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43アリーは伝説の竜を退治する2
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「(いいかい、アリー。この竜は黒竜の王、黒竜王、そして伝説の呪われた竜だ。今までのただのトカゲじゃない。先ずは君が空に飛んで、牽制するんだ。ソフィアお姉さんは騎士の皆さんに守ってもらうんだ)」
「(わかった。聖剣さん)」
アリーは背中の羽根を展開する。白い羽根が何枚か飛び散り、一気に天に駆け上がる。
「ラナさん! お姉ちゃんをよろしくお願いします。お姉ちゃんの魔法なら、絶対的な盾になります!」
「わかった。アリー! ソフィアを守る! いや、彼女の防御壁をあてに戦うしかない!」
うんと頷くアリー。そして黒竜王の頭上に舞う。黒竜王は視線をソフィアからアリーに移す。そして、再び口を大きく開く、炎の熱塊が見えた。
「(アリー、飛行は僕に任せて! 君は魔法をありったけヤツの口に!)」
「(わかったよ! 聖剣さん!)」
アリーの周りに衛星のように無数の氷の粒子が周回し、その多くが黒竜王の口に次々と着弾する。その数、毎分6000発。
アリーのフリーズ・バレットは高速連続射撃のためか、ぶうーんと唸る音が聞こえる。
「......グぁ!」
大きくのけぞる黒竜王、必殺の熱塊をかき消され、攻撃の手段を封じられた。そこに。
「え!?」
ごおおんという爆音と共に、黒竜王の頭部で大爆発が起きた。
「(今のは!)」
「(治癒魔法だよ。おそらく君のお姉さんだ)」
呪われた竜に治癒魔法は攻撃魔法として反応する。黒竜王は呪われている。すなわちアンデッドモンスターなのだ。
「(今だ! ヤツの口の中に飛び込んで、君の魔法を撃ちまくれ!)」
「(わかった。飛行は任せるからね)」
高速で竜に向かうアリー。その間、次々と金色の光線が着弾して、抵抗できない黒竜王。ソフィアの治癒魔法だ。
治癒魔法は通常至近距離でしか発動できない。天才のアリーの姉、ソフィアもまた天才であった。治癒魔法を遠方に投射する。それも無詠唱で。
「ぐぁ?」
黒竜王は自身の口に飛び込む者がいるなど思いもよらず、あっさりアリーの侵入を許してしまった。
「(いっけーえええええ!)」
竜のはらわたの中でアリーの氷の魔法がはぜた。勢いで一瞬、竜の巨体が浮き上がり、そして崩れ落ちていき、多くの木々をなぎ倒して倒れた。
竜の口から脱出して、もくもくと黒竜王から粉塵が立ち昇る。
「(どう……かな?)」
竜が倒れた粉塵が収まると、そこには横たわった竜が見えた。
だが、竜は魔法耐性が強く、最強の生命力を有する種。未だに生きている。
「(ありったけの魔法を撃ち尽くしたのに……あっ、首の鱗がなくなってる!)」
アリーの氷の魔法は口から腹の中で跳ね回り、ソフィアの治癒魔法が作った竜の首のダメージの穴を大きくえぐっていた。
「(任せて! 聖剣の出番だ!)」
「(お願い、魔剣さん♡)」
ダメージが大きく、身動きできない竜に吸い込まれるようにして聖剣が呪われた黒竜王の首に振り下ろされる。
1000年間呪われ続けた竜は歓喜ともとれる断末魔とともに、息絶えた。
「怖かったよ~お姉ちゃん。トカゲと何度も戦っておいて良かったよ。経験なかったら、ちょっとヤバかったかもね」
軽い調子でお気楽に言うアリー。
なんかちょっといい事あったみたいな感じである。
「ラナさん! 倒しましたよ!」
そういって、ラナ達の元へ着地する。
「あの、ラナさん。大丈夫ですか?」
「……ええ、なんとか」
「よかった!」
「だけど......ええ、まず何処から突っ込もうかしら?」
「ええ! そんな! 突っ込むなんて、女の子同士でぇ!」
なんか訳の分からない恥ずかしい妄想をするアリー。
ゴンとソフィアがアリーの頭にチョップする。
「申し訳ございません。アリーは時々妄想が捗るので......」
「お姉ちゃーん」
泣き目で姉のソフィアを見るが、ソフィアは毅然とした態度でこういった。
「そういうことはまず、お姉ちゃんにしなさい!」
「(......そこ?)」
聖剣は一見まともそうなソフィアにも闇があることに頭を抱えた。妹への愛が濃すぎる。
「先ず、アリー。あなた吸血鬼だったのね? それに、あの魔法の威力。その上、無詠唱。とどめに、あの剣は何? 伝説の聖剣ユースティティアにそっくりだったけど?」
「すいません。アリーが吸血鬼なことは黙っていた方がいいって、私が言いました。......それと。アリーは非常識なので......うふッ」
何故か自分の妹を自慢げに話すソフィア。
「......ソフィア。非常識はあなたもでしょ? どこに治癒魔法を遠くに投射できる魔法使いがいるの? それにあなたも無詠唱だったでしょ?」
「え!? 慌ててつい」
「お姉ちゃん、慌てて『つい』できるものじゃないよ」
「「お前が言うなぁ!!!」」
何故かエイルとヘリヤに突っ込まれる。
「あなた達姉妹はぶっ壊れの非常識だってことね……これは報告せざるを得ないわね。伝説の竜を葬った訳だからね」
「ちょっと強いトカゲでしたね。少しびっくりしました」
「……アリー。呪われた伝説の黒竜王を討伐できた者は、歴史上いないわ」
「え? そうなんですか?」
「それ以前に竜を討伐できる事が普通と考えている処が恐ろしいわね……」
「え……と。私、魔力が普通の人の半分位で……この神装のドレスや虚数空間にあるユグドラシルの杖のおかげだけなんです」
「それ、どっちも伝説の宝具よ」
「それを二つも所有してると?」
「え? いえ、その?」
真剣にエイルとヘリヤへ言い訳を考えるアリー。
「(きっとラナさん達のいい処を私が横取りしたから怒ってるんだよね。ラナさん達なら倒せたんだ、きっと)」
「(さあ、どうかな)」
聖剣は未だに自分の実力を把握できないアリーに。
『無自覚って怖ッ!』
と、そう思った。
伝説の黒竜王は何度かこの国に現れて、災いをもたらしたが、過去に討伐されたことはない。正しく歩く災害なのだ。その上、神出鬼没で、突然現れては突然消える。
「でも私でも倒せるぐらいですから、きっと、弱くなってたんですよ。トカゲも年には勝てないじゃないかな? 多分、老衰死寸前のトカゲだったんですよ。あは、あはははははっは」
「アリーは黙っていた方がいいわよ」
姉のソフィアに一喝されてしゅんとなるアリー。
ラナはしゅんとしているアリーをなだめるようにそっと、アリーを抱きしめるソフィアをみつめた。
辺境の田舎だからろうか? こんなに仲良く、純朴な姉妹がいるなんて......ラナはこの子達が王都で変に擦れたりしないで欲しいと切に願った。
王都の魔法学園は貴賤拘わらず、魑魅魍魎がばっこする世界だ。
いつまでも変わらないで欲しい。
そう思うと、いつの間にかラナは二人の姉妹の頭を交互に撫でた。
「二人がいなければ私達の命......いいえ、たくさんの人の命がなくなっていたと思うわ。このことは国王陛下に報告しない訳には行きません。あなた達は英雄よ」
「え! 英雄?」
「確かにあれが本当に伝説の呪われた黒竜王だとしたら......ラナさん、勘違いではありませんか?」
「......勘違いなら、あなたの治癒魔法がドラゴンに効く筈がないわ。あれは間違いなく、黒竜王。それに真偽は後日王都の調査官によって明らかにされるわ」
「ねえ、お姉ちゃん、もしかしてご褒美に何かもらえるかも!」
「……そうね。もらえるかも......ここにいた人全員にだと思うわ」
「!? 私達まで?」
「何もしてないのに」
「ドラゴンの正体が黒竜王だから、治癒魔法をかけることができれば......って、ラナさんがおっしゃってました。それに、アリーと私が竜のブレスに晒されている時に武技を放って注意を逸らしてくれました。なので......多分全員かと」
「……そ、それはそうかもしれないわね」
ソフィアの発言でラナ達は気が付いてしまった。伝説の黒竜王を討伐した勇者一行に名が連ねられてしまったことに。
何故かラナもエイルもヘリヤも顔色が悪くなった。
王都に帰る頃には大騒ぎになっているだろうからだ。
「(わかった。聖剣さん)」
アリーは背中の羽根を展開する。白い羽根が何枚か飛び散り、一気に天に駆け上がる。
「ラナさん! お姉ちゃんをよろしくお願いします。お姉ちゃんの魔法なら、絶対的な盾になります!」
「わかった。アリー! ソフィアを守る! いや、彼女の防御壁をあてに戦うしかない!」
うんと頷くアリー。そして黒竜王の頭上に舞う。黒竜王は視線をソフィアからアリーに移す。そして、再び口を大きく開く、炎の熱塊が見えた。
「(アリー、飛行は僕に任せて! 君は魔法をありったけヤツの口に!)」
「(わかったよ! 聖剣さん!)」
アリーの周りに衛星のように無数の氷の粒子が周回し、その多くが黒竜王の口に次々と着弾する。その数、毎分6000発。
アリーのフリーズ・バレットは高速連続射撃のためか、ぶうーんと唸る音が聞こえる。
「......グぁ!」
大きくのけぞる黒竜王、必殺の熱塊をかき消され、攻撃の手段を封じられた。そこに。
「え!?」
ごおおんという爆音と共に、黒竜王の頭部で大爆発が起きた。
「(今のは!)」
「(治癒魔法だよ。おそらく君のお姉さんだ)」
呪われた竜に治癒魔法は攻撃魔法として反応する。黒竜王は呪われている。すなわちアンデッドモンスターなのだ。
「(今だ! ヤツの口の中に飛び込んで、君の魔法を撃ちまくれ!)」
「(わかった。飛行は任せるからね)」
高速で竜に向かうアリー。その間、次々と金色の光線が着弾して、抵抗できない黒竜王。ソフィアの治癒魔法だ。
治癒魔法は通常至近距離でしか発動できない。天才のアリーの姉、ソフィアもまた天才であった。治癒魔法を遠方に投射する。それも無詠唱で。
「ぐぁ?」
黒竜王は自身の口に飛び込む者がいるなど思いもよらず、あっさりアリーの侵入を許してしまった。
「(いっけーえええええ!)」
竜のはらわたの中でアリーの氷の魔法がはぜた。勢いで一瞬、竜の巨体が浮き上がり、そして崩れ落ちていき、多くの木々をなぎ倒して倒れた。
竜の口から脱出して、もくもくと黒竜王から粉塵が立ち昇る。
「(どう……かな?)」
竜が倒れた粉塵が収まると、そこには横たわった竜が見えた。
だが、竜は魔法耐性が強く、最強の生命力を有する種。未だに生きている。
「(ありったけの魔法を撃ち尽くしたのに……あっ、首の鱗がなくなってる!)」
アリーの氷の魔法は口から腹の中で跳ね回り、ソフィアの治癒魔法が作った竜の首のダメージの穴を大きくえぐっていた。
「(任せて! 聖剣の出番だ!)」
「(お願い、魔剣さん♡)」
ダメージが大きく、身動きできない竜に吸い込まれるようにして聖剣が呪われた黒竜王の首に振り下ろされる。
1000年間呪われ続けた竜は歓喜ともとれる断末魔とともに、息絶えた。
「怖かったよ~お姉ちゃん。トカゲと何度も戦っておいて良かったよ。経験なかったら、ちょっとヤバかったかもね」
軽い調子でお気楽に言うアリー。
なんかちょっといい事あったみたいな感じである。
「ラナさん! 倒しましたよ!」
そういって、ラナ達の元へ着地する。
「あの、ラナさん。大丈夫ですか?」
「……ええ、なんとか」
「よかった!」
「だけど......ええ、まず何処から突っ込もうかしら?」
「ええ! そんな! 突っ込むなんて、女の子同士でぇ!」
なんか訳の分からない恥ずかしい妄想をするアリー。
ゴンとソフィアがアリーの頭にチョップする。
「申し訳ございません。アリーは時々妄想が捗るので......」
「お姉ちゃーん」
泣き目で姉のソフィアを見るが、ソフィアは毅然とした態度でこういった。
「そういうことはまず、お姉ちゃんにしなさい!」
「(......そこ?)」
聖剣は一見まともそうなソフィアにも闇があることに頭を抱えた。妹への愛が濃すぎる。
「先ず、アリー。あなた吸血鬼だったのね? それに、あの魔法の威力。その上、無詠唱。とどめに、あの剣は何? 伝説の聖剣ユースティティアにそっくりだったけど?」
「すいません。アリーが吸血鬼なことは黙っていた方がいいって、私が言いました。......それと。アリーは非常識なので......うふッ」
何故か自分の妹を自慢げに話すソフィア。
「......ソフィア。非常識はあなたもでしょ? どこに治癒魔法を遠くに投射できる魔法使いがいるの? それにあなたも無詠唱だったでしょ?」
「え!? 慌ててつい」
「お姉ちゃん、慌てて『つい』できるものじゃないよ」
「「お前が言うなぁ!!!」」
何故かエイルとヘリヤに突っ込まれる。
「あなた達姉妹はぶっ壊れの非常識だってことね……これは報告せざるを得ないわね。伝説の竜を葬った訳だからね」
「ちょっと強いトカゲでしたね。少しびっくりしました」
「……アリー。呪われた伝説の黒竜王を討伐できた者は、歴史上いないわ」
「え? そうなんですか?」
「それ以前に竜を討伐できる事が普通と考えている処が恐ろしいわね……」
「え……と。私、魔力が普通の人の半分位で……この神装のドレスや虚数空間にあるユグドラシルの杖のおかげだけなんです」
「それ、どっちも伝説の宝具よ」
「それを二つも所有してると?」
「え? いえ、その?」
真剣にエイルとヘリヤへ言い訳を考えるアリー。
「(きっとラナさん達のいい処を私が横取りしたから怒ってるんだよね。ラナさん達なら倒せたんだ、きっと)」
「(さあ、どうかな)」
聖剣は未だに自分の実力を把握できないアリーに。
『無自覚って怖ッ!』
と、そう思った。
伝説の黒竜王は何度かこの国に現れて、災いをもたらしたが、過去に討伐されたことはない。正しく歩く災害なのだ。その上、神出鬼没で、突然現れては突然消える。
「でも私でも倒せるぐらいですから、きっと、弱くなってたんですよ。トカゲも年には勝てないじゃないかな? 多分、老衰死寸前のトカゲだったんですよ。あは、あはははははっは」
「アリーは黙っていた方がいいわよ」
姉のソフィアに一喝されてしゅんとなるアリー。
ラナはしゅんとしているアリーをなだめるようにそっと、アリーを抱きしめるソフィアをみつめた。
辺境の田舎だからろうか? こんなに仲良く、純朴な姉妹がいるなんて......ラナはこの子達が王都で変に擦れたりしないで欲しいと切に願った。
王都の魔法学園は貴賤拘わらず、魑魅魍魎がばっこする世界だ。
いつまでも変わらないで欲しい。
そう思うと、いつの間にかラナは二人の姉妹の頭を交互に撫でた。
「二人がいなければ私達の命......いいえ、たくさんの人の命がなくなっていたと思うわ。このことは国王陛下に報告しない訳には行きません。あなた達は英雄よ」
「え! 英雄?」
「確かにあれが本当に伝説の呪われた黒竜王だとしたら......ラナさん、勘違いではありませんか?」
「......勘違いなら、あなたの治癒魔法がドラゴンに効く筈がないわ。あれは間違いなく、黒竜王。それに真偽は後日王都の調査官によって明らかにされるわ」
「ねえ、お姉ちゃん、もしかしてご褒美に何かもらえるかも!」
「……そうね。もらえるかも......ここにいた人全員にだと思うわ」
「!? 私達まで?」
「何もしてないのに」
「ドラゴンの正体が黒竜王だから、治癒魔法をかけることができれば......って、ラナさんがおっしゃってました。それに、アリーと私が竜のブレスに晒されている時に武技を放って注意を逸らしてくれました。なので......多分全員かと」
「……そ、それはそうかもしれないわね」
ソフィアの発言でラナ達は気が付いてしまった。伝説の黒竜王を討伐した勇者一行に名が連ねられてしまったことに。
何故かラナもエイルもヘリヤも顔色が悪くなった。
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