ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

文字の大きさ
上 下
28 / 66

28俺から逃げることなんてできないと思うのだが?

しおりを挟む
「いや……アルベルド様のやることでいちいち驚くなんてばからしいけど……」 

遠い目をしながら、レオンが問いかけてくる。 

「昨日の戦いも度肝を抜かれたけど……今回は魔法ですか?」 

「いや……火の上級魔法をその……使っただけで……」 

「火の上級魔法が使えるのですか……でも火の上級攻撃魔法一発でヤクートタイガーの群が消え去るんですか?」 

「ま……結果的にそうなったな。凄い偶然が重なって」 

「そうですか。はい。アルベルド様が頭おかしいレベルでおかしいことがよくわかりましたよ……」 

絶対、過剰に評価されてしまっているような気がする。単に当たり処が良いとか、幸運がひたすら強くて、そのなんだ。勘違いされると困る。 

しかし、これ以上何かを言っても自爆するだけなので、黙っておこう。 

「アル様!」 

「素敵よ。アル」 

クリス、リーゼ、人前でそんなにくっつくな。胸を押し当てるな、おい! 

いやいや、俺は当初の目的を思い出した。 

「それより、レオン、クラウス、魔物が突然現れる事件の犯人らしきヤツを見かけた」 

「なんだって!」 

「本当ですか?」 

「ぐうっ!?」 

最後のはダニエルとか言う、例の無礼な冒険者だ。 

「行こう、クリス、リーゼ、追いかけるぞ!」 

「えっ? あ! わかったわ!!」 

「アル様、わかりました」 

俺の隣にはレオンも走っている。付いて来てくれだが、理解が追い付かず、訊ねてくる。 

「一体、どういうことなんですか? アルベルト様?」 

「俺の想像なんだが。いままで突然発生して来た魔物は召喚されたんじゃないかって」 

そう、安全な街道に現れたホワイトハング。 

街道に現れた魔の森以外で見る筈のない、キングタイガー。 

そして今回のヤクートパンサーとヤクートタイガー。 

魔の森から来たと考えるより、何者かによって召喚されたと考える方が自然ではないか? 

この短期間であり得ない魔物の突然の発生。こんなことはあり得ない。 

「そ、それは!」 

「いや、確かにそれなら!」 

レオンだけでなく、クラウスも俺の横に並び走って来ていた。 

「おかしな気配を感じて、その後突然ヤクートタイガーが現れる場面に遭遇したんだ」 

「どうやらアルベルト様はとんでもない発見をしたんじゃないか!」 

「いや……それには確証がいる」 

そう、俺の仮説を立証するには、確証がいる。 

つまり、犯人の確保だ。 

俺は探知のスキルに集中した。王都からディセルドルフへの街道を進むなかでスライムを通して得たスキルだが、何故か探知能力は神級探知スキルより高いんじゃね? て言う気がする。 

しかし、相手はおそらく隠ぺいのスキルを所有しているようだ。 

通常なら半径10km圏内の全ての生けるもの、全ての動向が把握できる。 

しかし、今感じる気配は俺の探知距離ギリギリのラインだ。それでいて、推定距離は1kmもない。 

しかし。 

――見えた。 

500mほど先に白いローブを着た人物がダンジョンに入って行く。 

「このダンジョンに逃げ込んだようですね」 

「ああ、間違いない」 

俺はレオンと顔を合わせると、阿吽の呼吸で頷きあった。 

そこへ。 

「さっきの白いローブの男、白鷲教の信者ね」 

「アル様。そうだと思います。白いローブは白鷲教の証です」 

噂は本当だったのかもしれない。この処の魔物の発生の際、白鷲教の人間が必ずいる。 

「とにかく、ダンジョンを進みましょう。幸い、A級冒険者が3人にぶっ壊れが1人」 

「誰がぶっ壊れだ?」 

「「アル(様)、いい加減自覚した方がいいわよ(ですよ)」 

ぐぐっ。 

俺のことを想ってくれた上の助言だろう。当然、聞き入れるべきだろう。 

だが、断る。 
しおりを挟む
読んで頂いててありがとうございます! 第14回ファンタジー小説大賞 参加作品 投票していただけると嬉しいです! ブックマークもね(__)
感想 58

あなたにおすすめの小説

救助者ギルドから追放された俺は、ハズレだと思われていたスキル【思念収集】でやり返す

名無し
ファンタジー
 アセンドラの都で暮らす少年テッドは救助者ギルドに在籍しており、【思念収集】というスキルによって、ダンジョンで亡くなった冒険者の最期の思いを遺族に伝える仕事をしていた。  だが、ある日思わぬ冤罪をかけられ、幼馴染で親友だったはずのギルド長ライルによって除名を言い渡された挙句、最凶最悪と言われる異次元の監獄へと送り込まれてしまう。  それでも、幼馴染の少女シェリアとの面会をきっかけに、ハズレ認定されていた【思念収集】のスキルが本領を発揮する。喧嘩で最も強い者がここから出られることを知ったテッドは、最強の囚人王を目指すとともに、自分を陥れた者たちへの復讐を誓うのであった……。

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

処理中です...