吸血鬼アリーは最強の魔王になりたい~実家に追放された上、騙されて命を落とした少女最強になる? 無自覚なので、何故か沈黙の大聖女になりました~

島風

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11アリーはビッチになりたい

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「副ギルド長、私の体狙ってます?」 

「は?」 

副ギルド長の驚きは当然だった。親切のつもりで、こんなことを言われたら、普通怒っていいと思う。 

「ごめんなさい。私如きにそんな気持ちがわかないことは知っています。でも、一応、こういうことはちゃんと確認しておけって、お姉ちゃんから言われていて」 

「君のお姉さんは君の身を案じて、そういうしつけをしたのか? 良くわからんが、安心してくれ。私はこれでも副ギルド長を任された身だ。新人冒険者に手を出すような真似は決してしない。それに、私には妻がいる。今、身重でな」 

「(どうしよう魔剣さん!)」 

「(どうしようって、素直にお世話になった方がいいんじゃないかな?)」 

「(でも、奥さんが身重なんですよ?)」 

「(奥さんがいる身で、そんな変なことはできないだろう?)」 

アリーが魔剣と話している間、副ギルド長はほったらかしだが、彼は怪訝に思った。 

アリーの自己評価の低さがおかしい。アリーは金髪、碧眼の美しい少女だ。 

ある意味、自分の純潔の心配をするのは当然のことだ。 

もちろん、彼にそんな下心などないし、彼は善良な人間だ。 

ただ……この少女、こんなに美しい子だっけ? そう思った。 

彼の疑問は当然だ。このギルドに入ったばかりの頃のアリーはガリガリに痩せていて、その美しさに誰も気が付かなかった。良く見ると本人と確認できるが、たいていの人は別人と思うだろう。 

アリーは聖剣の力を得て、魔物の血を飲んだ時、すっかり栄養状態が良くなった。 

唯一、胸だけは貧弱なままだったが、そこは基本スペックだからどうしようもない。 

「(奥さんが身重なんだよ。きっと溜まっているんだよ)」 

「(君、そんな知識、どこから持ってきたの?)」 

「(家にあった古代書に書いてあったの。なんかR18とか書いてあったよ)」 

それはあかんやつである。 

「(きっとね、奥さんが寝ているすぐそばでするとか、スゴイこと考えてるよ)」 

「(いや、君の方こそスゴイこと考えているだろ? それに失礼だろ? この人そんな人には見えないよ。僕にはただのいい人にしか見えない)」 

「(そうかな?)」 

「(そうだよ。それにいざとなったら、僕の力を使って、懲らしめればいい)」 

「(そっか!)」 

ようやく、アリーと聖剣の間で折り合いがつき、副ギルド長に宿泊のお願いをする。 

「わかりました。一晩泊めてください。御恩は後日何かでお返しします」 

ぺこりと頭を下げるアリー。 

「うん、わかった。ついておいで、奥さんに紹介するよ」 

「はい……あと」 

「どうした?」 

「あ、あの、万が一、魔がさした時はその……わ、私、初めてなので、優しくしてね」 

「は?」 

「(こらー!)」 

「ひゃぁ!」 

魔剣から怒られるアリー。 

「(君、何言ってんの? 失礼だろ? それに、それじゃむしろ君の方から誘っているようなものだろ?)」 

「(だって、副団長さん、年上の貫禄があって、イケメンだし、雰囲気が良ければ、いいかなって、えへ)」 

「(君はビッチなのか? 雰囲気が良くて、相手がイケメンだと簡単に体を許すような女の子なのか?)」 

「(わ、私みたいな貧弱な女……間違いでも起こしてもらわないと嫁の貰い手もないんだよ。大丈夫だよ。誰も私如きにそんな気持ち湧かないよ)」 

「(ううっ!)」 

聖剣はアリーの尻の軽さが自身の容姿への劣等感からだと知ると、言葉に詰まった。 

『だからと言って、今は美少女になってるって、教えると、絶対調子に乗るよな?』 

聖剣はあえて黙っていることにした。 

それにいざとなったら、アリーの体を乗っ取って、正義の鉄槌を下すつもりだ。 

美少女のアリーに手を出すなんて、僕が許さない。 

聖剣も結構勝手である。 
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