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48ラナは何故か婚約させられる
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あまりの急な一方的な展開に驚かずにはいられない。
「アーサー様は女嫌いの筈では? そもそも王族がこんな条件の悪い娘を何故?」
そうなのである。アーサーはラナのおかげで女嫌いになったことで有名なのである。ラナは子供の頃から令嬢らしからぬお転婆だった。アーサーは幼馴染の女の子のラナに散々ひっぱり回されて、無事、女嫌いになった、という次第である。なのに何故?
「僕は君のことが原因で女嫌いになってね。それで婚約の類は断っていた。それで王位は第二王子のレオンハルトにということになって来てね。それで困ったんだ。僕も未来の王として散々教育されていてね。今更だと思わない?」
思わない。そりゃ困るだろうけど、身から出た錆だし、仕方ないような。いや、それよりそれが何故私との婚約につながる?
「あの、アーサー様。王位継承権でお困りとは存じますが、アーサー様は王族、良く考えて行動なさいまし。お父上の了承は得ていられましたか? 王族に自由な結婚なんてあり得ないでしてよ」
「父も了承している。1週間前に君のことを伝えたら、たいそう気に入って頂いたし、何よりほかに適切な令嬢なんていない」
「一体何を?」
一旦勘当された伯爵家風情の娘が王家へ嫁ぐなど信じられないことだ。
「まあ、散々君に言われた通り、僕は勉学がダメでね。それで新しい婚約者はそうとう優秀な女性でないといけないと。そんなことを言われたので君を推薦させてもらった」
勝手なこと言わないでください。迷惑です! ラナの悲鳴が聞こえそうだ。
しかし、どうせアーサー様の勘違いかそそっかしいところの誤解と、ラナは腹をくくる。
「私は今、婚約者はいない。だが王家継承権第一の嫡男だ。散々女嫌いになったと言って縁談を断ったこともあって選択肢も限られる。そこで父上は君も含めて考えられるご令嬢の中からね、君を選んだ」
「家柄は? 王家ともあろう家系が伯爵家の末席であるイニティウム家程度では問題が?」
「問題は家柄ではなく、能力だよ。君は魔法学園特待生試験の筆記試験は一位、卒業時には学年主席、そうだろ?」
「……そ、そうですが」
アーサーが外堀を埋めに来ている。これがあのおっちょこちょいのアーサー?
「し、しかし、お父様は何と言って?」
ラナは藁にもすがる思いで父親を見た。
以前、アーサーは女嫌いになったというか、男性の方が好きなんじゃないか? と言っていた。
いくら相手が王家とはいえ、あっちの人に偽装結婚させるほど酷い親ではない筈だ。
「幸い、僕が君と結婚したくて縁談を蹴って来たことを話したら、随分と喜んでおられたよ、君のお父上は、あはっ」
あはっじゃないでしょ? 何ですか? この悪辣な敏腕ぶりは? それでもアーサー様ですか!
「そ、そんな~」
「そんなに私との婚約は嫌なのか?」
「撤回してくれないと国外に逃亡します!」
「そこまで?」
当たり前でしょう? このおっちょこちょいで間抜けの嫁になぞなったら国を背負って大変な人生しか見えない。ラナはできれば素敵な普通の旦那様に守られてひっそりと普通の幸せな暮らしがしたいのだ。
しかもアーサーは散々私の悪口を言っていたのだ。何を好き好んでこんなヤツと結婚せねばならないのだ。
アーサーにはその顔だけで全てを許容してくれる信奉者が大勢いるだろう?
私である必要なぞないだろう? ラナは本気でそう思った。
「そう言えば、先日隣国の姫との縁談があったとか......たいそうお綺麗な方と伺いました」
「君の方が綺麗だよ」
「ふえっ!?」
ラナはアーサー様にそっと髪を撫でられた。なんでそんな簡単に異性の身体の一部に触れることができるんですかぁ? 子供の頃、その顔で女の子に何もできなかったヘタレはどうした?
「僕のことが信じられないんだね? 君の悪口を散々言っていた僕が信じられないのだろ? 僕は君を誰にも取られたくなかったんだ。本当なんだ。だから、僕は君の信用が得られるまで待とう、何年でもずっと待っていよう。君が納得できたら、その時は返事を聞かせて欲しい」
「ほえ!?」
あのバカアーサーは何処に言ったの? あのそそっかしさや勘違いは何処へ?
今まで変なこと一言も言ってないぞ。そんな、アーサーが変なこと言わないなんて!
目がクルクル回るラナをよそに素早く彼女の目の前に跪いて、片手を取り、触れるか触れないかの手慣れたキス。優しそうなその顔には迷いなどないように見える。
「そ、そんなこと急に言われても!」
ささやかな抵抗を試みるが、外堀を埋められた上、内堀も既に埋められそうになっているラナ。
だから、この人誰? ほんとにあのアーサー?
「こんなやり方をしたことは謝罪しよう、だが、僕は気が付いたんだ。僕は君を絶対あきらめられない。好きな人と結婚するため、私は必ず成長する。君を一生守る。絶対君を幸せにする」
「え? あ、でも?」
「僕に君を幸せにする権利をくれないか?」
「え、ええっと、あの?」
だからこの人誰?
いや、本当にだれ?
「ラナ……僕は君を愛している」
低く男らしい甘い声。
「僕は君に惹かれた……好きな人とは結ばれないと諦めていた。でも、もう諦めない」
強い眼差しでラナをしっかりと見つめる……ラナだけをアーサーの瞳が映している。
優しくラナの手を取り、離してくれない。
「か、考えさせてください」
「僕は君だけを愛し続ける。誓約する。僕に生きる希望を与えて欲しい。君がいれば僕は希望を持てるんだ。いつまで考えてくれても構わない」
はにかみながらも精悍な顔つきで、笑みを浮かべる。
この人、勘違いとそそっかしい間抜けなアーサーだよね?
あれ? この男の人って誰だっけ?
え? アーサー? 本人? あれ?
「私の婚約者になってくれないか?」
「はひ」
気が付くとラナは小さな声で返事をしていた。
「アーサー様は女嫌いの筈では? そもそも王族がこんな条件の悪い娘を何故?」
そうなのである。アーサーはラナのおかげで女嫌いになったことで有名なのである。ラナは子供の頃から令嬢らしからぬお転婆だった。アーサーは幼馴染の女の子のラナに散々ひっぱり回されて、無事、女嫌いになった、という次第である。なのに何故?
「僕は君のことが原因で女嫌いになってね。それで婚約の類は断っていた。それで王位は第二王子のレオンハルトにということになって来てね。それで困ったんだ。僕も未来の王として散々教育されていてね。今更だと思わない?」
思わない。そりゃ困るだろうけど、身から出た錆だし、仕方ないような。いや、それよりそれが何故私との婚約につながる?
「あの、アーサー様。王位継承権でお困りとは存じますが、アーサー様は王族、良く考えて行動なさいまし。お父上の了承は得ていられましたか? 王族に自由な結婚なんてあり得ないでしてよ」
「父も了承している。1週間前に君のことを伝えたら、たいそう気に入って頂いたし、何よりほかに適切な令嬢なんていない」
「一体何を?」
一旦勘当された伯爵家風情の娘が王家へ嫁ぐなど信じられないことだ。
「まあ、散々君に言われた通り、僕は勉学がダメでね。それで新しい婚約者はそうとう優秀な女性でないといけないと。そんなことを言われたので君を推薦させてもらった」
勝手なこと言わないでください。迷惑です! ラナの悲鳴が聞こえそうだ。
しかし、どうせアーサー様の勘違いかそそっかしいところの誤解と、ラナは腹をくくる。
「私は今、婚約者はいない。だが王家継承権第一の嫡男だ。散々女嫌いになったと言って縁談を断ったこともあって選択肢も限られる。そこで父上は君も含めて考えられるご令嬢の中からね、君を選んだ」
「家柄は? 王家ともあろう家系が伯爵家の末席であるイニティウム家程度では問題が?」
「問題は家柄ではなく、能力だよ。君は魔法学園特待生試験の筆記試験は一位、卒業時には学年主席、そうだろ?」
「……そ、そうですが」
アーサーが外堀を埋めに来ている。これがあのおっちょこちょいのアーサー?
「し、しかし、お父様は何と言って?」
ラナは藁にもすがる思いで父親を見た。
以前、アーサーは女嫌いになったというか、男性の方が好きなんじゃないか? と言っていた。
いくら相手が王家とはいえ、あっちの人に偽装結婚させるほど酷い親ではない筈だ。
「幸い、僕が君と結婚したくて縁談を蹴って来たことを話したら、随分と喜んでおられたよ、君のお父上は、あはっ」
あはっじゃないでしょ? 何ですか? この悪辣な敏腕ぶりは? それでもアーサー様ですか!
「そ、そんな~」
「そんなに私との婚約は嫌なのか?」
「撤回してくれないと国外に逃亡します!」
「そこまで?」
当たり前でしょう? このおっちょこちょいで間抜けの嫁になぞなったら国を背負って大変な人生しか見えない。ラナはできれば素敵な普通の旦那様に守られてひっそりと普通の幸せな暮らしがしたいのだ。
しかもアーサーは散々私の悪口を言っていたのだ。何を好き好んでこんなヤツと結婚せねばならないのだ。
アーサーにはその顔だけで全てを許容してくれる信奉者が大勢いるだろう?
私である必要なぞないだろう? ラナは本気でそう思った。
「そう言えば、先日隣国の姫との縁談があったとか......たいそうお綺麗な方と伺いました」
「君の方が綺麗だよ」
「ふえっ!?」
ラナはアーサー様にそっと髪を撫でられた。なんでそんな簡単に異性の身体の一部に触れることができるんですかぁ? 子供の頃、その顔で女の子に何もできなかったヘタレはどうした?
「僕のことが信じられないんだね? 君の悪口を散々言っていた僕が信じられないのだろ? 僕は君を誰にも取られたくなかったんだ。本当なんだ。だから、僕は君の信用が得られるまで待とう、何年でもずっと待っていよう。君が納得できたら、その時は返事を聞かせて欲しい」
「ほえ!?」
あのバカアーサーは何処に言ったの? あのそそっかしさや勘違いは何処へ?
今まで変なこと一言も言ってないぞ。そんな、アーサーが変なこと言わないなんて!
目がクルクル回るラナをよそに素早く彼女の目の前に跪いて、片手を取り、触れるか触れないかの手慣れたキス。優しそうなその顔には迷いなどないように見える。
「そ、そんなこと急に言われても!」
ささやかな抵抗を試みるが、外堀を埋められた上、内堀も既に埋められそうになっているラナ。
だから、この人誰? ほんとにあのアーサー?
「こんなやり方をしたことは謝罪しよう、だが、僕は気が付いたんだ。僕は君を絶対あきらめられない。好きな人と結婚するため、私は必ず成長する。君を一生守る。絶対君を幸せにする」
「え? あ、でも?」
「僕に君を幸せにする権利をくれないか?」
「え、ええっと、あの?」
だからこの人誰?
いや、本当にだれ?
「ラナ……僕は君を愛している」
低く男らしい甘い声。
「僕は君に惹かれた……好きな人とは結ばれないと諦めていた。でも、もう諦めない」
強い眼差しでラナをしっかりと見つめる……ラナだけをアーサーの瞳が映している。
優しくラナの手を取り、離してくれない。
「か、考えさせてください」
「僕は君だけを愛し続ける。誓約する。僕に生きる希望を与えて欲しい。君がいれば僕は希望を持てるんだ。いつまで考えてくれても構わない」
はにかみながらも精悍な顔つきで、笑みを浮かべる。
この人、勘違いとそそっかしい間抜けなアーサーだよね?
あれ? この男の人って誰だっけ?
え? アーサー? 本人? あれ?
「私の婚約者になってくれないか?」
「はひ」
気が付くとラナは小さな声で返事をしていた。
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