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9アリーは人間を駆除したい

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『そうか……この子は魔法の天才。魔力が少なかったが故に』 

聖剣はアリーが魔力操作に圧倒的な才能を持っていることを確信した。 

その原因はアリーの魔力が小さかったが故、小さな魔力で必死に魔法を極めようとした。 

全ては信じられない努力の賜物だと推測した。 

『神装のドレスで魔力が10倍になって、才能が開花したんだ』 

 

「(ねえ、アリー。君は本当に魔王になりたいの?)」 

「(うん、こんな腐った世界、壊してやりたい)」 

「(家族に虐待されたから?)」 

聖剣はアリーが家族から疎まれて、虐げられたから魔王になりたい、とそう思った。 

「(え? お父さまやお母さまには恨みなんてないよ。ソフィアお姉ちゃんもよくしてくれたし……私はただ……人間なんて駆逐されるべき下等動物だと思っているだけだよ)」 

「(は?)」 

『ヤバい、発想は本物の魔王のそれだ』 

「(私ね……子供の頃から大好きな幼馴染の男の子がいたの……私、彼のお嫁さんになるって言ったの……でもね、その子、私以外の女の子といい仲になったの、これ浮気よね?)」 

「(え? 付き合っていた男の子に裏切られたの?)」 

「(つ、付き合ってるなんて、そんな、あん♡ まだだったわよ。もう一歩手前だったけど)」 

えっと、付き合ってない幼馴染の男の子が他の女の子と付き合いだした。 

別に彼に責任はないよな。アリーの一方的な被害妄想だ。 

「(私にとって、彼は大切な人だったの。なのに……あのクソ乳女ぁ!)」 

「(どうどう、その酷い女の子がアリーが好きだった人を奪ったんだね)」 

「(うん、私が紹介してあげたのに。親友だと思ってたのに……あの下等動物め!)」 

親友を下等動物と思うとか、しかも自分で紹介しておいて? 

「(私、ナニやってたんだろう?)」 

それはただの自殺行為だと、聖剣は言えなかった。 

「(だ、だからって、魔王になって、この世界をぶち壊すの。思考が短絡してない?)」 

「(だって、5歳の頃からの付き合いだよ。それなのに、乳が大きいだけで選ばれるとか、この世界は腐ってるわ!)」 

腐っているのは、むしろアリーの根性である。そもそも、親友と幼馴染同士が付き合いだしたのなら、その想いは胸に秘めて祝福するのが親友というものじゃないだろうか? 

それに乳に対するヘイトが半端ない。アリーの胸は、その、控えめだ。 

色々根性が曲がっているようだ。 

両親から虐げられて、そこには何も感じないのに、思わぬ伏兵がいたものである。 

『しかし、この子の正義感は本物だった』 

初心者冒険者の女の子が殺された時、アリーは怒りのあまりに魔法を発動した。それは正義感の現れだろう。それに中級冒険者達の命をアリーは奪えなかった。 

とても魔王になんてなれないと思う。 

……だけど 

この子…大丈夫かな? 

聖剣は色々心配になって来た。 
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