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29屑勇者、主人公にタコ殴りにされる
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「全くどいつもこいつも勝手なことをしやがって!?」
勇者エルヴィンは怒り狂い、宿舎の椅子や調度品を蹴り飛ばし、或いは投げて怒りをぶちまけた。まるで子供のような男、勇者エルヴィン…
彼はダンジョンで剣聖フィーネ一人を犠牲にして、おめおめと帰還するつもりだった。だが、賢者シャルロッテと剣豪アンネリーゼがフィーネを助けようと残ってしまった。
結果、帰還は困難を極めた。ダンジョンの第一層とはいえ、魔物は強力で、三人ものパーティメンバーが抜けた為、ほうほうのテイで帰還した。
「全く、フィーネだけを犠牲にすれば、あの二人も助かったし、騎士団も一人ぐらいの犠牲で済んだものを…たかが騎士とはいえ、三人も無駄に死んだではないか!!」
彼は自身の指示に従わなかった二人に激しい怒りを抱いた。彼は未だ二人を抱いていなかったのである。勝手に死んだことに対して腹を立てているのだ。
「エルヴィン様、それ位にされた方が?」
「五月蠅い!! 騎士ごときが俺に意見か?」
騎士を睨むエルヴィン、しかし、騎士は視線を外さない。
「ちっ」
舌打ちをしていらいらとした様子だ。ちょうどその時、
「勇者エルヴィン様、賢者シャルロッテ様と剣豪アンネリーゼ様が帰還されました」
「何?」
彼にとってそれは意外だった。てっきり死んだかと思った。彼はニヤリと笑った。
これで二人を抱ける機会があるのだ。どうせ、いずれ必要なくなる使い捨てのおもちゃだ。もっともフィーネのように自分の子を孕むと厄介だ。正妻の立場でも主張されると面倒に思えた。彼がフィーネを犠牲に差し出したのは厄介払いの為でもある。
「二人を呼んで来い!!」
騎士の一人がシャルロッテとアンネリーゼをエスコートする。
「何故、フィーネお姉ちゃんを殺したの!!」
「そうです! あなたの恋人なのでしょう!」
二人は開口一番にエルヴィンを責める。
「たかがあんな女の事で何を言ってやがる。それよりよくも俺の指示を無視したな!」
「ロッテはもう、このパーティに所属なんてしないんだからね!」
「わたくしもです」
「何だと?」
エルヴィンの顔が朱に染まる。
「俺のおもちゃになる前にいなくなるのだと? そんな事は許さん!? 今すぐ調教してやる!?」
エルヴィンはシャルロッテの右腕を掴み、腕をねじり伏せた。
「い、いたい゛…止めて、酷い! えっ、いだいよぉ……い、痛い、止めて」
「はは、いい声で鳴くな。それ、それ! 今、調教してやる。安心しろ、直に気持ちよくなる」
薄ら笑いを浮かべると、乱暴にシャルロッテを組みひしぎ、そして、そのまま覆いかぶさった。
「や、やめて、はなして!」
「だめだな! これからがお楽しみの時間だろ?」
「エルヴィン! 止めてください、一体何を考えているのですか!?」
「安心しろ! アンネローゼ、直ぐにお前も抱いてやる。逃げたらお前の妹…わかるよな?」
「…エルヴィン…何処まで腐って」
「エルヴィン殿…」
あまりの事に呆れた騎士団の隊長は思わずため息をつく、しかし、その時、
「僕の妹をどうするつもりなんだ?」
場に静寂が訪れた。騎士団の精鋭は勇者程の実力は持ち合わせていなかったが、長年の勘で、声の主がどれだけの胆力を秘めているのかを察したからだ。
「誰だ?」
「僕だよ。アルベルトだよ…」
そこに現れたのは、シャルロッテの兄、底辺回復術士のアルベルトだった。
「お、お前、何で…」
アルを見て、一瞬驚くが、その顔は驚きから醜い嗜虐心に溢れる顔へと変貌する。
「お前、ちょうどいい処に来た!! わざわざ自分から来てくれたのか? 傑作だ!? お前、見てろ、お前の妹を今この場で犯してやる。指でも咥えて黙って見ていろ!? そして、とびっきり情けない怨嗟の声をあげろ!! あの時のような!! あの情けない顔をもう一度見せてくれ。ははっはっ!! おかしすぎて、笑いが止まらねぇ!?」
「へぇ? 僕の妹をどうするんだって?」
そう言うと、忽然とアルの姿が消える。
「な! に!?」
エルヴィンの右腕はアルの手によって、押さえられていた。
「貴様、瞬歩のスキルでも手に入れたか? だがなぁ、たかが回復術士のお前が、底辺回復術士のお前がぁ、勇者の俺の腕を組み伏せる事ができるとでも思ったのか? 俺はレベル80だぞ!!」
そう言い終わった瞬間、
「や、やめて、やだ、やめ――――い、いだい゛……ちぐしょう、おまえっ! あぐっ、いだい゛よぉ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
情けない声をあげるエルヴィン。
「もう一度聞く、僕の妹をどうしようとしてたんだ?」
「そ、そんな馬鹿な!? 俺のレベルは80だぞ? 80なんだぞ!? 勇者だ、勇者なんだぞ! こんな馬鹿な事がある訳がない!? そうか! お前、力の指輪でズルをしているのだろう? そうだろう?」
ため息を吐くアル…何故この種の人間はただ自分が弱いだけだという事がわからないのだろうか? 仮に力の指輪だとかいう魔道具のおかげだとしても、それも実力のうちだろう。何より質問に位答えて欲しい。
「貴様がフィーネを殺したんだな?」
「ひっ、ひっ、ひぃぃぃぃぃいぃぃ!」
エルヴィンは失禁をしていた。ぼたぼたと汚らわしい小水が漏れ出る。
「その通りです。勇者エルヴィンがフィーネさんを聖剣で刺しました。オーガの餌にして、その隙に逃げようとして…」
アンネローゼが事実を教えてくれた。アルはもう我慢する事ができなかった。
「…シャルロッテが汚れるじゃないか!」
次の瞬間、勇者エルヴィンの体はシャルロッテの身体から引きはがされ宙に舞った!
ズカン!! と凄まじい音と共に、エルヴィンの身体がねじれて後に吹っ飛んだ。それは、人が起こした現象とは思えないようなものだった。アルがただ、エルヴィンを振り払っただけの行為で、エルヴィンの身体は机と一緒に壁に叩きつけられた。床にはまるで大砲の弾丸が着弾したかの様な大きな破口を作っていた。
そして陵辱が始まった。アルはエルヴィンの顔面に拳をめり込ませた。そして、鼻もちならない、その鼻をゴキゴキとへし折り、綺麗に並んでいた歯を欠けさせ……。
「ひっ……!? ひぐっ、ふぐっ……!」
「……これはフィーネの分」
アルは更にエルヴィンを殴った。折れた歯や血しぶきを撒き散らしながら……
エルヴィンの端正に整っていた顔は、見るも無残な姿になっていた。鼻は潰れ、歯は折れ、血まみれだ。
「や、止めてぇ、しゃめてくださいぃぃ」
エルヴィンが涙を流して地面をのた打ち回るその姿は、人を見下し上位の存在であることに何の疑問も持たず、傲慢をただ誇示していたモノとは思えないほどのものだ。
「……これはシャルロッテの分」
ドカン!! とまた凄まじい音と共に、エルヴィンの身体は再び後に吹っ飛んだ。それは、人間に殴られて生じる現象とは思えないようなもので、それこそ女神様の天罰、落雷が落ちたかの様だった。
折れた骨や血しぶきを撒き散らしながら、エルヴィンは再び床に叩きつけられた。
「よ、よくも勇者であるこの俺を殴り飛ばすとは……へ、平民ごときがぁ! 平民風情がぁ……!!」
エルヴィンは涙や血で顔を濡らし、鬼の様な形相だが、ついさっきまでの余裕のある力に満ちた様なものでは無く、プルプルと膝が笑っているのが見てとれた。まるで震えている小鹿のような情けなさだ。
「お、お兄ちゃん、もう止めて…」
「お願いします。アルベルトさん、このままではあなたが殺人鬼になってしまいます」
シャルロッテとアンネリーゼがアルを止める。
その機会をエルヴィンは見逃さなかった。
「お、お前ら、騎士団員…こいつを捕えろ…勇者に怪我をさせた重罪人だ…」
「その様な者はおりません」
「な、何?」
騎士団の隊長はエルヴィンを忌々し気に見ると、
「もう、嫌だ。お前のような卑怯者の下につくのだなど、死んでも騎士の矜持が許さん」
「貴様、主に逆らうのか? それでも騎士か?」
騎士団の隊長は胸の鷲をあしらった騎士団のシンボル、隊章を無理やりむしり取ると、
びしっ! と床に投げつけた。
「騎士団なぞ、辞めてやる!!」
「こいつ、気でもふれたか?」
「おかしいのはお前だろう!」
次々と床に隊章を投げ捨てていく騎士団員達、
「お前ら、アルベルト…今日の事は国王陛下に言って、懲罰を与えてやる!!」
顔を左右にふり、呆れるアル、騎士団員もシャルロッテとアンネリーゼももううんざりだ。
「お前は魔物にやられただけだ。私達は何も見ていない。アルベルト殿、引き取られよ。我らもここを直ちに引き払う」
騎士団の正義感はアルの方に傾いた。だが、このままでは、騎士団員にも被害が及ぶ可能性がある。
「安心して引き取って下さい。僕はアルザス王国の騎士団長 エルンスト・ミュラーさんと懇意にしています。次第はプロイセン国王に正確に報告させて頂きます」
アルベルトがそう言い放つと、騎士団員もシャルロッテ、アンネリーゼも宿舎を出て行った。
後に残されたのは鼻水と涙、血と小便でボロボロの状態のエルヴィン、
「平民風情がぁ! こ、殺してやる……! 生きてきたことを後悔させてやる! お前をズタズタに引き裂いてから、お前の妹は何度も何度も凌辱してやる!!」
勇者エルヴィンの声が虚しく広い宿舎に響いた。
勇者エルヴィンは怒り狂い、宿舎の椅子や調度品を蹴り飛ばし、或いは投げて怒りをぶちまけた。まるで子供のような男、勇者エルヴィン…
彼はダンジョンで剣聖フィーネ一人を犠牲にして、おめおめと帰還するつもりだった。だが、賢者シャルロッテと剣豪アンネリーゼがフィーネを助けようと残ってしまった。
結果、帰還は困難を極めた。ダンジョンの第一層とはいえ、魔物は強力で、三人ものパーティメンバーが抜けた為、ほうほうのテイで帰還した。
「全く、フィーネだけを犠牲にすれば、あの二人も助かったし、騎士団も一人ぐらいの犠牲で済んだものを…たかが騎士とはいえ、三人も無駄に死んだではないか!!」
彼は自身の指示に従わなかった二人に激しい怒りを抱いた。彼は未だ二人を抱いていなかったのである。勝手に死んだことに対して腹を立てているのだ。
「エルヴィン様、それ位にされた方が?」
「五月蠅い!! 騎士ごときが俺に意見か?」
騎士を睨むエルヴィン、しかし、騎士は視線を外さない。
「ちっ」
舌打ちをしていらいらとした様子だ。ちょうどその時、
「勇者エルヴィン様、賢者シャルロッテ様と剣豪アンネリーゼ様が帰還されました」
「何?」
彼にとってそれは意外だった。てっきり死んだかと思った。彼はニヤリと笑った。
これで二人を抱ける機会があるのだ。どうせ、いずれ必要なくなる使い捨てのおもちゃだ。もっともフィーネのように自分の子を孕むと厄介だ。正妻の立場でも主張されると面倒に思えた。彼がフィーネを犠牲に差し出したのは厄介払いの為でもある。
「二人を呼んで来い!!」
騎士の一人がシャルロッテとアンネリーゼをエスコートする。
「何故、フィーネお姉ちゃんを殺したの!!」
「そうです! あなたの恋人なのでしょう!」
二人は開口一番にエルヴィンを責める。
「たかがあんな女の事で何を言ってやがる。それよりよくも俺の指示を無視したな!」
「ロッテはもう、このパーティに所属なんてしないんだからね!」
「わたくしもです」
「何だと?」
エルヴィンの顔が朱に染まる。
「俺のおもちゃになる前にいなくなるのだと? そんな事は許さん!? 今すぐ調教してやる!?」
エルヴィンはシャルロッテの右腕を掴み、腕をねじり伏せた。
「い、いたい゛…止めて、酷い! えっ、いだいよぉ……い、痛い、止めて」
「はは、いい声で鳴くな。それ、それ! 今、調教してやる。安心しろ、直に気持ちよくなる」
薄ら笑いを浮かべると、乱暴にシャルロッテを組みひしぎ、そして、そのまま覆いかぶさった。
「や、やめて、はなして!」
「だめだな! これからがお楽しみの時間だろ?」
「エルヴィン! 止めてください、一体何を考えているのですか!?」
「安心しろ! アンネローゼ、直ぐにお前も抱いてやる。逃げたらお前の妹…わかるよな?」
「…エルヴィン…何処まで腐って」
「エルヴィン殿…」
あまりの事に呆れた騎士団の隊長は思わずため息をつく、しかし、その時、
「僕の妹をどうするつもりなんだ?」
場に静寂が訪れた。騎士団の精鋭は勇者程の実力は持ち合わせていなかったが、長年の勘で、声の主がどれだけの胆力を秘めているのかを察したからだ。
「誰だ?」
「僕だよ。アルベルトだよ…」
そこに現れたのは、シャルロッテの兄、底辺回復術士のアルベルトだった。
「お、お前、何で…」
アルを見て、一瞬驚くが、その顔は驚きから醜い嗜虐心に溢れる顔へと変貌する。
「お前、ちょうどいい処に来た!! わざわざ自分から来てくれたのか? 傑作だ!? お前、見てろ、お前の妹を今この場で犯してやる。指でも咥えて黙って見ていろ!? そして、とびっきり情けない怨嗟の声をあげろ!! あの時のような!! あの情けない顔をもう一度見せてくれ。ははっはっ!! おかしすぎて、笑いが止まらねぇ!?」
「へぇ? 僕の妹をどうするんだって?」
そう言うと、忽然とアルの姿が消える。
「な! に!?」
エルヴィンの右腕はアルの手によって、押さえられていた。
「貴様、瞬歩のスキルでも手に入れたか? だがなぁ、たかが回復術士のお前が、底辺回復術士のお前がぁ、勇者の俺の腕を組み伏せる事ができるとでも思ったのか? 俺はレベル80だぞ!!」
そう言い終わった瞬間、
「や、やめて、やだ、やめ――――い、いだい゛……ちぐしょう、おまえっ! あぐっ、いだい゛よぉ……あぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
情けない声をあげるエルヴィン。
「もう一度聞く、僕の妹をどうしようとしてたんだ?」
「そ、そんな馬鹿な!? 俺のレベルは80だぞ? 80なんだぞ!? 勇者だ、勇者なんだぞ! こんな馬鹿な事がある訳がない!? そうか! お前、力の指輪でズルをしているのだろう? そうだろう?」
ため息を吐くアル…何故この種の人間はただ自分が弱いだけだという事がわからないのだろうか? 仮に力の指輪だとかいう魔道具のおかげだとしても、それも実力のうちだろう。何より質問に位答えて欲しい。
「貴様がフィーネを殺したんだな?」
「ひっ、ひっ、ひぃぃぃぃぃいぃぃ!」
エルヴィンは失禁をしていた。ぼたぼたと汚らわしい小水が漏れ出る。
「その通りです。勇者エルヴィンがフィーネさんを聖剣で刺しました。オーガの餌にして、その隙に逃げようとして…」
アンネローゼが事実を教えてくれた。アルはもう我慢する事ができなかった。
「…シャルロッテが汚れるじゃないか!」
次の瞬間、勇者エルヴィンの体はシャルロッテの身体から引きはがされ宙に舞った!
ズカン!! と凄まじい音と共に、エルヴィンの身体がねじれて後に吹っ飛んだ。それは、人が起こした現象とは思えないようなものだった。アルがただ、エルヴィンを振り払っただけの行為で、エルヴィンの身体は机と一緒に壁に叩きつけられた。床にはまるで大砲の弾丸が着弾したかの様な大きな破口を作っていた。
そして陵辱が始まった。アルはエルヴィンの顔面に拳をめり込ませた。そして、鼻もちならない、その鼻をゴキゴキとへし折り、綺麗に並んでいた歯を欠けさせ……。
「ひっ……!? ひぐっ、ふぐっ……!」
「……これはフィーネの分」
アルは更にエルヴィンを殴った。折れた歯や血しぶきを撒き散らしながら……
エルヴィンの端正に整っていた顔は、見るも無残な姿になっていた。鼻は潰れ、歯は折れ、血まみれだ。
「や、止めてぇ、しゃめてくださいぃぃ」
エルヴィンが涙を流して地面をのた打ち回るその姿は、人を見下し上位の存在であることに何の疑問も持たず、傲慢をただ誇示していたモノとは思えないほどのものだ。
「……これはシャルロッテの分」
ドカン!! とまた凄まじい音と共に、エルヴィンの身体は再び後に吹っ飛んだ。それは、人間に殴られて生じる現象とは思えないようなもので、それこそ女神様の天罰、落雷が落ちたかの様だった。
折れた骨や血しぶきを撒き散らしながら、エルヴィンは再び床に叩きつけられた。
「よ、よくも勇者であるこの俺を殴り飛ばすとは……へ、平民ごときがぁ! 平民風情がぁ……!!」
エルヴィンは涙や血で顔を濡らし、鬼の様な形相だが、ついさっきまでの余裕のある力に満ちた様なものでは無く、プルプルと膝が笑っているのが見てとれた。まるで震えている小鹿のような情けなさだ。
「お、お兄ちゃん、もう止めて…」
「お願いします。アルベルトさん、このままではあなたが殺人鬼になってしまいます」
シャルロッテとアンネリーゼがアルを止める。
その機会をエルヴィンは見逃さなかった。
「お、お前ら、騎士団員…こいつを捕えろ…勇者に怪我をさせた重罪人だ…」
「その様な者はおりません」
「な、何?」
騎士団の隊長はエルヴィンを忌々し気に見ると、
「もう、嫌だ。お前のような卑怯者の下につくのだなど、死んでも騎士の矜持が許さん」
「貴様、主に逆らうのか? それでも騎士か?」
騎士団の隊長は胸の鷲をあしらった騎士団のシンボル、隊章を無理やりむしり取ると、
びしっ! と床に投げつけた。
「騎士団なぞ、辞めてやる!!」
「こいつ、気でもふれたか?」
「おかしいのはお前だろう!」
次々と床に隊章を投げ捨てていく騎士団員達、
「お前ら、アルベルト…今日の事は国王陛下に言って、懲罰を与えてやる!!」
顔を左右にふり、呆れるアル、騎士団員もシャルロッテとアンネリーゼももううんざりだ。
「お前は魔物にやられただけだ。私達は何も見ていない。アルベルト殿、引き取られよ。我らもここを直ちに引き払う」
騎士団の正義感はアルの方に傾いた。だが、このままでは、騎士団員にも被害が及ぶ可能性がある。
「安心して引き取って下さい。僕はアルザス王国の騎士団長 エルンスト・ミュラーさんと懇意にしています。次第はプロイセン国王に正確に報告させて頂きます」
アルベルトがそう言い放つと、騎士団員もシャルロッテ、アンネリーゼも宿舎を出て行った。
後に残されたのは鼻水と涙、血と小便でボロボロの状態のエルヴィン、
「平民風情がぁ! こ、殺してやる……! 生きてきたことを後悔させてやる! お前をズタズタに引き裂いてから、お前の妹は何度も何度も凌辱してやる!!」
勇者エルヴィンの声が虚しく広い宿舎に響いた。
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