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10副ギルド長さんはアリーが心配
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『私の杞憂だといいのだが』
グラキエス男爵領アルデンヌの街の冒険者ギルド、鷹の爪団の副ギルド長、エグベルドは不安げな顔をしていた。
彼の不安は先日ダンジョン攻略中に命を落としたという、アリーという初心者冒険者の所属する中級冒険者パーティー銀の鱗が、再び初心者の女の子を加入させたことだ。
冒険者が、将来を見込んで新人をパーティに加えることは多々にしてある。
だが、アリーという少女も今回の少女もありふれたスキル、いや、むしろハズレスキルの持ち主だった。アリーなど、【無自覚】という訳のわからないスキル持ちだった。
中級冒険者銀の鱗は最近この街に流れ着いたばかりのパーティ。エグベルドにも詳しくはその素性はわからない。しかし、稀に新人をいざという時の捨て駒にする者はいる。
もちろん、そんなパーティは冒険者の資格を剥奪し、裁判を受けさせるべき案件だ。
だが、ダンジョンという閉鎖空間において、何が起きているのかの全容を把握することは困難だ。副ギルド長、エグベルドは流れ者の中級冒険者パーティに加入したばかりの新人の安否を危惧していた。
「は?」
エグベルドは思わずおかしな声を出してしまった。
彼は街の門で、一人、新人冒険者の身を案じていたのだが、ダンジョンの方から白い翼を生やして飛んで来る者がいるのだ。
「エグベルドさーん!」
空から声をかけて来たのはダンジョンで死亡したはずの少女アリーだった。
心なしか、以前見た時より、女性らしく、ふっくらして美しくなっているような。
彼女は一人の少女の亡骸を携えていた。
「き、君はアリー。生きていたのか!」
アリーが空から着地すると、そっと、丁寧に初心者冒険者の亡骸を地に下ろした。
「エグベルドさん。残念ながら、この子は……銀の鱗の人達に……」
「そうか……すまない。私達の管理不足だ。悪質なパーティを見抜けなかった」
「この子をお願いします」
ああ、とうなづいてエグベルドは亡くなった少女の亡骸を抱き上げた。
「彼女のことは私が責任をもって、ご両親に報告しよう」
「はい。お願いします」
副ギルド長は自身の未熟を嘆いた。不安があったのなら、銀の鱗の前の所属ギルドに問い合わせするべきだった。
「アリーさん、生きていてくれてありがとう。もし、君まで死んでしまっていたら、私は自分を許せなかった」
「私は運が良かったのです。一度は死んだのです。でも、魔剣のおかげで吸血鬼になったのです」
「吸血鬼?」
極めて稀なことだが、過去に事例はある。吸血鬼以外になってしまった冒険者もいる。
幸い、吸血鬼は、人間と共存可能だ。エグベルドはホッと胸を撫で下ろした。
「ところで、君は今日、どうするんだ? その、君はまだ初心者だし、宿に泊まるお金はあるのか?」
エグベルドはアリーの今日の宿の心配をした。生きて帰ったものの、アリーは所持金は全くなく、初めてのクエストで未帰還となっていたので、所持金はない筈だった。
「あ! 私、無一文だった」
「良かったら、私の家に泊めてあげようか?」
アリーは少し、思案すると。
「副ギルド長、もしかして、私の体狙ってます?」
アリーは色々と、色んなことが欠けていた。
グラキエス男爵領アルデンヌの街の冒険者ギルド、鷹の爪団の副ギルド長、エグベルドは不安げな顔をしていた。
彼の不安は先日ダンジョン攻略中に命を落としたという、アリーという初心者冒険者の所属する中級冒険者パーティー銀の鱗が、再び初心者の女の子を加入させたことだ。
冒険者が、将来を見込んで新人をパーティに加えることは多々にしてある。
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「は?」
エグベルドは思わずおかしな声を出してしまった。
彼は街の門で、一人、新人冒険者の身を案じていたのだが、ダンジョンの方から白い翼を生やして飛んで来る者がいるのだ。
「エグベルドさーん!」
空から声をかけて来たのはダンジョンで死亡したはずの少女アリーだった。
心なしか、以前見た時より、女性らしく、ふっくらして美しくなっているような。
彼女は一人の少女の亡骸を携えていた。
「き、君はアリー。生きていたのか!」
アリーが空から着地すると、そっと、丁寧に初心者冒険者の亡骸を地に下ろした。
「エグベルドさん。残念ながら、この子は……銀の鱗の人達に……」
「そうか……すまない。私達の管理不足だ。悪質なパーティを見抜けなかった」
「この子をお願いします」
ああ、とうなづいてエグベルドは亡くなった少女の亡骸を抱き上げた。
「彼女のことは私が責任をもって、ご両親に報告しよう」
「はい。お願いします」
副ギルド長は自身の未熟を嘆いた。不安があったのなら、銀の鱗の前の所属ギルドに問い合わせするべきだった。
「アリーさん、生きていてくれてありがとう。もし、君まで死んでしまっていたら、私は自分を許せなかった」
「私は運が良かったのです。一度は死んだのです。でも、魔剣のおかげで吸血鬼になったのです」
「吸血鬼?」
極めて稀なことだが、過去に事例はある。吸血鬼以外になってしまった冒険者もいる。
幸い、吸血鬼は、人間と共存可能だ。エグベルドはホッと胸を撫で下ろした。
「ところで、君は今日、どうするんだ? その、君はまだ初心者だし、宿に泊まるお金はあるのか?」
エグベルドはアリーの今日の宿の心配をした。生きて帰ったものの、アリーは所持金は全くなく、初めてのクエストで未帰還となっていたので、所持金はない筈だった。
「あ! 私、無一文だった」
「良かったら、私の家に泊めてあげようか?」
アリーは少し、思案すると。
「副ギルド長、もしかして、私の体狙ってます?」
アリーは色々と、色んなことが欠けていた。
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