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27おっさん、グリフォンに襲撃されたと思う

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「おっさん。今日は騎士団の観覧式に行くんだぞ!」 

「へえ?」 

俺はいつもの魔法学園への登校ではなく、違う所に行くと聞いてちょっと驚く。 

まあ、お嬢様は王女様だからな。 

式典とか色々な催し物に出席しなければならないんだろうな。 

まあ、俺はか弱いお嬢様の警護が仕事だから、どんな所でもお嬢様を守らなきゃな。 

盗賊なんかの俺をお側において頂けるお嬢様へのご恩、体を張って返しやすぜ。 

☆☆☆ 

「おっさん。あの天幕の中で式典を観覧するんだけど、私とお父様を守るんだぞ」 

式典の会場は広い平原で行われたが、いっかくに天幕が張られていて、そこに馬車から降りて、お嬢様と二人で歩いて行く。 

お嬢様は普段通り、これでもかと胸を押し付けて来るが、今日はいつもよりぎゅっと力強く胸が当たっている。 

天幕の中には見目よい騎士や貴族達がたくさんいるから、俺が舐められないようにと言う気遣いに違いない。 

お嬢様の優しさに、思わず涙が出そう。 

あれ? 

いつもの右の方だけじゃなく、左の方からもいい香りと柔らかい胸の感触が? 

左の方を見ると? 

「ミアさん?」 

「えへ。おじさま。私のことも守ってね」 

そう言って、グイグイと胸を押し付けて来る聖女ちゃん。 

「か、勘違いしちゃだめだよ。わ、私、式典とか恥ずかしいから、知っている人に密着したくなる体質なの」 

そう言って、上目遣いで顔を真っ赤にする聖女ちゃん。 

何、この可愛いの? 

お嬢様も可愛いけど、聖女ちゃんも負けず劣らず可愛ええ。 

いかん、いかん。 

俺如きがなんて不敬なことを。 

そう、俺は勘違いしないおっさんなのだ。 

「おい、あのおっさん誰だ?」 

「王女殿下だけではなく、教国の聖女様まで?」 

「し、信じられん。あんなおっさんが、何故?」 

やはりおっさんの俺への風当たりは強いな。 

お嬢様と聖女ちゃんの気遣いがなかったら、きっと馬鹿にされていたに違いない、そう思って二人に感謝していた、その時! 

カン、カン、カーン!! 

カン、カン、カーン!! 

突然、鐘の音が鳴り響いた。 

「一体何事だ?」 

騎士団の責任者と思しき男が叫ぶ。 

「この鐘はなんですかい?」 

「警報だぞ。敵の襲来だぞ」 

そう言って、俺に更にしがみついて来るお嬢様。 

可哀想に、きっと怖くてしがみついてきたんだ。 

「あれは……何かしら?」 

聖女ちゃんが上を見上げてそう言った。 

俺も騎士達も言葉につられて上を見た。 

鐘は、南の騎士団の詰め所から発せられたものだった。 

その時、何かが頭上を横切った。 

「あ、あれは!」 

「グリフォンですぜ」 

俺は言い切った。 

何故ならそのグリフォンには人が乗っていた。 

おそらく従魔としてテイムして、騎乗しているのだろう。 

人がテイム出来る魔物なら、グリフォンだろう。 

「……え? いや、あれ、グリフォンじゃなくて、飛竜じゃ?」 

「グリフォンにしては大き過ぎるし、羽根の形も違わないか?」 

おいおい、どこの世界に飛竜をテイムできる奴がいるんですかい? 

グリフォンは俺達の頭上を通り過ぎた後、更に旋回を続けた。 

「……お、おっさん。お願い」 

「……お、おじさま、助けて」  

二人の胸に挟まれたままの俺の頭上を旋回しながらグリフォンに騎乗する謎の騎士が弓をつがえるのが見えた。 

「た、大変だ! 攻撃する気だぞ!」 

「魔道兵!! 魔道弓兵前へ!!」 

「国王陛下をお守りしろっ!!!」 

途端に騒がしくなり、騎士団の観艦式は演習から実戦へと様相を変えた。 

天幕の前には魔法使いと弓兵の一団が準備を整えていた。 

「魔道弓兵、撃ち方用意! 対空戦だ!!」 

騎士団長が叫び、呪文を詠唱中の魔道兵より先に攻撃を開始しようとしていた。 

魔道弓兵は弓や矢に魔石を仕込み、矢には火や氷の魔法を予め付与され、弓には矢の加速魔法が付与され、魔法詠唱無しで使える優れた武器だ。 

この国はダンジョンの数が大陸一多いので、魔物が多く、魔石の産出量が多い。 

魔法弓兵の数が多いのがこの国の騎士団の特徴であり、東西の大国に挟まれたこの国が独立を保ち続ける事が出来た理由の一つだ。 

それだけ呪文詠唱なく魔法戦が行える魔道弓兵は強い。 

「撃ち方始めぇ!」 

騎士団長の号令と共に無数の矢がグリフォンを襲うが、ことごとく、矢は後ろを通過してしまう。 

「グゥッ! 偏差か?」 

唸る騎士団長。 

無理もねえ。 

魔道弓兵は本来地上の兵に使用する。 

空を飛ぶ魔物への鍛錬は十分じゃねえ。 

おそらく、空飛ぶ魔物への対処は冒険者の方が上だ。 

「続いて魔法兵!」 

呪文詠唱が終わった魔法使いが次々と得意の魔法を発動させて行く。 

上空で激しい爆発音や魔力の翻弄が煌めき、グリフォンに直撃したか? に、見えた、が。 

「くそっ、当たってないぞ!」 

騎士団長が叫ぶ。 

苛烈な魔法の弾幕が収まると、何事もなかったかのようにグリフォンは姿を現し、悠々と俺達の頭上を周り続けていた。 

「ヤツの速度が早過ぎる。偏差が大き過ぎて、後ろに着弾している!」 

騎士団長がそう怒鳴ると、何かに気が付いたようで、再び魔道弓兵に命令を下す。 

「魔道弓兵、再攻撃の際、ヤツの未来位置を各自予測して射撃だ! 攻撃開始!!」 

「「了解ッ!!」」 

攻撃を再開するが、やはりグリフォンには着弾しねえ。 

当然だ。 

空を素早く飛ぶ魔物は地上に引きづり下ろして戦うのがセオリーだ。 

しかし、知能が低い魔物には色々な罠を試みることができるが、狡猾な人間が騎乗しているとなると? どうする? 

それに、俺はハッとした。 

「いいぞ! さっきより至近弾だ!」 

騎士団長は第一射よりマシになった攻撃に気を良くして、引き続き攻撃を続けようとしていた。 

柔軟に対応して、初見の相手に有利になりつつあると確信しているようだった。 

奴らが一匹だけだったらな。 

俺は長い冒険者生活で、空を飛ぶ魔物の怖さを十分に理解していた。 

俺の察知のスキルはこんな時にこそ役立つが、こいつの出現の際には反応がなかった。 

隠蔽のスキルを使っているにちげえねえ。 

と、すると? 

「騎士団の皆さん、そいつは囮でさぁ! おそらく本体は……太陽の中心線ですぜ!」 

「な、何?」 

俺の言葉に動揺する騎士団長、しかし、俺の言っていることの意味。 

例え杞憂だとしても、万が一にと対処しなければならないと判断したのだろう。 

「監視兵! 急ぎ東上空を! 太陽の中を良く見ろ!」 

眩しい太陽を手のひらで遮りながら見上げると、そこには同じ……それも人間が騎乗したグリフォンが5体もこちらに向けて急降下していた。 
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