底辺回復術士Lv999 勇者に追放されたのでざまぁした

島風

文字の大きさ
上 下
58 / 106

58再びアマルフィのダンジョンへ2

しおりを挟む
前方の魔物を見る。トゥールネのダンジョンに比べるとかなり楽だが、さすがに最下層まで来ると魔物の強さが明らかに強いと分かる。 

前方にナディヤがライティングの光を投げると、アークデーモンがその姿を表した。姿を現したそいつらは、こちらを睨み付けていた。 

「全く人に憑依したり、隠れ潜んだり、待ち伏せ攻撃する、数にモノを言わせる。全く魔族は狡猾だな。卑怯としかいいようがないね」 

「アル、魔族に正々堂々を期待するなんて無駄な事よ。人間と同じ価値観があれば、そもそも和平への道だってあるわよ。歴史上、和解した事は一度もないのよ、それが魔族」 

「そう言えば、そうだね。分かり合えれば魔族と戦争なんてしないか」 

「そうよ下僕、わかったら、さっさと戦ってご褒美の鞭を受けなさい」 

「いや、その僕のドM設定…できればやめてください」 

「えっ? アルってドMの変態じゃなかったの? それにハードプレイや変態プレイが好きな、性に関してはアウトな人じゃなかったの?」 

「ち、違うよ! みなそんな風に思ってたの?」 

僕は憤慨した。ヒルデやリーゼと話してたら、とんでもない誤解がある事がわかった。 

「お兄ちゃん、見苦しい言い訳はやめた方がいいわよ。お兄ちゃんは妹のロッテとキスしちゃうような変態なんだからね!!」 

「ロッテがそれ言う?」 

ロッテは不意をついて僕の唇を奪ったくせに、僕から求めたかのように言うな! 

「でも、ロッテはいつでも受け入れるよ…お兄ちゃんの気持ち…一緒に地獄に堕ちようね!!」 

「下僕の性欲は実の妹にも及ぶのね。全く変態も大概にしなさい」 

「ロッテとは血が繋がってないから!」 

「血が繋がってないならいい訳ね、流石変態ね」 

怖いから言い返さないけど、僕、どんなけ変態と思われているのだろうか? というよりそんな変態のどこがみないい訳? 

一瞬失念していたが、階層主のアークデーモンが出現してたんだった。 

だが、アークデーモンは一向に動く気配がない。 

「随分と余裕をかませてくれるわね。私を侮っているのかしら?」 

「魔族を侮る程馬鹿じゃない! とうとう姿を現したか、アンナ? いや魔族!」 

2体のアークデーモンの間からアンナが姿を現した。アンナの正体は魔族、アンナに憑依している筈だ。倒せばアンナを取り戻せる。 

「私を滅ぼしたら、この娘の命は果たしてあるのかしら?」 

「……汚いヤツめ」 

魔族の言葉に、僕は怒りに打ち震えた。 

アンナは主人のティーナ王女と主従というより友達だ…それも仲の良い…必ず生きて取り戻す! 

「薄汚い魔族、お前の正体、名前はなんなのかしら? 倒す相手の名前くらい覚えておいてあげるから、さっさと名前をおっしゃい」 

リーゼが魔族の名前を聞き出そうとする。これはリーゼの意図ある問いだろう。少しでも敵の情報が欲しい。 

「人間如きが私になんと不敬な。だが、教えてやろう。死んでいく者に少しは情を与えよう」 

リーゼの毒舌にまんまとハマる魔族、流石リーゼだ。 

「私は、蝿の王ベルゼバブ様のしもべ、ニベルコルだ」 

「つまり汚物にたかる蝿に更にたかる汚物な訳ね」 

「何っ!?」 

魔族を纏う黒い瘴気が、揺れ動いた。魔族が怒ったのだろう。 

「人間の姿のままで、戦えるのかしら? 人のままだと魔族の力は発揮出来ない。違うのかしら?」 

「言われなくとも、今、私いや我の真の姿を見せてくれる!」 

「魔族の姿になると、憑依した人間とは切り離される訳ね?」 

「ッ!」 

今、魔族が明らかに動揺した! つまり魔族の姿になっている時にいくら攻撃してもアンナに危害は加わらない。シュミット侯爵も人間なら死んでいる攻撃を受けた。でも、侯爵は衰弱しているだけだった。 

「リーゼ、ありがとう。安心して戦えるよ」 

「下僕はそんなにリーゼを凌辱をしたいの? 舐めるように見ないでって何度言えばいいのかしら? 本当にあなたは気持ち悪いわね」 

なんで僕がいつもそんな風に言われるの? 

「魔族と言っても小物のようね。魔族も人材不足なのかしら?」 

「ぐぐ……っ!」 

リーゼの嘲りに怒りが頂点に達した。魔族が黒く禍々しい光の粒子をまき散らすと、炎の帯を額に巻き頭には大きな角が二本ある。足はアヒル、尻尾は獅子、全身が真っ黒な魔族が出現した。そしてアークデーモンが動き出した。 

リーゼのおかげで、安心して戦える。よし…これからが僕の出番だな。 

僕はリーゼの指揮通り、右側のアークデーモンに向かって攻撃魔法を放つ。 

アークデーモンは人間に非常によく似ているが角があり,鋭い牙を持ち,高貴な服装、炎の鞭を使いこなし残忍極まる性質だ。油断できる相手じゃない。 

どちらかと言うと全体魔法攻撃が怖い魔物だ。強い魔法が来る前に倒したいが、僕の魔法を受けても魔法障壁でレジストした。ダメージは与えているが、呪文詠唱を阻止できない。 

ならば剣で切り込む! 

「はあっ!」 

僕が魔剣の斬撃を魔物に与えたと同時に、ヒルデが左側の魔物に斬撃を与える。 

しかし、このまま2体の魔物と魔族同時に対応するのは厳しい。魔族の魔法攻撃も油断できない。 

その時、リーゼからロッテに指示が出る! 

「ロッテさん! 魔族と魔物の間に土魔法で壁を!」 

「はい、リーゼさん! 『ストーンウォール』!」 

石の壁が魔族と魔物、僕らを分断する。上手い! これだと魔族は攻撃範囲を特定できない。 

僕達は魔族を気にせず戦えた。 

「いやあ!」 

「えい!」 

ロッテの攻撃魔法で隙をついて僕とヒルデの魔剣、聖剣がアークデーモンに止めを指す。 

リーゼの戦術は上手い、それに仲間の存在は大きい。僕とヒルデが魔物と相対している間にロッテとナディヤの支援攻撃、時折リーゼの魔弓やナーガの攻撃魔法が飛んでくる。 

仲間がいる事で選択肢の幅が大きくなる。発想力一つで僕らの力は何倍にもなる。これがパーティ。これで、邪魔者を相手する事なく、魔族に集中できる。

思えば僕はエルヴィンの勇者パーティで居場所がなかった。僕は自分がいていい場所を手に入れたんだ。 

『ティルトウェイト!』 

魔物が滅びたのを察したのか、魔族が最大の攻撃魔法で魔物ごと石の壁を吹き飛ばした。前方から激しい轟音が聞こえる。 

土の壁の残骸が降り注ぐ中、段々とアンナ、いや魔族が姿を現す。しかし、魔族の姿は黒い霞がかかり、黒い粒子に包まれ、再び姿を変えた。 

「それがお前の本当の正体か?」 

僕が魔族に問うと、魔族は答えた。 

「ヒッヒッヒェヒェ…ヴゥゥッ…」 

この魔族の真の正体は…蛙か? 蛙と人間が混ざったような姿。皮膚はプルプルとして気持ちが悪い。 

さて、どう戦うか? リーゼの指示を待つ。 

「下僕と馬鹿王女、二人は前衛に、ナディヤさんとロッテさん、ナーガさんは後方支援宜しく! 先ずは様子見よ。蛙の化け物という事はわかったけど詳しい事はわからない」  

「わかったリーゼ、ヒルデ! いくぞ!!」 

 僕とヒルデが前衛に出る。そして魔族に斬りかかる。たちまち通常なら致命打となる斬撃が僕とヒルデから叩き込まれる。しかし、 

「ハハハハッ、無駄無駄無駄ぁぁ!? 不死の我にその程度の攻撃は効かん!」 

「くそ!? 斬っても斬っても!」 

「ナディヤさん! 魔族にヒールを! 効果がある筈よ!」 

リーゼの指示に納得する。この魔族は自身を不死と言った。不死、アンデッドの弱点は聖水か回復魔法を与える事! そう本来生者へ回復を与える治癒の魔法は不死の魔物、魔族には大打撃となる。 

「この世ならざる者どもよ 歪みし哀れなるものよ 聖なる癒しのその御手よ…」 

ナディヤが治癒の魔法詠唱に入る、威力を考えて詠唱魔法だ、だが! 

「な、何?」 

「き、消えた?」 

魔族は突然姿を消した。そして、ナディヤの目の前にその姿を現したのだった。 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね!!
感想 38

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。  沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。  異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。  新たな人生は、人生ではなく神生!?  チートな能力で愛が満ち溢れた生活!  新たな神生は素敵な物語の始まり。 小説家になろう。にも掲載しております。

処理中です...