37 / 51
37アリーは受験する2
しおりを挟む
「(私なんかやらかしたような気がする)」
「(そうだね。盛大にやらかしたね)」
「(魔剣さん、酷い! 魔剣さんのせいなのに!)」
「(僕のせい?)」
そんなことを脳内で聖剣とやりとりしていると。
「ま、参りました。私の負けです」
「......え?」
アリーは驚いた。これで終わってしまうのか? アリーには非常にまずい事態と思えた。
「(魔剣さんのせいだけど、多分これ、ラナさんの剣の整備不良か何かだよね?)」
「(まあ、そうだね)」
なんか、どうでも良くなってきた聖剣。剣を簡単に切り裂く剣を作るとか意味がわからない。
しかし、アリーはこう思った。
「(私、何も爪痕を残せていないよ! 多分、この試験は負けても、ラナさんを納得させることができれば良いモノだよ。なのに、ラナさんは勝負を終わらせてしまった)」
アリーは現在起きてることを分析する。そして、一つの結論に達する。
「( は!?)」
「(どうしたの? アリー?)」
「(そうだよ、私が自前の剣さえ持参しない上、不運にも剣が折れるというアクシデントが起きて、機嫌を損ねてしまったんだよ)」
そう来るか......聖剣はなんか色々めんどくさくなってきた。
「(ここは何とか、試合をもう一度やらせて欲しいよ。ううん、そうしないと、剣技の点数がかなり悪いものになってしまうよ。この試合にはきっと勝敗は関係ないよ)」
「(ふうん)」
「(魔剣さん! 酷いよ! 他人事みたいだよ)」
完全に他人事である。そもそも、何も困ったことは起きていないことを聖剣は知っている。
「(もう一度試合をしてもらうように頭を下げてみたら?)」
「(そっか、ありがとう魔剣さん! 私、自分が悪くても頭を下げるのは嫌いだけど、今回仕方なく下げるね)」
聖剣はアリーの根性の曲がり具合にやや疲れて来た。
「すいません。お願いです。もう一度勝負を! 私に機会を下さい!」
アリーは泣きそうな顔で、頭をこれでもかと低く下げた。
しかし。
「いえ、そうは言っても、剣が折れてしまったから」
そうか、そういう問題もあったのか!! と、今更思い至るアリー。だが、それなら話が早いのである。
「剣は私が責任を持って修復させてもらいます!」
「え? そんなこと、鍛冶屋さんじゃないとできないわよ?」
「いえ、私の杖には錬金術のスキルがありますから、剣の修復はできます」
「錬金のスキル? ごめん。意味わかんない……わかったわ。直してくれたら、もう一戦ね」
「わかりました」
アリーは試験官の剣を受け取ると、剣に氷の魔素を送りチェックした。
「(ミスリルの剣だ)」
市場に出回る剣では最上級の剣だ。
「(危ない、危ない。こんな貴重な剣、私のせいで折っただなんて。絶対、試験、落とされるよ)」
しかし、アリーは思い至る。
「(あ! これはチャンスだよ!)」
アリーは思う。このまま、ただ修復するだけでは、自前の剣を持って来なかったという失点は消せない、ここは。
アリーは錬金の技術でミスリルの剣の中心をこの世界でもっとも頑丈で、少し柔らかいオリハルコンに変え、外周をより硬いアダマンタイトに変えた。もちろん、鍛造と焼き入れの措置も忘れない。
いや、これだけでは心許ない。ラナに好印象を受けてもらうためには、もっと工夫を。
そうだ。剣に魔法を付与しよう。
アリーは剣を修復というか、全く別物に変えて、魔法を付与した。
付与魔法は氷の魔法を強くかけておいた。
「出来ました。確認ください」
「ええええええ!? 本当に修復できたの? 助かる。ん? でも、ものすごく軽いし、魔力を強く感じるわよ?」
流石王国騎士、鋭い。ラナは直ぐに見破った。
「はい、ついでなので、材質をアダマンタイトとオリハルコンに変えておきました。氷の付与魔法も施しましたから、安心して下さい。もう、不幸な事故で折れたりしません!」
「え?」
「いや、アリー? 何言ってるの?」
「えっと、アリーさん? 剣が修復できるだけでも凄いのに、アダマンタイトとか、オリハルコンとか、何?」
なんか、ソフィアがポカンとしてるし、ラナが変なことを言い出した。
いや、全うな意見なのだが。
「まあ、アリーさんのことだから、意味わかんないのは当然だから、再戦しましょう」
「はい! お願いします!」
アリーとラナは剣の切先を合わせると、試合を再開した。
しかし、ラナはさっき違い、打ち込んで来ない。
アリーはこう思った。
「(そっか、さっきと逆で、今度は私に打ち込んで来いってことだ)」
聖剣は絶対違うと思ったが。
「(お願い。魔剣さん♡)」
「(わかったよ。アリー)」
聖剣はそう言うと、アリーの体を操って、剣を振るった。
単純な上段からの逆胴への一撃だ。
ラナは素早く、アリーの剣を受けた。
しかし、不幸は起きた。
パキン。
ラナの剣が……また折れてしまった。
「……ま、参りました。もう許して下さい」
「え?」
「やっぱり」
「(あれ? なんかまたやってしまった?)」
多分、慌てたから剣の修復の時、不運にも弱いところが出来てしまったんだとアリーは考えた。
「(失敗しちゃった。今度こそ終わっちゃった?)」
「ご、ご......ごめんなさい」
アリーは泣きながら、ラナの剣を再度修復した。
しかし、ここで試験は中止になってしまった。
「(私......ハワード男爵の13番目の奥さんになっちゃう )」
「(もう、君は13番目でも100番目でも、もらってくれる人がいればいいんじゃないか?)」
「(しどい! 魔剣さん!)」
こうして、アリーは落胆して、筆記試験と面接を受けることになった。
聖剣は......こんな化け物、もう嫁のもらい手ないな......と、失礼なことを考えていた。
「(そうだね。盛大にやらかしたね)」
「(魔剣さん、酷い! 魔剣さんのせいなのに!)」
「(僕のせい?)」
そんなことを脳内で聖剣とやりとりしていると。
「ま、参りました。私の負けです」
「......え?」
アリーは驚いた。これで終わってしまうのか? アリーには非常にまずい事態と思えた。
「(魔剣さんのせいだけど、多分これ、ラナさんの剣の整備不良か何かだよね?)」
「(まあ、そうだね)」
なんか、どうでも良くなってきた聖剣。剣を簡単に切り裂く剣を作るとか意味がわからない。
しかし、アリーはこう思った。
「(私、何も爪痕を残せていないよ! 多分、この試験は負けても、ラナさんを納得させることができれば良いモノだよ。なのに、ラナさんは勝負を終わらせてしまった)」
アリーは現在起きてることを分析する。そして、一つの結論に達する。
「( は!?)」
「(どうしたの? アリー?)」
「(そうだよ、私が自前の剣さえ持参しない上、不運にも剣が折れるというアクシデントが起きて、機嫌を損ねてしまったんだよ)」
そう来るか......聖剣はなんか色々めんどくさくなってきた。
「(ここは何とか、試合をもう一度やらせて欲しいよ。ううん、そうしないと、剣技の点数がかなり悪いものになってしまうよ。この試合にはきっと勝敗は関係ないよ)」
「(ふうん)」
「(魔剣さん! 酷いよ! 他人事みたいだよ)」
完全に他人事である。そもそも、何も困ったことは起きていないことを聖剣は知っている。
「(もう一度試合をしてもらうように頭を下げてみたら?)」
「(そっか、ありがとう魔剣さん! 私、自分が悪くても頭を下げるのは嫌いだけど、今回仕方なく下げるね)」
聖剣はアリーの根性の曲がり具合にやや疲れて来た。
「すいません。お願いです。もう一度勝負を! 私に機会を下さい!」
アリーは泣きそうな顔で、頭をこれでもかと低く下げた。
しかし。
「いえ、そうは言っても、剣が折れてしまったから」
そうか、そういう問題もあったのか!! と、今更思い至るアリー。だが、それなら話が早いのである。
「剣は私が責任を持って修復させてもらいます!」
「え? そんなこと、鍛冶屋さんじゃないとできないわよ?」
「いえ、私の杖には錬金術のスキルがありますから、剣の修復はできます」
「錬金のスキル? ごめん。意味わかんない……わかったわ。直してくれたら、もう一戦ね」
「わかりました」
アリーは試験官の剣を受け取ると、剣に氷の魔素を送りチェックした。
「(ミスリルの剣だ)」
市場に出回る剣では最上級の剣だ。
「(危ない、危ない。こんな貴重な剣、私のせいで折っただなんて。絶対、試験、落とされるよ)」
しかし、アリーは思い至る。
「(あ! これはチャンスだよ!)」
アリーは思う。このまま、ただ修復するだけでは、自前の剣を持って来なかったという失点は消せない、ここは。
アリーは錬金の技術でミスリルの剣の中心をこの世界でもっとも頑丈で、少し柔らかいオリハルコンに変え、外周をより硬いアダマンタイトに変えた。もちろん、鍛造と焼き入れの措置も忘れない。
いや、これだけでは心許ない。ラナに好印象を受けてもらうためには、もっと工夫を。
そうだ。剣に魔法を付与しよう。
アリーは剣を修復というか、全く別物に変えて、魔法を付与した。
付与魔法は氷の魔法を強くかけておいた。
「出来ました。確認ください」
「ええええええ!? 本当に修復できたの? 助かる。ん? でも、ものすごく軽いし、魔力を強く感じるわよ?」
流石王国騎士、鋭い。ラナは直ぐに見破った。
「はい、ついでなので、材質をアダマンタイトとオリハルコンに変えておきました。氷の付与魔法も施しましたから、安心して下さい。もう、不幸な事故で折れたりしません!」
「え?」
「いや、アリー? 何言ってるの?」
「えっと、アリーさん? 剣が修復できるだけでも凄いのに、アダマンタイトとか、オリハルコンとか、何?」
なんか、ソフィアがポカンとしてるし、ラナが変なことを言い出した。
いや、全うな意見なのだが。
「まあ、アリーさんのことだから、意味わかんないのは当然だから、再戦しましょう」
「はい! お願いします!」
アリーとラナは剣の切先を合わせると、試合を再開した。
しかし、ラナはさっき違い、打ち込んで来ない。
アリーはこう思った。
「(そっか、さっきと逆で、今度は私に打ち込んで来いってことだ)」
聖剣は絶対違うと思ったが。
「(お願い。魔剣さん♡)」
「(わかったよ。アリー)」
聖剣はそう言うと、アリーの体を操って、剣を振るった。
単純な上段からの逆胴への一撃だ。
ラナは素早く、アリーの剣を受けた。
しかし、不幸は起きた。
パキン。
ラナの剣が……また折れてしまった。
「……ま、参りました。もう許して下さい」
「え?」
「やっぱり」
「(あれ? なんかまたやってしまった?)」
多分、慌てたから剣の修復の時、不運にも弱いところが出来てしまったんだとアリーは考えた。
「(失敗しちゃった。今度こそ終わっちゃった?)」
「ご、ご......ごめんなさい」
アリーは泣きながら、ラナの剣を再度修復した。
しかし、ここで試験は中止になってしまった。
「(私......ハワード男爵の13番目の奥さんになっちゃう )」
「(もう、君は13番目でも100番目でも、もらってくれる人がいればいいんじゃないか?)」
「(しどい! 魔剣さん!)」
こうして、アリーは落胆して、筆記試験と面接を受けることになった。
聖剣は......こんな化け物、もう嫁のもらい手ないな......と、失礼なことを考えていた。
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。


妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜
雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。
だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。
国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。
「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」
*この作品はなろうでも連載しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

親友に裏切られ聖女の立場を乗っ取られたけど、私はただの聖女じゃないらしい
咲貴
ファンタジー
孤児院で暮らすニーナは、聖女が触れると光る、という聖女判定の石を光らせてしまった。
新しい聖女を捜しに来ていた捜索隊に報告しようとするが、同じ孤児院で姉妹同然に育った、親友イルザに聖女の立場を乗っ取られてしまう。
「私こそが聖女なの。惨めな孤児院生活とはおさらばして、私はお城で良い生活を送るのよ」
イルザは悪びれず私に言い放った。
でも私、どうやらただの聖女じゃないらしいよ?
※こちらの作品は『小説家になろう』にも投稿しています

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる