して勝てる相手じゃ無くなったようだね。次は全力で行くよ」
「ほう、この腐界の戦士を前にして、手加減をしていたとはな…強がりはよせ、人が敵う相手ではない。人がどれ程の力を得ようが、私達の前には無力、それを教えてやろう」
「それはどうかな?」
どうも、この悪魔の言葉と、現実が一致しない。確かにエルヴィンは以前とは比べられない程強くはなっている。だが、手を抜いていたのは事実。パワーアップした今も尚、余裕がありそうだ。
「なあ、エルヴィン。本気で…始めようか?」
「……ツ!?」
次の瞬間、僕は最大の魔力、闘気、瘴気でエルヴィンを一瞬で近づき両断した。
「ば、馬鹿な……」
悪魔ベリアルは唖然としていた。彼が有力な戦力と考えていた手駒がいとも容易く一刀両断されたからだ。正直、あまりの弱さに僕も驚いている。セリアのダンジョンの魔族のように何か厄介な技を持っているんじゃないかとも思っていたからだ。しかし、
「そ、そんな…馬鹿な…人が決して超える事ができない高見にまで、その者の魂と引き換えに上げたものを…完全に滅ぼした……? そんなことがある筈が……」
その時、たくさんの地面を蹴る足音がなった。それは、彼に向かって、ヒルデやリーゼ…みなが一斉に動いたからだ。彼はここに来て自分が相対している存在の能力に気がついたのだ。
残音を残し、瞬歩で移動するヒルデ、悪魔にとって、人の瞬歩など取るに足らないものの筈だろう。だが、彼はヒルデの剣の一閃を躱し切る事ができなかった。
真っ黒などす黒い血が飛び散る。フィーネの姿をしたその悪魔は片腕を斬り飛ばされて、地面にひれ伏されていた。
「ひっ、ひいいいい!? 待って……止めてえぇぇ……え!!」
ヒルデに片腕を易々と斬り飛ばされたベリアルは、情けない声で喚く。
悪魔が人の懇願など聞き入れた事があるのだろうか? 彼は今まで人より格上の存在と認識し、見下し、嘲り、人を翻弄してきた。だからと言って、自身が同じ扱いを受ける事に理解を示す事など出来ないだろう。すなわち、人と同じ様にみっともなく僕達に背を向けて、四つん這いで逃げようとする。
本当は転移魔法で逃げるか、空に飛びあがり、逃げおおせたいのだろうが、ヒルデとリーゼ、お姉さん、ナディヤの銃が交互に悪魔に鋭い打撃を打ち込む。彼は避けるのがやっとだ。
彼は無詠唱の魔法を使おうにも、魔力をねっている時間すら無かっただろう。
そこへ、
「逃がさないからね! この悪魔!?」
「お願いだから・・・やめて・・・・えぇええええぇぇええええええ!!! 」
ロッテが拳をこの悪魔に振り下ろす。人ならざる悪魔は死の恐怖など感じたことがなかったのだろう、だが今、まさに人と同じ死の恐怖を知った彼は人と同じように泣き叫び、みっともない姿をさらす。
「悪魔様、御覚悟を!?」
ナーガが長い魔針を彼の脚に突き立てる。悪魔が悪魔の武器で痛めつけられる。
ベリアルは圧倒的な力で人を蹂躙し、無残に人を貶め、殺してきただろう。それが、今、自分が蹂躙されている。ベリアルはそんな事があろうとは、夢にも思わなかっただろう。
「そ、そんな馬鹿な! 人が悪魔を上回るのだなど、あり得ん、人の限界はレベル99、スキルは9が限界だ。女神がそう決めた。レベル666の私を上回る事なぞあり得ない」
レベルの上限が99? 何を言っているんだ、この悪魔は? そうか、底辺回復術士の僕はレベル99を越えた。最初はオーブが原因かと思ったが、ヒルデ達はレベル99でカンストした。だけど、リーゼはレベル99を超え、今はレベル299に達している。
「悪いね。僕、レベル999なんだ、それにパーティステータス強化スキルもレベル99…。みなのステータスは常時100倍だよ。女神様は考えを改めたんじゃないか?」
僕は理解した。この悪魔は人間の才能のレベルの上限が99、スキルの上限が9だと思い、僕に安心してステータス2倍のスキルを与えた。だけど僕のスキルは上限を突破し、ステータス2倍ではなく100倍にまでなっててしまった。つまり、この悪魔を超えた。
僕はこの悪魔に止めを刺そうと思った。フィーネの仇、だが、このままではやりにくい。
「ねえ? いつまでフィーネの姿をしているつもり? 不愉快なんだけど?」
「ひっ…! わかった、本当の姿に戻るから!」
悪魔は黒い瘴気の粒子に包まれて…端正な顔立ちの男のものになった。見かけは人と変わらない。
「姿を変えたし、私を助けろ! そうしないと、私の仲間がお前達を放っておかない。今なら特別に許してやる。私を傷つけた事を不問にしてやる!」
「…僕はお前を赦さない。フィーネの仇は打たせてもらう!」
今更命乞いをして聞き入れられると思うのか? 僕の怒りはたとえ悪魔達を敵に回しても成就する。
「そ、そんな! 天使め、謀りおって!! 頼む、私は騙されたんだ!!」
天使? 何のことだ? 僕は気になった。何故なら、復讐の相手が増えるかもしれない。
「天使って何のこと? 教えて欲しいな」
「私を助けろ! 助けてくれ! お前の幼馴染は私に魂を喰われる事を知っていて、私と契約したんだ! あの娘は天使に騙されていたんだ! 私も騙されたんだ!」
だが……信じられない。
「ひっ……!」
僕は悪魔ベリアルの目前に立つ。そして、剣を掲げ、今、正に剣を振り下ろそうとする。
全身黒い甲冑に包まれ、血のように赤い目の悪魔。しかし、今、その顔にあるのは圧倒的な力を持つものと対峙し、怯えた悲鳴を上げる情けない表情だけだ。
「や、や止めて!! あっ、あぁぁぁあ……っ!!」
悪魔ベリアルは泣き叫び、涙と鼻水を汚らしく ボロボロと涙を流す。
悪魔の情けない姿は滑稽であり、先程まで散々人間をみくだしていた者と同一人物とは思えないモノだ。人が悪魔である自身を超えた途端、何とも無様な格好だ。
「あああああああああああああああああ!?」
僕が剣を振り下ろすと同時にベリアルの悲鳴が上がる、だが、
「な、なに!?」
ベリアルの身体が光り輝く金色の粒子に包まれて、忽然とその姿を消した。
「ふふふ、ふふっ」
どこかしら声が聞こえた。何処かで聞いたことがあるような声、しかし、それは一瞬で、気がつくと、ベリアルの姿も痕跡も、既に消え失せていた。
悪魔ベリアルが漆黒の剣を構え挑発する。
僕も魔剣を構え、応戦の体制を整える。
みなもそれに続く、聖剣を構えるヒルデ、魔剣を手に取るリーゼ、拳に悪魔の力を蓄えるロッテ、悪魔の銃を向けるナディヤ、魔針を口に含むナーガ。
みな悪魔と本気で対峙するつもりだ、だが、その顔色に悲壮感はない。感じているのだ。魔王に比べて、この悪魔に恐怖を感じない事に、
「貴様ら馬鹿か? 私が……悪魔であるこのベリアルが、貴様らごときと直接剣を合わせるのだなどと思っていたのか?」
「何?」
嫌が上にも慎重になる。悪魔は自身の弱さを理解していると言うのだろうか? 言葉から察するに、仲間がいるのか?
しかし、どこに仲間がいるというのだろうか? 周りにこの悪魔以外の瘴気は感じない。
すると悪魔ベリアルはあの勇者、いや屑のエルヴィンの亡骸を見据えた。そして、
「何をする気だ……?」
僕は訝しんだ。エルヴィンの亡骸に一体何があると言うんだ。
「こいつを殺したのは唯の戯れではない。これ程腐った魂、利用しない手はない」
そういうと悪魔はエルヴィンに向けて掌から何か黒い球体を送った。黒い球体はエルヴィンに吸い込まれて、そして、エルヴィンの手のひらがピクリと動いた。
そしてエルヴィンが立ち上がった。だがその瞳は真っ黒に染まり、顔色は死者のそれだ。彼が生者である筈がなかった。ましてや、今の彼を取り巻いているのは聖なるオーラではなく瘴気。
「い、いぃっいいい行くぞ…」
ろれつが回らないエルヴィンの正体はわからない。だが、悪魔ベリアルに操られる死者であることは疑いようがない。
ガキん! と、甲高い音がして、エルヴィンの聖剣と僕の魔剣が擦れ合う。いや、エルヴィンのそれはもはや聖剣などでは無いだろう。おそらく僕と同じ魔剣…その刀身から迸るものは聖なるエネルギーではなく、暗黒の瘴気、悪魔の力だ。
「エルヴィン、僕はお前と決着をつけたかった。むしろこの状態に感謝するよ」
「あ、あああああああ、お、お、俺はゆ、ゆゆゆゆゆ勇者…」
エルヴィンにはまともな思考は残されていないようだ。だけど、これで僕の復讐を果たす事ができる。勝手に死んでしまったが、僕は怒りのやり場が舞い戻った。
ギリギリと鍔迫り合いになるが、今の僕にはそれ程の敵とは思えない。
一瞬剣戟の火花を散らすが、再度切り結ぶ。以前のエルヴィンとは比べようにならない速度、力…だが、僕に脅威を与えるほどのものではない。
「闇黒灰燼‐宵闇!」
魔剣から衝撃波を放ち、エルヴィンの視界を妨げると、その隙に一気に距離を詰め、懐に飛び込み、空中で回転しながら、鋭い蹴りをその腹に叩き込む。
「ぐふぁ…!」
僕は戦いの中で剣だけでなく圧倒的なステータスを利用して接近戦の体術も獲得していた。全てはあの奈落の底の試練のおかげだ。卑怯だなど言う者はいまい。
そもそも僕は回復術士なんだ、剣だけで戦う事自体がおかしい。剣だけでなく、近接格闘術を織り交ぜて戦う事の有利さは身に染みて理解している。奈落ではそう言う魔物がいたのだ。
エルヴィンは僕の蹴りを喰らって嘔吐していた。しかし、尚も聖剣、いや魔剣を構える。
「流石に魔王を倒した者だ。これ位では勝てぬか? ではこの腐った魂の全てを今すぐ消化して、この者を強化しよう」
悪魔ベリアルがそう告げると、
「うぉ! うぉぉぉおおおおおおおおおおお!」
叫ぶエルヴィン、この悪魔にその魂を砕かれたか?
たちまちエルヴィンから先程の数十倍の瘴気が立ち上る。
「どうやら、力を温存して勝てる相手じゃ無くなったようだね。次は全力で行くよ」
「ほう、この腐界の戦士を前にして、手加減をしていたとはな…強がりはよせ、人が敵う相手ではない。人がどれ程の力を得ようが、私達の前には無力、それを教えてやろう」
「それはどうかな?」
どうも、この悪魔の言葉と、現実が一致しない。確かにエルヴィンは以前とは比べられない程強くはなっている。だが、手を抜いていたのは事実。パワーアップした今も尚、余裕がありそうだ。
「なあ、エルヴィン。本気で…始めようか?」
「……ツ!?」
次の瞬間、僕は最大の魔力、闘気、瘴気でエルヴィンを一瞬で近づき両断した。
「ば、馬鹿な……」
悪魔ベリアルは唖然としていた。彼が有力な戦力と考えていた手駒がいとも容易く一刀両断されたからだ。正直、あまりの弱さに僕も驚いている。セリアのダンジョンの魔族のように何か厄介な技を持っているんじゃないかとも思っていたからだ。しかし、
「そ、そんな…馬鹿な…人が決して超える事ができない高見にまで、その者の魂と引き換えに上げたものを…完全に滅ぼした……? そんなことがある筈が……」
その時、たくさんの地面を蹴る足音がなった。それは、彼に向かって、ヒルデやリーゼ…みなが一斉に動いたからだ。彼はここに来て自分が相対している存在の能力に気がついたのだ。
残音を残し、瞬歩で移動するヒルデ、悪魔にとって、人の瞬歩など取るに足らないものの筈だろう。だが、彼はヒルデの剣の一閃を躱し切る事ができなかった。
真っ黒などす黒い血が飛び散る。フィーネの姿をしたその悪魔は片腕を斬り飛ばされて、地面にひれ伏されていた。
「ひっ、ひいいいい!? 待って……止めてえぇぇ……え!!」
ヒルデに片腕を易々と斬り飛ばされたベリアルは、情けない声で喚く。
悪魔が人の懇願など聞き入れた事があるのだろうか? 彼は今まで人より格上の存在と認識し、見下し、嘲り、人を翻弄してきた。だからと言って、自身が同じ扱いを受ける事に理解を示す事など出来ないだろう。すなわち、人と同じ様にみっともなく僕達に背を向けて、四つん這いで逃げようとする。
本当は転移魔法で逃げるか、空に飛びあがり、逃げおおせたいのだろうが、ヒルデとリーゼ、お姉さん、ナディヤの銃が交互に悪魔に鋭い打撃を打ち込む。彼は避けるのがやっとだ。
彼は無詠唱の魔法を使おうにも、魔力をねっている時間すら無かっただろう。
そこへ、
「逃がさないからね! この悪魔!?」
「お願いだから・・・やめて・・・・えぇええええぇぇええええええ!!! 」
ロッテが拳をこの悪魔に振り下ろす。人ならざる悪魔は死の恐怖など感じたことがなかったのだろう、だが今、まさに人と同じ死の恐怖を知った彼は人と同じように泣き叫び、みっともない姿をさらす。
「悪魔様、御覚悟を!?」
ナーガが長い魔針を彼の脚に突き立てる。悪魔が悪魔の武器で痛めつけられる。
ベリアルは圧倒的な力で人を蹂躙し、無残に人を貶め、殺してきただろう。それが、今、自分が蹂躙されている。ベリアルはそんな事があろうとは、夢にも思わなかっただろう。
「そ、そんな馬鹿な! 人が悪魔を上回るのだなど、あり得ん、人の限界はレベル99、スキルは9が限界だ。女神がそう決めた。レベル666の私を上回る事なぞあり得ない」
レベルの上限が99? 何を言っているんだ、この悪魔は? そうか、底辺回復術士の僕はレベル99を越えた。最初はオーブが原因かと思ったが、ヒルデ達はレベル99でカンストした。だけど、リーゼはレベル99を超え、今はレベル299に達している。
「悪いね。僕、レベル999なんだ、それにパーティステータス強化スキルもレベル99…。みなのステータスは常時100倍だよ。女神様は考えを改めたんじゃないか?」
僕は理解した。この悪魔は人間の才能のレベルの上限が99、スキルの上限が9だと思い、僕に安心してステータス2倍のスキルを与えた。だけど僕のスキルは上限を突破し、ステータス2倍ではなく100倍にまでなっててしまった。つまり、この悪魔を超えた。
僕はこの悪魔に止めを刺そうと思った。フィーネの仇、だが、このままではやりにくい。
「ねえ? いつまでフィーネの姿をしているつもり? 不愉快なんだけど?」
「ひっ…! わかった、本当の姿に戻るから!」
悪魔は黒い瘴気の粒子に包まれて…端正な顔立ちの男のものになった。見かけは人と変わらない。
「姿を変えたし、私を助けろ! そうしないと、私の仲間がお前達を放っておかない。今なら特別に許してやる。私を傷つけた事を不問にしてやる!」
「…僕はお前を赦さない。フィーネの仇は打たせてもらう!」
今更命乞いをして聞き入れられると思うのか? 僕の怒りはたとえ悪魔達を敵に回しても成就する。
「そ、そんな! 天使め、謀りおって!! 頼む、私は騙されたんだ!!」
天使? 何のことだ? 僕は気になった。何故なら、復讐の相手が増えるかもしれない。
「天使って何のこと? 教えて欲しいな」
「私を助けろ! 助けてくれ! お前の幼馴染は私に魂を喰われる事を知っていて、私と契約したんだ! あの娘は天使に騙されていたんだ! 私も騙されたんだ!」
だが……信じられない。
「ひっ……!」
僕は悪魔ベリアルの目前に立つ。そして、剣を掲げ、今、正に剣を振り下ろそうとする。
全身黒い甲冑に包まれ、血のように赤い目の悪魔。しかし、今、その顔にあるのは圧倒的な力を持つものと対峙し、怯えた悲鳴を上げる情けない表情だけだ。
「や、や止めて!! あっ、あぁぁぁあ……っ!!」
悪魔ベリアルは泣き叫び、涙と鼻水を汚らしく ボロボロと涙を流す。
悪魔の情けない姿は滑稽であり、先程まで散々人間をみくだしていた者と同一人物とは思えないモノだ。人が悪魔である自身を超えた途端、何とも無様な格好だ。
「あああああああああああああああああ!?」
僕が剣を振り下ろすと同時にベリアルの悲鳴が上がる、だが、
「な、なに!?」
ベリアルの身体が光り輝く金色の粒子に包まれて、忽然とその姿を消した。
「ふふふ、ふふっ」
どこかしら声が聞こえた。何処かで聞いたことがあるような声、しかし、それは一瞬で、気がつくと、ベリアルの姿も痕跡も、既に消え失せていた。
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