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38アリーは合格する
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「では、筆記試験を行います。連続で疲れているでしょうけど、試験の時間は皆一緒よ」
「はい、お心遣い、ありがとうございます。こんな私ごときのために」
「……え?」
「いえ、自分のことは自分が一番わかってますので、大丈夫です」
全然わかってない! 一人で突っ込みを入れる聖剣であった。
「では、会議室に移動するわ。予め届いている筈よ。いいわね?」
「......は、はい」
アリーは消え入りそうな声で囁くような声で答える。
「私は魔法試験の評価を報告書にまとめているわ」
ラナはそう言うと、会議室から出て行った。
こうしてアリーの筆記試験と面接試験は終わった。
「アリー・グラキエスの試験結果を伝える」
「……はい」
アリーは燃え尽きていた。真っ白に燃え尽きていた。
もう、60歳のおじいちゃんの妻になるしかないと勘違いして、人生に絶望していた。
「(これじゃ、魔王になれない!)」
「(え? そっち?)」
別にハワード男爵の13番目の妻になってもなれるんじゃないかな? と、聖剣は思った。
「魔法試験満点、筆記試験258点、面接・可――推薦状に関係なく、試験は合格です!」
「……ええええええ!」
「なんで驚いてるの? アリー?」
恐るべきは無自覚である。そもそも、試験結果に関係なく七賢人の推薦で特待生になれると言われているのに、人の言うことを全く聞いていない、困ったアリーだった。
「ご、ご、ご、合格……合格! 合格……? ホントにッ! やった! 嬉しいぃぃっ!」
アリーは喜びのあまり、ラナに抱き着いた。
甘えん坊のアリーは喜びのあまり、目の前にいたラナに抱き着いた。
ラナは驚いたが、王国騎士らしく、優雅にそっと抱き留める。何故か凛々しい顔が引き攣っている。
「ラナさん、ありがとうございます! 予定より早くに来てくれて……これでお姉ちゃんも私もハワード男爵に嫁がなくていいです……本当にありがとうございます!」
「私の方こそ光栄だわ。ありがとう、アリー。あなたなら、きっと立派な七賢人になるでしょう」
「へ? 七賢人......って何?」
ラナとソフィアがズッコケる。この時代のことを知らない聖剣ですら流れ的に理解できていたので、やはりズッコケる。
ズッコケたものの、我に返ったアリーの姉、ソフィアは自身の責務を全うした。
可愛い妹の合格を何が何でも祝いたい。真っ先に自分に抱き着いてくれなかったことで、ラナに少し嫉妬すらしていた。
「アリー。あなたの努力は報われたのよ……毎日、毎日、氷魔法の鍛練を欠かさず、ずっと」
ソフィアは服のポケットからハンカチを出して、アリーの涙を拭いてやろうとする。
「ハンカチが必要なのは、ソフィア嬢の方だな」
「そうだよ。お姉ちゃん、両方の目から涙がはらはらと流れているよ」
ソフィアは涙が止まらなかった。アリーの涙を拭こうとしたハンカチで自分の涙を拭くが、拭いても拭いても涙が止まらない
姉の涙を見て、アリーの目頭も熱い。目の縁の涙をぬぐう。
「お姉ちゃん……ありがとう……ウェーん……」
ソフィアがアリーを抱きしめて二人で泣き出してしまう。
「よく、よく頑張ったわね。えらいわ。あなたは私の自慢の妹よ」
ラナside
困ったものね。いくら七賢人の推薦があるからと言って、よりにもよって、魔法剣士の試験に挑むなんて......少し、痛い目にあった方がいいのかもね。
ラナは推薦があるからと、剣さえ握ったことがない男爵令嬢が魔法剣士の試験を受けると言い出したことで、評価を下げざるを得なかった。
しかも、貸し出す剣を強化するとか意味がわからないことを言い出す始末。
まあ、せめて付与魔法で見るべきものが無いと採点は厳しいわね、と、最初はそう思っていた。
しかし、アリーの構えを見て冷や汗が出た。
「(一部の隙もないわ!)」
子供の頃から密かに剣を振るって鍛練してきたラナには分かる。王国騎士の彼女から見ても、控え目に言って、達人のそれだ。
彼女は凄まじい緊張感に堪え切れず、アリーに斬りかかっていた。
しかし。
パキン。
ラナの剣は折れた。
ラナは剣が折れたことより、アリーの太刀筋の美しさに目を奪われた。
何一つ無駄の無い動き、美しい弧を描く剣の動き。
ラナの剣が折れるのは当然か? 否!
確かにアリーの剣技は完璧だ。
しかし、ラナの剣はミスリル銀の業物だ。
ギルドの無銘の剣に折られる筈が無い。いや、だが剣を折られ、いや斬られた。
惨敗だ。
そもそも、何故ラナの剣が斬られたのかさっぱりわからなかった。
にも関わらず、アリーは突然頭を下げて、真摯に再戦を申し込んできた。
いや、剣が折れて、無理!
でも。
「剣は修復します!」
その言葉に再戦を受けるよりなかった。
やだ、もう許して、おうちかえりたい。
そして、再戦。
だが、やはり1mmの隙も無いアリーに打ち込める筈がなかった。
その時、アリーはラナに上段から逆胴に、やはり完璧な美しい弧を描き、打ち込んで来た。
「(こ、殺される!!!)」
いや、この子、マジで魔族かなんかじゃないの?
咄嗟に剣で受けるが。
パキン。
剣は、またもやあっさり折れた。
「(......こ、殺さないで)」
ラナは切に願ったが、その心は誰も知らなかった。
「はい、お心遣い、ありがとうございます。こんな私ごときのために」
「……え?」
「いえ、自分のことは自分が一番わかってますので、大丈夫です」
全然わかってない! 一人で突っ込みを入れる聖剣であった。
「では、会議室に移動するわ。予め届いている筈よ。いいわね?」
「......は、はい」
アリーは消え入りそうな声で囁くような声で答える。
「私は魔法試験の評価を報告書にまとめているわ」
ラナはそう言うと、会議室から出て行った。
こうしてアリーの筆記試験と面接試験は終わった。
「アリー・グラキエスの試験結果を伝える」
「……はい」
アリーは燃え尽きていた。真っ白に燃え尽きていた。
もう、60歳のおじいちゃんの妻になるしかないと勘違いして、人生に絶望していた。
「(これじゃ、魔王になれない!)」
「(え? そっち?)」
別にハワード男爵の13番目の妻になってもなれるんじゃないかな? と、聖剣は思った。
「魔法試験満点、筆記試験258点、面接・可――推薦状に関係なく、試験は合格です!」
「……ええええええ!」
「なんで驚いてるの? アリー?」
恐るべきは無自覚である。そもそも、試験結果に関係なく七賢人の推薦で特待生になれると言われているのに、人の言うことを全く聞いていない、困ったアリーだった。
「ご、ご、ご、合格……合格! 合格……? ホントにッ! やった! 嬉しいぃぃっ!」
アリーは喜びのあまり、ラナに抱き着いた。
甘えん坊のアリーは喜びのあまり、目の前にいたラナに抱き着いた。
ラナは驚いたが、王国騎士らしく、優雅にそっと抱き留める。何故か凛々しい顔が引き攣っている。
「ラナさん、ありがとうございます! 予定より早くに来てくれて……これでお姉ちゃんも私もハワード男爵に嫁がなくていいです……本当にありがとうございます!」
「私の方こそ光栄だわ。ありがとう、アリー。あなたなら、きっと立派な七賢人になるでしょう」
「へ? 七賢人......って何?」
ラナとソフィアがズッコケる。この時代のことを知らない聖剣ですら流れ的に理解できていたので、やはりズッコケる。
ズッコケたものの、我に返ったアリーの姉、ソフィアは自身の責務を全うした。
可愛い妹の合格を何が何でも祝いたい。真っ先に自分に抱き着いてくれなかったことで、ラナに少し嫉妬すらしていた。
「アリー。あなたの努力は報われたのよ……毎日、毎日、氷魔法の鍛練を欠かさず、ずっと」
ソフィアは服のポケットからハンカチを出して、アリーの涙を拭いてやろうとする。
「ハンカチが必要なのは、ソフィア嬢の方だな」
「そうだよ。お姉ちゃん、両方の目から涙がはらはらと流れているよ」
ソフィアは涙が止まらなかった。アリーの涙を拭こうとしたハンカチで自分の涙を拭くが、拭いても拭いても涙が止まらない
姉の涙を見て、アリーの目頭も熱い。目の縁の涙をぬぐう。
「お姉ちゃん……ありがとう……ウェーん……」
ソフィアがアリーを抱きしめて二人で泣き出してしまう。
「よく、よく頑張ったわね。えらいわ。あなたは私の自慢の妹よ」
ラナside
困ったものね。いくら七賢人の推薦があるからと言って、よりにもよって、魔法剣士の試験に挑むなんて......少し、痛い目にあった方がいいのかもね。
ラナは推薦があるからと、剣さえ握ったことがない男爵令嬢が魔法剣士の試験を受けると言い出したことで、評価を下げざるを得なかった。
しかも、貸し出す剣を強化するとか意味がわからないことを言い出す始末。
まあ、せめて付与魔法で見るべきものが無いと採点は厳しいわね、と、最初はそう思っていた。
しかし、アリーの構えを見て冷や汗が出た。
「(一部の隙もないわ!)」
子供の頃から密かに剣を振るって鍛練してきたラナには分かる。王国騎士の彼女から見ても、控え目に言って、達人のそれだ。
彼女は凄まじい緊張感に堪え切れず、アリーに斬りかかっていた。
しかし。
パキン。
ラナの剣は折れた。
ラナは剣が折れたことより、アリーの太刀筋の美しさに目を奪われた。
何一つ無駄の無い動き、美しい弧を描く剣の動き。
ラナの剣が折れるのは当然か? 否!
確かにアリーの剣技は完璧だ。
しかし、ラナの剣はミスリル銀の業物だ。
ギルドの無銘の剣に折られる筈が無い。いや、だが剣を折られ、いや斬られた。
惨敗だ。
そもそも、何故ラナの剣が斬られたのかさっぱりわからなかった。
にも関わらず、アリーは突然頭を下げて、真摯に再戦を申し込んできた。
いや、剣が折れて、無理!
でも。
「剣は修復します!」
その言葉に再戦を受けるよりなかった。
やだ、もう許して、おうちかえりたい。
そして、再戦。
だが、やはり1mmの隙も無いアリーに打ち込める筈がなかった。
その時、アリーはラナに上段から逆胴に、やはり完璧な美しい弧を描き、打ち込んで来た。
「(こ、殺される!!!)」
いや、この子、マジで魔族かなんかじゃないの?
咄嗟に剣で受けるが。
パキン。
剣は、またもやあっさり折れた。
「(......こ、殺さないで)」
ラナは切に願ったが、その心は誰も知らなかった。
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