ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
54 / 66

54やっぱりゲリンの罠があったのだが?

しおりを挟む
俺達はあっさりとダンジョンを攻略した。いや、ダニエルとフィッシャーのスキルのかみ合わせが最高にいい。何せダニエルの6倍のバフを受けて、フィッシャーの倍返しのスキルが12倍返しとか、もうこれ意味わからん。 

結局ダンジョン最下層のボス、地龍は、フィッシャーに放ったブレスを12倍返しで受けて、瞬殺だった。 

しかし。 

「……ううん、みんな。これは」 

それは例の魔族の気配だ。だが、気配は小さい。 
するとクリスが心配したのか、俺に近寄ってくる。 

「どうしたの? アル? 浮かない顔ね」 

「クリス、例の魔物を大量に召喚するヤツの気配だ。今、俺の探知のスキルに引っかかった。だが、何故アイツがこんなところに?」 

それを聞いてクリスも首をかしげる。 

「そうね。例の男は白鷲教の一味、この処、王都に白鷲教の姿はなかったわよね?」 

「そうですよね。リーゼも一度も王都では見かけなかったです……」 

「白鷲教?……」 

ダニエルが不思議そうに俺達の話を聞く。それはそうだろう、白鷲教が魔族と関わっていることは一部の人しか知らない。レオンやクラウスだって、魔族のことは知らない。 

ただ、大量召喚した人物が白鷲教の一味で、召喚には主神ヘルへの多量の信心が必要。 

ということだけを知っている筈だ。 

「もしや、なんですが、白鷲教の信者は既に王都にたくさんいるかもしれねえです」 

「なんだって? どうしてそんなことが言えるんだ? ダニエル?」 

「へい。王都で冒険者をしていたころ、とある貴族の護衛をしてやして、その時、貴族が白鷲教の信徒とあっていやしたぜ、なんでもカール殿下からの使いだとか」 

何? だとしたらカールは白鷲教の関係者? それに、今、カールの手の者、ゲリンが。 

偶然か? 

――そう考える訳にはいかなかった。疑惑でしかないが、万が一そうなら? 

魔法学園の女生徒たちが危ない。ゲリンが故意にこのダンジョンに引き込んだのなら。 

「そう言えば、カール殿下はよく魔法学園の下級生をこのダンジョンで助けてたわ」 
「なんだって!?」 

「あっしも聞いたことがありやすぜ、何故かカール王子は女生徒のピンチにさっそうと」 

クリスとダニエルの証言が確かなら、カールは人気取りのために、故意に魔物を発生させて。 

「急いで元の道を戻るぞ!」 

「ええ、アルの考えていることわかるわ」 

「リーゼも!」 

「事情はわからんが、今はアルベルト様に従おう」 

「ああ」 

「「へい!!」」 

レオン、クラウス、ダニエル、フィッシャーが俺達に続く。 

杞憂だといいのだが。 

だだだだだだだだだだ、と、かなり進んだところで、俺の探知のスキルが例の魔族の気配を検知した。あの、魔物が大量に発生した時の感覚だ。 

「み、みんな! この先にデカい魔物と人の反応があるぞ!」 

俺がみなに注意喚起する。 

「ここは中ボスの部屋よ」 

「そうだ、間違いない」 

俺達は中ボスの部屋の扉を開け放って。 

「こ、これは……」 

「最強の龍! バハムートです!」 

レオンが叫んだ。 

俺は例によってセール品の無銘の剣を抜き放った。 

だが、バハムートの視線の先に、別の人たちがいることが見てとれる。 

――――怯える魔法学園の1年生。 

それに、彼女たちの前には騎士が数名とゲリン。 

良く見ると、中ボスの部屋へ入り口の方から、あのカールが進み出てきていた。 
そして。 

「全く、心配で来てみればやっぱりな。今を時めくアル一行は中ボスを無視して先に向かったらしいな。女学生がいるにも関わらず。全く、奴らにとっては面倒なことなんだろうが、目下の者のこともわからんとはな。私は違うがな」 

「キャー! カール様!」 

「ありがとうございます。カール様」 

「アルとか言うヤツサイテー!」 

魔法学園の女学生たちはめいめいカールへの賛辞と俺への悪意を吐露していた。 

しかし。 

女学生の前に進み出るカール。ゲリンと合流すると。 

「ゲリン、瞬殺するぞ」 

「承知しました。カール様」 

女学生たちの前の騎士たちの更に前に出てくる。 

いや、騎士より前に出てくるとか自殺行為だろ? 

つまり、これはやらせか? 

パーン 

激しい音が聞こえた。最強の龍種、バハムートの尻尾による攻撃だ。 

それは多分力を緩めたものだったのだろう。普通、即死だ。 

だが。 

「「あぽぽぽぽーん!!!」」 

カールとゲリンは仲良く吹っ飛んで行った。 

馬鹿か? 

二人の作った大の字の穴を確認している時間はない。 

俺達は速攻で、攻撃に移った。 

「ハイドロエクスプロージョン!」 

「スキル、バフ6倍!」 

「スキル、倍返し!」 

「私も腕が鳴る!」 

「置いていくな! レオン!」 

リーゼの爆裂魔法を皮切りにめいめいスキルを発動したり、剣を抜き放ってバハムートに突撃する。 

「光あれ、地は混沌であって、闇が深淵の面にあり――」 

クリスは神級光攻撃魔法の詠唱に入った。 

いかん。 

このままでは。 

俺がいいところ何もないじゃないか? 

だって、これ、フィッシャーのワンパン一発でケリつくぞ? 

俺が目立たん。 

魔法学園の1年生が見ているのに? 

Dが二人もいるんだぞ――――――――!! 

だが、幸い俺にも6倍のバフがかかっていることに気が付いた。 

聖剣(スライム剣)を使うにも、魔法を使うにしても、間に合わない。 

ならば。 

殴ろう。 

リーゼの爆裂魔法でこちらに気が付いたバハムートがこちらを向く。 

そこを俺は下から上へしこたま殴りつけた。 

ばこーん。 

バハムートはダンジョンの天井にめり込んだ。 

「え?」 

「は?」 

「嘘?」 

「す…」 

「「「すごーい!! アル様ぁ!!!!!」」」 

女学生の黄色い声が響く。もっと言って、言って。 

俺が鼻の下を伸ばしていると、謎の殺気が俺を襲った。 

「へ!?」 

クリスが俺の方を見て、歪んだ笑みを浮かべている。 

リーゼが俺の方を見て、ひきつった笑みを浮かべている。 

「この浮気者!!!」 

「アル様の浮気者!!!」 

二人の魔法が同時に炸裂した。俺に向かって。 

俺はカールやゲリン同様伸びたところをレオンとクラウスにおぶってもらって、何とか帰還した。 

俺がダサ過ぎるのだが? 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね(__)
感想 58

あなたにおすすめの小説

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

処理中です...