無能と追放されたおっさん、ハズレスキルゲームプレイヤーで世界最強になった上、王女様や聖女様にグイグイ迫られる。え?追放したの誰?知らんがな

島風

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5おっさん、信頼していた人に裏切られる

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「け、結婚してください」 

「……へ?」 

唐突の発言に思わず固まってしまった。 

「か、勘違いだからね! 一目惚れだとか、初めて自分より強い人に出会えて惹かれたとか、早く結婚したいとか、新居は南向きの庭がある真っ白いな壁の一戸建てがいいとか、新婚旅行はナーロッパがいいとか、結婚式場は今すぐ予約したほうがいいなんて思ってないんだからね!」 

「……わかってますぜ。勘違いなんてしやせん」 

そう、俺は何度も勘違いをして来た。高校の同級生の女の子にちょっと声をかけられたからと勘違いして告白して玉砕したとか、行きつけの喫茶店の店員の笑顔が俺にだけ特別なものと勘違いして、デートに誘ったら「いっぺん死んでみたら?」と、死んだ魚を見るような目で見られたこととか、アイドルグループの推しが、俺だけを見ていると勘違いしたあくる日に若いイケメン俳優と熱愛報道が出たとか……おっさんを舐めるな。 

俺は勘違いなんてしない。 

人生経験の長い、よくわかっているおっさんなのだ。 

「……そ、それでだな。勘違いが解けたところで、お、お願いがあるんだが、だめかな?」 

何故かお嬢様は真っ赤な顔でモジモジしながら俺に言って来た。 

……これはあれだな。 

おしっこしたいの我慢してるな。 

馬車の長旅で、俺との戦闘時間も結構長かったしな。 

「どんなお願いでやすか?」 

「わ、私とパーティを組んでくれないか? できれば、一生?」 

「……いやです」 

即答だった。 

若い頃の俺なら勘違いをして、この美少女のお嬢様との間に何かあるかもしれないと期待して簡単にパーティを組んでいたろう、だが今の俺は違う。 

そう、このお嬢様はお手洗いに早く行きたいだけなんだ。 

決闘なんて、申し込んだ故に気を遣っているだけに違いない。 

長い人生経験を積んだ俺だからこそ辿り着ける正解。 

「それじゃ、あっしはこれで」 

そう言うと、トンズラした。 

「「「「「ええええええええッ!!」」」」」 

何故かモブの騎士様達が声を上げる。 

途中で隠密のスキルを発動させた。 

あのお嬢様が俺なんかのためにお礼をするため、騎士あたりに探させる可能性はあった。 

貴族とは面倒な人種で、恩義に対して報いないと、家の恥となる。 

しかし、盗賊の俺なんかに助けられたとあっては、貴族様の護衛の信用問題になりかねない。 

あの騎士達が俺のおかげで叱責をかったりするのは気は進まない。 

戦友みたいなモノだからな、俺たち。 

そんな感じで街に入ると、一番大きな道路を通って、ギルドを目指す。 

俺はパーティを追放されたし、泥棒の疑いもかけられている筈だ。 

誤解は解かなければならないし、あいつらとは顔を合わせたくないから、どっか違う街にでも行こうかと思案していた、その時。 

「は?」 

驚いた。 

洋服屋の壁に人相書が出ていた。お尋ね者の顔が描いたヤツだ。 

「俺じゃねえか? どう見ても!」 

そこには俺の似顔絵と、突き出した者には金貨100枚と書かれていた。 

俺は慌てて隠密のスキルを発動して、路地裏に回って、ギルドを目指した。 

完全に指名手配だが、理由がわからねぇ。 

俺を追放したパーティの差金か? 

しかし、それは変だ。 

さして取り調べもなく指名手配など聞いたことがねえ。 

ここはギルドで信頼のおける、あの子に聞いてみよう。 

ギルドの前で隠蔽のスキルを解除して、ギルドに入った。 

幸い、まだ昼間なので、冒険者は見かけない。 

皆、仕事しているか、休息をとっているかどっちかだ。 

受付カウンターを見ると、お目当ての受付嬢がいた。 

彼女はギルド長の信頼も厚く、俺のような盗賊だからと言う理由だけで差別や決めつけをしない。 

誰が言っているのかではなく、何を言っているのかをちゃんと聞いてくれる優秀な受付嬢だ。 

「シアさん、すいやせん。ちょっとおり言って相談がありやす」 

「あら? おっちゃんじゃないですか? どうされたんですか?」 

「実は諸々困ってまして、何が起きたのやら、全く身に覚えがなくて、ここは信頼ができるシアさんに相談をした方がいいかと思いやして」 

シアさんは微笑むと、「ちょっと、応接室までいいかな?」そう言って、俺をギルドの応接室に促した。 

「お待たせしました。どうぞ、お茶でも飲んでください。前のパーティからの追放の件ですか? あれはギルド長もかなりお怒りでしたよ」 

「……え? ほんとですかい?」 

「当然じゃないですか。長い実績と信頼があるおっちゃんと最近、ポッと出の初級者パーティの言うことなんか、どちらを信用すべきか、自明の理です」 

俺は涙が出そうになった。 

信頼されるって、こんなに嬉しいことなんだ。 

盗賊は職業柄、本当の泥棒と特性が被る。 

だから、本当の泥棒や盗賊に身をやつす者が多い。 

盗賊が疎まれるのは、ただ名前が連想することとか、あまり役に立たないように見えるとか、そういう問題じゃない。 

実際に信用を裏切る盗賊が多いのも事実だ。 

蔑まれるが故に、余計に悪への道に手を染める者も多い。 

だが、断じて俺はそんな悪事に手に染めるような真似をしない。 

これまでの行動が彼女の信頼を勝ち取ったと知って、涙が出た。 

「本当に俺のことを信用してくれるんですかい? 俺は、俺は盗賊ですぜ」 

「……んん? そんなことは関係ないよ。ただ、怪しいから、おっちゃんが犯人だと思ったの、悪く思わないでね。騎士団に突き出すからね」 

「へ?」 

いや、信頼してくれたんじゃないのか? 

……そっか、悪い方の信頼か……俺、なんかしたっけ? 

逃げようと、立ち上がろうとした時、体がぐらりとした。 

「ごめんね。お茶に強力な睡眠薬を仕込んだから、直に意識がなくなるわよ。王女様がお探しなの」 

俺は……俺は勘違いした自分を反省した。 

……女の子に気を許した俺のバカ。 

最後に王女様がどうこうとか、言ってたような気がするけど、意識は無くなっていた。 
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