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53王女クリスティーナの婚約破棄4
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黒い矢印は際限なく僕の身体を切り刻むべく襲い掛かる。その攻撃を全て避けていたが……やはり、限界はある。
最後の矢印はあまりにもイレギュラーな攻撃だった。普通の魔法の攻撃は真っすぐに飛んで来る。例え複数でも僕の能力なら全部避ける事が出来ただろう。だが、この魔族の矢印は落雷のようにジグザグに進み、軌道を予見できないで襲い掛かる、普通こんな事はできない。しかし、この魔族は膨大な魔力で複数の矢印を操り、しかもその軌道をジグザグに変えるのだ。
その上、最後の攻撃は突然矢印が複数になり、ジグザグになった。なまじ単調な攻撃が続いていたため、対応できなかった。
そもそも、僕はかなりの矢印を凌いでいた、僕の身体が大きく疲労し消耗していた事も原因の一つだろう。闇の矢印は遂に僕の身体に魔力の矢印を突き立てた。
「ぐぅ!!」
「アル!?」
「馬鹿王女!! メガヒール!!」
リーゼが大声をあげる。とたんに身体の痛みが引く。ヒルデのメガヒールだ。
このままではまずい、早めに決着をつけないと!
ならば!!
「闇黒灰燼‐宵闇!!」
唸りを上げて魔剣にまとわりつく禍々しい悪魔の魔力。例え魔族でも唯ではすまない。
僕の持てる最大の魔力の全てを注ぎ込んだ、渾身の一撃。
だが、
「な…んだと…」
黒い禍々しい魔力が消えた後に残っていた魔族には一切損傷を受けていないようだった。
「き、脅威。やはり脅威、殺せ、殺される、殺さなくては…」
「そ、そんな……」
僕は初めて絶望した。あの奈落に落とされる時も考えていたのはエルヴィンへの復讐だけだった。だが、僕は初めて諦めそうになった…生きる事を…
「諦めちゃ駄目!!」
「ヒルデ?」
「勇者とは本来誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げようとしている者に対する敬意を表す呼称。アルは勇者なのよ!! 私がプロイセン王国で困っていた時助けてくれた勇者。アルは私の勇者なの! 私の大切な勇者なの!!」
そうだ。僕は一人じゃない。ヒルデもリーゼもいる。僕が諦めたたら、彼女達の命も無い。
そんな僕の想いにヒルデは更に言葉を続けた。
「アル、ヒルデの力も信じて…アルはいつも一人で戦っている。ヒルデやみなを危険に晒したくないのかもしれない。でも、ヒルデ達は仲間よね?」
僕はヒルデの言葉に心をうたれた。そうだ、僕は何をしていたんだ。一人で魔王に勝てないから仲間を集めた。なのに僕はみなの力を信じていなかった。僕は一番強いだろう。でも、一人でできる事は限られている。他でもない僕が奈落で学んだ事だ。
僕は成すべき事がわかった。
「リーゼ! 後ろに下がって指揮をとって、君が一番賢い! ヒルデ、一緒に戦おう!」
「もちろんよ。アル、聖剣の威力、勇者の力を見て頂戴!?」
「二人共、私が魔弓で牽制するから、その隙を縫って攻撃して! 敵は一人、こちらは三人よ、数的有利を使うのは戦いの基本よ!」
言い終わるや否やリーゼの魔弓が魔族を襲う。
「いくぞ!?」
「勇気の力を! ブレェェェェェィブッ!?」
ゴオォとヒルデの体から聖なる力が放たれ、みな天使の祝福をその身体で感じる。
勇気の力がヒルデの力を強くする。それは言葉通りの意味だ。勇者にのみ使うことができる技。その勇者の力を使った瞬間に、ヒルデのステータスは、その精神状態に応じて最大10倍にまで跳ね上がる。劣勢であればある程、勇者が負けない勇気を持てば持つ程。
勇者の聖なる気に気圧されて魔族がひるむ、そこをリーゼは見逃さなかった。
「魔弓よ! 敵を貫け!!」
リーゼから放たれた悪魔の力を宿した矢は魔族に向かって突き進む。
魔族は思わず避ける、しかし、これは陽動だ。
「神聖灰燼-激!!」
ヒルデの聖なる斬撃が魔族を襲う、魔族は闇の矢印で聖なる斬撃を迎撃するが、しかし、
「闇黒灰燼‐宵闇!」
僕の魔剣の斬撃が更に魔族を襲う。
魔族は僕達の持てる力を全てつぎ込み、三人の力を合わせた攻撃を受けた。しかし、
「鬱陶しい、鬱陶しい。さっさと死ね、どうせ死ぬだけなのに……」
魔族は僕達の最大のコンビネーションを食らってもなお、生きていた。それどころか、
「そんな攻撃は効かない、効かないのだ。無駄な事をしないで、早く死ね」
「なっ…………どうして?」
「アル、おかしいよ。いくら何でも魔力による防御が高すぎる。この魔族何かある」
「確かに何か…特別な何かある。魔剣はともかく、聖剣で斬れない魔族はいない!」
ガガガガ! と黒い矢印と僕の魔剣がこすれ合う嫌な耳障りな音を奏でる。しかし、魔族の矢印を避けるのは慣れたものの、千日手だ。魔族は知能が低いからか、単調に何も考えずに攻撃を続ける。
「鬱陶しい、鬱陶しい。さっさと死ねばいい、貴様らは死ななければならない。この死の指輪に人の怨嗟の籠った瘴気を閉じ込められた我に人は勝てない」
「下僕、死の指輪よ!? 実在するとは思わなかった。呪いの魔道具最大のアクセサリー、死の指輪は魔力を100倍に増幅する。そして、身に付けた者の知性を食らい、人の怨嗟を食らい、魂を喰らうと言われている。それをこの魔族が身に付けているのよ!」
リーゼが気がついた。何故この魔族は知性を失っているのか? 何故勇者のブレイブからの聖剣の斬撃を受けても無傷なのか? 僕の魔剣の斬撃を受けても無傷なのか? 死の指輪、だが、その指輪を壊せば?
「魔族よ。お前の魔力の正体を教えてくれてありがとう。既に死の指輪に魂を乗っ取られているのだな。だから、そんな自爆発言をしたのだな。お前の負けだ」
勝った。僕は確信した。知性が無い魔族など、どんなに魔力が高くとも敵では無い。
「魔弓よ! 敵を貫け!?」
「神聖灰燼-激!!」
リーゼが再び魔弓で魔族を射る、ヒルデが魔族に聖なる剣戟を放つ、だが、その対象は魔族本体では無く、その指の死の指輪。
「殺さないと、殺さなければ。殺せば殺すころ殺したい、殺せころころころころころ……」
魔族は錯乱している、チャンスだ。僕は瞬歩で近ずくと、魔剣に魔力を込めて、悪魔の禍々しい魔力で黒く輝く魔剣を魔族の指輪に振り下ろした。
「闇黒灰燼‐宵闇!」
僕の剣は魔族の右手の指の死の指輪を破壊した。さっきまでの魔族を倒す事はできない。しかし、指輪をうしなった今なら?
「そんな、あと少しなのに、嫌だ、嫌だ。我の命をかけたのに!」
魔族も鈍い思考能力の中で、自身が陥っている窮地に気がついたようだ。ここは一気に押す、死の指輪の無いこの魔族は通常の魔族!
僕は更に魔剣の斬撃をこの魔族に打ち込んだ。
「闇黒灰燼‐宵闇!」
「ぎゃああああああああああああ!?」
耳ざわりな悲鳴に、思わずみな耳を塞ぐ、人外の者の声はやはり人外、この世の物とは思えない声を聞いてしまい、みな顔色が悪い。
僕の魔剣に身体を分断された魔族は剣から発せられた邪悪な魔力に包まれて、そのおぼろげな陽炎の様な姿がボロボロと崩れ始めた。
「我の身体が! 指輪が、指輪が指輪が指輪指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪がああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うぇっ…」
ちょっと怖い。この魔族、見た目はおぼろげな骸骨だけど、はっきり見えない分、気持ち悪さが半端ない。可視化されないとかえって怖い。
「倒せたの?」
「ああ、ヒルデとリーゼのおかげだ」
僕は一人じゃない。力を合わせれば、僕達の力は何倍にもなる。倒せる…魔王を僕らが…そして僕は過ちに気がついた。
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そもそも、僕はかなりの矢印を凌いでいた、僕の身体が大きく疲労し消耗していた事も原因の一つだろう。闇の矢印は遂に僕の身体に魔力の矢印を突き立てた。
「ぐぅ!!」
「アル!?」
「馬鹿王女!! メガヒール!!」
リーゼが大声をあげる。とたんに身体の痛みが引く。ヒルデのメガヒールだ。
このままではまずい、早めに決着をつけないと!
ならば!!
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唸りを上げて魔剣にまとわりつく禍々しい悪魔の魔力。例え魔族でも唯ではすまない。
僕の持てる最大の魔力の全てを注ぎ込んだ、渾身の一撃。
だが、
「な…んだと…」
黒い禍々しい魔力が消えた後に残っていた魔族には一切損傷を受けていないようだった。
「き、脅威。やはり脅威、殺せ、殺される、殺さなくては…」
「そ、そんな……」
僕は初めて絶望した。あの奈落に落とされる時も考えていたのはエルヴィンへの復讐だけだった。だが、僕は初めて諦めそうになった…生きる事を…
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「ヒルデ?」
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そうだ。僕は一人じゃない。ヒルデもリーゼもいる。僕が諦めたたら、彼女達の命も無い。
そんな僕の想いにヒルデは更に言葉を続けた。
「アル、ヒルデの力も信じて…アルはいつも一人で戦っている。ヒルデやみなを危険に晒したくないのかもしれない。でも、ヒルデ達は仲間よね?」
僕はヒルデの言葉に心をうたれた。そうだ、僕は何をしていたんだ。一人で魔王に勝てないから仲間を集めた。なのに僕はみなの力を信じていなかった。僕は一番強いだろう。でも、一人でできる事は限られている。他でもない僕が奈落で学んだ事だ。
僕は成すべき事がわかった。
「リーゼ! 後ろに下がって指揮をとって、君が一番賢い! ヒルデ、一緒に戦おう!」
「もちろんよ。アル、聖剣の威力、勇者の力を見て頂戴!?」
「二人共、私が魔弓で牽制するから、その隙を縫って攻撃して! 敵は一人、こちらは三人よ、数的有利を使うのは戦いの基本よ!」
言い終わるや否やリーゼの魔弓が魔族を襲う。
「いくぞ!?」
「勇気の力を! ブレェェェェェィブッ!?」
ゴオォとヒルデの体から聖なる力が放たれ、みな天使の祝福をその身体で感じる。
勇気の力がヒルデの力を強くする。それは言葉通りの意味だ。勇者にのみ使うことができる技。その勇者の力を使った瞬間に、ヒルデのステータスは、その精神状態に応じて最大10倍にまで跳ね上がる。劣勢であればある程、勇者が負けない勇気を持てば持つ程。
勇者の聖なる気に気圧されて魔族がひるむ、そこをリーゼは見逃さなかった。
「魔弓よ! 敵を貫け!!」
リーゼから放たれた悪魔の力を宿した矢は魔族に向かって突き進む。
魔族は思わず避ける、しかし、これは陽動だ。
「神聖灰燼-激!!」
ヒルデの聖なる斬撃が魔族を襲う、魔族は闇の矢印で聖なる斬撃を迎撃するが、しかし、
「闇黒灰燼‐宵闇!」
僕の魔剣の斬撃が更に魔族を襲う。
魔族は僕達の持てる力を全てつぎ込み、三人の力を合わせた攻撃を受けた。しかし、
「鬱陶しい、鬱陶しい。さっさと死ね、どうせ死ぬだけなのに……」
魔族は僕達の最大のコンビネーションを食らってもなお、生きていた。それどころか、
「そんな攻撃は効かない、効かないのだ。無駄な事をしないで、早く死ね」
「なっ…………どうして?」
「アル、おかしいよ。いくら何でも魔力による防御が高すぎる。この魔族何かある」
「確かに何か…特別な何かある。魔剣はともかく、聖剣で斬れない魔族はいない!」
ガガガガ! と黒い矢印と僕の魔剣がこすれ合う嫌な耳障りな音を奏でる。しかし、魔族の矢印を避けるのは慣れたものの、千日手だ。魔族は知能が低いからか、単調に何も考えずに攻撃を続ける。
「鬱陶しい、鬱陶しい。さっさと死ねばいい、貴様らは死ななければならない。この死の指輪に人の怨嗟の籠った瘴気を閉じ込められた我に人は勝てない」
「下僕、死の指輪よ!? 実在するとは思わなかった。呪いの魔道具最大のアクセサリー、死の指輪は魔力を100倍に増幅する。そして、身に付けた者の知性を食らい、人の怨嗟を食らい、魂を喰らうと言われている。それをこの魔族が身に付けているのよ!」
リーゼが気がついた。何故この魔族は知性を失っているのか? 何故勇者のブレイブからの聖剣の斬撃を受けても無傷なのか? 僕の魔剣の斬撃を受けても無傷なのか? 死の指輪、だが、その指輪を壊せば?
「魔族よ。お前の魔力の正体を教えてくれてありがとう。既に死の指輪に魂を乗っ取られているのだな。だから、そんな自爆発言をしたのだな。お前の負けだ」
勝った。僕は確信した。知性が無い魔族など、どんなに魔力が高くとも敵では無い。
「魔弓よ! 敵を貫け!?」
「神聖灰燼-激!!」
リーゼが再び魔弓で魔族を射る、ヒルデが魔族に聖なる剣戟を放つ、だが、その対象は魔族本体では無く、その指の死の指輪。
「殺さないと、殺さなければ。殺せば殺すころ殺したい、殺せころころころころころ……」
魔族は錯乱している、チャンスだ。僕は瞬歩で近ずくと、魔剣に魔力を込めて、悪魔の禍々しい魔力で黒く輝く魔剣を魔族の指輪に振り下ろした。
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僕は更に魔剣の斬撃をこの魔族に打ち込んだ。
「闇黒灰燼‐宵闇!」
「ぎゃああああああああああああ!?」
耳ざわりな悲鳴に、思わずみな耳を塞ぐ、人外の者の声はやはり人外、この世の物とは思えない声を聞いてしまい、みな顔色が悪い。
僕の魔剣に身体を分断された魔族は剣から発せられた邪悪な魔力に包まれて、そのおぼろげな陽炎の様な姿がボロボロと崩れ始めた。
「我の身体が! 指輪が、指輪が指輪が指輪指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪が指輪がああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「うぇっ…」
ちょっと怖い。この魔族、見た目はおぼろげな骸骨だけど、はっきり見えない分、気持ち悪さが半端ない。可視化されないとかえって怖い。
「倒せたの?」
「ああ、ヒルデとリーゼのおかげだ」
僕は一人じゃない。力を合わせれば、僕達の力は何倍にもなる。倒せる…魔王を僕らが…そして僕は過ちに気がついた。
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