底辺回復術士Lv999 勇者に追放されたのでざまぁした

島風

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70魔剣天解

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「天の声? いや違う…」 

僕は突然真っ黒な空間にいた。一体ここは何処だ? いや、早く戻らないと、みなやお姉さんが魔王に殺されてしまう。 

『慌てるな…ここでは時間は止まっておる』 

「誰だ?」 

『お前の魔剣だ』 

「魔剣?」 

どういう事だ? 誰だこの声の主は? 魔剣の声だと言うのか? 

『私は常闇…。お前の持つ魔剣の魂だ。お前に問いたい。力が欲しいか?』 

「欲しい。このままでは負ける」 

『では、何の為に力が欲しい?』 

「仲間を守る為だ!? このままでは魔王に負けてしまう。負けたくない」 

しばらく沈黙が続く。 

『では問う、世界がなぜ実在しないよりも、むしろ実在するのか? 問いに応えろ』 

「世界が何故あるかって? そんなものあるものはあるに決まっているじゃないか」 

『では女神がなぜあるのか、女神がいるとしてその女神が世界を作ったならなぜ苦しみがあるのか? 考えた事はあるか?』 

「そんな事を考えるのは女神様の教えに反する。『自分に難解すぎることを追求するな。自分の手に負えないことを詮索するな』自分にできる事だけをするべきだというのが女神様の教えだ。人は前向きに生きるべきだ」 

『素朴な女神の説明では納得できなくなるのではないか? よく考えてもう一度応えろ』 

「それは僕も不思議だよ。何故女神様は魔王なんて作ったんだ? 世界は女神様が作ったのに…。人には善人として生きろと言って、その癖、ズルい人間や卑怯な人間が得をする…」 

『その通りだ。すなわち、上なるもの、下なるもの、先なるもの、後なるもの…女神の言う事には嘘がある。世界はそんなまやかしで出来ておる。そこに疑問を抱け、今一度問う、何故力が欲しい?』 

「女神様が助けてくれないから、自分で勝利を勝ち取るしかないんだ。僕は仲間を助けたい、だから力が欲しい!?」 

『十分な答えではないが、今はいいだろう…世界に戻ったら、魔剣天解と叫べ、さすれば貴様に更なる力を授けよう。真の魔剣の力が解放されるだろう』 

「わかりました。でも一つだけ教えてください。貴方は何者なんですか?」 

『私は魔剣常闇、悪魔サタンにより創造されしモノだ、それを知ってどうする?』 

「僕が世界に悪い影響を与える事はないのですか? あなたは悪魔王サタンの創造物なんでしょう? 何か魂胆があるのではないですか?」 

『もちろん意図する処はある。それは貴様と対話する事で明らかにしよう。だが、今はそんな事を言っている場合かな? 今はこれ以上私は何も語らん。貴様が再度力を欲した時に応えよう…』 

「わかりました。今は問いません。僕には他に選択肢がないので…」 

『魔剣が天解したら、貴様のステータス、スキルの効果は更に10倍になる。仲間に先ず治癒の魔法をかけてやるのだな。仲間と共にあれば、さすれば魔王なぞ怖くない…』

魔剣常闇がそう言うと、漆黒の世界が解けて、元の場所へ戻った。僕はすぐさま叫んだ。 

「魔剣天解!?」 

「な…に?」 

魔王は驚く、突然、僕の放つ瘴気が爆発的に増えた。魔王のそれより、そして、 

「エリアヒール!?」 

僕は全体治癒魔法を唱えた。全体治癒魔法はそれ程治癒効果は高くない。でも、本当にステータスの威力が10倍、そして僕のユニークスキル『パーティステータス10倍』スキルの効果もその10倍になるのなら、僕もみなも100倍のステータスになる筈。 

「う…うん?」 

「あれ、生きてる?」 

「えっ?」 

「きゃあ」 

「にゃあ」 

「みな、魔王を倒すぞ!? 今の僕達なら簡単に勝てる!?」 

「何をふざけた事を…。そんな訳が!? な、何?」 

おされていたお姉さんが聖剣で魔王の剣を払う。お姉さんも僕のパーティという認識になったのだろう。そうでなければ魔王と対峙できる筈がない。 

「さあ、僕の大好きな女の子達を虐めた借りを返してもらおうか、魔王!?」 

「大好きな女の子!?」 

「素敵…お兄ちゃん!」 

「下僕にしては素敵よ」 

「キャピーン☆ 先輩! 大好きだなんて、ナディヤ照れちゃう!」 

「流石主様…。ああ、何時でも召し上がって下さい!」 

 ううっ、しまった。僕が格好つけて言った言葉に、みなが頬を赤らめて反応する。外ずらがいいのって苦労するな。僕は何で評価上げているんだろう? 

 ……まっ、いっか、今更…… 

これから始まる魔王との再戦に、僕は勝てる気しかしなかった。 
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