ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
53 / 66

53カールの部下ゲリンが陰謀をたくらむのだが?

しおりを挟む
「おやおや? これは英雄アル様御一行様ではございませんか?」 

ダンジョンの入り口で聞いたことのある声の男が呼び止める。 

兄、エリアスの友人ゲリンだ。いつかリーゼ達奴隷の亜人を襲って殺そうとした血も涙もない奴だ。この場にいるメンバー全員がゲリンを見る。 

その表情から察するにろくなことを考えていないだろう。 

「……ゲリン・ヴァーサ様」 

クリスは呟く。クリスはゲリンのことを知っているようだ。 

同じ魔法学園の通っているのだから当然か。 

「クリス、ゲリンを知っているのか?」 

「魔法学園でね。色々と。殿下の臣下だから。……で、何の用でしょうか、ゲリン様?」 

「いや、そんな怖い顔をしないでくれよ。僕はただ、魔法学園の先輩として1年生の引率をするだけだから、君たちが潜った後の安全なダンジョンに1年生と一緒に入るという事」 

見ると、ゲリンは10人ほどの若い魔法学園の―――ぶっちゃけ高校生のブレザーを着た女の子達を引き連れていた。 
俺のMark I アイボール、すなわち肉眼ですぐさま胸のサイズをチェック。 

だが、残念ながら、Dが二人ほどで、他はC以下だ。残念。 

「―――――~~~~ッ!!!!」 

クリスに左のお尻の肉を死ぬほど痛くつねられた。 

「―――――!!!!」 

続いて、リーゼに右のお尻の肉を抉るほどつねられた。 

ということがあったのだが、そんなことはおくびにも出さずに 

「アル様ご一行がダンジョンに潜られたら、遅れて僕らも潜ります。ご迷惑をおかけするようなことはございませんので、ご安心ください」 

「わかった。学園の1年生を頼む。強めの魔物は倒しておくから、安心して欲しい」 

絶対何かたくらんでるな。わかってはいても、今更引き返す訳にはいかないし、先に強い魔物を倒しておかないと、魔法学園の1年生が危険だ。 

こうして、ゲリンという怪しい存在の危険を感じつつも、ダンジョンに潜った。 

「お前、アルの旦那と違って、本物のハズレスキルなんだよな? 立場ははっきりさせておくぞ。お前が先に家臣となっていても、一の家臣は俺様ダニエルだ!」 

「お前! ずるいぞ! 俺はいち早くアル様の真の力に気が付いて、一番最初に臣下にして頂いたんだぞ! お前は弟弟子みたいなものだろう? 生意気言うな!」 

「はあ? お前、Fランク冒険者だろ? B級冒険者の俺が弟弟子とか何いってんだこいつ」 

戦う前からの不和。これは不味い。だが、俺はこの二人のことは想定済だった。 

というか、ハズレスキルの臣下フィッシャーの可能性についてだ。 

この世界にハズレスキルなど存在しない。あるとすれば神級魔法などの才能魔法スキル。 

それが俺の考え。工夫で、スキルは化ける。 

「まあ、先陣はフィッシャーに任せる。ダニエル、兄弟子の戦い、良く見ておけよ」 

「ア、アルの旦那まで、ぐうっ、わかりました。旦那がそうおっしゃるんでしたら」 

☆ 

「パオーン!」 

「ガオオオー!」 

「シュー ーーーー!」 

その道程は、驚くほどに順調だった。 

「おおおおおおっ!! 倍返し!!!!」 

ダンジョンに出没する魔物はかたっぱしから、ハズレスキルのフィッシャーが原因なのは言うまでもない。 

フィッシャーのハズレスキル――【倍返し】 

このスキルは一見強そうだが、自身が受けきれないダメージを受けると死んでしまうだけだ。 

だから、ほとんど使い道がない。 

しかし。 

身体強化の魔道具で体力が5倍になっていたら? 

防御強化の魔道具で防御が5倍になっていたら? 

「アルの旦那。俺はまたとんでもない失礼を、改めて聞きやすが……これ、どうなってるですかい? 旦那が魔法を? いや、そんなそぶりは?」 

「ああ、フィッシャーのスキル【倍返し】の本当の姿だ。フィッシャーには防御5倍の魔道具を装備させた、たいていの魔物は自分の与えた筈のダメージが倍になって帰ってくるんだ」 

「はあ? そんなのチートじゃねえですか?」 

「まあな」 
フィッシャーに襲い掛かる魔物たち。物理的な攻撃も魔法攻撃も、フィッシャーはすべて倍返しで返していく。当然、魔物たちは勝手に弱っていく。 

そこに時折リーゼの汎用魔法が炸裂する。 

次々と殲滅されていく魔物にダニエルも、いやレオンもクラウスも愕然とした表情で見つめる。 

「ダニエル、あのエルフの女の子、リーゼもハズレスキルだ。俺と一緒でな」 

「お見それしました。アルの旦那! さすが旦那一の家臣、一番弟子、俺は、俺は――」 

「ダニエルにも魔道具渡したよな。ダニエルのスキルも有効活用させてもらうな」 

ダニエルは一瞬、顔をくしゃくしゃにした。 

そして、ダンジョンの中間点で俺は前衛をフィッシャーからダニエルに変えた。 

「ダニエル、ここから先はお前が先頭にたって行け、レオン、クラウス、サポートを頼む」 

「お、俺がですかい? 俺はB級冒険者ですぜ? フィッシャーの兄貴ならともかく、俺ごときが先陣だなんて、それにA級冒険者のレオンさんやクラウスさんが俺のサポートなんて」 

俺はダニエルに説明した。ダニエルは兄弟子のフィッシャーのスキルを見て、随分と殊勝になった。これは作戦で、実はダニエルもかなり使えるスキル持ちなのだ。むろん一般的にはハズレスキルだが。 

「ダニエル、お前には魔力5倍、身体強化5倍にスキル効果5倍の魔道具を渡したよな?」 

「へい、確かにお預かりしました。実験をするっておっしゃってました」 

「お前のスキルは【バフ】だよな?」 

「へい、1.2倍の【バフ】です。中途半端で無能って言われてました」 

「スキル効果5倍の魔道具使うとどうなる?」 

みんな顔をしかめる。 

「アル、みんな算数苦手なのよ」 

「そうですよ。アル様、普通、貴族でもないと学校には行ってないですよ」 

俺はクリスとリーゼに言われて、はっとした。亜人だけでなく、平民への教育もしなければ。 

戦いでも商売でも、農業でも勉強は重要だ。誰でもたくさんの知識が必要だ。これは俺の剣の師、ベルンハルトの意見だ。俺もその通りだと思う。 

「すまん。ダニエル、俺が悪かった。答えは6倍だ。お前のスキルはパーティ全体を6倍にできるんだ。これ、ハズレスキルか?」 

「お、俺のスキルが……6倍!!」 

それからのダニエルのスキル無双は凄まじかった。ダニエルとレオン、クラウス、3人で順調に下層のダンジョンを攻略していく。しかも俺の鑑定の結果わかったのだが、身体強化、魔力強化の魔道具の効果とは別枠だっのだ。だから、魔力の魔道具の5倍×スキル6倍。 

30倍とかこいつ、マジか思った。………………早めに消した方がいいか? 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね(__)
感想 58

あなたにおすすめの小説

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

処理中です...