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52ダンジョン攻略とカールの後ろに怪しいヤツの影があるのだが?
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カールが謹慎処分を受けたため、王から勅命を賜った。
王都の直轄領のダンジョンを攻略して欲しいと言うのだ。
通常は第一王子カールに役務だ。
魔の森は王都の近くにもある。もちろん小さな森で、そんなに強い魔物は発生しない。
この森の奥のダンジョンを定期的に貴族が攻略する。ダンジョンで生まれた魔物は強い魔物に成長して魔の森へと出ていき、人界に現れる。その為、定期的なダンジョン攻略は欠かせない。
ダンジョンまで第二王子エルンが騎士団を引き連れて警護してくれた。俺達は魔力を節約できる。そして、ダンジョンの前で別れたが、彼らはダンジョンの近くで待っていてくれる。俺達はダンジョンだけに集中できる。
「それじゃあみんな。改めて確認するけれど、今日の目的はこのダンジョンを攻略するついでにみんなに配った魔道具の力を確認することだからな」
ダンジョンに足を踏み入れて、最初に確認した。
メンバーは俺とクリス、リーゼ、冒険者レオン、クラウス、子分のダニエル、臣下のフィッシャー。
冒険者達は指名で冒険者ギルドに依頼した。しかし、今回の討伐が上手く行ったら、この4人を正式な臣下として取り立てようと思っていた。
剣を共にした仲間は心強いし、仲間意識は高い。彼らとは縁があるので、彼らの都合さえ良ければ良い臣下、良き友人となれるだろう。
俺は彼らには新しい魔道具を貸出していた。レオン、クラウス、ダニエルの三人には身体強化と魔力増強の魔道具、フィシャーには身体強化に防御力の魔道具。
俺は辺境領に新しい特産品が必要だと考えていた。これまでの特産品は辺境領でしか取れない珍しい野菜など農作物だった。これらは辺境領の人口が増えることで、販売量が増えるだろう。
だが、増えすぎた人口に対して農作物だけでは足らない。このままだと交易収支が赤字になる。
ならば、新しい特産品が必要だ。それで俺が目を付けたのが魔道具だった。
冒険者は貴族と違って魔道具に対する偏見はない。命あってのことだ。魔道具が卑怯だなどと考える冒険者はいない。だから、優秀な性能の魔道具を交易すればかなりの収入になる。
俺は王都で高価な魔道具を買いあさり、それを魔法解析で解析して、更に強力な魔道具を作り上げた。
魔力強化5倍にする魔道具、身体強化5倍の魔道具、防御5倍の魔道具など。
今完成しているのはこの3種類だが、少しずつバリエーションを増やしていくつもりだ。
ちなみに王都で購入した従来品は各能力を1.5倍にする程度だった。
特産品があることは強い、これで交易の収益が上がったら、今度は製鉄所を作ろう。辺境領には製鉄所がない。鉱石が産出されるのに、今までなかったのだ。
鉱石は一部の錬金術士が細々と使っていた位で、鉱石の発掘も必要だ。だが、少しずつやらんと、突然そんなにたくさんのことはできない。まずは魔道具交易が先だ。
魔道具の交易には港の開拓も役に立つだろう。辺境領は王都まで馬車で1日という好立地にあるが、魔王が出現した魔の森とダンジョンがあるため、これまで開拓が遅れていた。
しかし、今の調子で開拓が進めば、十分な騎士と冒険者を雇えるから、安全な領になる。
そうすれば、港を経由して他の領と王都との三角貿易が可能になる。
港、道路、橋は富を生み出す資産なのだ。
☆
「お母さま! みな、私の言うことを聞かないのです。それに私より強いヤツが――こんなのおかしいです。世の中がおかしくなっています!」
「……カール」
ここは第一王子カールの自室。カールは今日も母親の幻影と話していた。
それが魔族の手先とはつゆ知らず、神の加護により、自分だけが特別だから。
だから神が自分にだけは死者との会話が可能と思った。
単純な彼はそう信じて疑らなかった。
「カールよ。これは試練なのです。完璧なあなたにも、神は試練をお与えなさる。でも、心配しないで――母があなたを導きましょう。あなたにはまだ、大いな可能性がある。それを引き出せば良いのです」
「可能性?」
「そうです。あなたの才能魔法【神級闇魔法】に更なる覚醒が必要です。それには――聖剣を手にお入れなさい」
「……し、しかし、あれは?」
動揺するカール。しかし。
「では、このまま愚かな者達の暗躍を黙ってみているのですか?」
「……そ、それは」
「迷う必要はありません。あなたは選ばれた者なのです。古い言い伝えなど意味がありません。あなたの行うことは全て正しいのです。母は知っています」
コクリと頷くカール。
聖剣、それは王宮最深部にあるダンジョンの更に最深部に封印された魔王の力を封じ込めたもの。母の幻影はその聖剣を手にいれろと。カールの行うことは全て正しいのだと。だが、既にカールはこの母の幻影に洗脳されたに等しい状態だった。奇しくも、アルやクリスの活躍、アンの婚約拒否などがカールの心を苛み、遂に母の亡霊に精神を支配されてしまった。
カールの双眸に決意の火が灯った。
それが魔族の罠とも知らずに。
王都の直轄領のダンジョンを攻略して欲しいと言うのだ。
通常は第一王子カールに役務だ。
魔の森は王都の近くにもある。もちろん小さな森で、そんなに強い魔物は発生しない。
この森の奥のダンジョンを定期的に貴族が攻略する。ダンジョンで生まれた魔物は強い魔物に成長して魔の森へと出ていき、人界に現れる。その為、定期的なダンジョン攻略は欠かせない。
ダンジョンまで第二王子エルンが騎士団を引き連れて警護してくれた。俺達は魔力を節約できる。そして、ダンジョンの前で別れたが、彼らはダンジョンの近くで待っていてくれる。俺達はダンジョンだけに集中できる。
「それじゃあみんな。改めて確認するけれど、今日の目的はこのダンジョンを攻略するついでにみんなに配った魔道具の力を確認することだからな」
ダンジョンに足を踏み入れて、最初に確認した。
メンバーは俺とクリス、リーゼ、冒険者レオン、クラウス、子分のダニエル、臣下のフィッシャー。
冒険者達は指名で冒険者ギルドに依頼した。しかし、今回の討伐が上手く行ったら、この4人を正式な臣下として取り立てようと思っていた。
剣を共にした仲間は心強いし、仲間意識は高い。彼らとは縁があるので、彼らの都合さえ良ければ良い臣下、良き友人となれるだろう。
俺は彼らには新しい魔道具を貸出していた。レオン、クラウス、ダニエルの三人には身体強化と魔力増強の魔道具、フィシャーには身体強化に防御力の魔道具。
俺は辺境領に新しい特産品が必要だと考えていた。これまでの特産品は辺境領でしか取れない珍しい野菜など農作物だった。これらは辺境領の人口が増えることで、販売量が増えるだろう。
だが、増えすぎた人口に対して農作物だけでは足らない。このままだと交易収支が赤字になる。
ならば、新しい特産品が必要だ。それで俺が目を付けたのが魔道具だった。
冒険者は貴族と違って魔道具に対する偏見はない。命あってのことだ。魔道具が卑怯だなどと考える冒険者はいない。だから、優秀な性能の魔道具を交易すればかなりの収入になる。
俺は王都で高価な魔道具を買いあさり、それを魔法解析で解析して、更に強力な魔道具を作り上げた。
魔力強化5倍にする魔道具、身体強化5倍の魔道具、防御5倍の魔道具など。
今完成しているのはこの3種類だが、少しずつバリエーションを増やしていくつもりだ。
ちなみに王都で購入した従来品は各能力を1.5倍にする程度だった。
特産品があることは強い、これで交易の収益が上がったら、今度は製鉄所を作ろう。辺境領には製鉄所がない。鉱石が産出されるのに、今までなかったのだ。
鉱石は一部の錬金術士が細々と使っていた位で、鉱石の発掘も必要だ。だが、少しずつやらんと、突然そんなにたくさんのことはできない。まずは魔道具交易が先だ。
魔道具の交易には港の開拓も役に立つだろう。辺境領は王都まで馬車で1日という好立地にあるが、魔王が出現した魔の森とダンジョンがあるため、これまで開拓が遅れていた。
しかし、今の調子で開拓が進めば、十分な騎士と冒険者を雇えるから、安全な領になる。
そうすれば、港を経由して他の領と王都との三角貿易が可能になる。
港、道路、橋は富を生み出す資産なのだ。
☆
「お母さま! みな、私の言うことを聞かないのです。それに私より強いヤツが――こんなのおかしいです。世の中がおかしくなっています!」
「……カール」
ここは第一王子カールの自室。カールは今日も母親の幻影と話していた。
それが魔族の手先とはつゆ知らず、神の加護により、自分だけが特別だから。
だから神が自分にだけは死者との会話が可能と思った。
単純な彼はそう信じて疑らなかった。
「カールよ。これは試練なのです。完璧なあなたにも、神は試練をお与えなさる。でも、心配しないで――母があなたを導きましょう。あなたにはまだ、大いな可能性がある。それを引き出せば良いのです」
「可能性?」
「そうです。あなたの才能魔法【神級闇魔法】に更なる覚醒が必要です。それには――聖剣を手にお入れなさい」
「……し、しかし、あれは?」
動揺するカール。しかし。
「では、このまま愚かな者達の暗躍を黙ってみているのですか?」
「……そ、それは」
「迷う必要はありません。あなたは選ばれた者なのです。古い言い伝えなど意味がありません。あなたの行うことは全て正しいのです。母は知っています」
コクリと頷くカール。
聖剣、それは王宮最深部にあるダンジョンの更に最深部に封印された魔王の力を封じ込めたもの。母の幻影はその聖剣を手にいれろと。カールの行うことは全て正しいのだと。だが、既にカールはこの母の幻影に洗脳されたに等しい状態だった。奇しくも、アルやクリスの活躍、アンの婚約拒否などがカールの心を苛み、遂に母の亡霊に精神を支配されてしまった。
カールの双眸に決意の火が灯った。
それが魔族の罠とも知らずに。
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