ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
64 / 66

64親父がもやしを食べて生活しているらしいのだが?

しおりを挟む
「どうしてこうなったのだ……」  

みすぼらしいあばらやにひきこもりながら、元賢者、アルの父親は一人呟く。  

ベルナドッテ家は財務報告書の捏造が知れ渡り、ついに破綻した。 

次男のアルベルトのせいで、私の人生が変わってしまった。  

アルベルトが魔族を討伐したというニュースが王国中を駆け巡り、結果的に、アイツを追放したのがけしからんと王家から色々追及され、結果的に財務報告の虚偽までバレた。  

私が各種利権を独占し、下級貴族から賄賂を巻き上げていたこと。  

上級貴族に賄賂を贈り、様々な便利を図ってもらっていたこと。 

みなやっていたことなのに! 

息子が優秀すぎるが上に、その優秀な息子を追放してしまったばかりに、悪目立ちした。王都の平民からのヘイトもハンパない。 

まあ、アルベルトを追い出したことは元妻のハンナに押し付けてやりはしたがな。  

だが……そんな些末なことより、もはやこに王都に私の居場所はない。  

長男のエリアスは相変わらず自室にこもったままだ。 

どうやら心身喪失状態で、最近食事も満足にとらない。先日1ヶ月ぶり顔を見たら、まるで病人のように痩せ細り、青白い顔色が不気味だった。  

目には光がなく、薄ら笑いを浮かべていた。 

「いずれ……貴族に復帰するからな」  

私が何の根拠もない、慰めの言葉をかけた時のエリアスの顔は傑作だったな。  

ぱあ、と表情を明るくさせて、「頑張ってくれ」だの「お父さんなら出来る!」って……そう言って自室に戻って行ったな。  

まあ、明日にはエリアスを置いて、王都を出て行くつもりだが。 

このアホな長男の顔を見ることは二度とないだろうな。  

それにつけても……あのクソ陛下。あのくたばり損いは私を責め立てた。  

何故アルベルトを追放したのか? 

何故領地経営の財務報告の虚偽報告なぞしたのか。 

賄賂、横領……何故このようなバカな真似をしたんだとか。  

何を言ってるんだ?  

あの魔法の才能がないくせに生意気なアルベルトを懲らしめたいからだ、それのどこが悪い? 

私が領地経営に失敗などするわけがない。だから復活するまで些末な情報を隠した、それのどこが悪い?  
賄賂、横領、みなやっている。もちろん一番やっていたのは私だが、それのどこが悪い?  

「……私のほうが追放されてたら世話ない、がな」  

アルの親父ガブリエルはそう呟く。  

その時。  

——ガン!  

ああ、またか。  

誰かが、私の家の窓に石を投げ入れたんだろう。  

もう何度も石を投げ込まれているから、今では窓ガラスは全部なく、窓際には石が散乱していた。  
それだけではない。  

時折、家の前で私を罵倒するヘイトスピーチをする者が後をたたない。 

まあ、私が昔陥れた奴らだろうがな。  

冒険者ギルドもそうだ。それまで神級魔法使いの私にへりくだっていた冒険者どもがすっかり掌を返して、今では上から目線で私の魔法に意見してくる。私を見下すとか……自惚れるな。  

だからもう、かれこれ一週間、冒険者ギルドには行っていない。  

何故、この私がこんな目に会うのだ?  

何故、この私がこんな惨めな思いを?  

決まってる。  

アルベルト……あの出来損ないの息子のせいだ! 

「必ず……必ず見返してやる……!」  

そう決意し、私は昼食のもやしを口に入れる。 

「……美味い」 

私は粗食の中で、このもやしが一番美味いと思った。 

いや、今はもうこれしか買えないのだが。 

明日には遠くの街に移住しよう。 

都落ちだが、やむを得まい。 

他の街では自分の過去の経歴を隠して冒険者として生きよう。 

何、冒険者としては一流の私……次の街ではちやほやされるに違いない。 

そして運が向いてきたら、きっと貴族に復帰できるに違いない。  

そして、あのアルベルドに復讐してやる。 

そう考えると、顔の筋肉が緩んだ。 

「ふ……ふふふ…!」   

その妄想だけを信じて、私は一人、もやしを食べ続ける。 

彼は知らなかった。この1週間でそれまで効果2倍だった安価な魔道具が5倍となり、既に彼の神級魔法の優位性はあまり無くなっていた。 

そして、彼のような人間性の男とパーティを組みたがる冒険者はいまい。 

来年には更に10倍の魔道具が安価に売り出される。 

そう、彼の未来はない。  
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね(__)
感想 58

あなたにおすすめの小説

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...