ハズレスキルがぶっ壊れなんだが? ~俺の才能に気付いて今さら戻って来いと言われてもな~

島風

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27俺は頭おかしいヤツじゃないとおもうんだが?

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おかしい。俺は疑問に思った。何故なら不審者が向かっているのは草原の更に奥。 

身を隠すなら、山の方へ向かう筈だ。平原ならいつまでも姿が隠せない。 

つまり。 

これは罠だ。 

「なんだ! こりゃ!」 

思わず素っ頓狂な声が出た。 

「アル、どうもヤクートタイガーみたいね」 

「アル様、あれ、確か準災害級ですよ」 

埋め尽くされたヤクートタイガーの群れに思わずため息が出る。 

これを相手していたら、不審者に逃げられる。 

「くそ……! 面倒な……!」 

思わず愚痴る。 

だが、その時、救世主が現れた。 

「アルベルト様! 大丈夫ですか?」 

見ると、あのレオンと彼のパーティがいた。 

「平原にヤクートパンサーが現れたという情報が入って、街のA級冒険者に緊急討伐指令が出たのですが……」 

「まさか、ヤクートパンサーではなく、ヤクートタイガーの間違いとは……」 

いや、間違いじゃない。それはクリスが一瞬で瞬殺しただけだ。 

「ああ、ヤクートパンサーなら、い、痛ぁ!」 

突然、クリスに足を踏まれる。 

「何するんだ? クリス?」 

クリスが顔を俺の近くに寄せると恥ずかしそうに、頬を朱に染めて小声で話す。 

「私があれをやったこと知れたら、私が頭おかしいレベルのおかしい人って思われるじゃない。だから、黙ってて!!」 

は!? 頭おかしいレベル? 

確かにそうだな。普通の神級魔法を優に上回る威力だ。攻撃に向いている、俺の兄、エリアスの火の神級魔法ですら、あれ程ではない。 

「仲が良いのはいいことなのですが、今は協力をお願いします。アルベルト様」 

レオンが俺とクリスが痴話げんかでもしていると勘違いをした見当はずれの意見をしてくる。そんな時。 

「はぁ!? アルベルトだって? あの賢者の息子か?」 

嫌味を含んだ声がレオンのパーティから響いた。 

見ると、一人の見覚えのない冒険者が進み出ていた。顔付きを見ると、如何にも腕に自信にあふれている男がいた。だが、顔つきを見れば内面は察しがついた。 

「やっぱり、賢者の息子、アルベルト・ベルナドッテか?」 

「そうだが……」 

ろくなことにはならないが、レオンさん達の仲間のようなので、素直に答える。 

「賢者様も可哀想にな。そうか、お前があの……ハズレスキルのアルベルトか」 

わざとらしくかぶりを振って、大げさなポーズで俺を煽る。 

「王都中で有名だぜ。賢者ガブリエル様が出来の悪い息子のせいでとんだ恥をかいたってな」 

男はわざとらしく一息話を切ると。言い出した。 

「はっきり言おう、てめぇはカスであると。カスが賢者様に迷惑かけんじゃねぇ!」 

「……」 

俺は無言になってしまった。隣では、クリスがフルフルと震えている。リーゼもだ。 

「まあ、どうせ賢者様の名前を出して、先輩方に生意気な発言をしてたんだろうが、残念だな。俺がお前の正体を暴露したからな。わかったら、さっさと何処かへ行けや」 

「おい、ダニエル、無礼だろう?」 

「何言ってるんですか? クラウスさん。こいつはどうしようもないハズレスキルで、無能なんですよ。賢者様の息子でも、無能なんです。そ、む・の・う」 

「無能って……」 

酷い言いように腹がたつが、レオンさんやクラウスさんの仲間では。 

「すいません。アルベルド様。こいつは今日、王都から来たばかりで、どう見ても問題ありそうなので、私達がギルドからの依頼で面倒を見ているのですが……その」 

「本当に申し訳ございません。後で良く言っておきますので、ご容赦ください」 

レオンさんとクラウスさんが取り繕う。どうも、二人の正式な仲間じゃないようだ。 

「それより、このヤクートタイガーを何とかしましょう。準災害級ですよね?」 

「そうです。街から続々とA級冒険者達が駆けつける筈です。ですから、しばらく持ちこたえれば、大丈夫です」 

「わかった。では共闘しよう」 

「はぁ? 共闘? このカスと?」 

「いいから、お前は黙っていろ、直にわかる」 

よし、いきなり魔法をぶちかまそう。キングタイガーと違って、個体じゃない。 

数で圧してくる魔物には攻撃魔法が一番だ。 

「レオン、クラウス。魔法を使うから、前衛を頼む」 

「わかりました」 

「承知」 

「けっ」 

レオンとクラウス、そして例のダニエルと言う冒険者が剣を抜いて、ヤクートタイガーの群れの方を向く。これで、呪文詠唱に集中できる。 

「燃え盛る火は……」 

俺はふと、思いついた。そう言えば、リーゼの爆裂の魔法と同じようにすればかなり威力が上がるな。俺は火の上級魔法に思いつきで、土の付与魔法を施した。 

「燃え盛る火はその真価を我が身に示せ そして喜びの声を持って女神の鉾とならん 『爆裂【ファイア・エクスプロージョン】』!!」 

凄まじい轟音が聞こえた。 

「ひぃ」 

「ぴぃ」 

クリスとリーゼが思わず嬌声のような声をあげる。 

ドゴーンと言う轟音と共に、黒煙が立ち込めて、俺の放った光球の着弾点には大きなキノコ雲が現れていた。 

しんと静まりかえった。クリスとリーゼが俺の方を生暖かい目で見ている。 

あれだけいたヤクートタイガーの群れは一瞬にして消し飛んだ。 

そして、レオン、クラウス、そして例のダニエルという男も前方に空いた大きな穴を見ている。 

ぽかんと口を開けて、俺と前方のデカい穴を交互に見ている。 

「まあ……その、あれだな」 

俺は耐えかねないおかしい空気に負けて、ぼそりと呟く。 

「当たり処がちょっとよかったようだな。ははは……」 

「「当たり処とか、そういう問題じゃない!!」」 

レオンとクラウスからツッコミが入った。 

いや、俺だって即席の魔法なんだ、知らなかったんだ。 

俺だってまさか、魔法一発だけで、魔物の大群を駆逐できるなんて思わなかったんだ。 

だってな。 

100匹以上もいたんだぞ? 

それが一瞬で全滅とか……これやった奴頭おかしいだろ。
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