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18リーゼの戦略
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新メンバーのリーゼを迎えた僕たちは早速冒険者ギルドに向かって、リーゼの登録をした。いつものお姉さんが対応してくれた。でも、あのお姉さん、何故か僕達が行くと他の人達をすっ飛ばして、僕達の対応をしてくるんだよね。大丈夫かな?
「この人が新しいメンバーなの?」
「そうです。リーゼと言います」
姓は伏せさせた。冒険者登録内容は情報公開されるので、万が一リーゼの敵にリーゼが生きている事や居場所がわかると、何か悪さをされそうだ。最悪、暗殺すら考えられる。
「リーゼと言うわ。宜しく頼むわ」
「ツンデレ体質?」
「そうみたいです」
お姉さんの質問に軽く答えると、お姉さんから提案があった。
「あなた達、そろそろパーティの名前を決定した方がいいんじゃないの? 先日の魔族討伐、かなり遠方まで知られているの。でね、直接あなた達に依頼をしたいという人もいる訳でね。貴族とか、街の責任者とかね。そんな時にパーティの名前がないと困るの。わかるでしょ?」
それはそうだ。問い合わせをしようとしても、セリアの街で魔族を討伐したパーティというアバウトなものになる。パーティ名があれば、そういう不便もなくなる。
「じゃ、今日決めようか?」
「そうするといいわ。あと、忠告だけど、あまり厨二感出すと、後悔するから、気をつけてね。有名になって、後悔するパーティって多いのよ」
げっ!? 聞いていてよかった。『闇より蘇りし人狼』とか考えていた。僕に狼要素皆無だよね。それに有名になったら、かっこいいより恥ずかしいだな、却下だ。
「誰かパーティ名の候補がある?」
ヒルデが手を挙げて、ニコニコしながら、意見をいう。
「あ、あります。やはり、『ヒルデと愉快な仲間達』はどうでしょうか?」
「却下…」
ヒルデ、王女様なのにまさかの馬鹿? 教養、僕よりあるよね? 僕でさえ恥ずかしいパーティ名をお姉さんの忠告に従って、却下したのに、よくそんなアホみたいなパーティ名を言い出せるな。
「じゃ、アルは何か考えがあるの?」
「え? いや、僕も考えていたのはあったけど、厨二感酷くて、自身で却下したんだ。その『闇より蘇りし人狼』とか考えていた」
「…ぷっぷぷっ」
ヒルデに笑われた上、凄くばかにされたような気がする。アホみたいなパーティ名考えたヒルデに馬鹿にされるのは酷くない?
「あなた達、本気で言っているのかしら。そんな名前だと脳の故障を疑われるわ。どうしてこんな簡単な事がわからないのかしら。頭が悪いおバカさんな下僕にはお仕置きが必要なようね」
リーゼがドS全開モードで罵る。僕がまるで頭の悪いおバカさんというか、なんでヒルデはおバカさんの方に入っていないの? 男女差別を感じる。
「じゃ、リーゼ、何かいいアイデアあるの?」
「こういう時には抽象的なヤツとか個人情報入れないで、事実ベースで名前をつければいいの。あなた達…信じられないけど、魔族を討伐したのでしょう? なら、この街セリアと魔族討伐経験がある点でも強調すればいいのよ」
「例えばどんな風に?」
「『セリアの退魔団』とか、適当だけど、依頼者が直ぐに名を思い出せる名がいいと思うわ」
わー、リーゼ頭いい。確かに依頼者目線だとその方がいい。
「お姉さん、『セリアの退魔団』でお願いします。ヒルデもいいよね?」
「う、うん、私はまだ少し『ヒルデと愉快な仲間達』に後ろ髪引かれるけど、仕方ないわね」
その名前に後ろ髪引かれるの? 脳の故障は深刻なようだ。
こうしてリーゼの冒険者登録とパーティ名登録が終わると、僕達は赤の森の最深部まで行って、リーゼのレベルあげを行った。リーゼはレベル5の底辺剣士だったけど、一日でレベル25に達した。僕の10倍のバフがあるから、既にレベル99以上のステータスの筈だ。
リーゼには魔法も教えたが、リーゼはエルフなので、人間が使う属性魔法ではなく、精霊魔法を鍛えた。僕は精霊魔法はさっぱりわからないが、属性魔法の理論と精霊魔法の理論は同じだそうだ。ちょっと解説したらリーゼは勝手に理解して、精霊魔法の風、火、土、水を習得した。精霊魔法の特色は精霊を召喚できる点で、本人の魔力を使用しない。
「今日は随分と捗ったわね」
「ほんとだ。普段の2倍位」
「あなた達、それは誰のおかげかしら?」
「リーゼの戦術のおかげかな…」
「そうね。リーゼが魔物に合わせて色々考えてくれるからかしら」
確かにそうなのだ。リーゼは一度見た魔物の特徴を良く覚えていて、弱点や注意点を教えてくれた。戦いの中でも冷静に戦局を見つめる事ができる度胸もあるようだ。何より頭がいい。僕もそういった点は自信があったけど、リーゼのは突き抜けて軍師の才能があるようだ。
こうしてリーゼが僕達のパーティに加入した。リーゼの加入は僕達に大きな福音をもたらした。僕達の悩みを解決してくれたのだ。
「つまり、あなた達はあても無く、ただ闇雲にレベルを上げていた訳?」
「そういう事になるけど、レベルを上げるのは魔王討伐に必須だったから…」
「下僕は馬鹿げたレベルをカンストしているでしょう?」
「いや、まだ魔剣のユニークスキルとかはカンストしていないんだ。底辺回復術士の方はそうだけど…」
「呆れた無能っぷりね。目的もなく、ただ闇雲に戦い続けるのだなんて、豚にはマグロの血でも流れているのかしら?」
僕、下僕の上、無能でその上、マグロの血が流れた豚なの?
「…」
「話を総合すると、下僕とヒルデは共通の利害である魔王討伐の為に行動を共にしていると?」
「それと愛情を深める為よ!」
ヒルデが目をキラキラして、とても可愛らしい顔で言う。これで脳に故障を生じていなければ、僕も可愛いと思うんだけど…
「目的は一致しているけど、目的に達する手段がないという処も一致しているという処ね?」
「そうなんだ。ヒルデは勇者だけど、フランク王国は滅亡していて、騎士団は全滅、国王を始め、多くの貴族や軍人、市民が亡くなり、国としてのテイをなしていないんだ。だから、勇者パーティらしい支援が受けられず、魔王討伐に参加する事ができない状態なんだ。普通、国家が勇者パーティを支援するから、僕達は何処かの国の支援を受けるしかないけど、ツテはないんだ」
「せめて、お母様か王族の誰かが生きていてくれたら、いいのだけど、騎士団の人達からは、多分、駄目だろうと…それに騎士団の人達は私をあの魔族から逃がす為、一人、また一人と…」
「フランク王国は暫定政府により運営されているわよ…」
ええっ? ヒルデの説明と違うよ?
「どういう事でしょうか? プロイセン王国に無事生き延びた貴族も軍人もいない筈です。市民だって、生き延びたのは多分、1/10位…」
ふっと、息を吐くと、リーゼは切り出した。
「プロイセン王国は勇者パーティが成長していなかったから、フランク王国救援に二の足を踏んだの。だからそんな惨状になったの。アルザス王国の勇者パーティは正に魔王戦に参加できる状態になっていたから迅速にフランク王国に騎士団、軍隊を引き連れて救援に向かったの。だから、アルザス側に逃げた貴族、騎士団、市民の大半が無事よ」
えっ? そんな貴重で誰でもわかりそうな情報をヒルデは知らなかったの? いや、僕も知らなかったけど…
「そこで、私の復讐とも絡んで来るのだけど、私、アルザス王国の令嬢だったから、騎士団長のエルンスト・ミュラー様と面識があるの。それにミューラー様は正義感が強く、信用できる人物です。お父様は以前、何かあったらあの人を訪ねなさいと言っていたわ」
「じゃあ、その人に会えば、君の事も相談できるし、勇者としてフランク王国暫定政府の支援を受けられるの?」
「おそらくは。暫定政府も勇者パーティは喉から手が出る程欲しい筈よ。おそらく、彼らはヒルデは死亡したものと思っているわ」
僕はゴクリと喉を鳴らした。
「つまり、僕達はアルザス王国に向かえばいいの?」
「いいえ、フランク王国の首都よ。既に魔王軍のほとんどを押し返しているの。でも、首都に作られたダンジョンが攻略できないで困っているの。あれが攻略できないと、最深部には魔族が潜んでいて、首都を完全に奪還できないの、
私達の出番と思わない? 多分、私達、アルザスの勇者パーティより強いわよ」
こうして、僕達の身の振り方が決まった。
「この人が新しいメンバーなの?」
「そうです。リーゼと言います」
姓は伏せさせた。冒険者登録内容は情報公開されるので、万が一リーゼの敵にリーゼが生きている事や居場所がわかると、何か悪さをされそうだ。最悪、暗殺すら考えられる。
「リーゼと言うわ。宜しく頼むわ」
「ツンデレ体質?」
「そうみたいです」
お姉さんの質問に軽く答えると、お姉さんから提案があった。
「あなた達、そろそろパーティの名前を決定した方がいいんじゃないの? 先日の魔族討伐、かなり遠方まで知られているの。でね、直接あなた達に依頼をしたいという人もいる訳でね。貴族とか、街の責任者とかね。そんな時にパーティの名前がないと困るの。わかるでしょ?」
それはそうだ。問い合わせをしようとしても、セリアの街で魔族を討伐したパーティというアバウトなものになる。パーティ名があれば、そういう不便もなくなる。
「じゃ、今日決めようか?」
「そうするといいわ。あと、忠告だけど、あまり厨二感出すと、後悔するから、気をつけてね。有名になって、後悔するパーティって多いのよ」
げっ!? 聞いていてよかった。『闇より蘇りし人狼』とか考えていた。僕に狼要素皆無だよね。それに有名になったら、かっこいいより恥ずかしいだな、却下だ。
「誰かパーティ名の候補がある?」
ヒルデが手を挙げて、ニコニコしながら、意見をいう。
「あ、あります。やはり、『ヒルデと愉快な仲間達』はどうでしょうか?」
「却下…」
ヒルデ、王女様なのにまさかの馬鹿? 教養、僕よりあるよね? 僕でさえ恥ずかしいパーティ名をお姉さんの忠告に従って、却下したのに、よくそんなアホみたいなパーティ名を言い出せるな。
「じゃ、アルは何か考えがあるの?」
「え? いや、僕も考えていたのはあったけど、厨二感酷くて、自身で却下したんだ。その『闇より蘇りし人狼』とか考えていた」
「…ぷっぷぷっ」
ヒルデに笑われた上、凄くばかにされたような気がする。アホみたいなパーティ名考えたヒルデに馬鹿にされるのは酷くない?
「あなた達、本気で言っているのかしら。そんな名前だと脳の故障を疑われるわ。どうしてこんな簡単な事がわからないのかしら。頭が悪いおバカさんな下僕にはお仕置きが必要なようね」
リーゼがドS全開モードで罵る。僕がまるで頭の悪いおバカさんというか、なんでヒルデはおバカさんの方に入っていないの? 男女差別を感じる。
「じゃ、リーゼ、何かいいアイデアあるの?」
「こういう時には抽象的なヤツとか個人情報入れないで、事実ベースで名前をつければいいの。あなた達…信じられないけど、魔族を討伐したのでしょう? なら、この街セリアと魔族討伐経験がある点でも強調すればいいのよ」
「例えばどんな風に?」
「『セリアの退魔団』とか、適当だけど、依頼者が直ぐに名を思い出せる名がいいと思うわ」
わー、リーゼ頭いい。確かに依頼者目線だとその方がいい。
「お姉さん、『セリアの退魔団』でお願いします。ヒルデもいいよね?」
「う、うん、私はまだ少し『ヒルデと愉快な仲間達』に後ろ髪引かれるけど、仕方ないわね」
その名前に後ろ髪引かれるの? 脳の故障は深刻なようだ。
こうしてリーゼの冒険者登録とパーティ名登録が終わると、僕達は赤の森の最深部まで行って、リーゼのレベルあげを行った。リーゼはレベル5の底辺剣士だったけど、一日でレベル25に達した。僕の10倍のバフがあるから、既にレベル99以上のステータスの筈だ。
リーゼには魔法も教えたが、リーゼはエルフなので、人間が使う属性魔法ではなく、精霊魔法を鍛えた。僕は精霊魔法はさっぱりわからないが、属性魔法の理論と精霊魔法の理論は同じだそうだ。ちょっと解説したらリーゼは勝手に理解して、精霊魔法の風、火、土、水を習得した。精霊魔法の特色は精霊を召喚できる点で、本人の魔力を使用しない。
「今日は随分と捗ったわね」
「ほんとだ。普段の2倍位」
「あなた達、それは誰のおかげかしら?」
「リーゼの戦術のおかげかな…」
「そうね。リーゼが魔物に合わせて色々考えてくれるからかしら」
確かにそうなのだ。リーゼは一度見た魔物の特徴を良く覚えていて、弱点や注意点を教えてくれた。戦いの中でも冷静に戦局を見つめる事ができる度胸もあるようだ。何より頭がいい。僕もそういった点は自信があったけど、リーゼのは突き抜けて軍師の才能があるようだ。
こうしてリーゼが僕達のパーティに加入した。リーゼの加入は僕達に大きな福音をもたらした。僕達の悩みを解決してくれたのだ。
「つまり、あなた達はあても無く、ただ闇雲にレベルを上げていた訳?」
「そういう事になるけど、レベルを上げるのは魔王討伐に必須だったから…」
「下僕は馬鹿げたレベルをカンストしているでしょう?」
「いや、まだ魔剣のユニークスキルとかはカンストしていないんだ。底辺回復術士の方はそうだけど…」
「呆れた無能っぷりね。目的もなく、ただ闇雲に戦い続けるのだなんて、豚にはマグロの血でも流れているのかしら?」
僕、下僕の上、無能でその上、マグロの血が流れた豚なの?
「…」
「話を総合すると、下僕とヒルデは共通の利害である魔王討伐の為に行動を共にしていると?」
「それと愛情を深める為よ!」
ヒルデが目をキラキラして、とても可愛らしい顔で言う。これで脳に故障を生じていなければ、僕も可愛いと思うんだけど…
「目的は一致しているけど、目的に達する手段がないという処も一致しているという処ね?」
「そうなんだ。ヒルデは勇者だけど、フランク王国は滅亡していて、騎士団は全滅、国王を始め、多くの貴族や軍人、市民が亡くなり、国としてのテイをなしていないんだ。だから、勇者パーティらしい支援が受けられず、魔王討伐に参加する事ができない状態なんだ。普通、国家が勇者パーティを支援するから、僕達は何処かの国の支援を受けるしかないけど、ツテはないんだ」
「せめて、お母様か王族の誰かが生きていてくれたら、いいのだけど、騎士団の人達からは、多分、駄目だろうと…それに騎士団の人達は私をあの魔族から逃がす為、一人、また一人と…」
「フランク王国は暫定政府により運営されているわよ…」
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ふっと、息を吐くと、リーゼは切り出した。
「プロイセン王国は勇者パーティが成長していなかったから、フランク王国救援に二の足を踏んだの。だからそんな惨状になったの。アルザス王国の勇者パーティは正に魔王戦に参加できる状態になっていたから迅速にフランク王国に騎士団、軍隊を引き連れて救援に向かったの。だから、アルザス側に逃げた貴族、騎士団、市民の大半が無事よ」
えっ? そんな貴重で誰でもわかりそうな情報をヒルデは知らなかったの? いや、僕も知らなかったけど…
「そこで、私の復讐とも絡んで来るのだけど、私、アルザス王国の令嬢だったから、騎士団長のエルンスト・ミュラー様と面識があるの。それにミューラー様は正義感が強く、信用できる人物です。お父様は以前、何かあったらあの人を訪ねなさいと言っていたわ」
「じゃあ、その人に会えば、君の事も相談できるし、勇者としてフランク王国暫定政府の支援を受けられるの?」
「おそらくは。暫定政府も勇者パーティは喉から手が出る程欲しい筈よ。おそらく、彼らはヒルデは死亡したものと思っているわ」
僕はゴクリと喉を鳴らした。
「つまり、僕達はアルザス王国に向かえばいいの?」
「いいえ、フランク王国の首都よ。既に魔王軍のほとんどを押し返しているの。でも、首都に作られたダンジョンが攻略できないで困っているの。あれが攻略できないと、最深部には魔族が潜んでいて、首都を完全に奪還できないの、
私達の出番と思わない? 多分、私達、アルザスの勇者パーティより強いわよ」
こうして、僕達の身の振り方が決まった。
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