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1おっさん追放される
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「おっさん! お前をパーティから追放する!」
歪んだ笑みを浮かべてそう言い放ったのはパーティのリーダー、レオン。
今日、初めて初級ダンジョンを制覇して、ねぎらいの言葉をかけられるかと思っていた俺の想像とは真逆の言葉に、理解が追い付かない。
「お、俺は確かに戦力外でやすが、契約通りの仕事はさせて頂いてた筈ではないですか?」
俺は年下のリーダーに初めて語尾を強めて言った。
いつもへりくだって接していた。こいつの方が上だとわかっていたからな。
「......あぁ? 契約? そういえば、そんなのあったかな。……とに、鈍い奴だな。察して理解しろ。わざわざ俺に説明させるなよ!」
「ちょっと待ってくだせえ! 俺のどこに問題があったんですかい! 少ない報酬でも、ずっと我慢して働いてきたのに……い、いきなり追放だなんて納得できねえ!」
周りを見ると、他のメンバー達の目も冷ややかだ。
「他のみんなも同じ気持ちなのか?」
きっと、他のみんななら俺を引き留めてくれる。そう、かすかに思った、だが。
「君がいるとレオンの品位が下がるんだよね。普通、わかるっしょー」
そう言ったのは重戦士職のエミリア。
「お、俺が盗賊だからか? でも、最初からわかっていて契約した筈だろ? 契約外のギルドとの交渉や、魔物の解体やドロップアイテムの鑑定もやってたじゃないか!」
「あんたなんてお荷物なのよ。それに雑用するのなんて当たり前っしょ、奴隷同然なんだから。それにいつもあーしのことジロジロ見て気持ち悪い。あんた、一体何考えてたの?」
レオンに胸を押し付けながら俺を睨む重戦士エミリア。彼女を見ていたのはナイフの投擲のタイミングを計っていたからだ。前衛のタンク役の彼女は一番重要なポジションだ。だから、一瞬でも隙があったら、今頃彼女は……それなのに?
「あんた馬鹿ぁ? あたいらはこれから貴族にもアピールしていかなきゃならないの。パーティに盗賊なんていたら、印象最悪でしょ? それにあたいはもう、鑑定も罠の解除の魔法も覚えたの知ってるでしょ? いらない子だって自覚ないの?」
エミリアと同様レオンに胸を押し付けている魔法職のアンネも後衛を直接狙って来る狡猾な魔物から何度も助けた、なのに?
「それと、これは今までのよしみで教えてやるが、ギルドへはお前が俺達の金を盗んだと報告しておいたから、どこのパーティもお前は雇ってはくれないだろうよ。さっさと冒険者なんてやめて、故郷で畑でも耕してろよ。いつまで夢見ているんだ? このハズレスキルの負け犬がぁ!」
リーダーのレオンの口から出た言葉に、衝撃を受けてなにも言葉が出ない。
俺は女神から授かる固有スキルが『ゲームプレイヤー』という謎スキルだった。
だから、戦士職や魔法職なんかとはくらべものにならない位人気がない盗賊なんかをしている。
ハズレスキルで盗賊だからクビ。
そんな理由、納得できる筈がなぇ。盗賊だからと言っても、人様のモノに手を出したことなんてねぇ。冒険者でのジョブの登録が盗賊なだけだ。
盗賊は中級パーティまでは必須のジョブだ。人気がないから人数もいない。
それを格安の賃金で契約したのは、こいつらに目をかけてやったからだ。
こいつらは将来伸びる冒険者パーティだ。そう俺の長い人生の直観がそう言っていた。
実際、伸びて来たし、昨日までこいつらと上手くやっていたと思っていた。
......そうか。
俺達のパーティは最近注目を集める初級パーティに成長した。
既に貴族やあちこちのクランからも声がかかっている。
......つまり、俺はお払い箱って訳か。
腑に落ちたが、だからこそこれ以上何を言っても無駄だ。
つまり、俺が盗賊だからという以外に理由なんてないと言う理不尽なことなのだから。
「最後に聞きたい。ミアも同じ気持ちなのか?」
俺は聞いておきたかった。
今はここにいないが、聖女のように可憐で、心の綺麗な子だ。
盗賊の俺なんかにもよくしてくれた。
彼女だけはと信じたい。
「一緒に決まってんだろ? むしろ、今回の追放を決めたのはあいつだ。もう二度と顔を見たくないとさ」
「そうか」
何故か不満げになるレオン。
「ああ、そうだ。お前、最後に俺に対してのお礼はどうした? 使えねぇお前をこれまで我慢して雇ってやったお礼位、言えるよな? おとなだもんな? おっさん?」
「......あ、ありがとう......ごぜえやした」
悔しさと屈辱感を殺して、自分より二周りも下の小僧に空々しいお礼を言い、頭を下げて、常宿のレオンの部屋を出て行こうとした。
「ああ、もう、我慢できねぇ、もういいよな? 俺のエミリアやアンネに色目を使いやがった上、ミアまでもか? いっぺん、殴り倒してやりたかったんだ。これは退職金代わりだ!」
頭を下げて無防備なところから、強烈なアッパーを喰らい、散々殴る蹴るをされて、俺は常宿から追い出された。
装備も金も奪われて、腰布一枚の姿で路地裏に叩き出された。
「どっちが盗賊だ。まあ、あいつらこれから苦労するな」
俺はそう言うと、路地裏でアイテムボックスから皮の鎧や装備一式を取り出すと、着替えた。
中級パーティまでは盗賊は必須だ。
あいつら、罠の解除や鑑定を舐めてやがる。
「まあ、それより......俺っておっさんだよな?」
そうなんだ。何故か人生が始まったばかりのような......不思議な新鮮な気持ちがある。
......負け犬のおっさんの筈なのに。
そう、俺はおっさんの筈だ。孤児で、必死に生きて冒険者になった。
子供の頃からの情けない人生がよぎる。
女神様からもらった固有スキルはゴミで、何の役にもたたなかった。
うだつの上がらない30代後半のおっさん。
「俺って人生の落伍者だよな」
そう呟いた時、頭の中で声が響いた。
『ようこそ「おっさん」、新たな旅の始まりです。さあ、先ずはメニューから初心者限定SSR確定ガチャを引いてください』
「へ?」
歪んだ笑みを浮かべてそう言い放ったのはパーティのリーダー、レオン。
今日、初めて初級ダンジョンを制覇して、ねぎらいの言葉をかけられるかと思っていた俺の想像とは真逆の言葉に、理解が追い付かない。
「お、俺は確かに戦力外でやすが、契約通りの仕事はさせて頂いてた筈ではないですか?」
俺は年下のリーダーに初めて語尾を強めて言った。
いつもへりくだって接していた。こいつの方が上だとわかっていたからな。
「......あぁ? 契約? そういえば、そんなのあったかな。……とに、鈍い奴だな。察して理解しろ。わざわざ俺に説明させるなよ!」
「ちょっと待ってくだせえ! 俺のどこに問題があったんですかい! 少ない報酬でも、ずっと我慢して働いてきたのに……い、いきなり追放だなんて納得できねえ!」
周りを見ると、他のメンバー達の目も冷ややかだ。
「他のみんなも同じ気持ちなのか?」
きっと、他のみんななら俺を引き留めてくれる。そう、かすかに思った、だが。
「君がいるとレオンの品位が下がるんだよね。普通、わかるっしょー」
そう言ったのは重戦士職のエミリア。
「お、俺が盗賊だからか? でも、最初からわかっていて契約した筈だろ? 契約外のギルドとの交渉や、魔物の解体やドロップアイテムの鑑定もやってたじゃないか!」
「あんたなんてお荷物なのよ。それに雑用するのなんて当たり前っしょ、奴隷同然なんだから。それにいつもあーしのことジロジロ見て気持ち悪い。あんた、一体何考えてたの?」
レオンに胸を押し付けながら俺を睨む重戦士エミリア。彼女を見ていたのはナイフの投擲のタイミングを計っていたからだ。前衛のタンク役の彼女は一番重要なポジションだ。だから、一瞬でも隙があったら、今頃彼女は……それなのに?
「あんた馬鹿ぁ? あたいらはこれから貴族にもアピールしていかなきゃならないの。パーティに盗賊なんていたら、印象最悪でしょ? それにあたいはもう、鑑定も罠の解除の魔法も覚えたの知ってるでしょ? いらない子だって自覚ないの?」
エミリアと同様レオンに胸を押し付けている魔法職のアンネも後衛を直接狙って来る狡猾な魔物から何度も助けた、なのに?
「それと、これは今までのよしみで教えてやるが、ギルドへはお前が俺達の金を盗んだと報告しておいたから、どこのパーティもお前は雇ってはくれないだろうよ。さっさと冒険者なんてやめて、故郷で畑でも耕してろよ。いつまで夢見ているんだ? このハズレスキルの負け犬がぁ!」
リーダーのレオンの口から出た言葉に、衝撃を受けてなにも言葉が出ない。
俺は女神から授かる固有スキルが『ゲームプレイヤー』という謎スキルだった。
だから、戦士職や魔法職なんかとはくらべものにならない位人気がない盗賊なんかをしている。
ハズレスキルで盗賊だからクビ。
そんな理由、納得できる筈がなぇ。盗賊だからと言っても、人様のモノに手を出したことなんてねぇ。冒険者でのジョブの登録が盗賊なだけだ。
盗賊は中級パーティまでは必須のジョブだ。人気がないから人数もいない。
それを格安の賃金で契約したのは、こいつらに目をかけてやったからだ。
こいつらは将来伸びる冒険者パーティだ。そう俺の長い人生の直観がそう言っていた。
実際、伸びて来たし、昨日までこいつらと上手くやっていたと思っていた。
......そうか。
俺達のパーティは最近注目を集める初級パーティに成長した。
既に貴族やあちこちのクランからも声がかかっている。
......つまり、俺はお払い箱って訳か。
腑に落ちたが、だからこそこれ以上何を言っても無駄だ。
つまり、俺が盗賊だからという以外に理由なんてないと言う理不尽なことなのだから。
「最後に聞きたい。ミアも同じ気持ちなのか?」
俺は聞いておきたかった。
今はここにいないが、聖女のように可憐で、心の綺麗な子だ。
盗賊の俺なんかにもよくしてくれた。
彼女だけはと信じたい。
「一緒に決まってんだろ? むしろ、今回の追放を決めたのはあいつだ。もう二度と顔を見たくないとさ」
「そうか」
何故か不満げになるレオン。
「ああ、そうだ。お前、最後に俺に対してのお礼はどうした? 使えねぇお前をこれまで我慢して雇ってやったお礼位、言えるよな? おとなだもんな? おっさん?」
「......あ、ありがとう......ごぜえやした」
悔しさと屈辱感を殺して、自分より二周りも下の小僧に空々しいお礼を言い、頭を下げて、常宿のレオンの部屋を出て行こうとした。
「ああ、もう、我慢できねぇ、もういいよな? 俺のエミリアやアンネに色目を使いやがった上、ミアまでもか? いっぺん、殴り倒してやりたかったんだ。これは退職金代わりだ!」
頭を下げて無防備なところから、強烈なアッパーを喰らい、散々殴る蹴るをされて、俺は常宿から追い出された。
装備も金も奪われて、腰布一枚の姿で路地裏に叩き出された。
「どっちが盗賊だ。まあ、あいつらこれから苦労するな」
俺はそう言うと、路地裏でアイテムボックスから皮の鎧や装備一式を取り出すと、着替えた。
中級パーティまでは盗賊は必須だ。
あいつら、罠の解除や鑑定を舐めてやがる。
「まあ、それより......俺っておっさんだよな?」
そうなんだ。何故か人生が始まったばかりのような......不思議な新鮮な気持ちがある。
......負け犬のおっさんの筈なのに。
そう、俺はおっさんの筈だ。孤児で、必死に生きて冒険者になった。
子供の頃からの情けない人生がよぎる。
女神様からもらった固有スキルはゴミで、何の役にもたたなかった。
うだつの上がらない30代後半のおっさん。
「俺って人生の落伍者だよな」
そう呟いた時、頭の中で声が響いた。
『ようこそ「おっさん」、新たな旅の始まりです。さあ、先ずはメニューから初心者限定SSR確定ガチャを引いてください』
「へ?」
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