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20おっさん、いつの間にかVIPになる

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国王アーサーSide 

「やはり動いたか、教皇?」 

「そんな堅い言い方はなしにして頂けないかな? 国王陛下?」 

「ふっ」 

「はっ」 

どちらからともなく笑みが見え、どちらからともなく話し始める。 

「正直、教皇、いや、なっちゃんが久しぶりに訪ねてくれて嬉しい」 

「今はあの頃と同じでいいという理解でいいかな、陛下、いや、あーちゃん?」 

陛下、いやあーちゃんがワイングラスをなっちゃんに差し出すと、グラスをチンと合わせる。 

「それで要件はなんだ? 今更同窓会という訳でもなかろう」 

「単に同盟を結んだ方が得策だと言うことだ。例え、心の中で親友だと思っていても、今は立場が違う……ワシは組織のためなら、親友でも裏切る」 

「それはワシも同じだ。残念だが、お互い大人になった」 

「……ああ」 

しばらく昔話に花を咲かせるが、突然、教皇が核心をついてきた。 

「あーちゃんよ。お前の娘を決闘で負かせたというおっさんは本物か?」 

「本物だ。あれは化け物だ。化け物と呼ばれる娘のアリスを遥かに上回る化け物」 

「そうか、なら、一つ忠告をしておこう」 

「なんだ?」 

「盗賊のおっさんを甘く見るな。絶対にだ」 

なるほど、そういうことか。 

「つまり、ワシがおっさんを怒らせて、他国にでも逃亡されたら? と言うことか?」 

「そうだ。他の者がおっさんを怒らせたら、そいつらをあーちゃんとワシの力でねじふせればいい、だが、王自らこの国に愛想を尽かされるようなことになれば?」 

「この国は終わりだな」 

この国を取り巻く環境は複雑だ。 

東には帝国、西には自由同盟。 

どちらの国も我が国の産出するミスリル鉱山、アダマンタイト鉱山が喉から手が出る程欲しい。 

その上、この国の北には魔王が治めると言われる魔の森があり、魔王によって、今なお多くのダンジョンが作られる。 

従って我が国は魔石の供給国としては最大である。 

その上、大陸のど真ん中に位置し、帝国が自由同盟へ侵攻するには我が国を、自由同盟が帝国へ侵攻するには我が国を通る必要がある。 

まさに地政地理学的にこの大陸の要衝にあるのだ。 

とは言うものの、戦乱を好む施政者などこれまでいなかった。 

この国には大陸でも例を見ないほどの強力な固有スキルを宿す者が多い。 

まるで、神々のゲームの盤上におかれた駒のように。 

歴史上、帝国も同盟も我が国に敗北を何度も喫していた。 

だが、帝国の新皇帝は野心が強く、ついに我が国に攻め入った。 

1年前の帝国との一戦で、この国は滅んだと全ての他の国の人が思った。 

知らないのはこの国の住人だけだ。 

緘口令を敷いたからだ。 

この国の滅亡を食い止めたのは我が娘アリス。 

アリスは帝国の軍師パ○ピ公明の石兵八陣の計により分断され、所属する第三騎士団と主体を分断されて、自軍1万に対して前後に万の兵に挟撃されると言う事態になった。 

そのピンチを救ったのがアリスだった。 

アリスは単独迂回し、敵精鋭の第一騎士団3万の背後に周り、一人で全員を虐殺した。 

逆に孤立したのは、帝国の第五騎士団。 

こちらの1万と増援で駆けつけた3万に逆に挟撃されて、大敗を喫する。 

世にいう血の草原の戦いである。 

たった一人の騎士が全ての戦場の様相をひっくり返した。 

娘であるアリスの存在が、この国の安全保障に直結する。 

だが、今、そのアリスをも上回る男が出現した。 

あの殺戮という名に愛された天使と字名を頂くアリスが手も足も出なかった。 

「あーちゃんの娘だけでも信じられないが、それを上回るとはな」 

「ワシの娘と同程度......なら、なっちゃんの娘もそうであろう?」 

「......ふっ。知られていたか」 

「だから今まで国教会は第一王子にも、第二王子にもつかず、中立を保っていた」 

教皇は盃を一気に開けると、切り出した。 

「王よ。そこまで知られているのなら話は早い。同盟を結んで欲しい」 

「......やはり最後は王として......教皇として話さなければならないか」 

「言うな、王よ。お互い自由な身ではないのだ。この国のバランスは一気に崩れた。王も気が付いておろう。第一王子には帝国が、第二王子には同盟が関与している」 

「......」 

王は黙り込み。盃を開けた。 

「わかっておる。二人共共倒れになるだろう。そして、国内の混乱を見逃す帝国でも同盟でもなかろう」 

「その通りだ。このままでは我が国は滅ぶ。いくら殺戮の名に愛された天使でも、帝国や同盟の兵100万には勝てん」 

「貴様の娘、ミア殿と二人でもか?」 

「片方だけならあるいはな。だが、共闘されたら」 

「......負けか」 

教皇は再び盃に酒を満たす。 

「キーはそのおっさんだ。おっさんを手中に手に入れた者がこの大陸の覇者になる。そして、今もっとも近くにいるのがアリス王女殿下。かなりべた惚れらしいな」 

「ああ。一日中、あのおっさんの話が途切れることがないわい。最初は惚れた弱みで相手が良く見え過ぎているのかと思ったが、七賢人の一人、シュレンの魔法を浴びてもどこ吹く風というていな上、先日命じた娘の護衛でも、昇華結晶が埋め込まれた火竜をも倒したという」 

「教会もそれは確認した......アリス殿は何もできなかったそうだ」 

「何?」 

二人は20年ぶりに祝杯をあげた。 

「「プロォウシィト!」」 

二人は幼い頃に共に読んだ異世界の戦記物語の中の登場人物達が使う、古典語の乾杯を意味する言葉がどちらからとも言わずこぼれ。 

そして、同盟を結んだ。 

教皇の娘、ミア。 

七聖人が一人、剛腕の聖女。 

その力は『剣の乙女~しゅきしゅき大好き、俺、この娘推す~』の固有スキルを有する第一王女アリスにも匹敵する、『剛腕の乙女~俺が結婚してやる、何かもげろ~』の固有スキルを有するが故に。 
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