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57主人公は俺だと思うのだが?
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「光は闇の中で輝け 光はこれに打ち勝てぬ ヨハネよ見よ闇の偉大さを証さん『漆黒の呪詛【ハデス・デサピア―】』」
カールの呪文詠唱と共に、魔法を撃ち会う。
カールの魔法は闇の神級魔法、つまり3節からなる、それに対して俺のは光の汎用魔法、つまり1節未満の魔法で対処していた。
属性魔法には有利不利が存在する。火、水、土、風はそれぞれ有利不利が存在する。
しかし、例外なのが、光と闇だ。
何故なら、光と闇は火、水、土、風に対して絶えず有利なのだ。
そして、闇は最強と長い間思われてきた。何故なら、光には攻撃魔法が皆無で、治癒に特化した魔法だからだ。
故に、闇の神級魔法の所持者が最強となるのだ。
しかし、俺達はその常識を打ち破った。クリスの神級光魔法は攻撃魔法となりえた。
そして、闇は光の魔法に対して防御半分、攻撃半分と減される。
つまり、本当の最強は光。
俺は光の上級魔法をもっていなかったが、光の汎用魔法でカールの魔法をことごとく迎撃していた。
だがカールもさすがに最強と言われた魔法使い、膨大な魔力にモノを言わせて力押しで来る。
圧倒的に不利な属性でありながら、圧倒的な火力で平然と俺の光の攻撃魔法を迎撃する。
「舐めてもらっては困る!!」
修羅のごとく。
カールの戦いを評した、その言葉の如く、カールの頭上に現れる無数の闇の渦まく球。
俺の放った光の攻撃魔法を容易く、消滅させられる。
カールの才能魔法、『漆黒の呪詛【ハデス・デサピア―】』。
彼の魔法の特徴は属性の問題をものともせぬ、その膨大な魔力による圧倒的な火力だ。
それをたっぷりと俺に見せつけたカールは……僅かに息を乱して、俺を見て。
「……な……なぜだ、何故光に攻撃魔法があるッ!!」
当然の叫びかもしれない。圧倒的な火力の攻撃魔法を放っても、俺の光の汎用魔法にあっさり迎撃され、それどころか、光の攻撃魔法が降り注ぐ。
それが、汎用魔法だと気が付いて、叫び声をあげ、顔を引き攣らせたのだろう。
この戦い、俺の勝ちだ。何故なら。
俺の光魔法は汎用魔法。カールは神級魔法。
俺は1節に満たない詠唱で魔法を発動できる。それに魔力消費は1/10以下。
カールのは神級魔法は3節の長い詠唱を必要とする。それに膨大な魔力も。
例え、漆黒の聖剣が魔力の手助けしても、手数でも、持久力でも俺の方が勝る。
今、神級魔法が汎用魔法に敗北したのだ。
「違う、違う! そうだ。そうなのだ、これはきっと神の試練だ。私ならばきっと乗り越えられる。そうだ私は今ここで――更なる力!――覚醒すればいい。そうに決まっている──ッ!!」
信じられない傲慢。負けを感じた時、神の導きがあると信じる。
しかし、信じられないことに、カールの闇魔法のスキルは、そんな病んだ人間性と、極めて相性が良かったらしい。その上、穢れた聖剣。
違和感を、強く感じた、カールの中に。
彼の中にある何かが変わって行った。
それが、一つ小さな波となり、あとはざわめく麻の布のようにざわめいた。
俺が静かになったカールを見据えると、ゆっくりとカールが両手を上げる。
その表情には――今まで以上に狂気じみた、歪んだ笑みを浮かべていた。
「褒めてやる、凡人!」
カールは話し始めた。そして、褒めると同時に俺を侮蔑した。
既に狂人となっているのだろう、その双眸に映るのは黒い闇だ。
「インチキな魔道具の力で、よく、ここまで私を苦しめた。そして喜べ、お前は十分に役割を果たしたのだ」
「……一体何を言って?」
カールに異変があり、魔力も禍々しく渦巻くさまもわかった。
しかし、一体何が起こったのだ?
「俺に勝つ? 馬鹿か? お前の努力は私が更なる覚醒するための捨て石に過ぎなかったのだ!」
完全に逝ってしまった目で、妄言を吐き散らすカール。だが、存外妄言でないことも、俺にはわかった。そんな俺にカールは。
「名誉に思うがいい。一番最初に私の覚醒した魔法を見て――そして死ねることを!!」
そして、カールから立ち昇る魔力が更に苛烈さを増し。
カールは、呪文を詠唱し始めた。
「終わりの時は来たれり 光はこれに打ち勝てぬ 神の御遣いよラッパを吹き鳴らせ『流刑の神々【セブンス・ペイン】』」
「ッ!」
聞いたことがない魔法詠唱。
それが意味なすこと。
それは。
【覚醒】
俺はカールを鑑定のスキルで見た。
名前:カール
才能魔法:深淵覚醒闇魔法
スキル:セブンス・ペイン
才能魔法の正体。それは神の与えた福音なんかじゃない。何者かが人為的に人の子孫に【才能魔法】を発現させるようにして、生まれた時から一つの魔法だけを無条件に使えるようにしたもの。
しかし、【才能魔法】のスキルは一つ、例外があるにしてもせいぜい二つの属性しか使えない。
魔法は本来、論理的に積み上げて習得するもの。努力の果てに身につけるものだと思う。
その習得の過程を全てすっ飛ばして生まれつき使えるようにしたものが才能魔法だ。
だが、才能魔法はその代償として、応用として習得できるはずのそれ以外の魔法の使用を習得する機会を逃す。
応用と多様性を犠牲に、無条件に生まれつき一つの強力な魔法を得る。それは利点と欠陥を両方とも有していた。そう、才能魔法の所有者には成長というものが見られない。
強力な魔法を血脈に組み込み、それを受け継いだものが無条件に使えるようにしたもの。
だが、その才能魔法のスキルにより受け継いだものは、そのオリジナルと同等の力を使えるのか?
おそらく、答えはノーだ。
歴史上【覚醒】に至った魔法使いがいた。才能魔法のスキルは魔法の本来の半分程度しか引き出せていない。
おそらく、血統に優秀なスキルを埋め込むということは無茶なことなのだろう。
故にオリジナルには遠く及ばない。
しかし、魔法への適性が高く、加えて高い魔力を有する者だけは才能魔法の限界突破を行い、才能魔法とスキルを再構築し、そのオリジナルに近い境地に達することができる。
それが【覚醒】。才能魔法の最終形態。
しかし、カールの限界突破は本来の【覚醒】ではなかった。
【覚醒】に至ったものは歴史上僅か数人、しかし、覚醒を求め、結果、誤った限界突破を行ったしまった者達は無数に存在する。
力だけを欲した者の末路。才能魔法の限界突破には肉体や魔力の他、精神性も重要だ。
それが無いものが至るのは。
闇堕ち。
カールは闇へ堕ちた。
【覚醒】ではなく、【深淵化】
だが、俺の目には勝利への勝ち筋が見えていた。
カールの呪文詠唱と共に、魔法を撃ち会う。
カールの魔法は闇の神級魔法、つまり3節からなる、それに対して俺のは光の汎用魔法、つまり1節未満の魔法で対処していた。
属性魔法には有利不利が存在する。火、水、土、風はそれぞれ有利不利が存在する。
しかし、例外なのが、光と闇だ。
何故なら、光と闇は火、水、土、風に対して絶えず有利なのだ。
そして、闇は最強と長い間思われてきた。何故なら、光には攻撃魔法が皆無で、治癒に特化した魔法だからだ。
故に、闇の神級魔法の所持者が最強となるのだ。
しかし、俺達はその常識を打ち破った。クリスの神級光魔法は攻撃魔法となりえた。
そして、闇は光の魔法に対して防御半分、攻撃半分と減される。
つまり、本当の最強は光。
俺は光の上級魔法をもっていなかったが、光の汎用魔法でカールの魔法をことごとく迎撃していた。
だがカールもさすがに最強と言われた魔法使い、膨大な魔力にモノを言わせて力押しで来る。
圧倒的に不利な属性でありながら、圧倒的な火力で平然と俺の光の攻撃魔法を迎撃する。
「舐めてもらっては困る!!」
修羅のごとく。
カールの戦いを評した、その言葉の如く、カールの頭上に現れる無数の闇の渦まく球。
俺の放った光の攻撃魔法を容易く、消滅させられる。
カールの才能魔法、『漆黒の呪詛【ハデス・デサピア―】』。
彼の魔法の特徴は属性の問題をものともせぬ、その膨大な魔力による圧倒的な火力だ。
それをたっぷりと俺に見せつけたカールは……僅かに息を乱して、俺を見て。
「……な……なぜだ、何故光に攻撃魔法があるッ!!」
当然の叫びかもしれない。圧倒的な火力の攻撃魔法を放っても、俺の光の汎用魔法にあっさり迎撃され、それどころか、光の攻撃魔法が降り注ぐ。
それが、汎用魔法だと気が付いて、叫び声をあげ、顔を引き攣らせたのだろう。
この戦い、俺の勝ちだ。何故なら。
俺の光魔法は汎用魔法。カールは神級魔法。
俺は1節に満たない詠唱で魔法を発動できる。それに魔力消費は1/10以下。
カールのは神級魔法は3節の長い詠唱を必要とする。それに膨大な魔力も。
例え、漆黒の聖剣が魔力の手助けしても、手数でも、持久力でも俺の方が勝る。
今、神級魔法が汎用魔法に敗北したのだ。
「違う、違う! そうだ。そうなのだ、これはきっと神の試練だ。私ならばきっと乗り越えられる。そうだ私は今ここで――更なる力!――覚醒すればいい。そうに決まっている──ッ!!」
信じられない傲慢。負けを感じた時、神の導きがあると信じる。
しかし、信じられないことに、カールの闇魔法のスキルは、そんな病んだ人間性と、極めて相性が良かったらしい。その上、穢れた聖剣。
違和感を、強く感じた、カールの中に。
彼の中にある何かが変わって行った。
それが、一つ小さな波となり、あとはざわめく麻の布のようにざわめいた。
俺が静かになったカールを見据えると、ゆっくりとカールが両手を上げる。
その表情には――今まで以上に狂気じみた、歪んだ笑みを浮かべていた。
「褒めてやる、凡人!」
カールは話し始めた。そして、褒めると同時に俺を侮蔑した。
既に狂人となっているのだろう、その双眸に映るのは黒い闇だ。
「インチキな魔道具の力で、よく、ここまで私を苦しめた。そして喜べ、お前は十分に役割を果たしたのだ」
「……一体何を言って?」
カールに異変があり、魔力も禍々しく渦巻くさまもわかった。
しかし、一体何が起こったのだ?
「俺に勝つ? 馬鹿か? お前の努力は私が更なる覚醒するための捨て石に過ぎなかったのだ!」
完全に逝ってしまった目で、妄言を吐き散らすカール。だが、存外妄言でないことも、俺にはわかった。そんな俺にカールは。
「名誉に思うがいい。一番最初に私の覚醒した魔法を見て――そして死ねることを!!」
そして、カールから立ち昇る魔力が更に苛烈さを増し。
カールは、呪文を詠唱し始めた。
「終わりの時は来たれり 光はこれに打ち勝てぬ 神の御遣いよラッパを吹き鳴らせ『流刑の神々【セブンス・ペイン】』」
「ッ!」
聞いたことがない魔法詠唱。
それが意味なすこと。
それは。
【覚醒】
俺はカールを鑑定のスキルで見た。
名前:カール
才能魔法:深淵覚醒闇魔法
スキル:セブンス・ペイン
才能魔法の正体。それは神の与えた福音なんかじゃない。何者かが人為的に人の子孫に【才能魔法】を発現させるようにして、生まれた時から一つの魔法だけを無条件に使えるようにしたもの。
しかし、【才能魔法】のスキルは一つ、例外があるにしてもせいぜい二つの属性しか使えない。
魔法は本来、論理的に積み上げて習得するもの。努力の果てに身につけるものだと思う。
その習得の過程を全てすっ飛ばして生まれつき使えるようにしたものが才能魔法だ。
だが、才能魔法はその代償として、応用として習得できるはずのそれ以外の魔法の使用を習得する機会を逃す。
応用と多様性を犠牲に、無条件に生まれつき一つの強力な魔法を得る。それは利点と欠陥を両方とも有していた。そう、才能魔法の所有者には成長というものが見られない。
強力な魔法を血脈に組み込み、それを受け継いだものが無条件に使えるようにしたもの。
だが、その才能魔法のスキルにより受け継いだものは、そのオリジナルと同等の力を使えるのか?
おそらく、答えはノーだ。
歴史上【覚醒】に至った魔法使いがいた。才能魔法のスキルは魔法の本来の半分程度しか引き出せていない。
おそらく、血統に優秀なスキルを埋め込むということは無茶なことなのだろう。
故にオリジナルには遠く及ばない。
しかし、魔法への適性が高く、加えて高い魔力を有する者だけは才能魔法の限界突破を行い、才能魔法とスキルを再構築し、そのオリジナルに近い境地に達することができる。
それが【覚醒】。才能魔法の最終形態。
しかし、カールの限界突破は本来の【覚醒】ではなかった。
【覚醒】に至ったものは歴史上僅か数人、しかし、覚醒を求め、結果、誤った限界突破を行ったしまった者達は無数に存在する。
力だけを欲した者の末路。才能魔法の限界突破には肉体や魔力の他、精神性も重要だ。
それが無いものが至るのは。
闇堕ち。
カールは闇へ堕ちた。
【覚醒】ではなく、【深淵化】
だが、俺の目には勝利への勝ち筋が見えていた。
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