底辺回復術士Lv999 勇者に追放されたのでざまぁした

島風

文字の大きさ
上 下
60 / 106

60パワハラ勇者カール

しおりを挟む
アル達はアマルフィのダンジョンから宿に向けて移動しようとしていた。すると…… 

「カール様、こちらが問題のダンジョンでございます。お降り下さいませ」 

アルが声がした方を見ると、豪奢な馬車から赤い絨毯が会場までひかれており、そこへ一人の男が降り立った。こんな騒ぎがあったばかりなのに、何者だろうか? 

「……君達」 

そして、バサリとマントをひるがえした金髪、長髪のエルフの男がやってきた。 

「あの、どうかしましたか? ここは危ないですよ?」 

アルは念のために警告した。魔族は倒したが、このダンジョンから万が一魔物が出たら危ない。魔族を倒してしまったダンジョンでも、稀に魔物が外に出て来る事はあるのだ。 

それにしても…何でマントなんて羽織っているか? 限りなく怪しい人にしか見えない。 

「…君達の方こそ、こんな危ない処で何をしているのだ。早く逃げたまえ」 

涼やかな男の声が響く、男はあからさまにイケメン、もちろん長身だ。 

「僕達は大丈夫です。先程魔族を倒したばかりですし、魔族にさえ出会わなければ…」 

「な、何だって…いや…そんな…まさか…まさか、そんな筈がある訳が…」 

エルフの男は狼狽えているようだった。アルが魔族を倒したと簡単に言うからか、顔色からは驚きが見て取れる。アルは失礼かとは思ったが、男を鑑定のスキルで見る事にした。 

【名 前】 カール・ケーニスマルク 

【才 能】 勇者  

【レベル】 99 

なんと男は勇者だった。エルフである事から、アルザス王国の勇者だろう。 

「もしかして、アルザスの勇者様ですか? その腰の剣は聖剣ではないですか?」 

「これは!? 見せびらかすつもりなどなかったのだが、流石だな、私の正体を見破るとは。君は…君がアルベルト君だね?」 

男はアルの名前を知っていた。やはり、アルザスの勇者のようだ。アルの名前はアルザス王国にも知られている。勇者なら、当然知っていて当然だ。 

「はい、プロイセン=フランク勇者パーティのリーダー、アルベルトです。貴方は?」 

「私はカール・ケーニスマルク。君のような回復術士ではない、アルザスの勇者にして、騎士団総長だ。君のような平民じゃないんだ! わかる???」 

一気に空気が冷え込んだ。アル達はこの勇者が非常識なレベルで傲慢なのが1秒でわかってしまった。 

「まあ、良い。無礼は許してやる。さあ、現場は何処だ? 案内したまえ、普通するよね?」 

一方的に話すカール。いや、無礼なのはお前だろう? アル達を微妙な空気が漂う。しかし、アルは気を取り直して、事情を説明する。 

「現場というと、魔族なら、既に倒しました。しかし、僕達も疲弊していまして…すいません、僕達、宿に帰って疲れを癒そうとしていたんです」 

「そう来る?」 

あまりにも傲慢な言いようにアルはため息が出そうになるが、相手はアルザス王国の勇者、気を遣うよりなかった。 

「大変申し訳ございません。みな疲労しています。勇者様には後日ご挨拶に伺いますが、今日はこれで失礼させていただきます。」 

「わかった。明日にでも私が手隙の時に挨拶に来ておいてくれ」 

アル達はいそいそとその場を立ち去ったが、勇者カールの周りの騎士達は氷ついていた。 

そしてアルたちの姿が完全に見えなくなったところで、勇者カールは騎士たち冷たい目を向ける。 

「お前たち、事前にアルベルト達がいるかどうか調べるべきだろう? 普通するよね?」 

先程までの爽やかな空気…上辺だけではあるが、それすらも何処かに行ってしまって… 

「私に大恥をかかせたなぁぁ!!」 

「た、大変申し訳ございませんでした!!!」 

騎士たちは背筋を伸ばして45度のおじぎで謝った。だが、それだけではこの男は納得しないようだ。 

「騎士団長! お前は今すぐクビだ!!」 

「ええっ!? そ、そんな!?」 

いきなり解雇通告を宣言する勇者。騎士団長はフルフルと震えている。 

「お、お願いします。ク、クビだけは許して下さい。娘が生まれたばかりなんです」 

「そんな事はしらないね。きみたちの仕事は遊びみたいなもんだ。これまで食わせてやったんだ。むしろ感謝しろよ。これ、常識だからね!」 

「ゆ、勇者様! どうかご容赦ください!!」 

騎士団長は勇者の前で泣いて懇願する。しかし勇者はその元騎士団長を見向きもしない。 

「私に恥をかかせた罪がこれ位で済むか! 謝って済む問題ではないわ!」 

騎士団には沈黙が訪れる。これまで何人の団長がクビを宣告された事か…いや、団長だけでは無い。ほんの些細な事でも気に入らないと、この勇者は団員をクビににするのだ。 

本来なら不名誉な左遷ですら、運がいい方だと思うしかない。 

勇者は同時に騎士団総長、騎士団の責任者でもあった。そう、彼は騎士団の任命権を持ち、人事権も持っている。彼に逆らう事はできないのだ。 

つまり、パワハラ上司であった。 

勇者が先程までの爽やかな風貌が嘘であったかのように嗜虐心を感じる笑みを浮かべると、 

「いつものダンボールを持って来い!!」 

「えっ!? この場でですか?」 

団員達は驚いた。この勇者はクビを宣告した団長や団員に、その場でダンボールを渡し、私物だけをダンボールに入れさせて、支給品は回収する。 

ダンボールでだ。本人の屈辱は計り知れない。この男に情けというものは持ち合わせていなかった。 

「うっぐ! えっぐ!!」 

騎士団長は泣きながら、私物をダンボールに入れて、支給品を返す。 

この騎士団長は子供の頃から騎士に憧れ、研鑽を重ねて、騎士となり、努力が実り、ついに騎士団長にまで昇りつめた。そして、最近愛する恋人と結婚し、娘を授かり、幸せの頂点にいた。この勇者パーティ専属に配属されるまでは…… 

「私の麾下にいる以上、能無しは排除する! 心がけよ!!」 

「「「はぁっ! 勇者様!!」」」 

王国の勇者に逆らう事は許されない。彼らにできる事は運よく左遷されるか、何事もなく定期人事で異動を待つだけである。 

「お前ら、気合が足らん! 今すぐ、ダンジョンで訓練だ!!」 

「し、しかし、もうじき定時ですが? 最近残業規制がかかっておりますが?」 

「何だと? 貴様、自身の未熟を私が温情で矯正してやろうという慈善行為にも関わらず、残業手当なぞもらおうと画策したか! ええい! 貴様もクビだ! 今すぐダンボール持って来い!」 

不用意な発言…いや、正当な意見ではあったが、哀れな騎士がまた一人路頭に迷う。 

そして、騎士団は無給で、残業を強いられるのであった。 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね!!
感想 38

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。  沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。  異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。  新たな人生は、人生ではなく神生!?  チートな能力で愛が満ち溢れた生活!  新たな神生は素敵な物語の始まり。 小説家になろう。にも掲載しております。

処理中です...